魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

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Scary Monsters
懐疑


 

 

 ルドウイークは学校での勤務を終え、行きつけのバーへと向かうべく道を歩いていた。日本という国は母国とは異なる食生活やライフスタイルが根付いており、いくら社交的な彼であろうとも少なからずホームシックになるものだ。

 そんな日本にも一つだけ変わらぬものがあるとすれば、酒だろう。故にルドウイークは酒が好きだ。体質のせいか酔う事はままならぬが、それでも母国の酒は彼の寂しさを紛らわせる事ができる。

 それでも、理由の分からぬ違和感は拭えないが。酒に酔い、家に帰り眠ってもなお彼は何かに飢えていた。

 

 そしてその道程に教え子がいれば少なからず焦るというものだ。

 

「ルドウイーク先生」

 

 灰のような銀髪の少女は、見滝原中学校の制服に身を包んで彼を待ち受けていた。

 

「白百合さん……どうしてここに?」

 

 その教え子は不敵に笑うばかりで、問いには答えない。

 

「見せたいものがあるのです。一緒に来ていただけませんか?きっと先生が抱く違和感を、払えるでしょう」

 

 教師として、こんな夜に街を歩く教え子を咎めなければならないのに。その提案はとても魅力的に見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暁美ほむらという少女は容赦が無い。躊躇いもなければ憐みも無い。ただ目的のために他者を切り捨て、心を鬼にする覚悟を持つ。遍く繰り返しの中で、彼女は人間性を擦り減らしながらもそれだけは捨て去らなかった。

 それはただ、一人の少女のために。彼女が最期まで信じた女神のために。その約束のためならば、彼女は殺すだろう。大切な友人でさえも。その家族でさえも。それはある種、狂信的とも言えるだろう。逆説的に言ってしまえば、その精神がなければ彼女は約束を果たし得なかった。

 

 そんな彼女の精神とは正反対の、巴マミとのお茶会。穏やかで、和かで。それはいつか夢見た理想郷。隣の桃色の少女がケーキを食べ、感想を言い、マミが喜び。得体の知れないマスコットがチーズケーキを食すのだ。

 ほむらはケーキには手を付けず、ただ紅茶だけを嗜む。まるでタイミングを待っているかのように。ただ雑談と紅茶の甘さだけを堪能しながら。

 

「巴さん」

 

 しかしあえて、火の中に飛び込むこともしなければならない。ほむらは静かにマミに問う。

 

「あら、そうだ。聞きたいことって?」

 

 首を傾げるマミに、ほむらは尋ねた。

 

「その子……べべとはずっと一緒に暮らしてるんですか?」

 

 マミはベベの頭を撫でて肯定する。

 

「そうよ。ベベはずっと昔からの友達なの」

 

 そうして、マミはべべとの思い出を振り返る。思うよりも長い付き合いなのだろう、マミの部屋にはべべとのツーショットの写真が並び、まるで家族の如く。それが異形であろうとも、誰もその存在に疑問を抱かず。

 故にほむらは、探るのだ。その正体を。世界の探求者、そして女神との約束を守るために。

 

「ホムラ」

 

 不意にべべが、マミの肩越しにほむらに問い掛ける。

 

「ナゼキク?」

 

 その瞳はどこまでも深く。人間性が齎す闇の灯火を見た気がした。だがそれすらもほむらは納得してしまうのだ。ほむらはべべを知っている。もしべべが彼女の思う存在であるのならば、べべがその身に人間性を宿す理由も納得できる。

 それは少女の成れの果て。希望から生まれた絶望が孵化した姿なのだから。そしてそれこそ、ほむらが狩殺さねばならぬもの。

 

 だが今では無い。今はまだ耐え忍ぶ時だ。でなければ彼女の狩りは成就されぬ。

 

「ちょっとだけ、気になって」

 

 ほむらはいつもの笑みを浮かべると答える。ベベは怪しみつつも納得した様子を見せた。見た目に惑わされてはならない。それは正しく、少女なのだから。

 マミは相変わらず、べべとの想いに身を馳せる。

 

「以前はね、この街には魔法少女が私一人しかいなかったの。今でこそ皆がいてくれるけど、あの頃の私を支えてくれて励ましてくれたのはべべだけだった」

 

 マミはそっと、べべを両手に包み抱きしめる。

 

「この子がいなかったら、リリィさんと会う前に私は駄目になっていたわ」

 

 その発言にまどかは衝撃を受ける。マミは理想の魔法少女。尊敬すべき先輩。しかしほむらは知っている。覚えている。彼女はどこまでも脆く、そして強がりなのだ。

 

「そんな、マミさん……」

 

 まどかの横でほむらはマミをフォローする。

 

「巴さんはもっと逞しくて強い人です」

 

 それは優しい嘘。しかし嘘で人が救われるのならば、それで良いでは無いか。そしてほむらは嘘つきなのだから。

 二人の優しさにマミは微笑む。

 

「ありがと。確かにそうやって頼り甲斐のある先輩ぶってた頃もあったわね」

 

 その憧れの先輩は、幸せに満ちていた。

 

「でもね。鹿目さんや美樹さんが一人前になって、佐倉さんや暁美さんが味方になってくれて……今ではリリィさんも一緒にいてくれて。皆に囲まれて、私幸せなの。もう昔みたいに背伸びして頑張る必要もなくなったわ」

 

 その笑顔は、紛う事なき太陽のように。少女の美しさを表しているように。だから魔法少女の私はマミに惚れたのだろう。星の娘に聞かれたら事だが、それでも私はマミが好きでよかった。

 健気で頑張り屋で凛々しくて、しかし甘えん坊で寂しがり屋。そんなマミに私も救われたに違いない。

 

「マミ、サミシガリヤ」

 

「こぉら、うふふ」

 

 悪戯っ子のべべをマミは笑顔で抱き締めた。そんな姿を見たまどかの心は晴れる。

 

「ナイトメアも強くなってきたけど、その分魔法少女も増えて安心して戦えるようになってきましたね。こういうの、なんだか賑やかで楽しいかも」

 

 楽観的な言葉に、マミは先輩として咎めなければならない。

 

「もう、ナイトメア対峙は遊びじゃないのよ鹿目さん」

 

「ウェヘヘ……」

 

 けれど。その幸せは確かに存在しているのだ。そして人はそれを夢と呼ぶ。

 

「でも、そうね。今にして思えばこれって昔の私が夢に見ていた毎日なのかもね」

 

 落ち着いて、振り返りながらマミは紅茶のカップを手にする。

 

「魔法少女として受け入れた生き方がこんなにも幸せで充実したものになるなんて、あの頃は思ってもみなかったわ」

 

 私も。あれだけ人に戻りたかった私も、君たちのおかげでとても楽しかった。狩りによって擦り切れた人間性も、魔法少女として彷徨い薄れた魂の輝きも、君達と過ごしたからこそ取り戻せた。それは狩人に戻った私であろうとも変わらぬものだ。

 啓蒙があろうと無かろうと。魂の奥、人間性を豊かにするのはやはり溢れんばかりの愛なのだから。啓智、知恵、狂気。今思えばその全てが取るに足らない。愛とは無限に有限で、全てを超越していた。

 

 ほむらはそんな幸せな風景を、ただ見ていた。そして待ちに待った時が来たのだと。マミに声をかけた。

 

「巴さん。お茶のおかわり、いただけますか」

 

 この話の最中でポッドの中身は既になく。自然な流れでほむらは注文をすれば。

 

「あら、ちょっと待っててね。今お湯を沸かして来るわ」

 

 そうしてマミはキッチンへと向かう。この部屋の主として彼女達をもてなすために。しかし魔法少女という闘いを強いられた存在である事は忘れる事なく。ただそれだけのこと。マミは己の役割を果たしているに過ぎない。

 そうしてマミがいなくなれば、ほむらは動き出す。立ち上がり、魔法少女へと変身すればただ笑みのまま首を傾げるまどかに謝った。

 

「ごめんなさい、まどか。すぐに終わるわ」

 

 そして彼女の祈りは動き出す。盾が回転し、時を統べる女王以外はその動きを赦されない。この場において自由なのはほむらのみ。彼女は冷酷なまでに無表情をべべへと向けると、その首根っこを掴んで見せた。

 同時に『世界』へと入る事を赦されたべべは動き出す。気がつけば己を睨むほむらに握られていたのだから驚愕もするだろう。

 

「夢は目覚めるものよ」

 

 人間でいう頸動脈を締める。苦しむべべを無視し、ほむらは呟いた。

 

「貴女がかつて何者だったのかを思い出したの。私は貴女の正体を憶えてる」

 

 脳裏に浮かぶは忌まわしき呪いの権化。魔法少女の成れの果て。

 

「皆の記憶を捏造し偽りの見滝原の結界に閉じ込める……そんな芸当ができるのは、魔女である貴女しかいない」

 

 魔女。それは救われたはずの存在。本来ならば居てはいけない呪いの結晶。友が己の存在と引き換えに成した希望を否定するもの。

 いてはいけないのだ。もし存在するのであれば、狩らねばならない。世界の果てまで追いかけ抹消しなければならない。それが友との約束。彼女が望んだ世界のために、遍く魔女を殺すのだ。

 

「どういうつもり?こんな風に私達を弄んで、一体何が楽しいの?」

 

「グエエ、ワ、ワカラヌ……」

 

 白を切るべべの首を思い切り締め付ける。ここで尋問するのは得策ではない。魔力を消費して時を止めている以上、いつかは時止めが切れてまどかやマミにこの所業がバレてしまう。

 秘匿するべきなのだ。今はまだ。故にほむらは、動かなくなったべべを抱えて窓から部屋を飛び出す。

 

「記憶って厄介なものね。一つ取り戻すと次から次へと余計な思い出がついてくる」

 

 暁美ほむらは巴マミが苦手である。マミは基本、強がりで無理をしがちなのだ。それでいて繊細なのだから、魔法少女の真実を暴露されればどうなるかなど想像に難くないだろう。事実、彼女は私に依存したのだから。

 そしていかにほむらと言えどもやはり人の子。それを告げるのは彼女とて辛いのだ。

 

「忘れたままでいたかったわ。今まで自分が一体どれほどの人の心を踏みにじってきたかなんて」

 

 闇夜に紛れ、ほむらは呟く。己の所業を後悔し、しかし立ち止まる事はない。

 

「白状なさい!こんなに周りくどい手口を使って一体何が目的なの?」

 

 強制的に目覚めさせられたべべに、ほむらは強く怒鳴った。その姿は弱々しい暁美ほむらではない。友を救うために冷酷なまでに心を閉ざした魔法少女。

 べべはほむらを見据えると、懇願するように言う。

 

「ギギギ、ホムラ……チーズ二ナッチャウ……」

 

 またいつもの戯言だと、ほむらは気にも留めなかった。ならば尋問は拷問に変えてしまえと決意して。だが不意に違和感を覚える。それは自らの右足。何かが纏わりついている。

 それを見た瞬間、その表情を焦りに変えて銃を抜こうとするが。先に彼女の足首に巻かれたリボンが引かれた。高台にいたほむらはバランスを崩し暗い闇へと落ちて行く。

 

 やられたと、ほむらはリボンを巻いた張本人を恨んだ。そして後悔するのだ、その魔法少女は決して油断して良い人物ではない。

 一人、見滝原という魔境で生き残ってきた歴戦の勇者。脆く、しかし油断などしてはいけない相手。

 ほむらは落下しながらビルの窓に足を滑らせ、速度を殺す。そして手頃な足場に手をかけると、その相手の姿を捉えた。

 

「……事情が分かるまで話を聞いていたかったのだけれど」

 

 それは自らの原点。憧れの象徴。黄衣に身を包んだ魔法少女。巴マミ、その人。

 マミは高台からほむらを強い瞳で見据えている。

 

「これ以上べべが虐められているのを黙って見ている事はできないわ」

 

 最初から気付かれていた。マミはどうしようもなく調子乗りで脆いが、それ故仲間という存在を重じている。長く一人でいた彼女は、しかし他者に依存するためにその努力を惜しまない。故に人の心には機敏に反応するのだ。

 

「どういう事か説明してくれる?一体その子が何をしたっていうの?」

 

 ほむらにとって、最大級の危機。武力では敵う相手ではないのだろう。

 

「……貴女はべべに騙されてる。ここは本当の見滝原じゃないわ。皆偽物の記憶を植え付けられているの!」

 

 だから心に訴えかける。情に熱い彼女ならば、それで隙を突く事もできるかもしれない。

 

「ちょっと……暁美さん、いったいどうしちゃったの?」

 

 

 

 

 

ご招待の魔法少女、巴マミ

Candeloro

 

 

 

 

 そして訝しむマミの隙を突く。一気にべべを放り投げ、時を止めた。そして止まったべべを盾から引き抜いた拳銃で瞬間的に撃ち抜こうと引き金を引く。

 それは長く銃を扱ってきたほむらだから出来る芸当。拳銃というのはそもそも25メートルも離れれば瞬間的に当てる事は難しい。アメリカの警察のデータによれば、銃撃戦における25メートル位内での拳銃の命中率は8%程度。しかしそれは突発的とは言え成人男性がしっかりと構えた上での命中率だ。

 しかしほむらは足場にぶら下がり、不安定な状態から片手のみでべべを狙った。そして発射された9mmの弾丸は寸分違わずべべを射抜くコースを取っている。

 

 時が動き出す。間違い無く撃ち抜かれるであろうべべは、しかし唐突に巻かれたリボンによって強引に射線上から移動させられた。

 マミが瞬時にべべを退かせたのだ。

 

 ほむらは自らの足に巻かれたリボンを撃ち抜こうとしたが、このリボンは魔力によって精製されている。たかが9mmの口径では完全に断ち切る事は能わず。その間にべべはマミにキャッチされ、叫ぶ。

 

「逃げて!」

 

 べべは形態を変化させて逃げ出す。魔女が魔法少女から逃げるなど、今まであっただろうか。

 

「どうあってもあいつを逃すつもり?」

 

「追いかけようなんて思わないで。さもないと……私と戦う事になるわよ」

 

 問われるマミは、その瞳を闘志で輝かせる。そこにかつて見せた油断など存在しない。ただ獣を狩る狩人のように。

 ほむらは少し考え、後には退けない事を理解して同じく闘志に火を付けた。時を止め、瞬時に高火力の突撃銃を取り出しセレクターをフルオートに切り替え、飛びながらマミに向けて撃ちまくる。

 5.56mmの弾丸の嵐は容赦無くマミを襲うが、マミも周囲にマスケット銃を展開して脅威となる弾丸を撃ち落とすために発砲する。

 

「時は動き出す」

 

 ほむらの呟きと共に互いの弾丸が暴れる。そしてその全てが、彼女達に当たる事なく弾け飛んだ。まるで針通しのように。そんな芸当ができるのは、世界広しと言えどマミやほむらだけだ。

 弾丸の嵐が収まればほむらとマミは互いに跳躍し、霧揉みに落下しながら銃弾を撃ち合う。

 

「お互いに動きの読み合いね!」

 

 まるで余裕を見せるようにマミが言葉を紡いだ。

 

「でも同じ条件で私に勝てる!?」

 

「根比べなら負けない……!」

 

 時を止めると同時に軽機関銃を取り出す。200発もの5.56mm弾を備えた軽機関銃は、引き金を引けば一気に弾丸を放出した。

 マミも負けじと流れるような動作でマスケット銃を放ち、止まった時の中で弾丸は雨のように彼女達を覆う。

 

 そして時が動き出せば、周囲の物体は弾丸の嵐に耐え切れず細切れになっていく。その中心には無傷の魔法少女二人。

 

「ほら、ラチが開かないわよ」

 

 若干の息切れを見せるマミ。正直マミはほむらを侮っていた。弱気で、しかし強力な魔法を用いるほむらをいなす事など容易だろうと。

 しかし行動でそうしなかったのは、やはり魂が暁美ほむらという魔法少女を覚えていたからだろう。故に全力で。

 

「……魔女は救われなければならないわ」

 

 ほむらは呟き、盾から何かを取り出す。それを見てマミは身構え、次に戦慄した。

 それは手榴弾。半径15メートルを爆風と破片で殺傷するための爆弾。身構えたままのマミは、しかしそれを握って天を仰ぐほむらを見て慌てた。

 

 まるで心中するかのように、彼女はピンを抜いて手榴弾を抱いたのだ。

 

「、ダメッ!」

 

 巴マミは優しい。非常になり切れない魔法少女。だからこそ、それすらも利用する。

 安全レバーが離れ爆発寸前の手榴弾を、マミは駆け寄って奪い取ろうとした。ほむらはそのあまりの隙を見逃さない。奪われた瞬間に手榴弾が破裂する。同時に時を止めたのだ。

 

「ごっ!?」

 

 一瞬、遅かった。間近で起きた爆発と破片はマミを粉砕したが、同時にほむらにも少なからずダメージを与えて見せたのだ。爆風は彼女の脳を揺さぶり、肺から空気を吐き出させ、破片は彼女の白い肌を傷付ける。

 巴マミは必要な犠牲だった。彼女の目的のために死ななければならない存在だった。そう自分に言い聞かせ、立ち上がる。そして気がつく。

 マミの死体が、リボンによって構成されている事に。

 

 魔力が少ないせいで時が動き、死体がズタボロのリボンと化す。刹那そのリボンがほむらを襲った。彼女をぐるぐる巻きに拘束したみせたのだ。

 

「相手より優位な魔法を扱えるからって油断するのは貴女の悪い癖ね」

 

 マミは無傷で離れた高台に立っている。上手だったのはマミの方だ。

 

「そして容赦が無いわね。自分が傷付く事を厭わない……暁美さん、一体どうしたの?」

 

 ほむらは歯を食いしばり、叫ぶ。

 

「貴女は何も気がつかないの!?今の自分に何も違和感を抱かないの!?」

 

「どうしてべべを撃とうとしたの?」

 

「あいつは魔女よ!私達魔法少女の敵なのよ!思い出して!」

 

 マミはそんな、叫ぶ少女に首を傾げる。

 

「何を言ってるの?私達の敵は魔獣でしょ?」

 

 その瞬間、場が凍りついた。ほむらは唖然とし、マミは自らの言葉に慄いた。

 

「……そう、私はずっと魔獣と戦ってきた」

 

 ならば。ナイトメアとは一体。

 

 

 

 

 

 

「巴さん……?それに、暁美さん、一体……」

 

 

 

 

 

 

 不意に、男が現れた。それは見知った教師。女子の人気者であるルドウイーク先生。彼は二人の姿を見て慌てるが、それ以上にマミが慌てていた。

 

「ル、ルドウイーク先生!?どうしてここに……」

 

 その答えを私が示そう。

 

「私が連れてきたんだよ、マミ」

 

 先生の背後から、私はゆったりと歩いて登場する。制服では無い狩人の姿で。人形ちゃんの羽織物を巻いて、私は不敵に笑った。

 

「リリィさん……?」

 

「マミ、やはり君は優秀な狩人であり魔法少女だ。その強さ、美しさ、気高さ、全てにおいて私が惚れた巴マミそのものだね」

 

 私の称賛にしかしマミは怒る。

 

「ちゃんと答えて!どうして一般人をこんな所に……」

 

「一般人?違うね。彼もまた、我らの同胞だ。血に酔い、獣を狩り、しかし最期は獣に身を墜とした。だろう、さやか?」

 

 彼女達の遥か上、一つの影が外灯によって晒される。見上げればやはり彼女はいた。

 美樹さやか。円環の理、その女神の右腕。かつて月光に導かれた魔法少女であり剣聖。彼女は私を見下ろすと、飛び降りてスーパーヒーロー着地を決める。

 ゆっくりと頭を上げれば、やはり彼女の表情は冷酷で、しかし怒りに満ちていた。

 

「上位者なんて、ろくでもないね」

 

「まるで昔の恭介のような事を言うね」

 

 さやかは鞘から剣を抜くと私にその鋒を向けた。

 

「知らなくていい事は、そのままでいいでしょ」

 

「だが先生は狩りに飢えている。偽りの幸せを与えられ、しかしそれは所詮偽りでしかない。夢とは目覚めるためにある」

 

 狼狽る先生を他所に、私はエヴェリンを取り出す。そしてほむらのリボン目掛けて発砲した。寸分違わずリボンを射抜き、ほむらは瞬時に逃走する。

 

「あっ!ちょっとリリィさん!?」

 

「マミ。ほむらは放っておき給え。今はそう……この使者をどうにかしなければなるまい。恭介!仁美!」

 

 名を呼ぶのと同時に、暗闇から恭介と仁美が飛び出て来る。彼らはそれぞれの得物でさやかの前に立ちはだかった。

 唸るチェーンソー、輝く月光。その二つがさやかを相手取る。そしてやはり、先生は月光を見て唖然とした。

 

「ああ……私は、私は」

 

 月光により齎される啓蒙により狂気に満ちる先生を見てさやかは怒鳴る。

 

「恭介ッ!やめなよ!あんた自分が何をしてるのか分かってるの!?」

 

「君こそ」

 

 恭介は担いだ月光を輝かせながら静かに言う。

 

「狩人というものを分かっていない。そしてさやか、君は解放されるべきだ……僕達に、その遺志を渡せ」

 

「さやかさん……私、思い出しましたの。あの日、上条君を守った貴女の姿……やはり私だけじゃ上条君を支えられない。二人で支えるべきなのです」

 

 二人の真摯な言葉を聞いて、さやかは震えた。それは激怒。溢れ出る激情が、剣を覆う。それは赤黒く、まるで私達死なぬ者達を葬るためにあるが如く。

 さやかは剣を構えるとその表情を晒す。美しい少女の顔は、異常なまでに怒りに歪んでいた。

 

 

「私の遺志を無駄にしたね、あんたら」

 

 

 やはり我々に言葉は不要。流す血と、狩りによってこそ分かり合える。だから恭介、仁美。狩りに励み給えよ。

 

 

どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)

  • アニメ本編のみ。あともうちょい
  • 叛逆。展開は変えるかもしれません
  • 叛逆後も。クオリティ低し(断言)
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