ヤンデレに愛されたいと思う今日この頃……   作:龍宮院奏

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Fourth,ヤンデレ

 夢を見た。真っ黒な何処かに、一人立っていた。立っていると足元に何かが当たる感覚がしてきた。冷たい何か。

 それは足元に来ると思ったら消えてなくなり、再び足元に寄って来るを繰り返した。

 海だった。真っ白な月と真っ白な砂浜。砂浜の小さな波打ち際に立っていて、真っ黒な海が何処まで続いている。真っ黒な波が、真っ白で小さな波を立てて、寄せては帰ってくる。音は無い。色も白と黒の二つだけ。

 波に足が飲まれていくのが心地良いのか、何時の間にか目を瞑っていた。

 体が軽くなるような感覚と、何かが体を包んで冷たい。閉じた目を開けた時、海の中でゆっくりと沈んでいた。あぁ…波に飲まれたのだろうか……、それとも自分で知らぬ間に海に入っていたのか……。

 でも、今はそんな事はどうでも良かった。真っ暗で、光が一筋も入ってこない場所に、誰の声も何の音も聞こえない静寂が支配する場所に、堕ちているのだから……。

 このままおちて、落ちて、堕ちた先には何があるのだろうか……。今まで感じなかった恐怖が、心に、体にほとばしる。

 

 このままきっと堕ちた先で、俺は死ぬのだろうな……。

 

 単純過ぎるのかもしれないが、今の頭ではその『死』という単語が異常なまでに脳裏に焼き付いて離れない。

 

 死にたくない……、死にたくない……。

 

 落ちることに、堕ちることに、何の疑問も、恐怖も感じていなかったのに、『死』、この単語の出現のせいで大きくなっていく。

 

 助けて……。

 

 人は、人間は、自分が恐怖を感じた時、身の危険を感じた時に、誰かに、自分以外の第三者に助けを求める。

 

 助けてって……、誰に言っているんだ……。

 

 人との関わりを断絶し、人を信じることを辞めた俺が……、今になって助けを……。

 

 あまりにも身勝手な考えだ、そう気づいた時、伸ばしていた手を下げてしまっていた……。

 

 求めてしまってはいけないんだ……、俺が何かを……、幸せを、願いを、救いを求めちゃ……。

 

 何かを求めることを諦めた手を下ろして、再び真っ暗な海の奥底に沈んでいった……。

 

 携帯の機械的なアラーム音に意識が掻き消され、ベッドから勢いよく起き上がる。アラームを止めると、胸元の辺りがギュッと締め付けられるような感覚がし、直後に口内が酸っぱくなった。

 この感じは……、意識が完全には目覚めていない中でも、慌てて駆け込んだ。無論その先は……。

 朝から催すだなんて……、最悪にも程がある……。目覚めた時に、夢で感じた恐怖が突如として吐き気として襲いかかってきたのだ。その所為で食欲がわかずに、コンビニで野菜ジュースと水、大豆バーを買って学校に向かって重い足を運ばせていた。

 登校の時間帯で、他の学校の生徒たちも各々学校に歩いているのが視界に入り込んでくる。楽しそうに笑う声、憂鬱な溜息、さまざまな声が雪崩込んでくる。

 再び襲ってくる胸騒ぎに、ヘッドホンで音楽を聞くことで対処する。ノイズを通さないおかげで、先程まで聞こえていた声が聞こえず落ち着く。学校が見えて来たためにヘッドホンを鞄にしまい、自分で『聞くべきもの』『排除するもの』の線引きをする。線引きをするのは、心が保たないからだ……。

 

 授業には参加する、先生から指名され問題を解けと言われれば解く。それを繰り返す内にあっという間に、午前中の授業が終わりを告げた。昼休みになり、昼食を摂ろうとしたが……。自然と携帯を確認する。

『今日も良かったらどうですか?』

学校に来て、教室についた頃に白金先輩からのメッセージが来ていた。メッセージが来ていた事に、不意に安心感を覚えていた。理由は理解らなかったが、今はまず先輩の所に行こう。足がそれを急かすように動き出し、コンビニ袋を提げて生徒会室に向けて歩き始めた。

 

 生徒会室には、既に白金先輩がテーブルの奥の方に座って待っていた。

「待たせてしまいましたか?」

不安な思いが心に広がっていくが、

「私も今来たところで…、待ってないですよ…」

優しく微笑む先輩の笑顔が、不安を消し去ってくれた。

 先輩と二つほど席を開けた所に座ったのだが、先輩の要望で隣に来て欲しいと言われて、席を半分ほど開けた距離で隣に座ることにした。

 最初はビックリして断っていたけれど、先輩が『座ってくれないと……』答えを聞くのが怖い脅しをしてくるので渋々ながらに隣に座った。

「今日はお昼、それだけなんですか…?」

コンビニ袋から取り出した大豆バーを食べていると、先輩が心配そうに尋ねてきた。

「えっと……、ちょっと体調不良で……」

嘘は言っていない、先輩に嘘を付く必要は本当は無いが、心配を掛けたくないので簡単に誤魔化しを入れる。

「大丈夫…じゃないよね…」

先輩が箸を止め、こちらを見つめる。見つめてきたと思ったら、先輩の手が俺の額に触れていた。

「熱があるわけじゃない…?」

「はっ、はい……」

少し体温が低いのか、先輩の手の感じがはっきりと伝わる。

「谷崎君、顔が真っ赤だけど…。あ、ごめんさい」

先輩の手が額から離れると共に、自分の顔が真っ赤になっていることを知る。

 お互いに沈黙し、それぞれ自分の昼食を食べ始める。大豆バーを食べ終え、紙パックの野菜ジュースを飲んでいると、

「き、昨日はありがとう…。急なお誘いだったのに、一緒にボスの攻略をしてくれて…」

先輩から昨日のNFOの話をして来てくれた。

「そんな……、お礼を言うのは僕の方で。というか、謝らせてください……」

昨日は先輩の知り合いのプレイヤーさんの言葉に戸惑って、急にログアウトしてしまったのだから。

「昨日は、急にログアウトしてすみません……。あまり言われ慣れてない言葉……、どうしていいか理解らなくて……」

誠心誠意、頭を下げて謝罪する。

「本当にすみませんでした……」

「そ、そんなに謝らないで…。私も、あこちゃんも、谷崎君が慣れないことを言われたからで戸惑っちゃって、あんな風にログアウトしちゃったって思ってたの…」

「先輩と先輩のお知り合いに、そこまで気を遣わせてしまって……」

先輩が、僕がログアウト後にフォーローを入れてくれていた……。それを知って、尚の事謝らずには居られなかった。

「本当にすみません……」

「だ、大丈夫ですから…。あこちゃんも、『また、一緒に遊びたい』と言っていたので…」

あこさん…、ありがとう……。本名とかは知らないけど、ありがとう……。

「こんな僕でよろしければ……、いつでも協力させて頂きます……」

再度、先輩に頭を下げる。

「私の方こそ、よろしくお願いします」

何故か、先輩も頭を下げていた。

 頭を上げると、再びの沈黙が立ち始めていた。そもそも、女子の先輩と普通の人は何を話してるんだ……。

 テレビか?テレビ見てないから無理だな……。芸能人?テレビ見てないのに分かるかい!天気か?いや、今さらすぎる……。

 会話のキッカケが中々見当たらず、悩み続ける。本当に見つからない……。

「あ、そういえば。谷崎君のL○INのアイコン、《狼牙》さんにそっくりな人でしたよね」

悩み続けていた所に、先輩からの救いの一手が舞い込んできた……。

「あ、えっと……」

「?」

舞い込んできたのは有り難い、有り難いが……。その話になるとは……。

「昔見ていたアニメの好きなキャラ何ですけど、知ってますか?」

「すみません…、このアニメのキャラクターは知らないです…」

「そうですか……」

少しだけ、先輩がこのキャラを知っていてほしい自分と、知らないでほしい自分がいた。会話がここで途切れるかと思っていたが、

「谷崎君、アニメ好きなんですか?」

アニメの話をしてくれたことで、途切れることはなかった。

「まぁ、好きですよ……」

「何かオススメの作品とかありますか?」

「オススメ……、個人的な趣味思考で言うと……。『コードギアス反逆のルルーシュ』、これは人生観が変わります。後は、『落第騎士の英雄譚』、主人公の姿に涙して勇気を貰いました……。あ、これはかなりオススメですよ!『Fate/EXTRA Last Encore』、とにかくネロ様が格好良くて、可愛くて、それに……言葉が……言葉がすごく響くんですよ……」

泣きそうになりながら、自分の中でのお気に入りをいくつか挙げていく。

「でも、今挙げた三作品はバトル物で、恋愛だったら『中二病でも恋がしたい!』、『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』、『冴えない彼女の育て方』とかが個人的なオススメですね。ミステリーなら、『UN-GO』、『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より』、『ID:INVADED』。日常系なら、『日常』、『僕は友達が少ない!』。とか、後は……」

今更ながら、一つ気付いたことがある。白金先輩の動きが……、動きが止まってる!

 ヤバイ、言い過ぎた?いっぺんに言ったから、先輩の脳内が混乱してるのか?どうしよう、どうしよう……。先輩に対しての焦りが、徐々に自分に対して降り掛かってくる。その焦りが次第に頭痛に変わり始め、吐き気へと繋がる……。

「あ、あの…。今度時間があるときにビデオショップで、『コードギアス』?を借りて見てみます…」

突き刺さるような頭痛と、今にも催しそうな吐き気の念を越えて、先輩の声が耳に入ってきた。

「見てくれるんですか……」

自分であれ程までに言っておいて、いざ言われると本当かどうか疑ってしまう。

「谷崎君が…、オススメを紹介してくれた時に最初に紹介してくれたから…。だから、見てみようかな…って…」

少しだけ先輩の頬が赤くなっているような気もしたが、

「先輩……、TVシリーズを見た後には、ちゃんと劇場版と外伝もお願いします……」

『コードギアス』の魅力を知って貰いたいが為に、パイプ椅子の上で本気の土下座でお願いしました。

「外伝もあるの?」

不安そうな声が先輩から漏れ出る。

「あ、ありますけど……。本編から派生した一つの独立した物語、として見ていただければ……」

「はぁ…」

「一応、ボックスでシリーズ全種類家に置いてあるので貸しましょうか?」

「良いんですか…?だって、そういうのって高いんじゃ…?」

まぁ、高いことは高いですよ……。でも、より多くの人が『コードギアス』の魅力を知って貰うためなら。

「良いですよ、先輩なら貸しても大丈夫だと思うので」

「どうして…?」

「昨日のNFOの事へのフォローの件で、大丈夫かなと思っただけですよ……」

自分自身、本当に都合の良い人間だと思ってる。たった一回の優しさで、こうして信じてしまっているのだから……。

「じゃあ…、有り難く借りさせて頂きます…」

でも、信じるのも無理はないと思う。この人の、ふとした時に見せる笑顔が……、それはそれは綺麗なのだから……。




谷崎君が紹介したアニメは、作者が好きなアニメから厳選しました。
アニメについて語った部分は、作者の個人的な感想です……。
燐子をそろそろ本格的なヤンデレにしていこうかた考えています。
出るとしたら……、一話か二話くらい先にでも……。出せるように頑張ります……。
今回もご閲覧いただきありがとうございました。
感想などがあれば、お待ちしております。
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