星の巫女は貴方を待ち続ける   作:アステカのキャスター

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ギルガメッシュ叙事詩
始まりは突然に……


 

 古代メソポタミア文明

 

 

 神代の時代を綴ったギルガメシュ叙事詩

 

 

 神代の時代を統一し、神と人の間に生まれた半神半人

 

 

 ウルクを治めた人類最古の王、名をギルガメッシュ

 

 

 彼はあらゆる財、この世全ての財を我が物とした

 

 

 古今東西、あらゆる贅沢をつくし、あらゆる財を手にした王

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、彼にも唯一手に入らなかったものがある

 

 

 

 彼は手に入れる事が……いや、彼の手にも余る程のものだったと後に気付く事になった。

 

 

 

 英雄王たる彼は欲した

 

 

 だが、彼女は断った

 

 

「私は貴方の財になるつもりなどない」と頑なに断った不敬な女が居た

 

 

 

 

 

 これは、彼が唯一手に入れられらなかった女の話である

 

 

 ────────────────────

 

 

「ギル、今日は何処に行くの?」

 

「そうだな……東の街へ行くぞ。確かあの場所で売る至高の酒は確かに旨いからな。久方ぶりに空を肴に飲むとしよう」

 

 

 ウルクの王ギルガメッシュは親友のエルキドゥを連れて東の街を歩いた。因みに仕事は文官に押し付けたまま、自由奔放にウルクの街を歩いていた。

 

 

 若き日のギルガメッシュは傲慢独善であり、自由奔放。

 しかし実力はウルクの王として君臨するだけのことはある程の傲慢たる強さがある。隣を歩くエルキドゥは()()()()()()()()()()。その力は神の折り紙付きだ。

 

 

 エルキドゥは神々が用意した神の兵器、ギルガメッシュを殺さんとばかりに向けられた刺客だ。だが、2人は殺し合いの果てに友となった。互いに互いを認め合ってこその友だ。

 

 

 だが、エルキドゥは造られてから世界を知らない。

 生きる糧であったギルガメッシュの抹殺も失敗に終わり、何をしていいか分からないし、何があるのかさえまだ分からない。

 

 

 ギルガメッシュはそんなエルキドゥを連れ出し、外の世界を見せているのだ。まあその対価は文官達の胃にストレスをマッハで与えているのだが。

 

 

「むっ……?」

「んっ……?」

 

 

 そんな2人の耳に何かが聞こえてきた。

 綺麗でいて澄んでいるような、優しい声が歌に乗って響き渡る。

 まるで癒しそのものを街に届けているようだ。

 

 

「これは……魔術?」

 

「ふむ、恐らく拡声の魔術を使っているのだろう。どれ、少し見に行ってみるか」

 

 

 ギルガメッシュとエルキドゥは声の発生源の場所に向けて歩き出した。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

「〜〜〜〜〜♪」

 

 

 長い銀髪が風で棚引いて揺れる。

 

 彼女は歌を歌った。今日もウルクに平和がありますようにと願いを込めて歌っていた。風が歌を運び、太陽が彼女を照らし、大地が彼女を祝福しているかのように騒ぎ出すようだ。

 

 それでいて優しく、海の小波の音より落ち着く声に誰もが癒されながらも暖かさに満ちている。

 

 その声から傷を負っていた者達の傷が癒えていくのをみて、見物していた人々が感嘆の声をあげるのが聞こえた。

 

 それはまるで聖女のようで、その声、その蒼い瞳に()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ギルガメッシュには初夜権で抱いた絶世の美女も居ただろう。だがそれとは比べものにならない程の可憐さと儚さのような雰囲気を持つのだ。

 

 隣にいるエルキドゥでさえ、その歌が頭から離れない程の強烈な経験が刷り込まれた。その歌声はまるで天上から降りた天使の祝福にも思えた。

 

 歌を終えると、銀髪の少女は一礼して木材で作った舞台から降りていた。

 

 

「先程の歌声は貴様のものか」

 

 

 その言葉に振り向く銀髪の少女。

 ウルクの王であるギルガメッシュに目を見開く。いやそもそもこんな所に来ているとは思わなかった。

 

 

「……面白い。まだ20も生きておらぬだろうに、そこまでの魔術が使えるとは見事なものよ」

 

 

 不思議と視線が奪われて離せなくなった。

 こんな経験は初めてだ。ギルガメッシュが聴いたどの歌よりも透き通り、ギルガメッシュが抱いたどの女より可憐だった。

 ギルガメッシュは銀髪の少女をみると、ふっと可笑しそうに笑った。

 

 

「貴様の歌声は何物にも勝る美酒のようだ。良いぞ。貴様にこの我の財となることを赦そう」

 

 

 ギルガメッシュは銀髪の少女に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、普通に嫌です」

 

「そうかそうか。ならば我の元に………………はっ?」

 

 

 ギルガメッシュはポカンと呆気に取られた。

 自分はこのウルクを統べる王であり、王は絶対の存在でその自分からの命をこの銀髪の少女は正面から断ったのだ。

 

 隣にいるエルキドゥさえその事に驚いている。

 

 

「私の歌は誰か1人の為に歌うんじゃありません。私は私が歌いたいから歌ってるだけで、強要されて歌うものじゃない」

「お、おい!? この方はこの土地を統べるギルガメッシュ王だぞ!? お前さん死にたいのか!?」

「この程度の事で殺すなら王の器が小さいだけでしょ」

 

 

 ブチッとギルガメッシュの何かが切れた。

 王を前にしてこの不敬。だが、たかが子供に怒号でも浴びせたら負けな気がするので黙っている。エルキドゥは中々豪胆な少女だと思いながらも少女は続ける。この不敬で殺されないか否かと側にいた男の人が心配する。

 

 

「私の理想の王は寛大でちゃんと民を考えて行動する人だし、器が狭くて、民に仕事を押し付けて自由奔放な穀潰しみたいな人に仕えたくはないし」

 

「ぐっ……!」

 

「それにウルクだって女神イシュタルが管理しているとはいえ人口が増えて土地も狭くなってるから問題多いし、このままじゃ国全体が人に食い尽くされて自然崩壊、貴方は今何やってるの?」

 

「ぐぬぬぬ……!!」

 

「確か初夜権だっけ? 抱いた女の人も居るのに見境なく誰かを指名って猿じゃないんだからそれよりやる事くらいあるでしょ」

 

「言い方はアレだけど確かに正論かもね、ギル」

 

「ぐはっ……!?」

 

 

 空気の読めないエルキドゥが少女の言葉の後にとどめを刺す。

 少女の言っている事は紛れもなく正論だ。この程度の不敬で殺せば王の器が知れると言うもの。幾ら天上天下の王とは言え自由奔放が過ぎて、他者に仕事を任せて遊ぶ穀潰しと言えば確かに正論だ。

 

 更にはウルクの土地問題、人口が増え過ぎたせいか土地をどうしても増やさねばならないが、神が管理する土地への侵略は不可能。唯一あるのはフンババの森くらいだが、アレは人が勝てるほど容易い存在じゃない。

 

 更には初夜権にギルガメッシュは寵愛を授けているかもしれないが、見境なく授けているならドン引きである。まるで性欲を処理する道具のように聞こえる(少女の持論)

 

 因みに隣の男の人はガタガタと震えながら何処かに行ってしまった。まあ気持ち分からない事もない。原初の王を前にしてこれだけの不敬をかました少女の未来は無いのかもしれないし、巻き添えは食いたく無いのだ。

 

 流石の原初の王も跪いていた。天に仰ぎ見るギルガメッシュを同じ大地に立たせた上でねじ伏せた。まあ半分は少女が魔術の探知で知った事の愚痴なのだが……

 

 

「…………フフ」

 

 

 何処か壊れたような王は笑った。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハ!!! 良いではないか雑種、どうやら簡単には財にはならんと言う事か!」

 

「……? ギル、なんか嬉しそうだね。 マゾにでも目覚めた?」

 

「そんな訳あるか戯け! この天上天下の王を前にしてこの不敬、本来なら万死に値するが、その姿にして豪胆さは見事と言うべきよ。ならば王命として貴様に命ずる」

 

「はっ? 私は別に貴方の命令なんて」

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 それは少女の予想していたものとは別の命令だった。

 少なからず処女を捧げろとか、鞭叩きした後殺せとか言われたら全力で逃げていた。まあエルキドゥや至高の財を持つギルガメッシュから逃げられるとは思ってないが。

 

 

「私が……宮廷魔導師? いや、何でそうなった」

 

「ふっ、貴様の拡声は魔術によるものであろう?」

 

「まあそうですけど、まさかそれだけで?」

 

「我にも魔術の心得はあるが、ウルクの中では魔術を使えるものは数少ない。貴様には我が城で宮廷魔導師として働いてもらう。無論、歌いたい時に街に出るのは構わん」

 

「いやいや、高待遇かもしれないけど、結局は王様の手元に置きたいだけでしょ?」

 

「その通りだ!」

 

「言い切っちゃったよこの人!!」

 

 

 駄目だこの人。結局自分の事しか考えてない。

 まあ確かに高待遇ではある。他の所で働くよりかは恐らくいいのかもしれない。歌いたい時に歌う事が許されているわけだし。

 

 

「とは言え、貴様も魔術を独学で学ぶのに限界を感じていたのだろう? 我が城や俺の財には魔術の書物が山ほど置いてある。どうだ? 悪い条件ではなかろう?」

 

「私を貴方の財に出来なくとも?」

 

「それとこれとは話は別よ。何せ我でさえ聞き惚れたその美声に容姿、いつか必ず我が財に加わりたいと貴様から言わせてやるとするよな」

 

 

 ギルガメッシュが他に目を付けたのは、その魔力だ。

 歌が聞こえたのは数キロ先に歩いていた所だ。そこまで声を届けるのは並の魔術師でも不可能だ。生まれながらにして膨大な魔力を持ち、国全体を見て述べた感想から聡明さも感じられる。文官に仕事を押し付けた甲斐があったものだ。

 

 

「……ハァ、分かった。とりあえずはその王命に従いましょう」

 

 

 悪い条件ではないし、何より魔術の書物には興味がある。

 そもそもの話、歌に癒しを込める自体でも規格外なのだが、銀髪の少女は自ら魔術を生み出したのだ。とは言え独学では手詰まりだ。銀髪の少女も逆にギルガメッシュを利用しようとするのがせめてもの抵抗だった。

 

 

「小娘、名は何と言う」

 

「……リィエルよ」

 

「ではリィエルよ。貴様は宮廷魔導師として励むがよい。エルキドゥ、一度城に戻るぞ。良い拾い物をしたのでな」

 

「分かったよ。リィエルもついて来て」

 

「はいはい。行きますよ」

 

 

 ぶっきらぼうに答えながらも2人について行くリィエル。

 

 この後に彼女はギルガメッシュ叙事詩において『星の巫女リィエル』と名を綴られるのだが、今はまだ知る由もない。

 

 

 




 真名 リィエル
 身長/体重:163cm・50kg
 出典:ギルガメシュ叙事詩
 地域:バビロニア、ウルク
 属性:善・秩序 性別:女性

・魔術で拡声し、癒しの歌を届ける街角に住む小娘
・長い銀髪に蒼い瞳と少女のような可憐さを持つ。
・生まれつきの魔力量ならギルガメッシュを超える。
・???




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