聖剣伝説3逆行   作:畑中

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3話:フェアリーの宿主とは

 

 

「全くよぉ!冗談じゃねぇぜ、オヤジ!武器屋が武器売ってねえなんて、シャレにもならねえや!」

 

 と、デュランは武器屋の店主に怒りをぶつけた。店主は「仕方ないだろ、こっちだって商売あがったりだよ……」と店仕舞いの準備をしつつ肩を落とす。武器も防具も、獣人に全て奪い去られたのだと言う。

 デュランとて、怒りをぶつける相手が違うのは分かっているのだ。だが、ジャドを占領した獣人たちは数も多く、たったひとりで立ち向かうほど無謀にはなれなかった。

 どうしたものか、と大きく舌打ちした時、カランカランと店のドアベルが客の来訪を知らせた。

 

 目を向けると、自分と同じ年か少し上くらいの若い男がふたり、ドアをくぐるところだった。旅人然としていて、ジャドの住人ではないように見える。デュランと同じように、この城塞都市にタイミング悪く閉じ込められてしまったに違いない。

 背が高く派手な顔立ちに、デュランほどではないが鍛えられた体躯。目を引くふたりだ。

 片方の、より派手な顔をした紫の髪の男が白い歯をにかっと出して、デュランに胡散臭い笑みを向けた。

 

「やぁ、そこのお兄さん、ウェンデルに向かってるクチだろ。ジャドから出られなくて困ってる?」

「お前らもだろ。ったく、獣人どもの野郎、腹が立つぜ!こうなったら見張りをぶちのめして無理矢理にでも……」

「ま、ま、こらえてこらえて。強行突破より多少はマシなアイディアがあるんだが、聞くかい?」

「何だって?出る方法知ってんのか?」

「まぁね~。……だが別件で、人手を探しててね……ところであんた、強そうだね?」

 

 と、紫の髪の男は試すような笑みを浮かべる。

 

「……ふん。交換条件ってわけか。いいぜ、話しな」

 

 と、デュランが腕を組んで話を聞く姿勢をみせると、「ひゅう、即断!かっこいい〜」と男は口笛を吹いた。しかし張り付けた笑顔をすぐに引っ込めて、「ここを占拠してる獣人たちが、ウェンデルに侵攻しようとしてるのは知ってるよな?」と、真剣な表情をデュランに向ける。

 

「ウェンデルへの道中に、アストリアという小さな村がある。この村には、古い言い伝えがあって……要約するが、『獣によって村は滅ぶ』というものだ。これは、予言なんだ。何もしなければ、現実になってしまう。獣人たちがアストリアに攻め込む前に、村人全員を避難させたい」

 

 と、男は深刻な様子でそう言った。先ほどの軽薄な口調が嘘のようだ。

 つまり交換条件として提示されたのは、人助けに手を貸してくれ、と、そういうことだ。真意がわからず、デュランは不審の目を向ける。

 

「……そんなカタ田舎の伝説に随分詳しいじゃねえか。だが、その肌、服装。お前らがこの辺の人間には見えねえな。知り合いでもいるのか?」

 

 この二人組が何者なのかは見当がつかないが、日に焼けた肌からは砂漠の気配がする。駆け引きが苦手なりにデュランはふたりの目的が何なのか、探ろうとした。しかし男はきょとんと金の目を丸くさせて、扇のように長い睫毛をしばたたく。

 

「キミは、見ず知らずのヒトだったら助けないのか?」

 

 だとしたら期待外れだ、とばかりに、男はデュランを見る目を零度まで冷えさせた。冷たい軽蔑を向けられて、デュランはぞわっとした。金髪の方の男は面白がって笑みを殺していて、それにもむかっ腹が立った。

 

「勘違いするな。てめえらが怪しさ満天だから警戒しただけだ。ガチで人助けしたいってだけなら、無条件で手を貸すぜ」

 

 ムカつきはしたが、男の冷たい目は寧ろ信用するための材料になった。演技ではなかなか出せない冷たさだった。

 元々、難しいことを考えるのは向いていないタチである。ジャドから出ることが優先事項であるし、ひとまずは信用することにして、「俺はフォルセナのデュランだ。よろしく頼む」とデュランは手を差し出した。紫髪の優男は嬉しそうににっこり笑って、デュランの剣ダコだらけの武骨な手を握り返した。

 

「俺はナバールのホークアイ。こっちはイーグル。よろしくな、デュランくん!」

「……ん?ナバールって、確か」

「……おい、ホーク」

「あ」

 

 

 

 

 ホークアイとイーグルと名乗る男たちが言い訳するには、今はもう自分たちはナバール盗賊団から追放されてる身だとか、魔族に占領されてしまって略奪も侵略もナバールの本意ではないだとかなんとか。眉唾ではあるが一旦は納得し、彼らに連れられてデュランたちは城塞のすぐ横にある道具屋に入った。

 店のすぐ外では獣人たちがうろついていて物々しく、客など入る訳もなく広い店内は閑散としている。買いだし目的かと思ったが、ホークアイは店内をきょろきょろと見まわし、隅っこの物陰に身を潜めている怪しい男に声をかけた。

 

「なぁキミ、獣人だろ?」

 

 声を掛けられた男はわかりやすく身を竦ませて、ゆっくりと振り返った。鍛え上げられた完璧な肉体とは裏腹に、怯えるその顔は幼い。少年は怯えた様子でデュランとイーグルにも視線を走らせる。

 デュランの目には、少年がふっと消えたように見えた。見えたのは、足元を過ぎ去る影だけだ。

 

「……っ!」

「おっとと、ごめんよ。いや、騒ぎを起こすつもりは全くないんだ。キミが獣人だってことは、外の連中に知らせもしないサ」

 

 と、気付けばホークアイが少年の手首を掴み、少年が逃げようとしているのを止めていた。身構えていなかったデュランは咄嗟に反応できなかったが、少年が身を屈めて床を蹴り、デュランとイーグルの間をすり抜けようとしていたのだ。少年の瞬発力もさることながら、恐るべきは、それを止めたこの男か。

 獣人の少年は逃げられないことを察して、「ウゥ……」と獣のようなうめき声を上げた。少年は地面に膝をついて、ホークアイに嘆願する。

 

「お、オイラ、今、他の獣人にみつかるわけ、いかない……お願い、見逃して!」

「勿論サ。キミを話の分かる男と見込んで、お願いをしに来たのはこっちだよ。実は──……」

 

 と、ホークアイは手を放し、デュランに語った話を少年にも同様に説明した。

 難しい顔をして沈黙する少年に、イーグルが厳しい声で言う。

 

「何もしなければ、無辜の民が大勢殺される。お前の同胞の手によってだ。お前だって、同胞の手を、血で汚したくはないだろう。人手が必要なんだ。どうか、手を貸して欲しい」

 

 イーグルの言葉には随分と情感が込もっているように聞こえた。先ほど港で囁かれていた噂話、話半分に聞いていたが、ナバール盗賊団がローラントに侵略したという話はどうも真実のようである。

 少年は日焼けした黒い肌を青ざめさせて、イーグルの言葉を聞いていた。おそるおそる、といったふうにホークアイたちを上目づかいで見上げる。

 

「……オイラ、ケヴィン。オイラ、なにしたらいい……?」

 

 

 

 

 聞けば、ケヴィンと名乗った少年は獣人と人間のハーフであり、父親はビーストキングダムを率いる獣人王なのだそうだ。父親の謀略によって無理矢理に野性を引き出されたケヴィンは、唯一の友達であったカールというウルフを、自らの手で殺してしまったのだという。カールを生き返らせる方法を光の司祭なら知っているかもしれないと教えられ、彼もまたウェンデルに向かっている。

 ケヴィンの身の上話を聞いたホークアイは暗い顔をして、「そうだったのか……」とケヴィンに同情した。

 

「友達を殺さなきゃならないなんて、そりゃあ、つらかっただろう……でも、一度失った命は、例え、マナの女神さまだって──……いや、なんでもない。俺たちもアストリアの件が片付いたらウェンデルに向かうから、一緒に行こう。よろしくな、ケヴィン」

 

 と、ホークアイは幼い子供を相手にするような優しさで、ケヴィンの頭を撫でた。身長こそ高くはないものの横幅も厚みも常人よりはるかに勝るケヴィンは、そんな扱いを受けたのは初めてだとばかりにぎょっと全身を強張らせた。ケヴィンはむず痒そうに「う、うん」と身じろぎして、ホークアイの手から逃れる。

 

「お、おまえたちは、なんでウェンデルへ……?」

「俺たちは、すっごく頼りになる友達を迎えに。ついでに司祭様にイロイロご報告って感じかな。デュラン、キミは?」

 

 と、ホークアイがデュランに水を向ける。上手く誤魔化されたような気はしたが、興味は沸けど話したくないのなら無理に聞きだす趣味はない。

 

「俺がウェンデルに向かうのは、光の司祭にクラスチェンジについて聞くためだ。どうしても、倒したい男がいる」

 

 と、デュランは言葉少なに語った。元々、長々と自分語りをするのは性にあわない。ホークアイは「クラスチェンジ?」と意外そうな声を上げた。

 

「クラスチェンジなら、経験を積んでマナストーンに願えばいいのさ。マナストーンに認められれば、それが叶う。前にやったことが──……あ、いや、今はやってないことになってるけど」

 

 あっけらかんとそう言うので、デュランは「何?!」と詰め寄った。占い師の老婆が、光の司祭ならばその方法を知っているだろうというから、国を出て遠路はるばるやってきたのだ。こんな所で情報を得られるとは思いもしなかった。

 

「何で知ってんだ?!いやそんなことはどうでもいい、そのマナストーンってのはどこにある?!」

「バストゥーク山の風の回廊、零下の雪原、火炎の谷、月夜の森……歩いて行けるのはこれくらいかな。しかし言っちゃ悪いが、デュランくんにはまだ無理だ。もう少し、実戦経験を積んだ方がいいよ」

 

 随分、見下した物言いだ。カッと頭に血が上って、デュランはホークアイの胸ぐらに掴みかかった。ホークアイはきょとんとしてから、薄く笑った。

 

「挑発したつもりはなかったんだ、ごめん。でも、まだキミには時期尚早だってことは、見ればわかる」

「あ?イチイチ、上からだなてめぇはよ。経験不足か、試してみるか?」

「いいの?俺、現状ズルしてるよーなモンだから強いぜ。君も充分、強いけどサ」

「こら、やめろホーク、お前が悪い。デュラン、すまんな」

 

 と、イーグルが仲裁に立つ。ケヴィンが「け、喧嘩、だめ……」とおろおろとするので、デュランは「ちっ」と舌打ちをして手を放した。イーグルがホークアイを軽く小突いたので、少し気が晴れる。

 

 イーグルはデュランとケヴィンに向き直って、「アストリアの話とはまた別件になるが、お前たちに頼みがある」と思いつめた様子で言った。

 

「一緒に行動している間、俺の護衛を頼みたい。報酬は払う。デュラン、そのナリは傭兵だろ?そういうの慣れてるんじゃないか」

 

 驚いたのはデュランやケヴィンだけでなく、ホークアイもだった。しかしホークアイが言葉を失って何も言わないので、デュランはどうしたものかと頭を掻く。

 

「……お前らが、只モンじゃねーことはわかるぜ。護衛が必要には見えねえな」

「勿論、俺たちも戦えるし、ホークアイは本当に強いよ。しかし──……説明が難しいんだが、俺が、とある呪いを受けていてな。それがどうにも強力で、途轍もなく運が悪いんだ。俺がすぐに死にかかるのをフォローしようとして、ホークアイに負担がかかっている。こいつはここ暫く、まともに寝てもいない。どうにかしないと、俺が死ぬ前にこいつが倒れる」

 

 と、イーグルはホークアイの頭にぽんと手を置いた。ホークアイは余計なことを言うなとばかりにイーグルを睨みつけるが、イーグルはどこ吹く風だ。その様子で、彼らが本当のことを言ってるのだと知れた。

 ホークアイが深いため息をついて、「負担だなんてこれっぽちも思ってないぞ、本当に」とぼやく。

 

「……でもまぁ、イーグルのことを多少なりと見てくれるなら助かる。頼めるかな、デュラン、ケヴィン」

「う、うん……がんばる」

「断る理由はねぇさ。チッ、やっぱり魔法っつーのはロクでもねえ」

 

 

 

 そんなこんなで、男4人のパーティができあがった。デュランにしてみれば男所帯の方が気が楽だし、体力も腕力もない女の面倒を見つつの旅路などまっぴら御免だったので、女などいないに越したことはないと思ったがホークアイの意見は違うらしい。

 

「こんなむさ苦しいパーティじゃ息が詰まっちまうよ。前回の旅は華やかだったからギャップが酷い……」

 

 と、ブツブツ言っていた。どうやら以前にも旅をしたことがあるらしい。それで、実践経験がどうと上から言ってくる訳だ。

 

「で?門は閉鎖されてるが、どうやって街を出んだ」

「夜になれば獣人の警備は格段に甘くなるから、日没を待って闇に乗じる。獣人は夜になると、本能に逆らえず統制のとれた行動はしない……警備も薄いって訳だ」

 

 ホークアイの作戦を聞いて、ケヴィンは顔色を変えた。

 

「じゅ、獣人、夜は変身して、強くなる。警備薄くても、危険増えてる……!」

「見つからなきゃいいのサ。キミには言ってなかったかな、俺たちの家業はドロボーなんだ。隠密行動は大得意」

「えっ!ど、ドロボー、よくない……」

「ド正論いわれてんぞオイ」

「だいじょーぶだいじょーぶ、ドロボーはドロボーでも俺たち良いドロボー。ポリシー持ってやってます。今は色々あって休業中だけどね。まっ、そういうわけでサ、フツーの人が意識しない場所とか知ってるんだ。この辺でいうと、ほら、あの家とか……」

 

 雑談しながら、初めに気付いたのは誰だったか。

 全員が一斉に走り始めた。路地裏から「きゃあっ!」と甲高い子供の悲鳴が聞こえたのだ。

 路地を曲がると、文字通り子供が宙を飛んできた。一番先に辿り着いていたホークアイがそれを受け止め、勢いを殺しながら石畳に転がる。見た目通りの瞬発力と子器用さだ。

 

「っつ〜、平気かい、坊や」

 

 と、ホークアイは胸に受け止めた子供の無事を確かめる。子供は泣いてはいるが擦り傷程度で、たどたどしく飛んできた方向を指差した。

 

「狼がこわくて、にげたら、獣人のおじちゃんに、ぶつかって、妹が──」

 

 男児の話を聞いて状況を確認している間に、男児の指さした方向からこの「この、クソガキが!」という野太い怒鳴り声が聞こえた。

 獣人の怒声にケヴィンの体がびくりと固まった。デュランは一目散に走ったが、追い越して走り抜けたのはイーグルだ。鎧のわりに、足が速い。

 

 大型な獣人が泣き喚く幼女に腕を振り下ろした瞬間、イーグルが獣人と幼女の間に滑り込んだ。幼女を胸に抱いたその背中ごしに幼女のくぐもった悲鳴が聞こえ、イーグルの肩口から背中にかけて鮮血が散る。爪が引っかかったようだ。背後のホークアイから「イーグル!」という切羽詰まった声が飛ぶ。

 

 女児を抱えてこちらに戻ってこようとするイーグルだが、崩れ落ちるように膝を付いた。その背後から、「この人間風情が、逆らうか!」と怒り狂った獣人が腕を振り上げた。デュランは膝を付いているイーグルを飛び越えて、獣人の爪を剣の横腹で受けた。硬質な音が響く。獣化もせずに人間の姿のままであるというのに、何て怪力だ。腕がじんじんと痺れる。

 

「俺が相手になるぜ、犬っコロ」

「ひ弱な猿が、でかい口を!獣人様に逆らうとどうなるか、見せしめにしてやる!」

 

 挑発的なデュランの台詞に獣人は髪を逆立たせて犬歯を向いた。デュランの背後ではイーグルが幼女を放し、その兄と遠くへと逃がしている。ホークアイが青い顔をしてイーグルの怪我を診る。

 目の前の獣を牽制するのが精一杯で、デュランの位置からはイーグルの怪我の様子はわからない。イーグルが自ら飛び出したとは言えど、護衛を頼まれた直後の失態が情けない。

 

 獣人を前にして後ろの方でおろおろとしているケヴィンを、ホークアイが「ケヴィン!」と鋭く呼びかけた。ケヴィンはハッとして呼びつけられた犬のように駆け寄った。デュランには聞こえなかったが、コソコソと何かしらをホークアイに言いつけられたようだ。

 元々ケヴィンは他の獣人に見つかりたくないと怯えていたので頼りにはできないものと決めつけていたが、ケヴィンは緊張している様子ながらも、何とデュランの前に出た。

 デュランと対峙していた獣人は介入者をケヴィンとみとめると、牙も爪も引っ込めて目を丸くした。

 

「お前、ケヴィンじゃないか!お前は人間討伐隊のメンバーではないだろう、何故ここに?」

「じ、実は、獣人王から、ひ、秘密の特殊任務、受けてる。この人間たち、オイラの子分。任務に、必要……。み、見逃して」

 

 と、ケヴィンはたどたどしく、ホークアイに入れ知恵されたのであろう真っ赤な嘘を吐いた。明らかに嘘を吐くことに慣れていない様子で、説得力も信憑性も皆無のお粗末なものだったが、普段から流暢な言葉遣いでなかったのが幸いしたらしい。獣人王からの特殊任務という言葉に、なら仕方がない、とばかりに獣人は腕を組んで頷いた。

 

「そうか。一体どんな……いや、言ってくれるな。そういうことならわかった、誰にも言わん」

「あ、ありがと……」

 

 獣人は「頑張れよ」とケヴィンの肩を叩き、デュランたちに「おう悪かったな、痛い目に遭いたくなきゃあ生意気なマネはするんじゃないぞ」と言い残して去って行った。

 

 デュランはふんと鼻息を鳴らして剣を鞘に納めた。獣人が馬鹿で助かった。まともにやり合っても負けるとは微塵も思わないが、無傷では済まないだろう。世界は広い。デュランはフォルセナの若手の中で一番の猛者だが、戦闘能力に特化していると言われる獣人は、あんな雑兵であっても自分と同等程度の力を持っているように思える。

 

 成り行きを遠くで見ていたのか、獣人がいなくなったのを見計らって、絡まれていた幼い兄妹が「お兄ちゃん!」とイーグルに駆け寄った。イーグルはホークアイに抱えられ、出血で顔色を白くしながらも、無事を知らせようと笑って手を上げて兄妹に応える。しかし痩せ我慢は子供の目にも明らかなようで、兄妹は丸々とした顔を泣きそうに歪めた。

 

「ご、ごめんなさ、ぼくらのせいで、お兄ちゃん、ケガ……」

「こんなもん、へのかっぱさ。ほら見てろ、一回しかしないぞ」

 

 と、イーグルはホークアイの手を借りて起き上がって、背中を子供らに向けた。裂けた服の間から、裂けたピンク色の肉が見えて、子供らは顔をひきつらせた。イーグルは胸に手を当てて、デュランには聞き取れなかったが何かしらぼそぼそと呟く。すると、イーグルの肩甲骨の間を中心に、薄ぼんやりと白い光が集まりだした、ような気がした。

 

「ヒールライト!」

 

 みるみるうちにぱっくりと割れていた肉が閉じ、裂けた皮膚が滑らかさを取り戻す。子供らが「わぁ……!」と歓声を上げた。

 どうやらイーグルは戦士の外見に反して、治癒術師であるらしい。剣社会であるフォルセナではめったにお目にかかれるものではなく、もの珍しさにデュランも素直に感嘆した。

 幼い兄妹は「すごーいお兄ちゃん、まほうつかいなの?!」と無邪気にはしゃぐ。

 

「そう、魔法使いだから怪我したってへっちゃらなんだ」

 

 と、イーグルは緩慢に立ち上がって、全快したことをアピールしつつ子供の手を取り、笑みを浮かべた。

 男児の手足の擦り傷に気が付くと、手を当てて再び「ヒールライト」と唱える。あっという間に完治して、子供らは目をきらきら輝かせた。

 

「妹を守ろうとしたんだろ。偉いな、お兄ちゃん」

 

 治したのはその褒美だと、イーグルは男児の頭の上に手を置いて髪をかき回す。いかにも子供の扱いに慣れているといった様子だ。

 ホークアイは難しい顔をして、にこやかに笑うイーグルを見ている。イーグルの流した血でべったりと赤く染まって、ホークアイの方が怪我をしているような見た目だった。血を隠すように、ホークアイは子供の目線に合わせてしゃがんだ。

 

「ボウズにお嬢ちゃん、暫くはおウチの中だけで遊ぶってお兄さんと約束してくれるかな。ウチはどこだい?お兄さんたちが送ってあげよう。さ〜、このお兄ちゃんと手を繋いで?」

 

 と、ホークアイはにこやかにケヴィンを指し示した。子供の相手などしたこともないだろう、ケヴィンは「ええっ」と動揺する。

 子供の興味がケヴィンに移ったのを見計らって、デュランは「大丈夫か?」とホークアイに尋ねた。

 ホークアイは「治癒術は、血や体力までは戻せない。気ィ使ってやってくれ」と、神妙な顔をして、小さな声で言った。

 

 

 

 

 

 子供らを自宅まで送ると、もう日が暮れ始めていた。脱出については任せろ、と豪語したホークアイの言葉に嘘偽りはなかったようで、闇夜の中、大人しく指示に従えば、獣人に誰一人見つかることなく塀を越えてジャドから抜け出すことが叶った。

 

 このラビの森をこのまま一晩も南下すれば、件のアストリアという村があるという。

 ジャドからウェンデルへと向かうにはこの森を抜ける必要があるため、普段であれば多少の巡礼者の姿が見られるはずだが、獣人のジャド占拠を受けて今は人っ子ひとり見当たらない。

 更に、世界的な問題となっているマナの減少の影響もある。温厚な性質のラビでさえ狂暴化し人を襲い、毒を持つマイコニドの増殖が進んでいた。

 しかしラビもマイコニドも強力な魔物ではなく、戦う訓練を受けていない一般人でも簡単に駆除できる類のものだ。しかし、ケヴィンはそれらを見てひるんでいる様子だった。

 

「お、オイラ……夜の戦闘、変身してしまう……怖がらせる、きっと……」

 

 聞いてみれば何の心配をしているのやら、自分の獣化を見たデュランたちが引いてしまうのではと怯えているのであった。デュランは鼻で笑った。

 

「はっ。何で俺がお前を怖がらなくちゃなんねえんだよ」

「んー、俺、獣人の変身見たことあるけど、ちょーカッコいいー!って思ったよ。だから、気兼ねなんてしないでくれよ、仲間なんだしサ。俺、わんこも好きだし〜」

 

 と、ホークアイは朗らかに笑ってケヴィンの頭をがしがしと撫でた。デュランの気のせいならばいいのだが、ホークアイはどうもケヴィンのことを犬だと思っているフシがある。

 しかしケヴィンは目をぱちぱちさせながら、「う、うん……!」と喜んだ。犬扱いを気にしないヤツで良かった。

 

 そして魔物を相手に変身したケヴィンは、なかなかに格好良かった。体躯は優に2メートルを超し、筋肉はしなやかに盛り上がり銀色の毛並みに覆われ、巨大な口には鋭い牙がずらりと並ぶ。変身後は他の獣人たちと同じように本能に抗えなくなるのか、人間の時とは違い好戦的になって、先頭に立ってその強さを見せつけた。

 

 一応護衛を請け負った手前、呪いを受けたというイーグルの様子をデュランは戦いながらも注視していた。最も、イーグルは積極的に前に出ないというだけで、護衛など必要ないだろうという程に充分に戦えている。何よりホークアイがイーグルにべったりである。

 

 自ら強いと豪語するだけあって、確かにホークアイはこの一行において群を抜いているように見えた。しなやかでバネのある筋肉、迷いなく流れるような線を自由自在に描く切っ先。それは王の御前で披露される剣舞を彷彿とさせた。

 

 経験不足を鼻で笑われたのを思い出して、デュランは苛立ちを目の前の魔物にぶつける。

 上等だ、不足だというのなら積んでやろう。

 デュランはマイコニド数体を一度に切り捨てた。獣化し好戦的になっているケヴィンもその後ろに続いた。

 

 一匹一匹ならば問題にもならない低級な魔物群ではあるが、数が多いなと思っているうちに、デュランたちは巣の中にでも突入してしまったようであった。いつの間にか群れを成したマイコニドに囲まれ、退路がない。しかし無いなら作ればいい。

 ケヴィンと共に前方の魔物群を殲滅させていき、倒し洩れたものの処理をホークアイとイーグルに任せる。

 これなら何とかなりそうだと思った時、ケヴィンの蹴り上げたマイコニドが頭上の木の枝に跳ね返り、イーグルとホークアイの方向へと飛んだ。ホークアイはひどく周囲を警戒していた様子だったが、数が減ってきて油断したのか、信頼されていたのか、進行方向前方は意識下から外れていたらしく気付くのが一瞬遅れた。避けきれずにガードしていたが、度重なる衝撃でマイコニドの体内の胞子袋が破れたらしい。普通ではありえない量の濃い紫色の胞子が空気中に広がって、ホークアイとイーグルを包み込んだ。まるで煙幕だ。

 

「ホークアイ!イーグル!」

 

 即座に助けようとしたが、他のマイコニドが邪魔で切り捨てる。マイコニドの毒などは、普段であれば自然治癒でも済む程度の軽微なものだ。だが、こんな降り積もるほどの濃度は見たこともない。

 

 胞子の煙の中から、イーグルが蹴り出されるようにして飛び出してきて、地面に転がった。一瞬遅れて、ホークアイも煙の中からどさりと外に倒れ込む。

 

「げほっ、ごほっ、ホーク……!」

 

 と、イーグルが起き上がってホークアイに駆け寄り、引き摺って胞子の塊から距離をとらせた。どうやらホークアイの意識はないらしい。

 イーグルが「ティンクルレイン!」と耳慣れぬ呪文を唱えた。外傷はないはずなので、状態異常解除か何かの魔法だろう。しかし、ホークアイが目覚める気配はなく、イーグルは「くそっ」と悪態を吐いてもう一度魔法を重ねる。

 ケヴィンが獣化を解いて、おどおどと心配げに近寄った。

 

「ご、ごめん、オイラ……」

 

 イーグルが恐ろしい程の速さでケヴィンの胸ぐらを掴んで、爆発しそうな怒りでもって睨みつけた。ケヴィンはびくりと身を竦ませる。

 

「おいっ、やめねえか、運が悪かったんだ。俺の方こそ、護衛頼まれてんのにすまねえ。ほら、プイプイ草」

 

 と、デュランは懐に忍ばせていた毒消しの薬草をイーグルに突き付けて、ケヴィンを解放させる。可哀そうに、ケヴィンは顔色をすっかり青くさせて怯えた様子だ。

 

「くそっ……!」

 

 と、イーグルはデュランからプイプイ草を奪って、まだ意識の戻らないホークアイの脇に膝を付いた。しかし全身の力が抜けるようにしてそのまま倒れ込み、ホークアイの腹に折り重なった。よく見れば顔色は紫色で瞳孔は開き、瞼や唇は痙攣している。

 おろおろしているケヴィンに予備の薬草を放り投げながらデュランは舌打ちした。

 

「この馬鹿、自分も大量に胞子吸い込んどいて、ホークアイにしか毒消しの魔法つかってねえ。ケヴィン、その馬鹿と阿呆にプイプイ草のませてやれ」

「う、うん……」

 

 デュランはケヴィンに倒れたふたりの世話を任せて、まだ残っているマイコニドの殲滅に向かった。多少強いと言っても、世話の焼ける連中である。

 

 

 

 周囲の掃除を終えてから戻ると、調度似たようなタイミングでふたりが目覚めたところだった。先ほどよりかはマシな顔色になっていて、薬草が効いたようである。

 

「あぁホーク、良かった……!」

 

 と、お前らは一体なんなんだと思わず言いたくなるほどの至近距離でイーグルはホークアイの頬を手のひらで包む。ホークアイは慰めるようにしてイーグルの背中に手をまわしてさすった。

 ケヴィンは両手両膝を地について、そんなふたりに向かって頭を下げた。

 

「本当、ごめん、ふたりとも!オイラ、未熟者……だれか守る、できない……」

 

 手にかけてしまったカールというウルフのことでも思い出しているのか、今にも泣きそうな様子で落ち込んでいる。獣化していても完全に理性を失っている様子はないが、本能の蓋が緩み、好戦的になっていたのは確かだ。味方は視界から消えて敵しか見えていない、そういうふうであった。

 しかしホークアイは地面につけられたケヴィンの頭をがしがしとかき回した。

 

「キミは多分、誰かと一緒に戦うなんて初めてなんだろ?誰かを守ることも、誰かに頼ることも、これから慣れていけばいいのサ。俺はキミを、頼りにしてるよ」

「……元はと言えば、俺の例の『呪い』が原因だ。カッとなって、やつ当たって悪かった。許してくれケヴィン」

 

 と、落ち着いたイーグルも頭を下げて謝った。ケヴィンは目を輝かせて喜んで、首を縦に激しく振る。

 

「あ、ありがとう……!オイラ、がんばる!」

 

 ケヴィンは早速がしがし撫でられることに慣れた様子だ。もし人の姿でも尻尾があったなら、振り切れんばかりだったのではなかろうか。

 

 

 

 それ以後、デュランもケヴィンもイーグルに気を配りこの上なく慎重に森を進んだが、『呪い』とやらの効果は絶大だった。魔物に気付かず襲われたり、土砂崩れなどの災害だったり、狩人が残したラビ用のトラップだったり、何故だか幾度も危機に見舞われる。世界的に見て比較的安全な森のはずだが、抜ける頃には全員がボロボロだった。

 

「おい……その呪い、解くアテはあんのか?」

「……さて。マナの女神さまにでもお願いするしかないかな……」

 

 デュランの質問に、イーグルは引きつった苦笑で答えた。

 この有様は自分のせいだということで、イーグルの表情は晴れない。全員の怪我の治療をしながら、深刻な様子で眉間に皺を刻んでいた。

 

 ホークアイ曰く、アストリアはもう目と鼻の先らしい。アストリアの住民を避難させた後は、洞窟の結界を解除できる仲間と合流し、ウェンデルへと向かい、更に他の仲間と合流後、結界を張りなおす予定だという。ウェンデルはそれで獣人の侵攻を避けれるという話である。

 

「その後は、精霊を集めに世界を回る。デュラン、キミはついてきて損はないぜ。精霊はマナストーンの近くにいるから、必然的にマナストーンに寄ることになる」

「乗ったぜ、その話。俺は経験も積めてクラスチェンジの望みを叶えられるし、お前らは護衛をゲットってわけだ」

「じゃあウィン‐ウィンってことで」

「報酬は貰うけどな。カスミ食って生きてるわけでなし」

「う〜ん世知辛い。友情割引してくれ」

「こちとら成長期なんだよ」

 

 歩きながらホークアイと交渉していると、すぐ後ろを歩いていたイーグルが「——その護衛の話だが、ウェンデルで終わりにしよう」と割って入った。

 

 

「ホーク。考えたんだが、俺がこのままお前たちの旅についていくのは無理がある。役立たずなだけならばまだしも、足手纏いにしかならん。俺はウェンデルで抜ける」

 

 ホークアイの足が止まる。イーグルも足を止め、その後ろを歩いていたケヴィンがイーグルの背中にゴツンと鼻の頭をぶつけて「う?」と声を上げた。

 ホークアイはゆっくり振り向いて、イーグルを見る。自分に向けられたものでもないのに、問うような無言の圧力を感じて、デュランは背筋がぞわりとした。イーグルは物怖じせずに言葉を重ねる。

 

「俺の呪いは、お前の足枷になる。こんなラビの森でさえ酷いお荷物だってのに、これから精霊探しに世界を回るなんて到底無理な話だ。外だけでなく街中にも危険はあるが、聖都ウェンデルならばそんじょそこらよりかはマシだろう。病人や怪我人も司祭を頼って養生しに挙って来てるらしいから、ヒーラーの職なら簡単に見つかるだろうしな。生計たてる自信ならあるから、心配するな。お前は俺なんか気にせずに、お前の成すべきことを成せ」

 

 イーグルは冷静で、本気で離別する気のようだった。どうやらこれは相談ではなく、報告だ。いつの間にやら、決意を強く固めている。

 静かにイーグルの主張を聞いていたホークアイは、ゆっくりと首を傾げた。長い髪が揺れる。

 

「……俺、言ったよな。お前の意志は関係ない、引き摺ってでも連れて行くって」

 

 と、ホークアイが零度の冷えた声で言った。美人が怒ると怖いというのは男女関係なく同じなのだな、とデュランは腰が引ける。しかしイーグルは素知らぬ顔だ。

 

「あの時とは状況が違うな。なぁホークアイ、お前は何のために『戻って』来たんだ。何のために、フェアリーは命をかけてお前をここに『戻した』?俺を生かすためか?違うだろう。俺に構ってたら、お前、また、負けるぞ」

「……お前が『死んでる』間、俺がどんな気持ちで生きてたのか、お前には想像もできないんだろうな。今更、俺が、お前を抱えて生きてく覚悟ができてないとでも思うのか?」

 

 デュランには彼らの話の内容がわからなかったが、二人の間では成立しているらしく、口をはさむことができない。ケヴィンもおろおろと成り行きを見守っている。

 イーグルは大きくため息をついて、「じゃあ、こう言おう」と最終手段だとばかりに残念がった。

 

「俺だって死にたくない。お前の旅路に付き合って、わざわざ危険な目に合うのはごめんなんだ」

 

 ホークアイは、ひゅっと息を呑んで、沈黙した。

 イーグルの言葉が本意でないことくらい、デュランでさえわかった。この男たちが互いを気遣い、大切に思い合っていることくらい、行動を少し共にすれば誰にだってわかるだろう。それくらい明け透けだ。イーグルが自分の保身のために別離を望むわけがなく、あくまで呪いに巻き込むまいとしているのだ。

 だが、そんなふうに言われてしまっては、ホークアイはイーグルの手を離さざるを得ないだろう。イーグル自身の安全を盾に出されては、守りたいが故に、ホークアイには否とは言えない。

 

「そういうわけでデュラン、護衛はウェンデルまで構わん。その後はホークアイに付いて行ってクラスチェンジなり、好きにしてくれ」

 

 と、イーグルはホークアイから目を反らしてデュランの方を向いた。傷つけたホークアイを見ていたくなかったのかもしれない。

 自分にかかった呪いが原因で大切な身内に迷惑が掛かっているから抜けたい、という気持ちは、もしも自分がその立場だったならと思うと理解はできる。

 しかしホークアイの、気を張り詰めた献身を目の当たりにした後では、そんな理由で切り捨てられてはホークアイが可哀そうだ。

 同じように感じたのだろうケヴィンが、黙って俯くホークアイにそろそろと近寄って、おそるおそる手を伸ばした。慰めるように、ホークアイの項垂れた頭を撫でる。デュランからはホークアイの表情は見えないが、ホークアイはケヴィンにされるがままにしていた。

 デュランはついイーグルに詰め寄って、小声で怒った。

 

「おい、あいつに何の相談もなしに決めちまうたあ、ちょいと薄情なんじゃねえか。お前のツレの負担なら、俺たちだって受け持つ。足手纏いだなんだ心配すんじゃねえ」

「……会ったばかりの俺たちにそんなことを言ってくれるなんて、お前は本当にいいヤツだ。だからこそ、巻き込んでとばっちりを受けさせられん。『呪い』は街中でも船の上でも年中無休でな。実際、あいつはもうずっと寝もせずに気を張り詰めっぱなし。怪我させたのも数えきれない。それをお前らにも強いるわけにはいかん」

「俺らを理由にすんなよ。お前は相棒をそんなふうに切り捨てて、本当に後悔しねえのか?」

「……後悔したくないから、こうするんだ。もしも俺のせいでホークアイに何か取り返しのつかないことがあれば……と、考えるだけで恐ろしい」

 

 そうイーグルは思い詰めた顔で本音を吐露した。苦渋の決断だっただろう。

 

「……悪いな、デュラン。ホークアイのこと、頼めるか」

「……はっ。見ず知らずの他人を頼まれるギリはねえよ。……目的を達するまでは、同行するがな」

「それでいい。ありがとう」

 

 と、イーグルは苦笑して肩を竦めた。

 

 

 

 

 もうアストリアは直ぐそこだというのに、一行の雰囲気は最悪だった。イーグルとホークアイはだんまりで、デュランとケヴィンも元より口数の多い方でもない。無言のまま歩を進めていると、闇夜の向こうにほのかに灯りが見えた。アストリアの村だ。もう夜も遅く、灯りをつけている家もそう多くはない。

 

「……ン?アレ、なに?」

 

 一番に気が付いたのはケヴィンだった。家の灯りのひとつだと思った白い光が、ふらふらと揺れて移動して、森の間に消えていった。ホークアイがハッと驚き、「フェアリーだ!」と焦った様子で言った。

 

「まずい、獣人の襲撃は今夜なのかもしれない。デュラン、ケヴィン!アストリアの住民を森の奥へ!俺はあの光を回収しなきゃいけない」

 

 と、ホークアイは早口に言って、イーグルの手を掴む。二手に分かれるということだろう。二手に分かれてまで、人命と同じように優先するあの光の正体とはなんなのか、疑問が強くなる。

 

「どういうことだ。あれは何なんだ?」

「説明してる時間が惜しい!土壇場で一方的に押し付けることになって悪いが、任せた!」

 

 とホークアイは、デュランたちと同じように何が何だかわからないと言った顔をしているイーグルの手を引いて、光の消えた方向の森に入っていった。あっという間に木々の間に姿を消して、ケヴィンとふたり取り残される。

 

「……とりあえず、行くか」

「う、うん……」

 

 

 デュランはケヴィンと困惑しながらもアストリアへと向かった。思ったよりも小さな村で、村のすぐ向こうに湖が見える。深夜だからだろうか、村は寝静まっていて人っ子ひとり見当たらないし物音ひとつしない。

 

「お前はあっちから回れ。村人を起こして回って、ここの広場に集めよう」

 

 ケヴィンと手分けして家々の扉を叩いて回り、鍵の開いている家には土足で踏み込んだ。

 だが、恐ろしいことに誰一人見当たらなかった。この村は、無人だ。

 

「おい、誰かいたか!?」

 

 村の中を走り回った後、ケヴィンを見つけて問いかけるが「いない!」とケヴィンも眉を顰め首を傾げている。

 

 しかし廃れた村というわけでもなく、つい先ほどまで生活していた後があるのだ。家財道具は埃を被らず痛んでもいないし、荒された形跡もない。それによく見れば、貴重品や日用品が持ち出された形跡がある。つまり、村人は自発的にこの村を出て行ったということだ。獣人に連れ去られたという可能性は低い。

 

「一体、どうなってるんだ。ジャドが獣人に占拠されたのを知って、子どもも老人も村人全員で村を捨てたっつーのか?」

 

 デュランとケヴィンは無人の村の真ん中で首をひねって考えるが答えはでない。ホークアイが謎の光を見て獣人の襲撃を今夜だと断定した理由もわからないが、確信している様子だった。ホークアイの言う通りならば、獣人たちもすぐにこの村に現れるだろう。デュランは考えるのを止めて、舌打ちをした。

 

「ちっ、ここに居ても埒があかねえ。それに、獣人と鉢合わせしても面倒だ。ホークアイたちを追うぞ。村の連中が村を捨てたとして、逃げる場所なんざ森の中しかねえしな」

 

 と、デュランはケヴィンと共に、謎の光が消えていった方向の森に入る。村人がいないかと周囲を気にしながら森を幾何もいかないうちに、ケヴィンが「だれか、いる!」と声を上げた。

 

 幼い子どもがひとり、ラビを相手に戦っている。森を逃げるうちに親と逸れてしまったに違いない。

 

「伏せな、ガキんちょ!」

 

 と、デュランは駆け寄る勢いそのままに、子どもの頭の上からラビを一刀両断した。子どもは驚いて尻もちをついて、零れそうな大きな目をきょとんと丸くしてデュランとケヴィンを見た。

 赤い帽子から溢れる金髪はくるくると豊かに波打ち、よく手入れされていて、田舎の娘といったふうではない。遠目には気付かなかったが、幼女の足元には誰かひとり倒れていて、幼女はその人物を守ろうとしていたのだろうと知れた。うつ伏せに倒れる細い体は中性的で男なのか女なのかわからないが、土に汚れていても上等なものだと一見してわかる純白の神官服は、その人物がウェンデルの者だと物語っている。

 

「ほえ?なんで、あんたしゃんたちがこんなところに?」

 

 と、その幼女はデュランとケヴィンのことを前から知っているかのような口ぶりで、細い首をこてんと傾けた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 この世界には、残念ながら運命というものが存在する。それは殆ど決まっていて、可変性はないに等しい。運命に手を加えることができるのは、マナの女神と、女神の種であるフェアリーに選ばれた人間だけだ。

 女神の種でしかないフェアリーには運命を読み解く力はないが、世界のマナの減少は明らかに世界の破滅へと向かっていた。女神がマナの樹と共に眠り不在の今、世界滅亡というシナリオを変えることができるのは人間しかいない。フェアリーは仲間たちと共に、希望を託すべき人間を見つけるために、聖域を離れることを決めた。

 

 下界に降りてから時間を経るごとに、フェアリーに残されたマナはみるみるうちに減っていった。仲間たちに託されたマナも残り僅かで、限界は近い。このままでは光の司祭に世界の危機を伝えることもできず、死んでしまうだろう。もう選り好みしているような余裕はなく、今すぐにでも誰かを宿主として選ばなければならない。

 

 しかし森を彷徨って、花畑に出た時には宙に浮かぶ力も尽き、フェアリーは咲き乱れる花々の中に落下した。マナの少ない下界では満足に呼吸もできず、マナを求めて彷徨っているうちに、どうやら人里から離れてしまったらしい。なんて馬鹿なことをしてしまったのだろう。

 

「フェアリー!」

 

 幸運なことに、人が花畑の中を駆け寄ってくる。どんな人間だったとしても、このまま死んでしまうよりかは遥かにマシだ。フェアリーは目を開け、虫羽を羽ばたかせてふらふらと辛うじて飛んだ。

 

『うぅ……はぁ、はぁ、もう大丈夫……あなたたちは……?』

 

 もうこの際、誰でもいい。フェアリーは花畑に佇む青年ふたりを見比べて値踏みした。このうちのどちらかに、聖剣の勇者として聖剣を抜いてもらわねばならない。

 好都合にも、どちらの青年にも戦闘の心得があるようで、勇者として選ぶに遜色ない。見目の勇者らしさでいえば金髪の青年か、だが紫髪の青年にも惹きつけられる魅力がある。だが重要なのは善良さだ、と、フェアリーは無断で彼らの精神を覗こうとした。

 だがその前に、紫髪の青年が口を開いてにこやかにフェアリーへと手を差し出した。

 

「俺はホークアイ、こっちはイーグル。キミの事情はわかってるから、俺にとり憑いてくれていいぜ。さ、どうぞ」

『え?』

 

 フェアリーは事情も話さぬままにどちらかを済し崩しに勇者に仕立て上げてしまうつもりだったので、ぎょっと目を点にした。そういえばこの青年は先ほども、フェアリー、と自分に呼びかけた。

 

 そしてフェアリーは、このふたりがそれぞれ纏う、見覚えがない奇妙なマナに気がついた。ふたりとも、普通の人間ではない。魔物であるという意味ではなく、不思議と、マナの位相が通常あるべき運命からズレているのである。

 紫の髪の青年は、まるでこの世界の住人ではないようなマナをしているし、もう一人金髪の青年は本来の寿命から外れている。はっきりと死相が見えるのに、何故まだ生きているのか不思議なほどだ。

 

『ちょっと待って、あなたたち、一体……?』

「実は──……話せば長いんだよ。頭の中、読めるだろ?ちゃちゃっと読んでくれ」

 

 と、ホークアイと名乗った青年は肩を竦めた。イーグルと紹介された死相の浮かぶ青年は「へぇ、便利だな」と漏らして、興味深そうにフェアリーをじろじろと観察している。

 

 下界の人間にしては珍しく、ホークアイという青年はフェアリーという存在をよく知っているらしい。大抵は頭の中を覗かれるのを嫌がるものだと思っていたが、自ら進んで読んでくれとは、奇異な人間だ。

 フェアリーとしても長々と説明を受けるよりも記憶を読んだ方が楽で手っ取り早いのは事実であるので、ホークアイの言葉に甘えて読ませてもらうことにした。

 フェアリーはホークアイの頭に近寄り、その肩に立ってそっとホークアイのこめかみに小さな手のひらを押し当てた。

 

 

 そして、流れ込んでくる記憶の潮流。

 今は隣に佇む親友の死。彼の妹にかけられた死の首輪の呪い。フェアリーを含む仲間たちとの長い旅路。出会いと別れ。そして敗北と死。記憶に付随して同時に流れ込んでくる、鮮やかに色づいた強烈な感情の数々。

 なんと、この年若い青年は、別の未来のフェアリー自身がその命を掛けて送り返してきた魂と記憶を、その身に受け入れている。マナに違和感があるのも当然だ。この青年は、別の未来からやってきたのだ。

 

 別の未来の記憶を受け入れてからの、親友の死をなんとか阻もうとする努力と、今回こそ世界を救わなければという強い決意も読み取って、フェアリーはらしくもなく感動する。なんて美しいのだろう、だから人間という生き物が好きだ。ホークアイはその飄々とした見た目に似合わず、激しい気性を持った正義漢であった。

 

 

 ホークアイの記憶を通して前回の旅路を追体験し終えたフェアリーは手を離し、ホークアイの整った横顔を呆然と眺めた。凄惨な記憶をその身に受け継ぐ青年は、「終わったかい?」と柔らかな声でフェアリーを横目に見返した。

 

 困難で苦しい旅路の中、そんな様子は決して表に出さなかったホークアイ。涙を流す時は、いつも仲間たちに見えない場所でだった。別の未来の自分はなんて過酷な記憶と使命を彼に背負わせたのだろう、とフェアリーは心苦しく思った。例え、そうするしか希望がなかったのだとしても。

 

『……頑張ったね、ホークアイ。一杯、頑張ったね。戻ってきてくれて、本当に、ありがとう』

「!」

 

 ホークアイは金の瞳を見開いて、頬を僅かに染めた。隣の親友も無条件で信じてくれているとは言えど、記憶を共有できる相手がいるのは嬉しい、という気持ちが伝わってくる。この青年とは初対面だが、記憶を追体験した今となっては旧知の間柄になったような錯覚がして、フェアリーはホークアイのことをとても愛しく思った。

 

『また全部を背負わせることになってしまって、本当にごめんね』

「……謝らないでくれ。やり直せるチャンスをくれて、感謝してるんだ。今回こそ、やり遂げてみせるよ」

『うん!一緒に頑張ろう、ホークアイ!』

「さ、とり憑いてくれ。アストリアの人たちを新しい仲間に任せてあるんだ、早く戻らないと」

『もう一度、あなたが宿主をやってくれるんだね。実は、もう限界……姿が見えなくなるけど、心配しないで──……』

 

 と、フェアリーはホークアイの中に溶け込もうとした。

 だが、バチンと弾かれる。何か見えない壁のようなものが、ホークアイを包んでいる。もう一度試すが、結果は同じだった。訝しがったホークアイが首を傾げてフェアリーを見る。

 

「フェアリー?」

『……入れない。何故かしら』

 

 ホークアイの魂には、防護壁が張ってあった。まるで、もう既にフェアリーに宿主として選ばれた者かのように──

 

『そうか!あなたの魂は、もう既にフェアリーに選ばれてしまっているんだ。別の世界線の私というフェアリーに──』

 

 フェアリーはハッと気付いて、独りごちる。どういうことだと疑問の目を向けるホークアイとイーグルに、フェアリーは『ごめんね』と謝った。

 

『二度、フェアリーの宿主に選ばれることは出来ないの。一度宿主になったら一生離れることができないように、その生涯に一人しか無理なの。私が宿木にするのはその人の魂だから、この世界のあなたにとっては初めてでも、魂にとっては2度目になってしまう』

「そんな!じゃあ──……」

 

 ホークアイは短く叫んで、恐々とイーグルを見た。フェアリーの力が尽きかけている今、ホークアイにとり憑くことが無理なら、フェアリーの宿主となれるのはこの場に一人しかいない。

 

「消去法で、俺か」

 

 と、イーグルが肩を竦めて苦笑した。

 ホークアイの感情にカッと火が付いたのをフェアリーは感じた。フェアリーの宿主というその役目の過酷さは、ホークアイ自身が既に一度経験している。死神に魅入られた親友に課すには余りに重い、とホークアイの心の内が伝わってくる。

 

「駄目だ!お前に背負わせられない!」

「俺だって不服だ。宿主になったら、こんな足手纏いの身で世界を救わにゃならんのだろう。でも、誰かにとり憑かんと、フェアリーが死ぬ。選んでる余裕はない」

「でも……!」

「でも、じゃない。ホーク、彼女を見ろ。今にも死にそうだ」

 

 食い下がるホークアイにイーグルがそう告げて、ホークアイはハッと肩のフェアリーに目を向けた。イーグルの言う通り、フェアリーは息も絶え絶えで浮いていることさえ辛くて、ホークアイの肩に両手をついていた。こうもマナの少ない下界では、人の生命力を間借りしなければ、本当に死んでしまう。

 

『ごめん、ね……本当に、限界なの……』

「……」

 

 ホークアイは動揺して二の句が継げない。その肩からイーグルがフェアリーの力ない体を掬い上げて、「ほら」と促すように自身の肩へそっと乗せた。

 

『ありがとう、ホークアイ、イーグル』

 

 限界を迎えていたフェアリーは、そう謝りながらイーグルの中にすうっと溶け込んだ。イーグルのマナが、マナの枯れた体に温かく染み渡る。漸く満足に呼吸ができて、生き返ったような心地がした。

 同時に、イーグルの頭の中も自動的に読み込んでしまう。ホークアイの助けになりたいのに、運命に阻まれて迷惑をかける情けなさ、悔しさ。運命への憎しみ、死ぬことへの恐怖。複雑な感情が入り混じっているが、やはり一番大きな感情は愛だった。頭の中いっぱいに、ホークアイや妹のジェシカ、故郷ナバールへの愛で溢れている。ホークアイと同じように、聖剣の勇者に相応しい、優しい熱血漢だ。

 

「ごめん、イーグル……俺が、成すべきことなのに」

「気にするな。お前の重荷なら、俺にも背負わせてくれ」

 

 と、外では項垂れたホークアイをイーグルが慰めている。イーグルが気丈に笑ってみせると、ホークアイも泣き笑うようにして口元を歪めた。

 

 フェアリーには、イーグルとホークアイ双方の気持ちが筒抜けだった。お互いに負担の心配をしながら、どこか心の奥でほんの少し喜んでいる。これで、旅の行く末を見届けることができる。これで、目の届くところに居てくれる。例え、死神に魅入られた旅路だとしても。

 

 感情を読み取るに、どうやらこのふたりはフェアリーと運命の関係を知らないらしい。体力を回復させたフェアリーは、ふわりとイーグルの頭上に舞う。

 

『忘れたの?フェアリーが宿主にした人の運命は、未知数になっちゃうんだよ』

 

 と、フェアリーは元気づけるように小さくガッツポーズをとってみせる。イーグルとホークアイが眉を顰めて、どういうことだと疑問の目を向けた。イーグルは知らなくたって仕方がないが、ホークアイは前回の旅路の中で占い師の老婆を困らせたことがあるはずだ。ホークアイたち一行の未来を見ようとした老婆は、フェアリーに阻まれて一行の未来を覗けなかった。

 

『つまり、イーグルの死の運命は、今はもう関係ないってこと。ホークアイ、勿論あなたの運命だって、未知数のままなんだよ』

 

 にこりと笑顔で『良かったね』と告げるフェアリーを凝視して、ふたりは息を呑み込み、絶句した。お互い顔を見合わせ沈黙して、我に返ったのはイーグルが先だった。

 

「はははっ、死ぬ運命が、覆されたってのか!」

 

 歓喜のあまり、イーグルは目の前のホークアイに飛びついた。ホークアイの体を軽々と持ち上げ、更にその場でくるりと一回転まわった。躍り上がるような歓喜が伝わってきて、フェアリーも自然と嬉しくなる。

 体を固くするホークアイをイーグルは喜びと共にもう一度強く抱きしめ、「ありがとう!」とフェアリーを見上げた。

 

「ありがとうな、フェアリー!本当に助かった!」

『感謝なら、ホークアイに言った方がいいよ。あなたの死は、どう足掻いても覆しようもないくらい、強いものに見えた。きっとあなたが今まで生き残っていられたのは、ホークアイが元々フェアリーの宿主として、運命を未知数に変える力を持ってたから。それはホークアイ個人の運命だけでなく、周囲にも影響するの──……それに、別の世界の人間でもあるから、この世界の運命には縛られない。ホークアイの影響力が、あなたの運命を邪魔してたんだね』

 

 イーグルはホークアイに迷惑を掛けたくない一心で離別を決めていたようだが、ホークアイの傍から離れれば、彼は運命に逆らうことができずに死んでいたのだ。そうしてホークアイだけがこの花畑にやってきていたのなら、フェアリーも宿主を得ることができずに力尽きて死んでしまっていただろう。ホークアイが、イーグルもフェアリーも救った。

 フェアリーの宿主であるということは、そういうものなのだ。聖剣を抜けるようになるだけではない。運命という強制力から外れ、周囲の運命さえも変えることができる、希望そのものであるということ。

 

「──そうだったのか……。ホークアイ、お前から離れたら、俺は死んでたんだな。ずっと、お前が助けてくれていた……」

 

 と、イーグルが腕の中のホークアイを愛しげに見下ろした。気付けば、彼の腕の中のホークアイはふるふると細かく震えていた。指の先を白くしてイーグルの胸の布地を掴んでいる。額をイーグルの肩に押し付けても堪えきれなくなった嗚咽を、イーグルの耳も拾った。

 

「っ、う……」

「……ホーク」

「うぅ、…っ、」

「泣くなって」

「……っ、だって……!」

 

 ホークアイは涙に声を詰まらせる。イーグルはホークアイの頭に手を伸ばし、滑らかな髪を優しく撫でた。ホークアイはイーグルの肩に顔を埋めたまま、込み上げる激情のまま、体を震わせて泣きじゃくる。かつてのホークアイとは違って、今回の彼は忌憚なく泣ける場所を失くしていないのだ、とフェアリーは薄く笑った。

 

「ありがとうっ、フェアリー、本当に、ありが、とう……!」

 

 暗闇の花畑に、ホークアイの嗚咽が溶けて消える。

 運命は99パーセント、決まっている——ずっとホークアイの頭から離れなかった老婆のその言葉が、漸く消えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








フ『こんな運命で、今までよく生きてたわねぇ』
イ「いやほんとだよ。ぶどう詰まらせて死にかけた時も、ホークアイが喉に指突っ込んでくれなかったらどうなってたことか……」
ホ「わずか5センチの残し湯で溺れかけるしな……」
フ『幼児?!幼児なの?』
ホ「宿屋の便所に落ちて死にかけた時は、引き上げるのも嫌だしマジでもう諦めようかと思ったよ」
イ「新たな黒歴史の1ページだな」
フ『これが…新しい聖剣の勇者…』

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