※デュエルの書き方を模索中です。効果の説明など探り探りやっています。
《ライジング・オブ・ファイア》を装備して、ヒートライオが高らかに吼える。
……しかし、相手のライフは減らせていない。
「わたしのターン。このドローフェイズ、わたしはスキル〈トリプルドロー〉を発動」
「トリプルドロー?」
『通常のドローを一枚から三枚に変えるものか。〈ハノイの騎士〉が使っていた〈ダブルドロー 〉の上位互換的スキルだな』
「なんだよそのインチキスキルは……!」
『データベース上、三年前にSOLのAIデュエリストによる使用が確認されている。おそらく使用者を限定して付与されるスキルだろう』
「その通り。このドローフェイズ、わたしは三枚ドロー」
・《黒魔術のヴェール》
・《簡易融合》
・《連弾の魔術師》
「わたしは手札より《連弾の魔術師》を通常召喚」
《連弾の魔術師》(闇)
☆4【魔法使い族・効果】ATK 1600/DEF 1200
「またかよ……!」
「魔法カード《黒魔術のヴェール》発動。ライフ1000と引き換えに、墓地より蘇生せよ《連弾の魔術師》!」
ビショップ LP4000→3000
『《黒魔術のヴェール》は通常魔法……! 《連弾の魔術師の》効果が発動する!』
フィールドに《連弾の魔術師》が二体、効果ダメージは一体につき400だ。このままでは通常魔法発動のたびに800ずつ効果ダメージを食らうことになる。
Soulburner LP2300→1900
「手札より通常魔法《簡易融合》発動。ライフ1000と引き換えに、融合召喚——《サウザンド・アイズ・サクリファイス》!」
ビショップ LP3000→2000
《サウザンド・アイズ・サクリファイス》(闇)
☆1【融合・魔法使い族・効果】ATK 0/DEF 0
『また《連弾の魔術師》の効果が発動する! Soulburner!』
「くそ……とっとと除去んねーと、」
Soulburner LP1900→1100
「そして《サウザンド・アイズ・サクリファイス》は1ターンに一度、相手フィールドのモンスター一体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。わたしは《
『実質上のコントロール奪取というわけか……!』
「現れよ、未来を導くサーキット! 召喚条件は、効果モンスター二体以上。わたしは《転生炎獣ヒートライオ》を装備した《サウザンド・アイズ・サクリファイス》、そして二体の《連弾の魔術師》をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」
「これは……っ」
見覚えのある光明が、魔法陣を描きだす。
ざわりと胸騒ぎがして、次の瞬間に予感は悪いほうに的中する。
「現れよ、LINK-3《デコード・トーカー》!」
《デコード・トーカー》(闇)
【サイバース族・効果】ATK 2300
「デコードトーカー!? どうしてHDRのやつがPlaymakerのカードを、……ッ」
奇妙な違和感を覚えて、言葉が途切れる。ぐっと眉間のしわが深くなる。頭痛に似て非なる、まるで聴覚を無理やり拡張されたような感覚だった。右手を見下ろす。指先を動かしてみるが、触覚は鈍麻したのか鋭敏になったのか、自分ではよくわからない。
右手に何かが絡みつくような感触の正体を見定めようと、手のひらを見つめる。
「きみはまだ真実を知らない」
「 んだよ、真実って……」
「存在するということは、複製できるということ。イグニスの被造物は被験者のものだと勘違いされては困る」
『少なくとも【転生炎獣】はわたしのオリジンのためのデッキだ。そちらこそ勘違いしてもらっては困る!』
「《デコード・トーカー》! Soulburnerに直接攻撃!」
『Soulburner!!』
「あ? ……ッ《転生炎獣パロー》!! こいつは相手の攻撃宣言時に手札から攻撃表示で特殊召喚できる!」
《転生炎獣パロー》(炎)
☆5【サイバース族・効果】ATK 2000/DEF 1000
「しかし《デコード・トーカー》の攻撃力は2300。その翼では防ぎきれませんよ!」
「ッ知ってるっつーの……! 俺は墓地のベイルリンクスを除外、パローの破壊は無効だ!」
Soulburner LP1100→800
『Soulburner……!!』
ライフの減少に、思わずがくりと膝をつく。
「……これでいい。大丈夫だ」
「そうでしょうとも。わたしはこれにてターンエンド」
どこか愉悦を含ませた宣言を聞き届けてから、ふうと肺腑から息を吐き出す。
残りライフ800。これでいい、相手の攻撃力を下げることも可能な局面ではあったが、この痛みが思い出させてくれるものもある。
「……俺が戦いに首突っ込む理由は、いつも誰かのためだったんだ。自分が憎むべき相手をわかってなかった。だから毎度毎度リボルバーのいけすかない挑発に乗せられて、あいつが差し出してくる的に八つ当たりをしてた」
吐き捨てるように笑う。まるで道化だろう。何かにつけて加害者ヅラして煽ってくるリボルバーに、踊らされてばかりいた。
イグニスを全滅させて自首する気でいた無理心中集団〈ハノイの騎士〉は、穂村尊にとって本当の敵ではなかったのだ。
〈ハノイプロジェクト〉に直接関わっていたあの連中は、十三年前から内部告発が可能なところにいる。SOLテクノロジー社内部でも不祥事として伏せられていたようだから、当然、何らかの監視があっただろう。国家規模の隠蔽をかいくぐるために各分野の科学者たちがハッカー集団になった経緯は、遊作や草薙を見ていれば容易に想像がついた。
どうしてあんな目に遭わされなければならなかったのかと不条理を恨んできた。
加害者が誰なのかも知らなかった。
不霊夢に会わなければ、Playmakerの活躍を知らなければ、何も知ることはできなかっただろう。
だが加害者の正体も知らずに過ごした十年間は、Soulburnerにとってもはや過去である。
〈ロスト事件〉の被害者に適応されていたSランク保護プログラムが守っていたのは被害者ではなく、SOLテクノロジー社の名誉。ならば司法に委ねたって無駄だ、事件は公にならず忘れられていくだけだ——そんな考えがあったのも、もはや過去のこと。
どうせ踏み消されるなら監視者を続けていたほうが償いになるだろうと、二年前のSoulburnerはリボルバーの自首を止めた。
あのタイミングでリボルバーが罪を告白したとしても、誰も報われなかったに違いない。草薙兄弟の再会を引き裂き、穂村尊はまた白い目で見られる日々に逆戻りだ。
LINK VRAINSの英雄だったPlaymakerまでもが
リボルバーだってどうせ事件当時は未成年だったとかでまともに裁かれず、大人たちの道具にされただろう。(ハノイの持つオーバーテクノロジーの価値くらい、ネットに疎くたって察せる)
それすらも罰として受け入れてしまいそうな野郎だから、自首を止めたことに後悔はない。
「俺の敵は最初ッから、俺たちのことなんか道具としか思ってない大人だったんだ」
あたかも利益を生み出す素材のように扱われてきた。イグニスも、そのパートナーもだ。使うだけ使って使い潰していらなくなったら振り返りもしない不特定多数の大人たちにつけ狙われ、疲弊してきた。
人間社会が今日も明日も平和であるようにという祈りは、決して責められるものではないはずだ。娯楽も、利便性も、必要な豊かさだろう。
だが踏み台にされた命は、意思は、どこへ行く? 人生をめちゃくちゃにしておいて、それがあたかも、享楽であるかのような。
幼い子供を生贄にして、作り出したイグニスは道具にして、犠牲の上の暴利を貪ってきた大人たちこそがSoulburnerが乗り越えるべき壁だった。
そうだ、たとえば、今は財前晃によって立て直された〈SOLテクノロジー社〉の元幹部——目の前にいる白のビショップのような。
「だから、感謝するぜ。俺の人生を狂わせようとするやつを俺自身がブチのめせる……!」
湧き上がってくる闘志がかたちづくったのは、笑みだ。
Soulburnerは好戦的に笑う。
「俺のターン、ドロー!」
デッキからカードを一枚引き抜いた指先に、また先ほどの感触がある。
右腕にまとわりつく不思議な感覚を、Soulburnerは知っていた。覚えている。だが、あのときのような邪悪さは感じられない。カードの精霊に袖を引かれているような、どこかあたたかい感触だった。
初めて不霊夢に会ったときと、似ている。
「おまえ、ウィンディ……だよな?」
『きみにもわかるのか、Soulburner……!』
「いや……」
なんとなく、感じられるだけだ。不霊夢には見えているのかもしれないが、ウィンディの姿は見えないし、声も聞こえない。
Soulburnerの第六感の向こう側を見通して、不霊夢はああ、と祈りの声を漏らした。
今まさに、Soulburnerの右腕をウィンディがつかんでふわり、ふわりと引っ張っている。こっちだこっちだと呼ぶように、不霊夢にも手を振る。
あっちをあっちを見てくれと、眼下に広がるDen Cityの街並みを指差す。
ふとSoulburnerが視線を下げると、ガラスのフロアのはるか地上にSOLの本社ビルが見える。この春に遊作が電脳世界から持ち帰ったという〈炎の
そういえば、
「気でも触れたか……?」
ビショップが胡乱げに顔をしかめるが苦言には目もくれず、Soulburnerは水面をのぞき込むように両膝をついた。
「Ai、おまえもそこにいるのか? ウィンディ、AiはPlaymakerと一緒じゃないのか!?」
答えは聞こえない。
だがデータストームが徐々に大きくなっているのがわかる。神妙な顔つきで押し黙っている不霊夢に、Soulburnerはひとつうなずいてみせた。
『……スキルを使うのか』
「他のイグニスのスキルを使われるのは嫌か?」
『実を言うと……まあ、そうとも言える』と不霊夢は煮え切らない様子だったが、見守るように淡く笑んだ。『わたしがサポートしよう』
その一言が合図になった。吹き荒れる。風が猛然と逆巻くデータの嵐が、大きくなる。そして天まで届く柱のように、竜巻が沸き起こった。
Dボードの上に立ち上がり、手を伸ばす。そこへ不霊夢の小さな手が重なる。きっとウィンディの手も、同じように重ねられている。
ここにいないはずのAiの手が、見えたような気がした。
滝壺に突き落とされるような衝撃に歯を食いしばる。
『風を取り戻せ、Soulburner!!』と不霊夢が檄を飛ばす。
「ラ イフポイントが1000以下のとき、データストームからサイバース族リンクモンスターを一体、ランダムにエクストラデッキに加える……——!」
膨大な竜巻の渦の中心できりもみのようになりながら、それでも何かをつかみとろうと手を伸ばす。逆風、暴風。
Playmakerは何度も何度もこんな激しい嵐にみずから飛び込み、勝機をつかみとってきたのだ。
憧れの英雄が、等身大の友人が耐えて耐えて、未来をつかんだ激流。
「〈
手が届く。指先が、このカードをとらえなければと反射的に力を込めた。データストームの渦中から、一枚のカードをつかみとる。
手の中には青く輝くモンスターカードが、新しい出会いを祝福するようにきらめいた。
ああ、託されたのだと胸の奥に熱いなにかが沸き起こる。
このカードのあるべき姿をSoulburnerの本能が知っていた。
「俺は手札の《転生炎獣ガゼル》を召喚! ガゼルの効果でデッキから《転生炎獣Jジャガー》を墓地へ送る! ガゼルをリンクマーカーにセット! LINK-1《転生炎獣ベイルリンクス》!」
《転生炎獣ベイルリンクス》(炎)
【サイバース族・効果】ATK 500
「墓地のJジャガーの効果発動、墓地のヒートライオをデッキに戻し、自身をベイルリンクスのリンク先に特殊召喚する!」
《転生炎獣Jジャガー》(炎)
☆4【サイバース族・効果】ATK 1800/DEF 1200
「さらに手札から《フュージョン・オブ・ファイア》発動! 自分の手札および自分・相手フィールドから『転生炎獣』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター一体をエクストラデッキから融合召喚する! 俺は《転生炎獣Jジャガー》と、相手フィールド上の《デコードトーカー》を墓地へ送る!」
融合による実質上のコントロール奪取。こちらにも手はある。
「ひとつの狂おしき魂のもと、凶悪なる獣たちの武器を集めし肉体を誇る魔獣よ! 来い、《転生炎獣ヴァイオレットキマイラ》!!」
《転生炎獣ヴァイオレットキマイラ》(炎)
☆8【サイバース族・効果】ATK 2800/DEF 2000
「さらに手札から《死者蘇生》! 相手の墓地から《デコード・トーカー》を特殊召喚! 現れろ、未来を変えるサーキット! 召喚条件は属性が異なるサイバース族モンスター二体以上! 俺はヴァイオレットキマイラ、デコード・トーカー、ベイルリンクスをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」
ほとばしる炎が魔法陣を焼き尽くし、そして新たに生まれ変わる。リンクマーカーが召喚条件を満たして、太陽のように輝いた。
「力を借りるぜ……! 現れろ、LINK-3《デコード・トーカー・ヒートソウル》!!」
《デコード・トーカー・ヒートソウル》(炎)
【サイバース族・効果モンスター】ATK/2300
「俺はフィールドのパローをリリースしてライフを2000回復! そしてヒートソウルの効果発動、ライフを1000支払い、デッキから一枚ドロー!」
Soulburner LP800→2800→1800
指先が引き当てたカードに、はっと目をみはった。
ああ、そこにいるのか。一番はじめに伏せたカードが、運命の瞬間が訪れるのを待っていたようだった。
「自分のライフが2000以下の場合、フィールドのヒートソウルを除外し、エクストラデッキかリンク3以下のサイバース族モンスター一体を特殊召喚する! 来い、《転生炎獣ヒートライオ》!!」
《転生炎獣ヒートライオ》(炎)
【サイバース族・効果】ATK 2300
「さらにリバースカードオープン! 《転生炎獣の降臨》を発動!!」
『レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、手札から【転生炎獣】儀式モンスター一体を儀式召喚する!』
「自分フィールド上に炎属性リンクモンスターが存在することにより、俺は墓地のパローとJジャガーをデッキに戻し、儀式召喚!!」
円陣が燃える。契約の炎が八つ断続的に点灯し、そして刃のごとく気高き獣を呼ぶのだ。
「降臨せよ! レベル8——炎を纏いし翠玉の翼! 《転生炎獣エメラルド・イーグル》!」
《転生炎獣エメラルド・イーグル》(炎)
☆8【儀式・効果】ATK 2800/DEF 2000
《転生炎獣エメラルド・イーグル》、攻撃力2800。既に召喚された《転生炎獣ヒートライオ》の攻撃力は2300。残りライフ2000の相手を目の前にしているとは思えないオーバーキルの布陣に、Soulburnerは双眸をわずかに眇める。
「別に計算ができないわけじゃないんだけどさ」と言い訳じみて独り言ちた。
面倒なことをしてしまったなと後ろ頭をかいても、歎息は魔獣の舌舐めずりに似ている。
「腹減ってるときって、ついつい作りすぎちまうんだよなぁ」
陶然と笑みを形作るくちびるは凶暴な肉食動物のそれだ。ゆらりと右腕が持ち上がり、とどめを刺せと命じる号令が静かに宣告される。
猛然と吹き荒れた業火がすべてを灰燼に帰し——収束。
灰は季節外れの雪のようにはらはらと降る。決着とともに鳴り渡ったのは、十三年ほど昔に聞いたような聞かなかったような、無機質なファンファーレだった。
ビショップの姿は消えている。目の前にはただYou Winという他人事じみた文字列が横たわるのみだ。
そして、まるですべてリセットされたかのような新しい盤面へと切り替わる。
「へえ」とSoulburnerは炎色の双眸を眇めた。
何度でも戦えというのだろう。あの白い部屋に閉じ込めた子供のように、何度でも、何度でも、生きるための糧を求めて戦えと。
勝てば食事が得られる。負ければ電撃を食らう。諦めれば、何もない。負けることは何もしないことと同じなのだと、だから勝つまで戦い続けろと、幼いこころに刻みつけた十三年前の拷問部屋。
事件から解放されたはずの穂村尊を長らく苦しめてきたのは、あの部屋で植えつけられた恐怖ではなく、あの環境で否が応でも学んでしまった勝利至上の価値観だ。勝者はすべてを手に入れ、敗者はすべて奪われる。デュエルなどもうやらないと誓ったのは、カードを暴力としてしか操れなくなってしまった自分自身への絶望だった。
勝ってもいないのに食う飯はみじめだった。時間通りに与えられる学校の給食が、家畜の餌に見えた。一方で、周囲に馴染めないのに何もしないのかと、奥底から自分自身を責める声が湧き上がる。
両親を失ったのに復讐もできないのか? 何もしないのは負け犬以下ではないか——行動を起こせない無力さが自縄自縛で首を絞め、食らってもいない電撃に四肢五体を引き裂かれるようだった。
『Soulburner——』
「大丈夫だ。俺はもう力の使い方を間違えたりはしない」
『……だからきみは理性的すぎると言っているのだ』
「そこは素直に褒めろよ……いや、いい」
くしゃりと破顔した男の顔に、もはや少年の日のような影はない。
勝っても負けても続くものに、逐一絶望などしない。
「次は俺の先攻で行かせてもらうぜ」
他者を思いやるこころを忘れた大人は、未来のほうへはこないでくれ。
【次回予告】
イヴの棺に囚われたSoulburnerがビショップを相手取りデュエルを行なっていたそのころ、Café Nagiにもまた、とあるメッセージが届けられていた。
ごめんね、兄さん——
あのころのことは何も覚えていない。目を覚ましたときにはすべてが終わっていた。当事者であるはずなのに「僕だけが当事者じゃない」という気持ちがまとわりついて離れなかった。
嘘つきな光の子は、底知れない笑みを浮かべる。
さあ、処刑の時間だ。
次回『久遠の慟哭より』——来週(3/4)夕方6時25分投稿予定。
Into the VRAINS!!
※次回『久遠の竜騎士(前編&後編)』は草薙家のターンです。もっと筆力があったなら、ビショップは財前お兄様とぶつけたかった…。