「じゃあ、何?結局この世界はその、魔女が生み出した偽りの世界だっていうの?」
マミは私の左腕をがっちりと掴みながら困惑し問う。私の代わりになぎさが頷き、その疑問に答えていく。ちなみに右腕はエーブリエタースが掴んで離さない。いくら姿は可憐で華奢な少女でも君はそれなりに大きな上位者なのだ、力の加減はして欲しい。今も右腕が折れそうだ。
「その通りなのです。この見滝原はあの魔女が望んだ優しい世界。夜は既に明け方、朝になれば夢は醒めるのです」
中々に彼女も良い語り部だ。円環の理に導かれてなぎさもまた啓智に触れたか。まるで狩人が如き表現の仕方だね。
マミは明かされた真実に震え、俯く。それはやはり仕方のない事なのだろう。彼女が求めていた優しい世界がそこにはあったのだから。そして夢とは暖かなものだろう?誰も夢が醒めて欲しくないと思うものさ。悪夢以外はね。
「じゃあ……私が、私がリリィさんの事が好きだっていうこの感情も、また偽り……?」
「それは違うさ、マミ」
私は優しくマミの肩に頭を寄せた。ふわりと柔軟剤と少女特有の甘いの匂いが鼻を擽る。
「例え君にその記憶が無くとも、君と私が愛し合っていた事は紛れもない事実。この世界でも、私と君の間に芽生えた百合の花は決して偽りではなかった。だからマミ、嘆いてはいけないよ。君は私を愛し、私もまた君を愛するのだからね」
「リリィさん……」
重なるようにマミの頭が私の頭に触れる。人間性とは正しく愛の事なのだろう。愛が愛を産み、そして人間とは繋いでいく生き物だ。故に尽きる事はない。それを勘違いし、ただ闇のみを見続ければ狂ってしまうだけだ。
隣でムスッと星の娘が妬いているが、後で君も可愛がってあげるから腕の力を弱めて欲しいな。そろそろ輸血しないと腕が取れる。
そして人間性の極みが愛であるという事を、後ろでただ私達を見据えている父も知っている。かつて出会った者達。奴隷騎士の献身。原初の
ああ、人の世とはなんと愛に溢れている事か。
だからほむら、君もまた愛を拒む事なかれ。
だからだろう。愛というものを知る誰かに、彼女は電話をした。数度のコールの後、その人物の凛々しい声がスピーカーから響く。
小百合リリィ。狩人にして魔法少女。そして少女を愛するおかしな百合。しかし今のほむらには、私くらいなのだろう。真相を知り言葉を託せる相手とは。佐倉杏子もまたそうではあるが。ほむらは知っている。あの狩人が、宇宙が再編されたくらいで記憶を全て失う事はないと。
「ねぇ、小百合マリア」
かつて名乗った偽りを、彼女は確かに口にした。
『久しい名だ。確かにそう名乗っていたこともある』
その落ち着きと声色から滲み出る得体の知れない不気味さは確かにほむらが知っている狩人のもの。人の身でありながら人をやめ、そして人に執着した上位者のもの。そしてその声に安堵したのも確か。
「貴女はまどかの事も、魔女の事も、全て覚えているのね」
『君もそうだろう、ほむら?』
「そう……そうね。なら、本来のまどかが何者であるかも貴女は知っているはず」
『その通り。あの聖女は人間性の本質を理解し、その身を宇宙に捧げて人を超えた』
認めたくない自分がいた。そうであるならば、彼女が得た真相とは正しく最愛の友を裏切った事に他ならない。失望、絶望。それは彼女の内に巡るのだろう。まるで悪夢のように。彼女もまた、呪われている。
「貴女ではないのね」
『むしろ私は被害者だね。私がこの世界を構成する理由はない。私が世界を作るのであれば、少女しかいないだろう』
これで確信を得た。だがそれでも認めたくはなくて、彼女は実験をするのだ。
「最後に確認すべきことがあるわ。巻き込んで悪かったわね」
『いいのさ。例え偽りの世界であったとしても……我々は、友達だろう?』
「そうね……そう、なのよね」
この世界が偽りであったとしても。確かにほむらと私の間には友情があった。共に悪夢を駆逐し、その日々を楽しみ、学業に励んだ。ならば良いではないか。それで友達足り得る。
だから友として、私は伝えるのだ。ほむらのために。愛すべき偽りの日常を与えてくれた者のために。
『為すべきことを為すのだ、ほむら。後悔しないために』
「……もう、遅いわ」
ほむらは友との電話を切る。もし本当に友達ならば、最後の最後まで迷惑をかけるかもしれないが。それもまた、友の宿命。私は快く受け入れよう。
走り去るバスの中に自らのソウルジェムを投げ入れる。それは彼女の魂の具現化。それが離れるという事は、死を意味する。
そして、バスは道を行く。離れ分たれ業の玉。されど少女は死する事なく。故に確信はそれ以上の意味を持ち、ほむらは絶望する。絶望し切る。されど形を変える事は能わず。ならば砕くまでと、バスから取り戻した魂の殻を撃ち抜く。
「ああ」
呪いは己の内に巡る。
「私は、いつ」
知らずの内に友を裏切った。
「魔女になってしまったの?」
認められぬ事実に、しかし呪いは証明してみせた。
最早、さやかは一狩人が手出しできる範疇を超えている。無限とも思える数多の戦いで磨かれた剣の腕は剣聖の如く。不意な出来事に対する経験は不死の王と同等。多様な魔力の使い方は、歴戦の魔法少女を超え。
故に円環の理は彼女を重宝した。ただ友であるという理由もあって。円環に潜む少女達はさやかをこう呼ぶのだ。聖剣と。奇しくも彼女が師とした男の名と同じく。しかしその腕は確かに聖剣そのもの。負けを知らぬ強かな聖女。恋に生き、恋のために死した乙女の最上。死した後も友である女神のためにその身を捧げ、少女達を導く英霊と化し。
そんな御伽話のような彼女の生き様は、導かれた少女達に崇拝された。信仰を集め、ある種神に近い存在と化している。
その魔法は既に魔の力ではない。奇跡と呼ぶに相応しく、得た信仰を力に彼女は敵に立ち向かう。
ただ少女達を導くために。少女達を安らかな眠りに誘う為に。それを阻害する邪悪を打ち滅ぼすために。
大きくさやかが剣を振るえば、それは剣以上の大きな刃と化す。それは純粋なものではなく、彼女が戦いの中で得た経験と技が為せる一撃。
十字に振るった刃は月光を構える恭介を容赦なく吹き飛ばす。そしてその一撃とは不死にとって魂を揺るがすほどのもの。
秘伝、不死斬り。彼女達が対峙する敵が放つ瘴気を、さやかもまた持つのだ。その身が呪いであるが故に。その呪いを剣に纏わせる。不完全な模倣であろうとも、それは確かに不死を斬る為のもの。いつか来たる
「上条くん!」
斬り裂かれ地面を転がる恭介を案じ、しかし大振りの一撃の合間にチェーンソーによる突き刺しを仕掛ける仁美。さやかはそれを容易く見切ると刃のない側面を踏み付け無効化する。強引にさやかの足を振り払えば、仁美は未だ立ち上がらない恭介を守るように駆け寄った。
死んではいないようだが、その傷は致命的だ。輸血液を刺してはいるものの、あの不死斬りの効果だろう。生きる活力が削がれている。それは狩人にとって致命的な一撃だったはずだ。
「さやかさん!素直になりなさい!」
仁美が叫べばさやかは剣に着いた血を払い、冷酷な声色で語る。
「素直?私は素直だよ、仁美。私は私の意志であの子の傍で魔法少女を導いてる。そして仁美、あんたはそんな私が残した遺志を……務めを投げ出そうとしてるんだよ」
「そんな務めはありません!私はただ、さやかさんと上条くんを支えたいだけ!貴女は願ったじゃありませんか!自分を見て欲しいと!そして上条くんは今でも貴女を見ている!私ではなく!嫉妬して狂いそうになっても、貴女は私の大切な友達でありライバルなのですわ!投げ出したのは貴女のほうよ!」
その悲痛な叫びに、さやかは少しばかり眉を細めた。
「それでも……私は魔法少女の導きなんだ。今更その役目を投げ出すなんてできない!」
さやかが居合の型で剣を構える。それは飛ぶ刃の構え。距離など今の彼女に関係は無い。今の彼女にあるのは幼馴染みを裏切らないという使命。それのみが彼女を支えている。
「もう、良いんださやか」
コツコツと、革靴がアスファルトを叩く音が響く。そしてその音に乗じるのは男の声。先程まで月光と交信をしていた彼女達の先生。ルドウイーク。
彼は三人の間に入ると、さやかと対峙する。ただ一人の男の腕には、恭介が落とした月光の聖剣が握られていた。その刀身には先程と比べるのも痴がましい程の神秘が宿る。
本来の持ち主に。聖剣のルドウイークとして、彼は弟子の前に立ちはだかった。
「先生……」
「さやか、君が使命に縛られる必要はない。ただ君は、一人の少女として愛する者達と過ごす事を選び給え」
それはかつての師からの否定だった。
「我が師は、かつて私に使命を与えた。ヤーナムに潜む獣を討ち滅ぼし、人々を守るという使命を。今考えてしまえばそれは、きっと私の独り善がりな偽りの使命だったのだろう。ただ狂わないために、月光という体の良い光を求めたに過ぎない。結局、私は最後の最後まで師の求めていたことを理解できなかった。君にはそうなって欲しく無い」
「……まどかを否定するんですか、先生」
「ならば何故私をこの世界に呼び寄せたのだ?君は死に、私という残り滓はそのまま消え去るはずだったのに。君は円環の理として存在を変えた後も、私の遺志を手放す事はしなかった。そしてこの偽りの見滝原で、先生という形でその遺志を再現した。さやか、君は見たのだろう?かつて私が抱いた感情を。狩の果てに、私が何を見出してしまったのかを。唯一君が救われたのは、君が信じるものはかねてより知っていた人だったということだ。上位者になろうとも、鹿目まどかという娘は君の知る子だった」
言い当てられ、さやかは一歩退く。
「だが、君は知っているはずだ。それは君の意志とは違う。君は私から導きを見出し、そしてそれを寄る辺としたが……美樹さやかという少女にそんなものは必要なかった。これは私が、あの悪夢の中で秘するべきだったのだ。本当に寄る辺とすべき者達は、ここにいるじゃないか」
ちらりとルドウイークは背後の二人を覗き見た。その二人は今を生きる若人。例え人ならざる身となったとしても、彼が守るべき対象なのだ。
そして彼からしてみれば、目の前で悩む青い少女もまた。
「そう。そう、だよね。でもね先生、今更無理なんだ。まどかにはもう私しかいない。本当のあの子を知る魔法少女は、もう私しかいないんだ。そしてほむらが来れば、あの子はその寂しさも埋められる。私はあの子を捨てる事なんてできない」
「それはあの子に頼まれたのかね?君が勝手に思っているに過ぎない。ならばさやか、君が背負うのは御門違いだろう」
その言葉を機に、さやかは剣を構える。
「なら、証明してよ。先生が正しいのか、私が正しいのか。狩人に言葉は不要、ただ狩の中に目的を見出すものでしょ?」
「それが君の答えかね?ならば良かろう。生徒を正すのもまた、教師の役目だ」
聖剣のルドウイーク
Ludwig,the holy blade
それは月光に導かれた者達の戦い。ただ信じるもののために。欺瞞の光に目が眩んだ哀れな者達の愚かな戦い。きっと月光はそんなもの望んではいなかったが。それでも人間というものは、衝突し、理解し合う事で進んで行くものだ。
刹那、さやかが動く。一瞬の内に距離を詰めれば、躊躇う事なく舞うように剣を振るった。その剣は、まさに異形。一つの剣で無数の刃を産み出す剣の極み。
秘伝、渦雲渡り。目にも留まらぬ速さで振るわれるその剣は、一見すると摩訶不思議な斬撃に見えるに違いない。それを何度もさやかは振るう。絶対的な殺意を伴い、強く逞しく、しかし心の弱いはずの少女はいつしか聖剣と化していた。
「ぬぅッ!」
ルドウイークはその秘伝を月光の聖剣で受けきる。背後の二人を守るため、本来避けるはずの狩人は防いで見せたのだ。無論その全てを受け止めることなど出来ず、スーツは裂かれ手足に切り傷が生まれる。
だがこれしきの傷で立ち止まる男ではない。彼もまた聖剣、立ち止まる理由などありはしない。
古狩人の例に漏れず、彼も横へ加速し聖剣を振るう。神秘の刃から放たれる光波はさやかへと迸り、しかしそれを剣で受け止めたかと思えば空中へと跳躍し、受け止めた神秘を剣へと纏い、打ち返してくる。
機転が効くという言葉で表して良い次元を超えている。本来雷撃に対してのみ行われる行為を、さやかは平然と月光相手にやってのけた。
だが、それがなんだというのか。
ルドウイークは打ち返された月光を、更に打ち返す。強引に、しかし的確に。まるでテニスのラリーが如く。
その光景にさやかは目を丸くした。羽織っていたマントを盾に月光を受け止めれば、彼女の華奢な身体は飛んで行く。そこをルドウイークは追う。空中で回転し、体勢を立て直すさやかに向けてカチ上げるように剣を振るった。
「かかったッ!」
しかしさやかは獰猛に笑い、カチ上げられる聖剣を空中で弾く。ジャストパリィ。弾かれ隙を晒すルドウイークの身体に、即座に召喚した五本の剣を放つ。
魔法少女としての戦い方も彼女は忘れてはいない。強かに、ずる賢くもあり。故に無敵。
「ゴメイサマ・リリアン!」
五本の剣はルドウイークの身体を容易く貫く。胴体だけは守ったルドウイーク。しかし長身かつガタイの良い彼でさえも、大きな深傷を負った手足は無視できまい。
片膝をつくルドウイークは苦悶の表情を浮かべながらも、心折れぬ。その心に、月光は反応した。殺害しようと迫るさやかを、聖剣から溢れ出る魔力が押し返した。かつて狩人の悪夢にて見せたアサルトアーマー。そしてその後に来るものとは。
「我が師、月光よ……今一度、私に人を正す力を与え給え」
掲げた聖剣に神秘が宿る。同じく月光使いのさやかは脳内に警鐘を鳴らした。加速するように移動し、その攻撃を止めるべく迫る。
「月光の下ならば、私は迷わぬ」
光の糸を、見た。それは暗闇の中に揺らめき、しかし確かに彼の縋る縁だった。それは今、さやかに纏わりついている。彼女を解放せよと、百合の狩人から齎された啓蒙が師の想いを彼に伝えた。
月光の奔流。迸る月光の神秘は、さやかの身体を飲み込んで行く。
「ぬおぉああああああああッ!!!!!!」
「ぐ、ぐぅうううううッ!」
叫ぶルドウイーク。剣を盾に、さやかは耐え忍ぶ。だが奔流は途切れることはない。かつて見えた時よりも一層力強い奔流は、しかしどんどん聖剣から溢れ、そして聖剣の許容量を超えていく。
聖剣が見る見る溶けていく。最早その刀身は見るに耐えない形となり月の魔力だけが募っていく。
「私は、私は……!折れるわけには、いかないッ!」
人間性が爆発する。さやかの身から悍しい呪いが溢れ出て、月光の奔流を掻き消したのだ。それは暴走に近い。だが彼女は、自らの身を顧みずにただ勝つために。自らの信条を通すために、やってのけた。
全力の攻撃を防がれたルドウイークに、最早力は残されていなかった。切れる息と力の入らない身体で、しかし視線だけはさやかを離さない。
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
剣を支えにさやかは立ち上がる。勝敗は決したも同然。両膝をつき、もう戦えぬ師をその瞳で見た。
何かが、足りない。師の手に握られていた、溶けた聖剣が無い。それに気がついたさやかを見て、ルドウイークが不敵に笑った。
瞬間、気配。頭上の月の光が遮られ、思わずさやかは真上を見た。
「さやかぁあああああああッ!」
傷だらけの上条恭介が、空を舞っていた。月光を背に、掲げた柄だけの聖剣はしかし刃を纏っている。物理的な物は何も無い。ただ透き通る刀身は、溢れる月光の神秘を形付けたもの。
しかしその聖剣はより原初の形に近い。かつて
恭介の祈りが、宇宙に響いた。少年の愛こそが月光という上位者━━白竜シースの埋もれていた遺志を掘り起こしたのだ。
恭介はさやかにのしかかり、二人して地面を転がる。しかしその間にも恭介はさやかの身体を決して離さなかった。しかと抱き締め、馬乗りにしその刀身を彼女に突き立てる。
「う、うぐぁあああああッ!」
焼けるような痛みが胸を襲う。決して身体には傷を与えていないが、それでも彼女の呪いは貫いて見せた。
「きょ、すけッ!」
柄を押し返そうとするさやかだが、恭介の背後から仁美が覆い被さる。そして彼の手を握るとより一層その刃をさやかに突き刺した。
「戻ってきて!さやかさんッ!」
「ひ、とみ……!」
少年は、苦しむ少女に突き立てられた刃から手を離すと自らの腹部に手刀を突き刺した。自らへの内臓攻撃。それは多量の出血を引き起こす。
「君を、一人にしないッ!」
叫ぶ恭介の傷口から血が溢れ出る。その夥しい血は聖剣の刀身に混ざり、美しい青白さは瞬く間に赤黒く染まる。
「私に、輸血するつもりッ……!?」
さやかの身体が内側から燃えるように熱くなる。それは血の誓約。かつての私のように、彼の呪われたヤーナムの血は魔法少女であるさやかの身体を変質させていく。
その光景を、ルドウイークは後ろで眺めていた。その瞳に確かな希望を見据えて。やはり彼では、あの少女を救うことはできない。できないが。
あの少年の後押しをする事はできた。孤独に戦っていた英雄は、最後に共に戦う同志を得たのだ。
「さやか、君が好きだ!」
「はぁ!?な、なんで今なのさ!」
恭介の告白に、さやかは動揺した。
「君の健気さも、他人を気遣う優しさも、自分を犠牲に逃げ出そうとする弱さも全部!僕は君が欲しいッ!」
血塗れで、恭介は愛を語った。
「でも君だけじゃダメなんだ!志筑さんも大好きだ!さやかに負い目を感じている所も、実は僕を独占したい欲深さも!」
「ちょ、上条くん!?」
思わぬ言葉攻めに仁美も慌てる。
「僕には何も無い!バイオリンだって親から与えられたものだ、狩人の業だって、あの上位者から与えられたものだ!だから、君達二人がいないとダメなんだよ!僕は、僕は弱いんだ!欲深いんだ!だからさやか、戻って来てよ!こんな、こんな僕を、志筑さんと支えてよ……!罪な奴だって、分かってる。けどさ……!好きなんだからしょうがないじゃないか!」
涙を溢れさせ、恭介は独白した。それは少年の本心。いかに強くなろうとも、狩人に徹しようとも。それだけは譲れぬ弱さ。
彼の人間性。
さやかは目を丸くしたのち、ふっと微笑んでみせた。そして聖剣に突き刺されたまま人魚姫だった少女は二人を腕で優しく抱き寄せた。
「馬鹿だなぁ、二人とも。ほんっと、バカ。ほんとに、しょうがないなぁ……」
三人まとめて涙を流しながら、ついに彼女たちは心を通じ合った。溶け合う人間性が真の理解を齎したのだ。
愛とは、無限なのだ。限りあるものではなかった。故に三人はこれからも進んで行くのだろう。ルドウイークは薄れゆく意識の中で想う。
月光の刀身が消え失せ、柄が風化するように廃れていく。どうやら師も、満足したのだろう。最早彼女達を導く事などない。
それで良いのだ。導きとは所詮、他人の意志の押し付けでしかない。そして老兵とは死なず、去るのみ。故にルドウイークもまた、夢へと還るのだろう。
「ようやく、私は成し得たのだな」
あの狩人の優しい嘘ではなく。真に彼は英雄としての役目を果たした。数多の人々のためではなく。たった三人のために。彼は教会最初の狩人として、教師として彼は消えて行く。
後に残されたのは少年少女三人のみ。教師の姿はどこにもなく、ただ遺志だけがどこかへ飛んで行く。
「な、なんなんだありゃあ……!」
杏子は一人、その偉大で愚かな姿を見つめる。それはまるで泣く幼子。巨大な駆体の癖して後悔の後に泣きじゃくり、腕に枷を嵌めて歩いていく罪人。
それは単なる悪夢ではない。それこそが友が語っていた魔女であるのだと、本能的に理解した。そしてその魔女が誰であるのかも、自らの内に流れる穢れた寄生虫から啓蒙される。あぁ、すべてが遅かった。
唖然とする杏子の横に、誰かがやって来る。それは鹿目まどかの弟、鹿目タツヤ。彼はポケットに手を突っ込みながら飄々とした態度で杏子に並ぶと冷静にその魔女を見上げた。
「ほう、真相に辿り着いたか、ほむらちゃん」
その様子はいつもの熱血感溢れる様ではない。どこか違和感のある少年。
「おい、あれがほむらだって……!?一体どうなってんだ!お前何を知ってる!」
「貴公も気付いてるだろう。あれは呪いのその先、魔法少女の本来の成れの果て。暁美ほむらそのものだ」
淡々と、彼は語った。良く見れば彼の服の所々に血が付着している。
「自ら望んだ事を拒絶し処刑される事を願うか。人とは実に欲深いものだな……無欲な俺にはとんと理解出来ぬが。フン、それも良かろう」
それだけ言うと彼は踵を返し立ち去って行く。
「おい!お前どこに行くんだ!あれが何なのかわかってるのか!」
「叫ぶなよ、あんこちゃん。これより先は俺の出番は無い。キュゥべぇ共はどうにかしてやったんだ、後は我が姉と……狩人共の役割だ」
言い切ると彼は今度こそ立ち去る。まるで興味がないように。そんな事はないが、しかし彼が言うように魔女退治は
彼はただ、デーモンを殺すだけの存在なのだから。次に彼が剣を握るとすればそれは、悪魔が出た時だろう。それまでは彼は傍観する。いつもの鹿目タツヤとして。
どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)
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アニメ本編のみ。あともうちょい
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叛逆。展開は変えるかもしれません
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叛逆後も。クオリティ低し(断言)