魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

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本日二話投稿です


再誕

 

 

 

 

 

 世界が晴れる。最早インキュベーター共の封印は壊され、偽りの宇宙が街を覆う事は無し。そしてその街すらも枯れ果て、残るは荒野の海のみ。それは現実なのだ。

 新たに生まれ落ちたほむらは、ここでようやく巡り合えた。真に待ち望んでいた相手との抱擁を。その笑顔を、感じたのだ。その姿はどんなものよりも貴く。そしてどんなものよりも美しい。

 あぁ、これが円環の理の、真の理想なのだろう。そしてそれは、私の理想でもある。

 

 まどかの腕の中で、ほむらは涙を漏らす。

 

「ごめんなさい……私が、意気地なしだったせいで」

 

 そして気がついたのだ。真に愛する者と巡り合えるためならば、その身にどんな罪と罰が訪れようが構わない。それを背負ってこそ、資格があるのだと。

 私は落葉を鞘に納め、ただただ美しい百合を眺めていた。と、その隣にお父様を含め私の知る面々が訪れる。

 

「君の理想は見れたかい?」

 

 懐かしい魔法少女の姿をした自分に問いかけられれば、頷く。

 

「やはり私は間違っていなかった。そしてまどかも。我らはただ、百合の花を咲かせたいだけなのだ」

 

 満足そうに私は語る。父は鎧の頭を脱ぎ、その光景を最初は黙って見ていた。

 

「……俺の知り合いにも、友との約束を最期まで果たそうとした玉葱頭がいた。人とは、やはり約束と愛に生きるのだな」

 

 玉葱頭とは何だろうか。まぁ良い。それは一先ず置いておこう。

 

「あんたも満足そうだね。こちとらあの白い獣相手に散々暴れて疲れちまったよ」

 

 アイリーンが仮面を外し、ため息まじりに言ってみせた。その美貌を態とらしく歪め、しかし私とまた巡り合えた事を嬉しく思い。そしてもう一人。ゆっくりとした様子で歩いてくる者がいる。

 人形ちゃんは、優しく私を抱擁すると語った。

 

「お帰りなさい、狩人様。お元気そうで」

 

「待たせたね、人形ちゃん。偽りの世界での君の作った料理、美味しかったよ」

 

 創造主を愛する人形は、ただ優しく私を受け入れてくれる。

 

「あら、私も手伝ったのだけれど」

 

「君はどこまでも嫉妬深いね、星の娘よ」

 

 むすっとした様子で愛を欲する星の娘もまた、キュゥべぇと対峙していたのだ。

 

 

 

 

 まどかは本当のほむらと一緒に弓を構える。コネクト、ルミナス、そう言った単語が啓蒙される。そして二人の天使は翼を携え、空に潜む者達に向けて矢を放った。

 遍く矢は尽く結界の名残とインキュベーター達を葬り去る。そして言うのだ、いつものごとく理解ができないと。訳がわからないよ、と。

 

 円環の理は、そうして最後の役割を果たすべく一度帰還する。もう一人の私も含め。その横に、かつての友を携えて。それは羨む光景。けれど、良いのだ。もう私は、狩人なのだから。君は君で、楽しんでくると良い。幸せなのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

「……行っちまったのか?」

 

 

 

 悲しそうに、しかし態度には出さず杏子は呟く。これが物語とするならば、もうエンディングなのだろう。

 

「さやかも、あんたのベベも」

 

 問いかける杏子に、しかしマミは暗い夜空に何かを啓蒙した。そして否定するのだ。暗闇にさす一筋の明かりを瞳にして。さやかよ、私の眷属に命ずる。最期の役目を果たし給え。それこそ君の、魔法少女としての務めなのだから。

 そうして円環の理は、初めて生きた魔法少女達の前に姿を現す。

 

 やはり彼女は美しい。純白のドレスに身を包み、その桃色の髪を靡かせる人間性の闇。しかして魔法少女達の希望である、女神。

 円環の理、鹿目まどかは現れた。かつて私に見せた欲深さも、暗闇もない。ただ愛するもののために見せる慈悲は、神すらも超越してみせる。アンリも手中に落ちる訳だ。

 

「あれが、鹿目まどか」

 

「ええ……いつか私達を導く、円環の理」

 

 使命はとうに思い出された。暁美ほむらを導き、共に愛するという使命は。

 

「そうだった」

 

 故にまどかは謝罪する。

 

「私はほむらちゃんのために……こんな大事な事を忘れてたなんて」

 

 神になっても本質は変わらない。おっちょこちょいな所もまた、彼女の魅力なのだろう。

 そうして女神の後ろから、彼女達もやって来る。円環の理の使者達。美樹さやか、百江なぎさ、そして私とアンリ。二人寄り添う魔法少女の私とアンリは私を一瞥すると、にっこりと笑う。それは祝福なのだ。私も朗らかに笑みを返す。

 

「まぁ……さやかさんったら、立派に……」

 

「さやか……また会えたね」

 

「仁美、恭介……今度からは、ずっと一緒だね」

 

 これからも、三人は愛し合うのだろう。例えどの様な障害があろうとも、彼らの愛はそれを乗り越えて行けるはずだ。それこそ人間なのだから。愛故に、生きて行ける。それは神々にすら理解できぬ事なのだ。

 さやかが走らせる馬車。そしてとうとうまどかはほむらの下へ降り立った。

 

 今度こそ、終わらせるために。最愛の友を救うために。横たわり最期を待つ友に、寄り添う。今はただ、その運命的な瞬間を見届ける。

 

 

「フン……未だ人とは、欲深きものだな」

 

「タツヤ?」

 

 不意に、悪魔殺し(Slayer of the demons)が隣に現れる。不敵な笑みを宿し、何かの訪れを待つように。その膨大な(ソウル)に、お父様が警戒したが私が手で制した。

 

「今いい所なんだ、邪魔はするなよ」

 

「おいおい、分からぬか貴公。まぁそれも良い。ネタバレしては楽しめぬからな……姉貴も随分と面白い女に好かれたものだ……だが、良い。久々に本業に戻れそうだからな」

 

「なに……、これは……?」

 

 何かが啓蒙される。それは先ほどから聞こえていた曲。何なのだ、これは。宇宙は何を予期しているのだ?

 得体の知れぬ不安が襲う。まさか、まだ何かあると言うのか。キュゥべぇ達は最早干渉はできぬ。一体何が不安だと言うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ Something happened on the day he died !(彼が死んだ時、何かが起きた!)

 

 

 まどかはゆっくりとほむらの身体に手を伸ばす。この時こそ、救いを齎す。そしてほむらも、ゆっくりと瞳を開けてその存在を目にした。

 美しい友は、彼女を導こうとしていて。彼女もまた、手を伸ばす。それで良い。それで良いのだ。だから、何もすべきではない。

 

 

 ━━Spirit rose a metre and stepped aside(魂が1メートル起き上がり、その身を引く)

 

 

 さぁ、行こうとまどかが言葉をかける。今度こそ貴女を救うのだと。永遠の愛を誓うのだと。それは百合が咲き乱れる瞬間。

 

 

 ━━Somebody else took his place(誰かが彼の身体へと置き換わり)

 

 

 歌が鳴り止まない。ただほむらは、嬉しそうに、その抱擁を受けるべく頷く。そうね、まどかと、同意するのだ。

 割れたソウルジェムを差し出し、その魂を導くために。円環の理の女神に救われるために。錯乱しかける私に、父が心配そうにして声をかける。だがそれすらも耳に入らない。

 そうしてとうとう、ほむらの手とまどかの手が触れ合う。それは渇望。愛を欲し、その愛のために生きた者の魂。

 だが最後まで、ほむらは何も語らない。それは沈黙。彼女は何かをしようとしている。啓蒙が何かを告げて来る。歌と共に。そして父や恭介達もまた、何かを感じ取った。

 

 

「そうね、まどか」

 

 

 ほむらの人間性が膨れ上がる。それは人が抱くべき量を遥かに超えている。神ですらない、しかし人ですらない。それは一体、何になると言うのか。

 まどかがそれに気がついた時には既に遅かった。そして触れ合う事で、ようやく気がついたのだ。

 

 

「この時を、待ってた」

 

 

 穢れ。人とは、人の魂とは、穢れてこそ燃え盛る。愛に燃え、救いに燃え、約束に燃え。そうして暁美ほむらは生まれ落ちた。

 燃え盛る炎。かつてまどかがほむらの名を現したように、ほむらの人としての人間性は燃え滾り爆発する。その炎は、目に見えずともまどかを包んだ。

 

 

 

「やっと、捕まえた」

 

 

 

 自らのソウルジェムを手放し、まどかの白い腕を掴み上げる。刹那、さやか達が動いた。剣を抜き、不死斬りを発動させるべく構えた。もう一人の私とアンリも、各々の武器を構え突貫していく。

 だが、最早遅い。黒い炎がほむらから吹き荒れれば、彼女とまどかを中心に全てのものを弾き飛ばす。私達も例外無く、その炎の余波に巻き込まれ吹き飛んだ。

 

 

 ━━and bravely cried(勇しく叫ぶのだ)

 

 

「ぐ、これは……!?」

 

 落葉を地面に突き立て耐え忍ぶ。只一人、悪魔殺し(Slayer of the demons)だけが両の手を広げてその光景を歓迎していた。

 

「ハッッハハハハハハハ!!!!!!オーラントよ!見よ!貴様は実に正しく愚かだ!世界とは悲劇ではない!喜劇だぁ!人を超越し、獣を介さず悪魔になるとは!」

 

 まどかは困惑し、問いかける。

 

「ほ、ほむらちゃん!?」

 

 宇宙は女神より、悪魔を選んだ。膨大な遺志と啓蒙がほむらに降り注ぐ。暗い闇の炎はそのまままどかを包むと、先ほどまで力無く倒れていたはずのほむらが立ち上がりまどかを抱いた。

 

「ああ、ようやく、ようやく……!貴女を手に入れられる!」

 

 彼女の熱い接吻がまどかを蹂躙する。そしてその口づけは、正しく呪いだ。

 落ちたソウルジェムに、ドス黒い呪いが溜まる。

 

「っ、あれは、何?欲望?執念?いや、違う……ほむら、あんたッ!」

 

 さやかが叫ぶ。するとほむらは口を離し、力無く項垂れるまどかを抱きながら冷たい表情で彼女を見た。

 

「貴女は理解しているはずよ、美樹さやか。いいえ、違う。貴女には、貴女達には理解できないわ」

 

 魔女は、否悪魔は笑う。

 

「この想いは私だけのもの、まどかのためだけのもの」

 

「ほ、むら、ちゃん……ダメ……私が、裂けちゃう」

 

「いいのよ、まどか。裂けて?」

 

 ほむらが片手でまどかの胸を撫でる。その手つきのなんと嫌らしいことか。すると、何かを掴んだのか引っ張り上げた。

 

 

「まどか。お帰りなさい」

 

 

 それは、鹿目まどか。女神ではない、ただの少女である鹿目まどか。ほむらは女神から、一人の少女を分離させた。引き剥がしたのだ。

 円環の理である女神が力無く天に登っていく。それを無視し、ほむらは少女であるまどかを抱きしめた。

 

 ━━言ったはずよ。もう二度と、貴女を離さないと。

 

 世界は二度変わる。一回目はまどかによって。今度はほむらによって。すべては愛故に。愛とはまったく、それで良いのだと。宇宙は叫ぶ。

 

「ほむら……ほむら!」

 

 崩れて行く世界の中で、私はほむらに叫ぶ。

 

「貴女のおかげよ、狩人。貴女がいなければこうして辿り着くことはなかった。魂と魂の分離……ふふ、実に貴女は、良いお手本ね」

 

 その笑みは、言葉とは裏腹に優しく。愛に溢れている。彼女の笑みを見て、私は納得した。結局彼女は何も変わっていない。ただまどかを愛するだけの、一人の少女なのだと。

 

「それで良い!君は、君の為すべき事を為すのだ!」

 

 百合に呑まれ、しかし本当の愛は忘れず。それで良いのだ、ほむら。君はただ、まどかを愛すれば良い。君こそ、黒き星。

 

 

 ━━ I’m a blackstar!, I’m a blackstar(私は黒い星よ!黒い星なの!)!

どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)

  • アニメ本編のみ。あともうちょい
  • 叛逆。展開は変えるかもしれません
  • 叛逆後も。クオリティ低し(断言)
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