星の巫女は貴方を待ち続ける   作:アステカのキャスター

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いやー甘々な話にしたいが、作者の文才があって前編後編に分けちまったぜ!しかも少し短い!!

……いや本当マジですいません。

後編を出来る限り甘々にするので許してください。

前編はリィエルがカルデアに召喚された賢王ギルガメッシュとの関係です。では行こう。


幕間の物語
貴方を待つのを終えた日 前編


 場所は召喚部屋、触媒は自分自身の縁、召喚サークルに石を投げ入れ詠唱を開始する。

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。

 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する。

 

 ────告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷しく者。

 

 汝 三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──―!」

 

 

 詠唱が終わると召喚サークルが虹色に回り出す。

 そこに姿を現したのは1人の女性。長い銀髪に星のように輝く蒼い瞳、可憐さと思わず見惚れてしまうほどの美貌を持つ女の人だ。

 

 目を開けて、召喚された女性は告げる。

 

 

「サーヴァント、キャスター。リィエルよ、星の巫女と言えば分かるかしら?」

 

 

 カルデアに召喚された星の巫女リィエルは朗らかに笑いながら知っているか質問する。

 

 

「リィエルさん! 召喚に応じてくれてありがとうございます!」

 

「あら、あの時のカルデアのマスターさんじゃない。私で良ければ力を貸しましょう」

 

 

 カルデアのマスター、藤丸立香は召喚サークルからリィエルを呼び出した。絶対魔獣戦線バビロニアで共に戦った時に縁が結ばれ、既にイシュタルやケツァルコアトル、エレシュキガルにエルキドゥ、何とシドゥリさんまで呼び出せていた。

 

 英雄王に子ギル、そして賢王も既に召喚され、ウルク出典のサーヴァントはリィエルが最後になっていた。どれだけ石を注ぎ込んだかは聞かないでおこう。

 

 

「……ねぇマスター」

 

「賢王なら東のルームに居ますよ」

 

「まだ何も言ってないんだけど……」

 

「顔に出てました」

 

 

 少し顔を赤くして睨むリィエル。

 リィエルの全盛期は17歳だ。現代で言えば高校2年生、恋というものを意識し始める思春期でもある。ギルガメッシュ叙事詩のリィエルの伝承は自身を聖杯に捧げた後、その聖杯はギルガメッシュが死ぬ前に聖杯を壊す事で魂は解放される筈だった。

 

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが()()()()()()だ。

 

 リィエル程の素質があれば『冠位(グランド)』にまで昇華される筈だが、それがされなかったのはギルガメッシュが()()()()()()()()()()()()()()()()()にある。故に魂は永遠にギルガメッシュの財の中の聖杯に眠る。永劫と言う長い年月をただ待ち続けた。それでもギルガメッシュと会う事は叶わなかった。

 

 それが()()()()()()()()()だった。

 

 

 永劫と待ち続けた彼女の魂は()()()()()()()()()()()()以上、英霊の概念に昇華される事はない。

 

 スカサハに似てはいるが、全くの別物だ。自分で死ぬ事すら出来ないと言う意味ではスカサハと同じ。ただ魂がそこにあり、マーリンのように世界を眺める事も出来ず、魂という意識に形は殆どなく、ただ星の下で悠久を過ごしたら普通の人間では発狂どころではない。

 

 魂には限界があるし、摩耗というものが存在する。聖杯の中で不死になろうとそれは変わらない。だからリィエルは聖杯の中でただ迎えに来るのを待つ為に、聖杯で眠り続けていた。

 

 

 リィエルは賢王のギルガメッシュを探すべく、カルデアを歩き始めた。

 

 

 ────────────────────

 

 

 たったった、と何かが近づいてくる気配を感じて、音のする方に視線を向けた。そうして、彼はゆっくりと目を見開いた。

 

 

「ギル!!」

 

「……!」

 

 

 夢を見ているのだろうか、そう思って。けれど、それがすぐに錯覚だと理解もした。そんな、そんな彼女を見たギルガメッシュの胸に広がるのは、静かな絶望であった。

 

 

「やっと……やっと逢えた……!」

 

 

 久しぶりに話したかった。自分が居ない中でウルクはどうなったのか、エルキドゥはカルデアに来てからどうなのか、色々とまた逢って話したかった。

 

 だが、

 

 

「…………えっ?」

 

 

 リィエルが伸ばした手をギルガメッシュは振り払った。

 それに対して動揺を隠せないリィエルがいた。何かを間違えたのか。賢王のギルガメッシュはただ静かに悲しそうな眼をしながら、少しの怒りを目に浮かばせながらもリィエルに告げた。

 

 

「ギ……ル……?」

 

「……今の貴様に話す事はない」

 

 

 自分が伸ばした手を振り払われた事に困惑する。一体何が間違えたのか。一体何故振り払われたのか理解できないまま、リィエルはただ固まった。

 

 

「……済まん」

 

 

 ギルガメッシュらしくない謝りをしながら、そう言って賢王は背を向けてリィエルから離れていった。ただ、振り払われた手を見ながらただ何がいけなかったのか理解できないまま、涙が溢れ落ちていた。

 

 

 ────────────────────

 

 

「むっ?」

 

「んっ?」

 

 

 英雄王のギルガメッシュとエルキドゥはただ呆然としながらも歩くリィエルを見つけた。2人が声をかけるとリィエルは俯きながらも足を止めていた。

 

 

「おお、貴様も召喚されたのか、リィエルよ」

 

「久しぶり、リィエル。君もマスターに召喚されたんだね」

 

「…………」

 

 

 リィエルが顔を上げると、ポロポロと涙が溢れ落ちていた。

 それにギョッとする2人。リィエルは無言のままエルキドゥの胸に顔を埋めて泣きついた。

 

 

「……? どうしたと言うのだ。貴様らしくない顔をしおって」

 

「リィエル、どうしたんだい? 悲しい顔をして」

 

 

 2人は心配し、リィエルに声をかける。だがリィエルは泣いていて声すら出せないでいた。英雄王のギルガメッシュは大丈夫なのに何故賢王であるギルガメッシュはリィエルを払い除けたのか分からない。

 

 だから無意識にギルガメッシュではなくエルキドゥに泣きついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂でギルガメッシュとエルキドゥ、リィエルは座り、リィエルはチビチビと紅茶を飲んでいた。エミヤの作った紅茶なせいか、ギルガメッシュは要らんと一蹴し、エルキドゥはココアを貰った。

 

 一体何があったのかをリィエルは話した。

 

 

「成る程、賢王の我が貴様を拒絶した、と。

 –––––––死罪(ギルティ)だエルキドゥ。早速賢王の我を潰しに行くぞ」

 

「ギルだけにかい?」

 

「誰が上手いことを言えと言った戯け。幾ら我とて我が友を泣かすとは万死に値する」

 

「ちょちょ、ちょっと待った! 物騒過ぎるしマスターさんに怒られるからダメ!! 私は、何で賢王のギルが私を拒絶したのか知りたくて……」

 

「……まあ、あのギルは僕も避けているからね」

 

 

 このカルデアでは「我にエルキドゥと話す自由はない」と語り、距離を置こうとしている。 それはエルキドゥの死をきっかけに、賢王として成長した彼にとって、それは許されざることであると見なしているからだ。バビロニアのレイシフトでも未だに杉の森には行ったことがない。

 

 エルキドゥも「自分はただのシステムであるべき」「きっと彼と一緒にいたら、また共に冒険の旅に出て、彼を連れ出してしまうだろう」と遠慮している。そこは英雄王のギルガメッシュを連れて冒険の旅を誘っているからエルキドゥは気にはするが大した関係ではないのだ。

 

 

「まあ……大体は理解した」

 

「本当かいギル?」

 

「恐らく、リィエルを拒絶と言うより、果たせなかった事への悔恨がリィエルと我自身が逢ってはいけないと思わせているのだろう」

 

「悔恨?」

 

「我も賢王時代の記憶は持ち合わせている。その中でリィエル、貴様自身と約束した事があったであろう」

 

「…………そう言う事ね」

 

 

 ギルガメッシュとリィエルが約束した事はギルガメッシュが聖杯のリィエルと話した際に『必ず迎えに行く』と約束していた。

 

 だが、賢王ギルガメッシュの結末は『()()()()()()()()()()()』こそ本来の叙事詩である為、ギルガメッシュはリィエルを拒絶したのだ。特異点ではリィエルの魂が眠るウルクの聖杯は消えて、リィエルは死後の世界と契約し、英霊に昇華したのだ。

 

 だが、それは稀中の稀で特異的にならなければ、リィエルと賢王ギルガメッシュは会う事は2度とない。だから賢王は避けたのだ。正確に言えば、自分に対する戒めのようなものだ。

 

 

「……馬鹿みたい」

 

「リィエル、一応とは言え同等の存在が目の前に居るのを忘れるな戯け」

 

 

 ベシッとチョップされた。

 大した痛みはないが、頭を押さえながら軽く睨む。ギルガメッシュはギルガメッシュと言うべきなのだろう。葛藤しているのもしょうがないのかもしれないが、私が許してるなら問題ないのに。

 

 

「……ギルのバーカ、過労死して剥げちゃえ」

 

「剥げぬわ、そして同じ事を2度言わすな戯け」

 

 

 

 再びチョップされた。今度は痛かった。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

「…………らしくないわね」

 

「むっ、貴様かイシュタル。何用だ、我に首を差し出す覚悟は出来たと言うことではあるまい」

 

「物騒だわ!? じゃなくて、あの子の事よ。アンタは頑なに避けてるけどあっちはそれで泣いたのよ? ただでさえ私と戦った時すら泣きもしなかったあの子が」

 

 

 わざわざイシュタルが賢王ギルガメッシュの前に立つ。イシュタルと賢王ギルガメッシュは関係上最悪なのだが、見たら殺しにかかるエルキドゥのような感じにはならない。あくまで王、度量も器も大きくなくて王など務まらない。

 

 ため息をつきながら口を開いた。

 

 

「……我が友を傷つけたのは認めよう。だが、よもや貴様がそれを言いに我の前に来るとは思えん。何故貴様が奴を構う? 殺されたせいで会う度にトラウマに怯えていると雑種から聞いたぞ」

 

「うっ、てかそれはしょうがないでしょ!? アンタも一回星に潰されてみれば分かるわよ!!」

 

「……で、2度も問いが必要か?」

 

「……まあ、今はこの依代のせいで性格が引っ張られるのよ。反省くらいはしてるつもり。まあ、だからと言う訳ではないけど、私を負かしたあの子のあんな顔見たくないだけよ」

 

「フン……」

 

 

 イシュタルを無視してギルガメッシュは仕事に戻った。

 ギルガメッシュ自身も理解している。本当は傷つけたくはなかった。だが、リィエルの死をきっかけに賢王となり、リィエルを迎えに行く事すら出来なかった自分にその資格はないのだ。

 

 約束を破った自分にリィエルと言う存在は遠すぎる。

 ギルガメッシュでさえ唯一届かなかった高嶺の花のような彼女を自分は愛してはいけないのだ。

 

 

 2人の関係は未だ拗れたままだ。

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何処かで覗いていた夢魔が視ていた。

 

 星の巫女リィエルと賢王ギルガメッシュの関係を1番知られたくないロクデナシに知れ渡った事を2人は知らない。

 

 

 

「おやおや、コレはまた面白……少し悲しい事が起きてしまったね。ようし! この私が一肌脱いであげよう!!」

 

 

 ロクデなしの夢魔がハッピーエンドを作る為、鼻歌を歌いながらカルデアを歩き始めた。

 

 

 この後、盛大にギルガメッシュに殺されかける事になるのを彼はまだ知らない。




ハッピーエンド好きの夢魔「すれ違う2人の話をしよう」

通りすがりの過労死王「……………」ゴゴゴゴ

文才なしの作者「あっ、死んだなコレ」


 如何だったでしょうか。賢王としてのギルガメッシュとリィエルの関係は今はまだ拗れたままですね。ハッピーエンドの夢魔は次の話に何をするのか。次の投稿にご期待ください。



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