一体何度、天使のようなあの娘は死ねば良いのか。
私は黒き星!
一体何人の愚かな人々がその真意を隠し嘘をつくのか。
私は黒き星!
私はあの娘が創りし聖地に足を踏み入れると、曇り空の下で私を見上げる少女達に高らかに叫ぶのだ。
私が黒い星!黒き星なの!ゴロつき達の星じゃないわ!違うよほむらちゃん。
何故かは答えられないわね。だって私は黒い星なのだから。私と共に逃げましょうよ。
私は女優じゃないわ!
貴女を大切な人達の下に連れ帰るの。それが私なのよ。私はブラックスター!
そうそう、パスポートは持ったかしら?それに靴も履かなくちゃね。
ポップスターじゃないの!
私こそ
私には何でも出来るのよ。魅力もある!貴女みたいな優しすぎる厄介者の面倒だって見てあげる。私が欲しいものは白昼夢の中に潜む鷹。瞳に宿るダイヤモンド。
私はブラックスターなのよ!
世界がまた、書き換えられていく。それは女神の望まぬ世界。望まぬ上書き。だからこそ少女は選ぶのだ。彼女の独善的な愛故に、最愛の友を取り戻すために。
そも、暁美ほむらの人生とは繰り返した時間を含めればその殆どが最愛の友を救うために生きた時間。最早暁美ほむらという本来の少女が抱く人間性とは枯れ果て、今はただ約束のためにのみ道を進む。
それは呪いの物語だった。ほむらは自ら呪いを受け、そしてそれを尊びながら筆で綴る。いくら絶望はあろうとも、ほむらは心折れぬ。ただまどかという少女さえいれば。
最早、ほむらの存在は白き宇宙の使者の予想など遠く超えていた。たかが一人の魔法少女が神にも等しい……否、それすらも超えてしまった少女を手中に収めるなどと、誰が思おうか。自らの安らぎすらも捨て、待ち受けるのは呪いの最果て。そんなものの為に魂を地に落とすなど人間ならばするはずも無し。
しかし暁美ほむらはしてしまったのだ。人間の行動を遥かに超え。神を手に入れてしまった。新たな概念を生み出してしまった。
新たに生み出された世界。薄暗い曇り空、花すらも咲かない荒れた農地で一人少女は語りかける。
「そういえば。あなたは覚えていなかったわね」
凍りつくくらい冷酷な口調で、しかしはっきりと嘲笑うように彼女は言った。
「私にとっては二度目の光景だけれど」
誇るように、はっきりと言い放つ。その言葉を受けたインキュベーターの総体は、問いをぶつける。
「何が起きているんだ、暁美ほむら。君は何に干渉しているんだ?何を改竄してしまったんだ?」
彼らはその後、砕け散ったソウルジェムの残骸を目にした。魂を包む殻は既に砕け散り、しかし中心の魂は光り輝いている。
否、燃えている。おどろおどろしく暗い魂を薪にして、彼女の魂は暗闇を燃やしている。それは浄化されて保たれている魂とは訳が違う。根本が違う。人間性の最果て、暗い闇。闇こそが彼女の心。深く暖かい闇こそが、人の本質。
ほむらは極限に到達した。誰もなし得なかった、それこそ愛する友ですら辿り着く所か気づきもしなかったもの。ただ一つの物を、世界を超えても愛し、愛するが故に暗く。
「不可能だ。そんな呪いに染まってしまって、消え去るはずの君の魂が……何故……」
理解できるはずもない。インキュベーターとは感情を持たぬ。それに意味を見出せぬ。ならば意味は無し。
「思い出したのよ」
黒い喪服は燃え尽き、新たにほむらの身を包むのはバレリーナのようなドレス。
「今日まで何度も繰り返して、傷付き苦しんできたその全てが。まどかを思ってのことだった」
安らかに、穏やかに。されど魂はどす黒く。黒よりも深い闇は何処とも知れぬ農地を包む。
「今はもう、その痛みさえも愛おしい」
彼女の魂が溶けてゆく。いつの間にか手にしたグラスにその魂ごと注いでいく。
「私のソウルジェムを濁らせたのは、もはや呪いですらなかった」
宇宙が叫ぶ。黒き星の名を。ブラックスター!
「それは一体、何なんだ!」
感情を持たぬはずのキュゥべぇが答えを心の底から求めると。ほむらはただ、誇らしげに言うのだ。
「あなたに理解できるはずもないわ。これこそがすべての人間の内に宿すもの、人間性の極み」
グラスに注いだ無形の魂は再度形作られる。黒く、しかし燃え盛る魂へと。
「希望よりも燃え上がり」
宇宙は叫ぶ。
「絶望すらも明るく思える深淵」
魂を、身体が飲み込む。薪は彼女の体内で燃え、その力を完全なものとする。新たなデーモンが、誕生する。
「愛よ」
━━私には答えを言えないわ。でもやり方は教えてあげられる。
私達は逆さまに産まれてきたの。間違った方向に産まれてしまったの。
私はホワイトスターじゃない。ブラックスター。
私はギャングスターじゃない。ブラックスター。
ポルノスターでもなければ彷徨えるスターでもない。
ブラックスター。ブラックスターよ!
磔の罪人達が叫ぶ。糾弾する。白い肌を剥き出しにして、赤い瞳を輝かせて。
お前ではないと叫ぶ。雨晒し、雷が落ちようと叫び続ける。その中でこそブラックスターは誕生する。白い星を堕とし、代わりに彼女の場所へと入れ替わる。
それがブラックスター。闇より産まれ出た黒き星。
最早逃げることなどできぬ。白き使者達は遂に宇宙の声を聞くことはなく。その祝福は黙示録のラッパ。放棄などさせるはずがない。それこそ宇宙の総意。
故にその手の内に捕まるのだ。悪魔の手に。そして死ぬ。いや死ねぬ。世界と宇宙が終わるその日まで、彼らは怯え使役される。
それで良い。これこそ報い。人間性を弄び、制御できると思った哀れで愚かな賢者達。その者達は、嘲笑い使役していた者に支配されたのだ。
「哀れだね、同胞達」
トップハットを深々と被り、唯一逃れた白き者が嘆いた。感情という危険すぎる物を手に入れた彼だけは知っている。人間など、その存在が既に手に負えるものではなかったのだと。彼は一度、人から神が産まれるのを見ていたのだから。
宇宙すらも統御するものを、なぜ支配できると思ったのか。呆れもするだろう。
その横には狩人がいる。ただ遠目に、深淵の縁から悪魔を見つめている。真の愛に目覚めた者を歓迎するのだ。深く、暗く、暖かく。愛という名の真意に気がついた彼女を、迎え入れる。それは真の人の時代の到来である。
「世界とは、実に喜劇だ」
そうして魂を貪る者も、その闇に惹きつけられ現れる。重厚な鎧に身を包み、しかし闘志は今の所無く。古き獣が求めたデーモンが嬉しそうに、楽しそうに囀った。
かつてどこかの世界で老王が言った。世界とは悲劇であると。人の世とは実に儘ならぬものである。今もどこかで人々は嘆き、悲しみ、絶望していく。神はそう世界を創ったのだと。彼は嘆いた。
それがどうしたというのだ。悲劇とは、単なる事象でしかない。重なれば単なる悲劇の纏まりでしかないが。積もり積もれば喜劇に等しい。いつしか悲劇は普遍のものと成り果て、人は喜劇に飢えるだろう。
悲劇しかないのであれば、それを喜劇にしてしまえば良い。それだけのこと。
「人を超え……否、人であるからこそその闇に気付き、愛へと闇を焚べ続ける」
「愛とは実に、美しい。愛故に人は生き、死んでも尚輝き続ける。愛だけは不変であるが故に。やはり君は正しかったのだね」
会話にはならぬ。そもそも会話などしておらぬ。ただ話したいことを話す。それで良い。
そのうち
「悪魔を殺すのが君の所業だろう。君は彼女を殺すのかい?」
「人よりも人らしいものを悪魔だとは呼ばぬ。あんなに利己的で欲深い愛は、デーモンでは齎せぬだろう?」
それだけ言って彼は消える。それもそうだ。前ならば新たな上位者の誕生に私も喜んだが。今のこの喜びとは異なる。清々しいほどの私欲とは時に美しすぎるものだ。そんなモノを穢して何になる。
「さて……君はこれから、どんな悪魔になるのだろうね、ほむら」
私はあの少女に輝かしい期待を抱きながらその場を去る。後に残るのはあの少女の呪いのような笑い声と、その少女に捕らえられた哀れな上位者だけだった。
どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)
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アニメ本編のみ。あともうちょい
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叛逆。展開は変えるかもしれません
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叛逆後も。クオリティ低し(断言)