あと感想くださいマジで
やっぱり。私は何がなんでも彼女を止めるべきだったんだ。
私に寄り添う少女は、本当は神になんてなりたくなかったんだ。
人を超え、宇宙を統べ、魔法少女の救済なんてしなくて良かったんだ。
だって彼女は、言ったんだから。別れたくないって。一人は寂しいんだって。私が泣くほど辛い事が、自分に我慢できるはずないじゃないって言ってしまったんだから。
巴マミとも、美樹さやかとも、佐倉杏子とも、志筑仁美とも、家族とも、みんなとも、そして私とも。誰とだって別れたくないんだ。
あぁ、私はなんて愚かなんだ。今まで散々人に愚かだなんて言ってきた私が一番愚かだった。これならあの狩人が為そうとしていた事の方が何倍もマシじゃないか。
誰かが犠牲になる必要なんて無いんだ。ましてやそれがまどかである必要が何処にあるというの?
繰り返し、勝手に崇め、彼女との約束と自らに言い聞かせて盲信的に戦っていた自分を呪い殺したい。できる事なら今すぐにでもあの時に戻って、上条恭介を殺した自分を処刑したい。
ねぇ、それが本当に貴女の願いなら。
私は。私は。
「……ほむらちゃん?」
誰かが都合良く用意したような美しい花畑で、愛する少女は首を傾げた。私に寄り添い、その魅惑的な唇を動かす彼女は円環の理。最愛の、最高の親友。鹿目まどか。
私は無理に笑顔を作って彼女を抱きしめる。その温もりは偽りではない。確かに愛した彼女の暖かさだった。暗く、優しい微睡の中。私は彼女にそれを見出したのだ。
「やっぱり、貴女は私の希望の百合。世界の中でただ一つの眩い星。ねぇ、まどか。私貴女の事を疑ってたわ。貴女は誰かが用意した偽りの誰かなんじゃないかって。そうでもなければもう一度貴女と会う事なんてできないもの。覚悟していたもの。でも違うのね。貴女は確かに私が愛した鹿目まどか。私の大好きな一輪の太陽」
私は首を傾げるまどかを抱き締める。これでもう、恐れは無い。覚悟もできた。最後にこうして彼女と触れ合えたのだから、やっぱり彼女は女神なんだろう。
私を探しに来た訳のわからないはずの彼女は、しかしそんな場においても優しく包容してくれた。
「こんな風に話ができて、もう一度優しくしてくれて。本当に嬉しい。ありがとう。それだけで十分に私は幸せだった」
立ち上がり、私はそう告げて立ち去る。これより先は私の問題。彼女を巻き込んではならない。
去って行く私をまどかは不思議そうな顔で見つめている。白い悪魔と共に。その悪魔の瞳は私の背中をしかと見つめていた。
コツコツと、誰もいない公園にブーツの音が響く。靡く金髪は星の象徴。輝く瞳は宇宙を内包し、一度覗けばその深淵から齎される高次元暗黒の啓蒙に引き摺り込まれるであろう少女は酩酊を冠する上位者。
即ち星の娘、エーブリエタース。イズの地で見出され、聖歌隊共に崇め奉られていた神秘そのもの。
そんな彼女は、不意に足を止めて前の暗闇から現れる二人の少女を見据える。それは見知った姿。この偽りの世界で共に魔法少女として背中を預けていたはずの者達。
美国織莉子と呉キリカ。その二人が、既に魔法少女の姿へと変貌し対峙するのだ。まるで行く手を阻むように。
「灰は灰に。塵は塵に。上位者は、宇宙に。ならば貴女もまた、この神聖なる場に居て良い者ではありませんわ」
その瞳の須く円環の理に染まった少女が妖しく微笑む。明確な殺意。およそ少女が抱いて良い闇を大きく超越している。その横でまるで獣のように獰猛に牙を向くキリカ。
だがそれが何だというのか。そんなもの星の娘には何ら関係はない。ただ道行く先の小石に等しい。
「退きなさいな織莉子。邪魔よ」
そんな言葉に織莉子はただ笑う。
「あら、酷いじゃありませんか。私達、同じ
「そんな事、本当は思っていなかったでしょう?円環の理の使者……お互いにね」
星の娘の姿が変わる。魔法少女の衣装ではなく、かつて狩人の夢に訪れていた時のようなドレスへと。その手には何も抱かず。だがそれが正装である。
「お互いに言葉は不要なようで」
織莉子が水晶を構え、その横で今にもキリカが飛びかからんとする。
「言葉よりも思考しなさいな、人間」
刹那、星の娘の頭上から宇宙が現れる。その宇宙は神秘。そして交信とは失敗させるもの。その失敗こそが次なる段階を生むのだから。失敗が齎すものは隕石。小さく無数の星々は織莉子達を狙い滑走していく。
そこでキリカが固有魔法を使って見せた。その魔法は速度低下。近接戦闘に特化した彼女らしい魔法だろう。速度を緩めた隕石を避けることくらい魔法少女には容易いだろう。現に二人は最低限の動きで隕石の大群を避け切って見せた。
「織莉子を攻撃したな化物ッ!」
激昂したキリカが突撃してくる。まさに電光石火。
「犬の躾はしっかりしなさいな」
星の娘が腕を伸ばせば触手が伸びる。それは一般的にエーブリエタースの先触れと呼ばれる神秘のように見えるが、これは彼女そのものの本来の腕だ。圧倒的物量を誇るその触手は、しかしいとも容易くキリカに引き裂かれた。そして彼女の鉤爪は星の娘の腹を引き裂く。
途端に鳴り響く高周波の金切声。星の娘は表情を変える事なく歌を奏でてみせた。
高次元の啓智に溢れた高音は、かつて嘆きの祭壇で私を苦しめた技の一つ。啓蒙に溢れた脳であればその声は美しい歌声に聞こえるはずだが、無垢な人間であるのならば狂気でしかない。故にキリカは頭を抑えて苦しむ。
「ぐ、ぐああああッ!」
その姿を見て織莉子はすかさず指示を出した。
「下がりなさいキリカ」
彼女の周囲に現れた数々の水晶がレーザーを放ち星の娘を貫く。
上位者とは、戦いに優れた者達ではない。戦闘本能や戦力であるならば、脆いが狩人の方が格段に上だ。故に……エーブリエタースは本来弱い。上位者の姿であるならばその質量を持って相手を叩き潰せるが、今の彼女は華奢な少女。星の娘は相変わらずの無表情で片膝をつく。
「存外、貴女達はそんなものね」
勝利を確信した織莉子が聞こえる声で呟く。呆気ないが、狩人との戦いでも上位者というのはあっさりと屠られる事もあるのだから不思議ではない。
だが、そんな事私もわかり切っている。大切な彼女を一人にさせると本当に思うだろうか?
目には目を。織莉子を苦しめた子は、星の娘ではないだろう?
シャボン玉が浮かぶ。一つ、二つ、三つ、いっぱい。そしてそれらは織莉子達を取り囲んだ。今の今まで余裕の笑みを浮かべていた織莉子の表情が強張る。彼女は知っている。このシャボン玉を。
その小さくも逞しいくらいに強い意志の正体を。
シャボン玉が爆発する直前、織莉子は予知によって危機を察知し加害範囲から逃れた。一個一個は弱い爆発だが、一斉に起爆されれば魔法少女とてひとたまりも無い。そしてもう一つ、予知した事がある。
「ティロ、フィナーレ!」
真上から魔法の砲撃が来る。織莉子は全力のオラクルレイを砲撃に向け放って相殺してみせた。
「弱いものいじめは感心しないわね」
そうして現れるのは黄衣の魔法少女、巴マミ。彼女はいつものようにポーズを決めて星の娘の手前に着地した。立ち上がる星の娘の背後から、別の気配が声をかける。
「なんとか間に合ったのです」
「要らぬ心配よ、おちびさん」
「むっ。マリアの知り合いだからって言っていいことと悪い事があるのです」
百江なぎさ。この世界ではベベとして魔法少女達を支援していたお菓子の魔女。その姿を見て織莉子は憤った。それもそのはず、なぎさもまた円環の理の使者としてこの世界へとやってきたのだから。
「どうして……使命を忘れたのッ!」
「使命よりも、なぎさはただチーズをくれたマリアに借りを返すだけなのです。それに……」
なぎさはシャボン玉発生器を織莉子に向ける。
「織莉子は個人的に、倒しておきたいのです」
「……ッ!」
邪魔者が増えた事よりも背信者が出た事に激怒した。生前の彼女はあれだけまどかに心酔していたのだから無理も無い。
「巴さんっ!貴女は騙されてるわっ!あの女達は魔法少女の敵!円環の理に仇なす異教徒なのよ!?暁美ほむらだって救われる!それを邪魔しているのよ!?貴女はそれで良いの!?」
悲痛な訴え。否、弾劾。マミは瞳を閉じ、しばらく心を落ち着けてから言う。
「確かに、円環の理は魔法少女達の希望よ」
「なら……!」
「けれど」
けれどね。マミは強い意志を持って宣言する。
「リリィさんの大切なお友達を傷つけるのなら、私は戦うわ。例え貴女達が円環の理の使者であってもね」
マスケットの銃口を織莉子とキリカに向ける。冷静なキリカとは裏腹に、織莉子は震えながら俯く。それはある種の狂気。怒りの真骨頂。
「そう。そうなのね。やっぱりあの女は私達の理想の邪魔をする……宇宙人は皆、皆んなみんなァ!私達の敵よッ!キリカァッ〜!」
織莉子の絶叫と共にキリカが速度低下魔法をかける。刹那、織莉子がいくつもの水晶を展開。それらは三人目掛けて飛んでいく。
直接ぶつかりにいくもの。彼女達を包囲するもの。しかしそれらはマミとなぎさの攻撃によって須く排除される。だがそれで終わらない。気がつけば死角よりキリカがなぎさの首を取らんと迫っていた。
「爪が甘いのです」
咆哮。まさにその言葉が合うほどの絶叫を、なぎさは喉から搾り出した。手にするは異形の手。それは秘儀、獣の咆哮。一度神秘に触れた者であればその身には虫が流れる。ならば狩人でなくとも秘儀は使えるのだろう。
寸前に耳を塞いで踏ん張っていた星の娘はともかくキリカはその衝撃波に耐えられずに吹き飛ばされ鼓膜を破かれる。すかさずマミがキリカを撃とうとするも、類稀なる戦闘センスが彼女に警鐘を鳴らした。
瞬間的にマミは二人を押し倒すように倒れ込み、頭上を走るレーザーを回避する。それは織莉子の援護攻撃。気がつけば近接戦が苦手な織莉子が彼女達に向かって突撃してきていた。
「女神の邪魔をする者達に死をッ!」
目を血走らせ、手にするは溢れんばかりの水晶の塊。自爆。まさかの自爆。これこそ狂信者。さすがのキリカも目を丸くさせる。それほどまでに三人の事が許せないらしい。
「マズい!逃げ」
「いや、もう大丈夫なのです」
そんな危機にもなぎさはけろっとしている。
だって、彼女の目には織莉子の頭上から刃を突き立てようとする私が見えているのだから。
突如として現れた私の落葉が織莉子の鎖骨付近を突き破り串刺しにする。驚愕した織莉子は吐血しながら私の顔を見た。そこには憎悪と驚愕と、何より目的を成し遂げられなかった絶望感が広がっていた。
それでも自爆しようとしているのはいただけないな。そのまま私は落葉を捻り内臓を傷つけ、極め付けに空いた左手で彼女の内臓を掴み取る。やはり少女の内臓こそ最高のリゲインだ。まぁ今の私は傷を負ってはいないがね。
呆気なく事切れた織莉子は水晶を爆発させる事なく変身を解除する。遺志はしっかりと頂いたよ、織莉子。狩人の夢で今度こそ仲良くしようじゃないか。
「織莉、ッ!?」
最愛の人が死ぬ光景を見ていたキリカは、しかし背後の気配のせいで言葉を中断する。振り返ればそこには燃え尽きた灰のような鎧を見に纏う騎士がいるではないか。
「このっ……」
キリカが反射的に鉤爪を振るえば、
「うご、」
織莉子の亡骸を抱き抱えながらキリカの背後へと加速する。そして私の左手は彼女の無防備な背中を貫き遺志を吸い取ってみせた。
「お、まえ」
「安心し給え。君の大切な織莉子の遺志も奪い去った。今度は円環の理に奪われる事なく、君達は愛し合えば良いさ」
「お、りこ」
ガクッとキリカが項垂れ変身が解除される。そうして出来上がるのは二人の死体。円環の理が誇る従順な使者達はあっさりと私達の前に敗北した。いや、縛るものが無くなった分救いなのかもしれないな。
織莉子から落葉を引き抜き、左手に寄りかかるキリカの死体と共に地面に寝かせる。その表情は対照的だ。安らかなキリカと苦悶の織莉子。私に死体を弄ぶ趣味はない。
「遅かったわね、リリィ」
ボロボロのエブちゃんが足を引き摺りながら言う。
「ヒーローは遅れるものだろう?いや、ヒロインか……ふふ、傷だらけの君も美しい」
「あら、そう?なら頑張った甲斐があるわ。やっぱりこの身体じゃ戦うのは無理よ。さ、抱っこしなさいな」
そう言って星の娘は私に抱きつく。私は微笑みながら彼女をお姫様のように抱えると、マミがムッとした表情で迫ってきた。
「ちょっと星野さん!リリィさんの恋人は私なのよ!?リリィさんも何抱っこしちゃってるのよ!」
「うるさいわね。あんたは黄色らしくカレーでも食してなさいな」
「はぁー!?助けてあげたのに何よその口ぶり!」
「はは、落ち着き給えよ二人とも」
「リリィさん!じゃあ私はおんぶ!おんぶして!」
「うぐ、ま、マミ!急に背中に抱きつくんじゃ……」
そんな軽い修羅場を前にして、なぎさはため息を吐く。
「やれやれなのです」
「楽しそうだな。何やってんだか」
お父様、見てないで助けてください。
どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)
-
アニメ本編のみ。あともうちょい
-
叛逆。展開は変えるかもしれません
-
叛逆後も。クオリティ低し(断言)