ヤンデレに愛されたいと思う今日この頃……   作:龍宮院奏

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今回は闇・病みしかありません。ご注意を。



Eighth,ヤンデレ

 先輩たちとの買い物から数日がたとうしていたある日、

「38.5℃か……、薬あったけ……」

盛大に熱を出してしまった。

 理由という理由は無いのだが、おそらくストレスのせいだろう。先輩と知り合ったあの日から、俺の日常に『先輩』という『非日常』が加わったわけだが、それも必ずしも良いことだけではないのだ。

 先輩がクラスを尋ねて来たあの日から、クラスで浮いていた俺は更に浮き始めていた。幻聴だと思い込むようにしていたクラスから這い出てくる声も、幻聴だと思い過ごせない程に話されるようになった。聞こえてくるさ、『陰口』と呼ばれる声には人一倍に敏感で、それを掻き消すために音楽をどれだけ流そうとも耳に聞こえてる。

 

 学校でどれだけ逃げ出そうと考えても、逃げ出せることは出来ない。だから貯まる、溜まっていく。

 

 そして、家に帰ると溜まったものが、どっと押し寄せてくる。あれよあれよと、止まることを知らない物が中から這い上がってくるのだ。抵抗なんてしない、抵抗なんてしたら俺が壊れてしまう。

 

 だから吐き出す。何かもを、吐き出して、吐き出して、吐き出して、吐き出してしまう。

 

 吐き出した先に待ってるのは、喉を刺すような痛みと、口の中に広がる酸っぱいような感覚。そして、自分に対して向けられる、無力、絶望、怒り、数えきれない憎悪の感情が駆け巡っていく。

 

 俺は何時からこんな風に成ってしまったんだろう……、解ってる、分かってるさ……。あの頃だ、あの頃から、俺は何も変わっていないんだ。変わろうとして、変わろうとして……、変われていないのだ……。

 

「薬……、買いに行かなきゃ……」

台所の戸棚に置いてある救急箱に普段飲んでいる風邪薬が有ると思っていたが、今日に限って切らしていた。

 朦朧とする意識の中で、パジャマから簡単なシャツとパーカーに着替えてズボンを履く。マスクを着けて、雲の切れ間から太陽の光が射し込む街へと出かけた。

 

 

 

 

 

「灯夜君、遅いなぁ…」

灯夜君とRoseliaの皆で買い物をして数日、私と灯夜君それにあこちゃんの仲がより良くなった気がする。

 理由は、NFOの話になってしまうけど、現実でお互いの面識がある所為か灯夜君のプレーに少しずつ『私達に対する遠慮』という物が感じられなくなった。悪い意味で言ってる訳ではなく、何かモンスターを倒すたびに『すみません、僕が勝手に』というのが無くなり、『ここは僕が』と積極的に協力してくれるようになったのだ。

 おかげで、私もあこちゃんもレベルの上がりは段違いに早くなったし、イベントボスも何度も倒してレアアイテムも多くドロップできるように成ったから、本当に感謝している。

 

「携帯は…、見てないのかな…?」

学校では校則で本来携帯の仕様は禁止されているのだけれど、こうして偶に私も連絡の手段で使わせて貰っています。もちろん、授業中には使ってないのでご安心を。でも、紗夜さんにバレたら怖いな……。

 

 そんな事を考えながら、私は生徒会室を出て灯夜君の居るクラスの教室に歩き始めた。

 

「え?谷崎君ですか?えっと……、ねぇ誰か谷崎君の事知ってる?」

教室に着くと、お昼休みで大分賑わっているようすでした。けど、その教室にも彼の姿は何処にもありませんでした。

 

 近くに居た女子生徒に話を聞いてみたけれど、彼女も知らないようで他のクラスメイトに尋ねると、

 

「そう言えば、アイツ今日は休みって先生が言ってなかったけ?」

何処からかそんな声が不意に聞こえてきました。

 

 

              灯夜君が休み?

 

 

「オッケー、先輩も聞こえたと思うますけど、一応谷崎君休みだそうです」

 

「そうなの…、ありがとうね……」

灯夜君が休みだという事実を知って廊下に戻ろうとすると、

 

 

「ねぇ、先輩?先輩と谷崎君って付き合ってるんですか?」

 

 

 唐突に尋ねた女子生徒から、今度は逆に質問された。

 

 

「わ、私と谷崎君が…?」

この前もあこちゃんに同じことを聞かれたけど、慌てふためいてしまう。

 

 

「つ、付き合ってないけど…。どうしてかな?」

それでも冷静に質問に答える事は出来た。

 

 

「ですよね〜、先輩と谷崎君じゃ釣り合わないですもん」

 

 

 

              え?

 

 

 

「ここだけの話なんですけどね、谷崎君ってある日をきっかけに完全に孤立し始めたんですよ」

 

「前はもっと明るくて、まぁ多少は優しかったんですよ」

 

「男子の中でも少なからず友達も居たみたいで」

 

 

              何、この子……何で……。

 

 

「でも、男子が言うには『アイツ、彼女にフラレてから付き合いが悪くなった』って言ってるんですけど」

 

「まぁ、実際に付き合いは悪くなりましてけど」

 

 

              灯夜君の事をそんな……。

 

 

「だってクラスじゃ、話しかけても返事はこないし」

 

 

「今となっては完全に空気みたいな奴ですよ」

 

 

              悪く言うの……。

 

 

「先輩?どうかしました?」

尋ねた女子生徒からの声にハッとし、

 

 

「そうなんですね…、教えてくれてありがとう…」

谷崎君のクラスの教室を足早に後にした。無論向かうのは生徒会室だ、明けたままの鍵を閉め無くてはいけなのだから。

 

 

「あ、あれ……。何で私、今こんなに……」

 

 

 灯夜君が居ないことに『寂しい』って、彼女に灯夜君の悪口を言われて『腹立たしい』って思ってるんだろう……。

 

 生徒会室に着き、机の上に置いてあった自分のお弁当箱を手に持って扉を施錠して、

 

「灯夜君のクラスって、何組だったけ……」

 

 自分のクラスの教室とは別の、職員室に向けて今度は歩き始めた。

 

 

 

 

 

「頭痛い……」

薬を買いに出掛けたものの、朦朧とする意識の中では近くにあるコンビニたどり着くので精一杯だった。しかし、最近のコンビニでは多少の風邪薬なら売っているので、それで済ますことはできた。

 それと、食欲は無いのだけれど、飲み物が欲しかったので味の無い炭酸水を一本買って帰ってきた。帰ってきたは良かったのだが、

「もう限界……」

玄関先で靴を脱ぐと、必死に保っていた意識が遠のきその場で倒れてしまった。

「床が、冷たい……」

掃除はしておいたので、多少は綺麗なフローリングの床のひんやりとした冷たさを感じながら眠ってしまった。

 

 

 

 

 

「灯夜君、灯夜君」

 

誰だ?俺の名前を呼ぶのは……。

 

「灯夜君……」

 

「だ、誰……」

あれからどれだけ眠っていたのだろうか、体の節々がより一層痛む中で目を開けると……。

 

 

「何で白金先輩がここに居るんですか……?」

 

 

「えっと、説明する前にとりあえず、ここから起き上がろうか?」

制服姿の白金先輩が屈んだ姿勢で、僕の目の前に居たのだった。幻覚を見ているのだろうか、そう思って重たい腕を動かして自分の頬を抓る。

「夢じゃない……」

夢じゃないなら、今目の前に居るのは、正真正銘の白金先輩ということになるな……。

 

「白金先輩!何でここっ」

慌てて立ち上がろうとすると、激しい頭痛に襲われて体制を崩して再び倒れかかる。

 

「急に動いたら危ないよ…」

けど、倒れかかる僕を先輩が受け止めてくれた。受け止めてくれたのだが……。

 

「先輩、苦しい……」

先輩のその胸に……当たって……息が出来ないのだ……。

 

「っつ…!ご、ごめんさい…」

先輩の方も気がついたようで、胸元に捕まっていた僕をゆっくりと離してくれた。

 

 

「それで先輩は何でここに?」

リビングにあるテーブルに買ってきた物を置いて、向かい合った状態で座り先輩と話を始める。

「灯夜君がお昼休みに生徒会室に来なくて、L○INしたんだけど返事も無かったから…」

慌てて、慌ててというのもゆっくりとだが部屋に行き、携帯を取りに戻る、充電器に繋がれた携帯を確認すると、

 

『灯夜君、今日は何かありましたか?』

『一応、生徒会室は開いてますから』

と二件ほどメッセージが来ていた。

 

「完全に携帯の存在を忘れてた……」

忘れていたというより、気づいていなかったのほうが正しいだろう。

 

 

「先輩、携帯確認し忘れていました……」

リビングに戻ると同時に先輩に素直に事実を伝える。そして伝える中で再燃する疑問が一つ。

 

「それで何で僕の家?というか、どうやって場所を?」

先輩に玄関先で出会い、介抱されて一段落してからの遅すぎる質問だった。

 

「えっとその……」

質問に対して先輩は若干申し訳なさそうに萎縮しながら、話してくれた。俺のクラスの教室に行ったこと、担任の先生と会って『お見舞いに行きたい』と言って住所を教えてもらったことを。

 

「はぁ……、何で担任は教えるんだよ……」

テーブルの上に顔をうつ伏せ文句を言う。しかし、すぐに起き上がり先輩に、

「とりあえず、今お茶淹れますね」

一応ご客人なので、こんな状態ながらもお茶を振る舞うことにした。

 戸棚な客人ようのコップを取り出し、湯を沸かす。

「コーヒーと紅茶しか無いですけど、どっちにします?」

「えっと…コーヒーで…」

「分かりました…」

少し高いインスタントのコーヒーを取り出し、時間を掛けてコーヒーを淹れて差し出す。

「来て頂いて何もないのも失礼なので……、どうぞ…」

「あ、ありがとう…」

差し出したコーヒーを冷ましながら、ゆっくりと飲む白金先輩。それに足して、先程コンビニで買った炭酸水を飲む俺。

「美味しいです…」

「インスタントですが、良かったです…」

コーヒーの感想を先輩がのべ、それに答えると沈黙が生まれしまった。

 

「そ、そう言えば…、体調の方は…」

本来お見舞いできた白金先輩がその目的を果たすために聞いてきた。

 

「さっき床で寝てたので体は痛いですけど……」

「灯夜君、私が呼んでも起きなかったもんね…」

「あれは忘れてください…」

あまりにも恥ずかしいのだ。

「後は、多少の熱で頭痛はしますけど、薬飲んで寝ていれば大丈夫ですよ」

炭酸水を再び口にして、気分を少しでもよく使用する。

「で、でもお薬を飲む前に何か食べたほうが良いと思うんだけど…?」

「そうですね……」

白金先輩が食事の話をするので、思い出したのだが、

「朝から何も食べてない……」

「それって…?」

唐突に思い出した事実を口にして、それを聞いた先輩は驚いていた。

「昨日軽くご飯を食べて、今日は朝から体調不良で食べて無いんだった……」

自分で状況を改めて確認し直すが、我ながらに不健康過ぎる……。でも何か食べようって気も起きないし……。

「じゃあ、これ買ってきて正解でしたね……」

「?」

先輩が鞄の中をゴソゴソと漁っていると、

 

「じゃ、じゃじゃーん……、れ、レトルトのおかゆです…」

スーパの買い物袋が現れて、その中から出てきたのだった。あの先輩、そんなに顔を真っ赤にするならやらないで下さい……。見てる僕の方がやらせたみたいで恥ずかしいです……。

 

「今井さんに風邪の時のご飯は何が良いのか聞いたら、『おかゆなら食べやすいと思うよ』って言われて……」

 

「あ、ありがとうございます…」

おかゆのパッケージを顔を隠すように持つ白金先輩。

 

「本当に助かります…、自分だと何も食べなさそうだったので…」

感謝の言葉を伝えると、次第に白金先輩から笑顔が溢れる。

「そ、それじゃ今から湯煎して作りますね…」

「い、良いんですか…?」

買ってきてくれたのに、作ってもらうだなんて…。

 

「灯夜君は今風邪で熱を出してるので、これくらいは良いですよ」

先輩の優しげな微笑みに、ふと安心感を覚える。

「あ、あと、作る間に着替えてきたらどうですか?その格好だと、キツくないですか?」

先輩に言われて、自分の服を再確認してみる。そうだ、外に出るから部屋着から着替えていたのだった。

 

「じゃあ…先輩のお言葉に甘えて…」

一度リビングを後にして、自室にて着替えることに決めた。

 

 

「あ、温かい格好の方が良いですよ」

リビングの方から、心配してくれたのか大きな声で言ってくれた。

 

 

「は〜い」

この時の白金先輩に昔のアイツの面影を感じたけれど、すぐに頭から消した。

 

 

 

「先輩〜、着替えて来ました〜」

 

 レトルトのおかゆを湯煎し終えて、食器を探して居ると着替えを終えた灯夜君の声がしてきた。してきたけど、何処か何時もと様子が違う。

 

「ちゃんと温かい格好にしてきました〜」

 

「じゃあ、そこにすわ…」

食器を見つけ取り出そうとしたその時、

 

「と、灯夜君?」

黒くてダボッとしたパーカーを着ていました。そこには飾りなのか袖に包帯と、片方が包帯付きの猫耳がフードに付いていた物を。ちなみに今彼、顔を真っ赤にしながら猫耳フードを被った状態です……。

 

 

「先輩…?」

こくりと私を見て首を傾げる灯夜君。

 

 

「あ、ご、ごめんね…」

どうしよう、普段はすっごく緊張しているというかピンと張っているような彼が、この前の『俺』と言っていた彼が、熱を出すともの凄い……、ふわふわした感じになるだなんて。

 

 

「今、お皿に移すから」

 

 

「ごはんですか…?」

 

 

「そ、そうだよ…」

どうしよう、何か顔に力が入らない……。

 

 

「わ〜い、先輩のごはん〜」

駄目だ、普段からあこちゃんから甘えられる事は有るけど……、ギャップがありすぎる……。でも、これは風邪のせいなんだから。ちゃんと看病してあげないと、そのために来たんだから。

 

 

「と、とりあえず、椅子に座って待って……」

少し考え事をしていた空きに、さっきまで居た灯夜君の姿が見えない。

 

 

「灯夜君?」

キッチンから覗くだけでは見当たらないので、リビングの方に足先を向ける。リビングに近づくと、テレビの音が聞こえてきた。どうやら、こっちに居たようだった。

 

 

「灯夜君、おかゆもう少しで移し終わるから…」

 

 

「は〜い…」

返事は返してくれたんだけど……、テレビの方に夢中でした……。何かこう、敗北感が胸の中で蹲るような感じがする……。

 

 

 お皿に盛り付けた出来立てのおかゆを、灯夜君に出すと一口ずつ冷ましながら食べていた。私はその様子をコーヒーを飲みながら見守る。

 

「先輩はさ、学校すき?」

おかゆを食べながら、灯夜君からの唐突な質問に、

 

「えっと、好きと言えば好きかな…」

慌てて答える。

 

 

 それを聞いた灯夜君は、

「俺は嫌いですよ……」

先程までの幼児化は消え、何時もどおりの口調に戻りながら答えた。でも、未だに意識はぼんやりしているようで、目が虚ろだった。

 

 その虚ろな瞳を私に向けて、彼は食べる手をゆっくりと止めた。

「教室に行けば、『奇異の視線』、『聞こえてくる、陰口』、普通かもしれないですよね。こんな事……」

 

 そして、灯夜君は溜め込んでいた何か吐き出し始めた。

 

「俺以外にもっと辛い経験をしている奴らが居る、だからこんな日常は普通だって言い聞かせてたけど……。その所為で、終わらない頭痛、永遠と鳴り響く耳鳴り、突き刺さるような胃痛、耐えられないですよ……」

 

「と、灯夜君…」

ぽつり、ぽつりと言葉を零す灯夜君、その勢いは止まることを知らなかった。

 

「自分が悪いのは分かってる……。何時までもアノ事を引き摺ってるから、今の状態に成ったままだって……。

 でも、俺にとっては全てだった……。俺にとっての始めてで、失いたくなかった……。だから怖かった、不意に消えてしまいそうだから……。信頼してない、そんな事を言われるだなんて……。信頼してても、心の何処かで怖いんだよ。

 

 

     いなくならない、そう言ってくれたのに……。俺の前から居なくなったじゃん……。

 

 

              嘘つき、うそつき、ウソつき!

 

 

 何が悪かったの、ねぇ、何が悪かったの……。俺、一生懸命に頑張ったんだよ……。色々何が良いのか、どんな時にはどんな対応が良いのか、いっぱい調べて、調べていたんだよ……。

 

           笑顔が、その優しい笑顔が見たかっただけなのに……。

 

 学校違うから、帰り道とかで会えないけど連絡とってたのに……。大丈夫、アイツなら大丈夫、神様に毎日お願いして、何も起きず無事に一日が終わるのを願ってた。

 

 でも結局は、俺が邪魔だった……。俺が居るせいで、俺がお前を縛るせいで、他の『男友達』と話が、楽しい話が出来ないって……。ずっと友達から言われてたんだよな、『何で、あんな奴と付き合ってるの?』、『早く別れなよ』って……、だから別れたんだよな……。

 

 お前の意思が、お前の思いが全く見えないよ……。他人に言われたからそうとしか思えないよ……。

 

      何で、難で、南で、なんで、ナンで、ナンデ?何がいけなかったの?

 

 

 俺が君のために全てを投げ出そうとしたから?

 

 

 俺が君以外には何もいらないって言ったから?

 

 

 俺が君の事を心配して危害を加えた奴らを消そうと思ったから?

 

 

 俺が君の交友関係で相談を受けた時に動いたけど、失敗したから?

 

 

 ねぇ……、本当に何が悪かったの……。

 

 

 重いよね、気持ち悪よね、醜いよね。でも、それだけ好きだった、大好きだったんだよ。

 

 

 君を俺以外の誰にも見せたくない、君を俺以外の誰にも触れさせたくない。

 

 

 汚れた世界の空気を吸う必要はない、汚れた世界なんて見る必要はない。

 

 

 綺麗な、可愛い君にはこの世界は毒なんだから。

 

 

 だからさ、側に居て欲しい。あとには何も望まないから。

 

 

 嫉妬と独占にまみれだけど、何よりも君の愛が欲し…かっ…た…」

 

 灯夜君が自分の中に有る『深い闇』が全て出し切ると、再びおかゆを食べ始めた。丁度いい感じに冷めたようで、黙々と食べ進めた。虚ろな、真っ黒な瞳に涙を浮かべながら。

 

「……」

何か声を掛けようとしたけれど、今の私には何も、何を言えば良いのか解らなかった……。

 

「ねぇ、先輩?」

さっきまでの普段の口調からの灯夜君は、再び幼児化したような雰囲気になって私を呼んできた。

 

「先輩と知り合ってから、俺少しだけ学校が楽しいですよ」

灯夜君……。

 

「先輩は優しいし、話してて心地が良い……。最初はお昼ご飯誘われてびっくりしたけど、NFOでも一緒に遊んでて、本当に楽しくて……」

先程の何かに取り憑かれたように、暗い過去を話していた彼とは思えない笑顔で、

 

 

「今、俺、先輩と知り合えて幸せだと思ってます」

 

 

 涙を頬に伝わせながら、確かにそう言ったのだった。

 

 

「灯夜君、私は……」

 

 

 彼の言葉に、今度こそ返そうとしていた矢先、机にゴンッと鈍い音共に灯夜君倒れてしまった。慌てて駆け寄ると、

「すぅ……、すぅ……」

ご飯を食べて落ち着いたようで、それにさっきの事で何かから少し開放されたようで、安心しきった表情で眠ってしまっていた。

 

「じ、自由すぎるよ……」

本当に灯夜君は不思議である。

 

 屋上で出会ったあの時から、お昼ご飯を生徒会室で一緒に食べるようになり、共に下校し、出掛けた先で偶然にも出会い一緒に遊んで。

 

 でも、私はまだ何も知らなかった。灯夜君の中に抱える『深い闇』を。クラスで聞いたあの陰口は、灯夜君も分かってはいたんだ。だけど、自分のせいだと蓋をして、誰にも言わずに溜め込んできていたものを。

 

「い、意外と軽い……」

身長が男の子中では高い(目測)方だと思っていたけど、見た目より、むしろ心配になるほどに軽い。椅子からゆっくりと体を起こし肩に手を通して担ぎ上げる。

 

「よいしょっと……」

運びづらさはあるものの、バランスを取ればそれ程難しくはない。だから、灯夜君を一旦部屋に連れて行かないと。

 

「灯夜君、灯夜君、部屋はどこ?」

寝てしまっているけれど、試しに聞いてみる。

 

「あそこ〜」

あれ、起きてる?いや、でも指さしたらすぐに手を引っ込めちゃったし。

 

「ありがとう…」

それはそうと今は部屋に運ばないと……。

 

 あれから四苦八苦しながら、何とか運び込むベッドの上に寝かせることが出来た。寝かせる際にも何か寝言で『わ〜』とか『い、いや……』とか言っていたけれど……、貴重な灯夜君の寝顔が見れたということで。

 

「それじゃあ、私は帰……」

部屋を後にしようとしていた時、ふいに電源の入ったパソコンの画面が目に止まった。その中にある『****』とうファイルに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあね、灯夜君……」

管理人さんから借りたマスターキーで扉を施錠し、眠る彼を起こさぬように部屋を後にした。

 

 

 

 鞄の中に、来るときには無かった二つの新しい荷物をを入れながら……。




今回は感想の方で文章のアドバイを頂いたので、
それに沿うような形で試しに書かせてもらいました。
アドバイスありがとうございます。
えっと、今回は盛大な灯夜の病み回ということでした……。
一部は作者の個人的な感情と私情が混ざり込んでおります。
灯夜は重いのですかね……、作者はもう分かりません…。
それと、燐子ですが最後の部分で何をしていたのでしょうかね?
次回からの燐子をお楽しみに。
今回もご閲覧していただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。
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