ヤンデレに愛されたいと思う今日この頃……   作:龍宮院奏

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連続して病み成分多めです。
今回はたえの病みがメインです。


Nineth,ヤンデレ

 私には好きな人が居る。うさぎと、ギターと同じくらい好き。同じくらい?やっぱり、彼の方が好きかな?

 私が彼を好きに成ったのは、中学生の頃だったんだ。

 

『また花園さん、訳の分からない事言ってるよ…』

 

『花園は宇宙人だからな、俺らとは違うんだよ』

 

 学校の教室では何時も皆が私の事を『異物』、『変人』、『宇宙人』と扱う。それは大きな声で言う時もあれば、影で聞こえるか聞こえないかの声で、あとは紙に書いてやり取りしてるのも見たことも有る。

 自分では、何がおかしいのか分からない。私は、私らしくしているのに……。

 

 

「お前らさ、いい加減飽きないのか?」

 

 

 そんな教室の異常な日常に、彼がふいに爆弾を落としてくれた。

 

 

「毎日、毎日、他人に対して『あ〜だ』、『こ〜だ』って……。よっぽど暇なのか?」

教室で、特定の人を持たず、その場その場で交流を持つ子が声を上げたのだ。

 

 

「なんだよ、お前『宇宙人』の味方するのかよ?」

 

「だ・か・ら……、そう言うのが暇なのかって聞いてるの?愚息虫」

 

「お前……」

私を『宇宙人』と呼んでいた男子に『ぐそくむし』?と、少し強張った声で言い放つ。

 

「そうやって他人を馬鹿にしてないと、自分が惨めに見えるんだろ?いやぁ、本当に厭らしね、あぁ厭らしい……」

 

彼は言葉を止めることはせずに、今度は笑みを含んだ声で言い放つ。

 

「ば、馬鹿にすんなよ!何で俺がそんな事をお前なんかに、大体俺以外にもコイツを『宇宙人』って呼んでるんだぜ」

 

私を指を指しながら、今度は教室の皆を見渡しながらその男の子は話した。

 

「周りの奴らも皆そう思ってんだよ、だから俺だ」

話たけれど、結果はその途中で終わってしまった。

 

 

「それがどうした?蛆虫?お前は自分が彼女に向けて言っていたことは、『周りの共感があるからやりました』、『周りの皆も同じ意見で居るのでやりました』、そう言いたいのだろう?

 

お前、それはどうしようもないクズだな。おっと、お前は元からクズだったな」

彼が男の子よりも早く、そしてより一層の強張った声で言ったから。

 

 

「猿真似同然の行為を何胸張ってんだ?馬鹿か。それに何をどう見たら、コイツが『宇宙人』になるんだ?あ、そうか!お前が地球外生命体だからそう見えるのか。そうかそうか、そうだよな。お前が本来住んでいる『ゴミクッズ星』からしたら同じ宇宙に存在する星の生命体は宇宙人に見えるんだよな?なぁ、そう言うことだろう?違うの?まさか、そんな筈は無い。だって、お前は『宇宙人』ってコイツを断言して、固有名詞を使って断言したもんな。

 いや、否定は受け付けないから。だって今現在地球の天文学において、明確な地球人以外の生命体を確認されていない、のにも関わらず『宇宙人』と『固有名詞』を使ったんだからさ。え、嘘?冗談?そうなんだ、なら『名誉毀損罪』かな?彼女自身名前が有るだろうにね、そうだろう」

 

「え、あ、うん……」

突然私も会話に参加させられたので、びっくりして取りあえずの返事をしてしまった。でも、正直目の前の事すらまだ理解が追いついていなのだけれど。

 

 

「彼女にも名前が有るようだ。なのにお前は『宇宙人』と言った、さっきのは俺からの警告だったのに……。あっさりと無視してくるから、でも代わりにもっと後悔を仰ぐには良い材料が手に入ったんだけど」

 

 

 理解の追いつかない頭で必死に彼の言葉を理解しようと試みて、頭をフル回転で使った時ようやく彼の言葉を理解した。

 

 

「自分達とは『何かが違う』、その『違う』を理由に『恐怖』や『不気味』と感じる事は有るのだろうがな……。その生まれ出てきた感情をそのまま言葉に出していいという事はないんだよ!その事すら考えられないお前たちの方が、余程の『阿呆』と言えるだろうよ」

 

 

 彼は私に向けられた言葉を否定してくれた、彼は私を助けてくれた。

 

 

「それとお前たちの会話全て時刻、場所、俺の知りうる限りで記録しているからな。あぁそうだな……、俺も大層な暇人だよ。だけど、お前らよりはマシだけどな、だって『人を虐める』『人を貶める』害虫を掃除できるんだからな」

 

 

「ちなみにもしこの場で俺に何かしてみろ、俺が書きに書き溜めたノートを全て警察、学校、親に差し出すからな。分かったら、俺に手を出そうだなんて考えるなよ?」

声高らかに笑いながら宣言する彼は、授業のチャイムが鳴ると共に自分の席に戻ってしまった。

 

 そしてそれからは、私に対しての『宇宙人』などと言われる陰口は一切聞こえなくなった。

 

 助けてくれたあの日から私はまだ彼の名前すら知らなかった。座席表で確認すると『谷崎灯夜』と書かれていた。どうにかして、お礼を言いたいと思って彼に話をしようとするのだけれど、何故か向かおうとすると何時も居ないのだ。

 

 

「どこに居るのかな?」

 

 言葉に出してみれば変わると思った現状は変わることはなく、代わりに私の中での変化は巻き起こっていくのだった。

 

 

「誰だ?お前?」

探し始めて数週間が立った頃、偶々入ってみた体育館の二階のフロアの隅の方に寝ている彼を見つけた。私が彼を見つけると、彼も私に気づいて寝ている体を起こし尋ねてきた。

 

「この前助けてくれて、ありがとう…」

 

「助けた?俺が助けるだなんて……」

まさか、あれだけ教室で多分クラスの半数以上を敵に回していたのに、覚えてないの?

 

「そうか、あの蛆虫共に絡まれていた……。俺はお前を助けたつもりはない、単純に見ていて気分が悪いから潰しただけだ……」

口では無愛想に言ってるけど、こっちの顔見ないでいる。少し見えだけ見えたけれど、顔が赤いから照れているんだと思う。

 

 

「ねぇねぇ、何でここに居るの?」

 

 

「俺か?俺の自由だろ?」

会話をしようとすると、わずか二言で終了。

 

 

「ねぇねぇ、ここ温かいの?」

午後の暖かな日差しが射し込む窓辺の日が当たる場所に、学生服を掛け布団代わりに寝ている。

 

 

「あ、温かいね」

返事が無いので、勝手に隣に座る。

 

「お前はアイツらの事どう思ってる?」

 

「う〜ん?特には、ただあんまり良い人じゃないって思うくらいかな?」

口を開いたと思ったら、私ではなく彼らの事を尋ねてきた。

 

「俺から見れば、アイツらに存在は価値は無いと思うがな……。『自分の中にある絶対的なモノ』、それが無い事をアイツらは恥じている……。だから、お前や俺を『邪魔者』、『忌み嫌う存在』として扱う事で心の平穏を保っている……。そんな奴らと、長い昼休みを一緒に過ごそうだなんてまっぴらだな」

 

「『自分の中にある絶対的なモノ』?何それ?」

 

「はぁ?だから、『何が有っても譲れないもの』、『他人に奪われたくないもの』、『失いたくないもの』だよ……」

彼の言うことにいまいちイメージがわかなくて、もう一度聞き直すと今度はちょっぴり判り易い答えで返ってきた。

 

「『ギター』とか?」

頭にまず思い浮かんだのは、小学生の頃『神』が教えてくれたギター。これは私にとって、一番大事なもの。

 

「へぇ〜、『ギター』やるんだな……」

今まで反応を示さない彼が初めてちゃんとした反応を見せた。

 

「そうだよ、何か好きな曲あるの?」

このチャンスを逃すまいと、私は質問してみた。

 

 

「『コノハの世界事情』、『六兆年と一夜物語』だな」

 

 

「どんな曲?」

 

 

「お前、知らないのか」

今度は起き上がって、私の方をまじまじと見つめながら、

「『コノハの世界事情』は『じん(自然の敵P)』っていう人が作ったシリーズ系の曲の一つ。『じん(自然の敵P)』の曲はどれもストーリー性があって曲を聞くだけで頭に情景が浮かんでくるんだよ!

『六兆年と一夜物語』はボカロの中でも人気が高くて、曲から小説に成ったやつだ。まぁ、『じん(自然の敵P)』さんはアニメ・劇場アニメ・小説・漫画化したけどな……。

それはそうと、これは本当に泣ける。曲良し、歌詞良し、MV良し、何処をとってもとにかく泣ける。歌詞だけで想像しても泣けるのに、MVと合わせてみたらそれはもう……」

 

「何がそんなに可笑しいんだ?」

 

「だって、教室に居る時の君からは全く想像も出来なかったから」

曲について、熱く、表情豊かに、身振り手振りを着けながら、語ってくれた。

 

「まぁ、そんな所だ……」

私が言ってしまったのが悪かったのか、彼はまた教室に居る時の『無表情』に戻ってしまう。

 

「ねぇ、それを私が弾いたら聞く?」

少しだけ寂しいと思っていた。

 

「そうだな…、お前が弾けるようになったら聞いてやる…」

 

「じゃあ約束だね」

彼のあんなに心が現れた顔が、私に見せてくれた顔が、無くてってしまうのが……。

 

 

 この日からだった、私が彼と交流をし始めていったのは。

 

 

「あ、おはよう。ねぇねぇ、これなんだけどさ」

最初は朝の挨拶をして、聞いた曲から曲想が似ているものを聞いて話を振ってみたり。

 

「ねぇねぇ、今日はあそこ行かないの?」

慣れてくると、昼休みに彼が寝ている体育館の二階で私が話しかけてみたり。時々、彼の琴線に触れるものも有るようで、その時はまた色んな顔を見せてくれた。

 

「偶には、一緒に帰らない?」

そして何時の間にか、私と彼は家から学校までの道のりも一緒に行き来するようになった。

 

 私にはこの時間がとっても幸せな時間だった。大好きな兎に囲まれている時、大好きなギターを弾いている時みたいに、胸が高鳴るようでドキドキする。だからこそ、彼が変えてくれた日常は今までよりも綺麗だった。

 

 

 

 

「彼女が出来た……?」

 

 

 

 

 あの事件から一年近くがたち、中学生の私達は受験期の三年生になったのだ。勿論、彼とはクラスが一緒で本当に嬉しかった。今までみたいに、話したり、一緒に帰ったりが出来るし、その一つ一つを大事にしようとしていたのだけれど……。

 

 

 現実は、私から彼をいとも容易く奪い去っていった……。

 

 

 彼は三年生に成った時、内申の為だと委員会に入ることにした。入ったのは図書委員会、理由は『仕事少なそうだし、うちの学校の図書室人来ないし』というもの。理由があまりにも彼らしくて、思わず笑ったけど。

 勿論、彼との時間を削りたくないから、誰も居ない放課後の図書室に二人で勉強も兼ねて通い始めた。来る日も、来る日も、来る日も、来る日も、来る日も、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日。

 

 でも、図書室だから偶には誰か来ることもある。私以外の女の子、同じ学年のようで上履きの色で分かった。

 

「あ、あのこれの貸出良いですか……」

 

「はい、これですね」

委員会の仕事をしている時の彼は無表情ながらに、教室で放つ『人よけオ〜ラ』(私が考えた)を出さずに事務的にこなしていた。

 

「この本、もしかして〇〇先生のファン?」

 

「は、はい…!私、この先生の第一作から読んでいて……」

 

 この時に気づくべきだった……、私が彼に向けて好意を抱いていることに……。

 

「それで、この作品なんだけど……」

 

「あぁ、それか?読んだけど、俺にはあんまり……」

 

「え、そうなの?これ凄く面白いよ?」

 

「何と言うかさ、こうモヤっとするんだよ。最後の締め方がハッキリしないからさ」

 

「それが良いんだよ。だって、この方が読み手に考えされるでしょ?」

 

「そうなんだろうけど、俺は好かんな」

 

 時間が経つにつれて、あの時彼と話した女の子と彼はよく此処で話すように成った。趣味が同じようで、私の知らない漫画やアニメの話をしたり、ゲームや同人?の話をして、私はその会話に入ることが出来なかった。

 

 私の方が、私の方が彼と居たのに、私の方が先に彼と居たのに……。二人の会話を見ていると込み上げてくる胸のモヤモヤ、何かじっとりとして離れないような感覚が胸を締め付けてくる。

 

「遠くに行かないよね……」

帰り道で、そっと彼の隣で呟くも聞こえることは無かった。だって……、あの女の話しを私にしてくるんだから……。

 

 

 

 そして叶って欲しくない、望んでいないものだけが、私の前には溢れていく。

 

 

 

 彼女が出来たからしばらくは一緒に帰れない。私と、彼だけの静寂の図書室で、彼はその時目も合わせてはくれなかった。

 

「ま、また、一緒に帰れるよね……。また、一緒にお昼休みに……」

 

「……」

彼からは返事すら帰って来なかった……。

 

 この時、私の心の中で明確に何かが音を立てて壊れていくような気がした。薄々は気がついていたけれど、あの女が来てから『彼は笑顔』に『私は心にヒビが入る』そんな毎日だったのだ……。そして今日、目を背けてきた現実に向かい合う時がやって来たのだった。あまりにも突然で、あまりにも残酷な、運命の日……。

 

「じゃあさ、こういうのはどう?」

そんな運命……、私は嫌だ……。私の方が、私の方が先に、先に彼と出会っていたんだ……。

 

「もしもその彼女と別れたらさ……」

初めて……、初めて私を助けてくれた。初めて……、初めて私の前で笑顔を見せてくれた。

初めて、私を……普通な人って見てくれた……。

 

 私の一方的な思いかもしれない、だけど私は思っていたんだよ……。

 

「私のモノになってよ。私の、ワタシだけのモノに……」

なのに君は私を裏切ったんだ……。だからさ、今は一度解らせてあげる為に時間をあげよう。

ワタシは優しいもん……。

 

 君が好きな彼女はきっと裏切る……、君がどれだけ好きで居ても、君がどれだけ彼女の為に動いても、きっと無駄なんだよ……。

 

 だから、今はしっかりと身に刻んでよね。ワタシを裏切ったその身にじっくりと……。

 

 私が君から感じさせられた、この胸を抉るような痛みを、心が張り裂けるような悲しみを、何処までも真っ暗な恐怖をさ……。

 

 

 君は笑った、あの女の前で私の前で見せた笑顔を見せていたね。

 

 今日は楽しかったの?またいっぱいお話していたもんね、私聞いてたよ。

 

 何で、君はそんな彼女と近づくのさ……。それに何であの女も、彼の手を握るの……。

 

 彼の笑顔も、彼の温もりも、彼の優しさも、彼の声も、彼の言葉も、彼の時間も、彼の、枯れの、狩れの、涸れの、刈れの、穫れの、嗄れの、借れの、駆れの、苅れの、カレの、カレノ、カレノ……。

 

 あぁそうだ……、これは彼が受けるべき罰の下準備なんだ……。そうだった、私ったら……焦っちゃ駄目だよ……。

 

 彼はだって私のモノになるんだからさ、決まってるんだよ……。だから、私はワタシで頑張らなくちゃ……。

 

 

「二人の、フタリダケのエイエンノ花園ヲつくろうネ……」

 

 

 明日も、彼がいっぱいいっぱい幸せでありますように。

 

 そして、一日でも早く…ワタシノモノニナリマスヨウニ……。

 

 真っ黒な、真っ黒な表紙のノートには、びっしりと書かれていた。彼の生活リズム、彼の話した言葉、彼の人間関係、彼の携帯の履歴、彼のパソコンの履歴、彼の好きな物、彼の嫌いな物、彼の苦手な物、彼の得意な物、彼が恐れる物……。

 

 彼が心から願う望みについても……。

 

 私はあれから待ち続けた、果報は寝て待てって本当にそうだとも思った。だってさ……、私のお願い……、神様が叶えてくれたんだもん……。

 

 

 高校一年生、彼はあの女とは違う学校。けれど、私とは同じ学校、同じクラス。何で違うのか?何か、彼には彼の目標が有って、あの女にも目標があるから別にしたんだって。

 彼は『お互いの夢の為』って言っていたけど、本当にそれで上手く行くのかなって、私は薄ら笑みを心の中で浮かべた。最初の頃は彼もクラスの男子とも仲が良くて、人によりけりだけど前よりは楽しそうだった。

 その時の彼の笑顔は本当に穏やかで、私まで見ていてホッとするほど。高校生に成って、バイトを始めたり、バンドを組んだりして、彼への『監視』を行うのも大変に成っていた……。

 

 

 けど、彼は戻ったのだ。私が知る、中学校の頃の無表情な彼に。

 

 

 理由なんて一つしか無い、『彼女と別れた』のだ。私はその経緯も全て知っている。だから言ってしまうけど、彼は確かに無表情で愛想が無く、人に対しての遠慮なく物事を突きつけていた。

 

 けど、それが原因のきっかけだったのだ。あの女には少なからず友達がいたようで、それも割と付き合いの長い……。簡単で、あまりにも簡単で、正直言えば私は心のそこから笑った。

 

 

『別れたほうが良いと思うよ』

 

 ただこの一言でさ。

 

 

 あの女の友達、調べてみれば私を『宇宙人』と呼んでいた人の中の一人だった。まさか、直接彼に復讐することなく、彼の大事な人を使って復讐してくるだなんて……。あぁ、だから彼は『愚息虫』って呼んでいたんだ。

 

 彼の事をずっと見ていたから分かるけど、前に比べて明るい彼は本当に孤立を選んでしまった。

 

 家に仕掛けてある盗聴器からも、永遠と泣き止むことなのない嗚咽した声。意思の見えない、最後まであの女に対する謝罪の声……。羨ましい、妬ましいと、彼にそれだけ思われていたんだから……。

 

 そして彼は心を閉ざした。『もう……、信じない……』、別れてから数週間が経った頃に彼は部屋で呟いたのだ……。それから彼は心を閉ざし、考えを変えた。『信じても裏切られるなら、最初から自分の事だけを見てくれて、愛してくれる人が良い』と。結論が『ヤンデレ』だった。

 アニメや漫画が好きだった彼だから、少なくともそういう物に触れる機会は多かったようで、誰も居ない締め切った暗がりの部屋で『アイシテル』、繰り返すようにその言葉を聞き入るように。

 最初は小説から、次に漫画、最終的にボイスドラマと呼ばれるものに行き着いたのだった。本当は私以外の女の声で、彼の心が満たされいくのが苦しかったけど、彼が私に負わせた苦しみを知って貰うのには良い機会だった。

 

 濁りはなく、ただ真っ黒な瞳の彼。けれど、今は濁り、くすみ、どろどろした黒の瞳の彼。

 

 決して人を信用すること無く、ただ一心に自分を呪っている。呪い、恨み、悔み、苦しみ、その苦しいから開放されようと死を考えたり。時には、何も考えないように音楽を聞いたり、ボイスドラマを聞いていたり。

 

 

「私の痛みが解ったでしょ……、貴方が私にもたらした痛みが……」

 

「約束、覚えてるよね……。私は準備万端で、その為に頑張ってきたんだよ……」

 

「胸の中をどろどろした何かが蠢く中で、嫌になるような光景を目に焼き付けていく中で、君が目の前から奪われていく中で……」

 

「私と君の理想郷、私が君を愛して、君が私から愛される。もう二度と離さない、もう二度と裏切られない」

 

「お互いが、お互いの望みを叶えるんだよ?君が、泣き叫んでいた、嗚咽していた中で言ったんだよ?」

 

  『もう二度と裏切られたくない……、もう二度とこんな思いをしたくないって……』

 

「だからおいでよ、『花園ランド』に。君が望むものは此処に在る、君が失ったものは此処に在るんだから」

 

「十分、充分、君は感じたんだから……。もう、もう本当に堕ちてしまおうよ……」

 

 貴方がどれだけ世界を敵に回しても、君だけを助ける、君だけを守り抜く、って誓った所で彼女は裏切った。

 

 けど、私は裏切らない。貴方が私を助けてくれる、私だけを守ってくれる、その言葉に私は身を委ねる。

 

 そして、私は貴方を何処まで愛し続ける。世界が貴方を拒んでも、世界が貴方を否定したとしても。

 

「私の花園は目の前に、君の花園は目の前に。

 

 近くに在って、遠くにある。

 

 ぐるぐる回る、メリゴーランドのように、私は君を捕まえて。

 

 真っ白な兎は信じて跳んでいた、そこに光があると信じてね。

 

 真っ黒な兎は後ろから見ていた、そこに光が無いことを知っていて。

 

 落ちた穴の中は真っ暗闇、君の白さも此処では見えない。

 

 染まる白色、染め上げる黒色。溶け合って、混ざり合って、何時しか境界線が溶けて無くなる。

 

 私の色に君は染まる、君は私を染まっていく。

 

 ねぇ、君は私を何色に見るの?ねぇ、私は君を何色と呼ぶのが良いの?」




おたえの感じが上手く書けないですね……。難しい……。
本編で灯夜が前回話したことの、おたえ視点ですね。
裏切られた者であり、裏切った者の灯夜君…。
そして、彼にその苦しみを与えたおたえ……。
おたえのヤンデレは、優しようで怖いですね……。
でも、そんな感じが良いのかな……。

今回もご閲覧していただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。
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