【完結】リージョン漫遊記   作:飛沫

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この話の双子の対決は、どっちが勝つんでしょうかね?
陽術と秘術も強いけれど、時術もぶっ壊れだからなあ……


滞在リージョン・時間妖魔のリージョンその二

 思いがけない知人との再会に、アセルスは大声を上げるが、それは向こうも同じだったようで。

 

「まさか、こんな場所でアセルス姉ちゃんに会うなんて。びっくりしたよ」

 

「私もだよ。大きくなったね、あの時は私の胸の高さくらいの背丈だったのに」

 

 互いに微笑みながら昔を懐かしんでいると、ルージュが間に入ってきた。

 

「あれ、レッド。彼女とは顔見知りなの?」

 

「ああ。アセルス姉ちゃんって言ってさ、俺の近所に住んでいた人なんだ。よく遊んでくれたり、クッキーやプリンなんかを作って持ってきてくれたりしたんだぜ」

 

「へぇ、そうなんだ。ところでレッド、頼みがあるんだけれど」

 

 そこでルージュは、アセルスがこの先に進む為に必要な砂の器を持っていること、それをもらい受けたいのだが条件をつけられ、条件を守れるか証人を呼んでくれと言われたことを説明する。ルージュの言葉にレッドは頷いてから、アセルスに話しかけた。

 

「大丈夫だよ、アセルス姉ちゃん。ルージュとは術の資質の旅から一緒にいるけれど、約束を破るような奴じゃない。俺が保証する」

 

「そっか。じゃあルージュさん、どうぞ。頑張ってね」

 

「ありがとう。けれど、貰っておいて言うのもなんだけれど、そんなに簡単に信用していいのかい?」

 

「うん、烈人君が大丈夫って言ったし。烈人君、嘘を付くような子じゃないから信じるよ」

 

「信用されているね、レッド。それじゃあ僕はこれでお別れだ、君も追いかけている組織があるようだから、付き合わせるわけにはいかないし。また、会える事を祈っているよ」

 

「ああ、それじゃあ頑張れよ、ルージュ!」

 

 レッドが思い切り手を振れば、ルージュは笑顔を返してから、砂の器を持ったまま砂時計の上部へと飛び移る。そして、器から砂を注げば停まっていたカチコチと音を立ててむき出しの歯車が動き始めた。掬った砂はほんの僅かだったのだが、不思議と尽きる事はなく延々と上から落ち続けている。

 動き始めた景色を眺めていると、上がっていた橋が動いて奥に進めるようになり、ルージュはそちらへと向かって行く。後ろ姿を見送ってから、アセルスは再びレッドへと向き直って声をかける。

 

「それにしても、烈人君も旅をしているなんて思ってなかったからびっくりしたよ」

 

「どうしても自分の手でやりたい事があって」

 

「やりたいこと?」

 

「うん、実はさ」

 

 レッドは語る。秘密結社ブラッククロスによって父が浚われ、家まで燃やされた挙げ句、母親と妹の藍子の生死も不明になっている事を。つい最近まで、キグナスというシップの搭乗員をしていたのだが、ブラッククロスを追いかけるにはやはり不便だったので船長に相談して降ろしてもらい、ルージュとはその途中で出会ったという事。

 

「そうなんだ、小此木さんたち凄く優しくていい人だったのに……。あ、ごめんね烈人君、嫌なこと訊いて」

 

「ううん、姉ちゃん知らなかったんだから仕方がないよ。でも会えて良かった、もう昔の俺を覚えている人なんていないと思ってたから」

 

「烈人君……」

 

「ところで、俺もアセルス姉ちゃんに訊きたい事があるんだけどいいかな? その……十二年ぶりだと思うんだけれど、姉ちゃん全然姿が変わってないから」

 

「あっと、それはね」

 

 少し言葉をつまらせると、直ぐにレッドは「あ! 言いづらい事情があるなら無理に言う必要はないから!」と慌てて付け加える。そんな彼の態度に微笑んでから「実はね」と理由を語りだす。

 十二年前、叔母に届け物を頼まれて向かっている途中に妖魔が乗っていた馬車にはねられ、その際に妖魔の血を受けて半妖として命を長らえた事。血が身体に馴染むまで、ずっと眠っていたが最近目を覚まし、今は血を与えてくれた妖魔の援助もあって、こうやって色々なリージョンを回っているのだと。

 

「そうだったんだ……。叔母さんとは会った?」

 

「うん、最初は叔母さんの所に帰るつもりだったんだ。けど、十二年も経っていた事を知ったら、素直に戻るのをちょっとためらっちゃって。でも、シュライクへ来たついでにと両親の墓参りに行った先の霊園で再会しちゃって」

「とっさにそこにいるジーナの名前を名乗ってね、少し話をしたの。そうしたら、叔母さんは私はもう死んだって思っているって聞いたから、言わずに別れたんだ」

 

「寂しくなかった?」

 

「まぁ、正直に言えばね。でも叔母さんと話した時、自分なりに気持ちを伝えられたと思っているから、すっきりはしているんだよ」

 

 それに、今になって思い返せば叔母は何となく自分の正体を解っていた気がする。十二年という節目の日に、死んだ姪が少し姿を変えて会いに来てくれた、叔母はそう解釈してくれたんじゃないかと。

 

「ところで烈人君、私の事気味が悪いとか思わない? 姿がずっと変わってないし、これからも変わることはないだろうし」

 

「全然!」

 

 アセルスの問いに、レッドは強く首を振って否定した。

 

「さっきも言ったけれど、俺はアセルス姉ちゃんが生きていてくれたことが本当に嬉しいんだ。性格だって知ってる時と全然変わってない、俺にとってアセルス姉ちゃんは、アセルス姉ちゃんのままだ。半妖とかそんなの全然関係ない」

「まぁ、中には気にするのもいるかもしれないけれど、そんなのはきっとほんの少しだよ。姉ちゃんと一緒にいる人たちは普通に接してくれるんだろ? そっちの方が多いって」

 

「烈人君」

 

 レッドの言葉を聞いて、アセルスは心が軽くなるのを感じる。ヤルートの件で、やはり半妖はよく思われていないのではないかという不安が少しあったが、気にしすぎなくていいと安心できた。

 

「じゃあ、俺たちも行くから。ブラッククロスの件が落ち着いたら、またゆっくり話をしよう。またな、アセルス姉ちゃん!」

 

 レッドはそう言うと、アニーたちと一緒に去っていく。姿が見えなくなってから、ジーナたちが傍へとやってきた。

 

「レッドさん、いい人でしたね。流石アセルス様のお知り合い、素晴らしいです」

 

「懐かれてんのね。ああいう子は貴重だから、可愛がってあげなさいよ」

 

「よかったではないか、アセルス。知り合いに理解のある者がいて」

 

「アイツとは上手い酒が飲めそうだ」

 

「トリニティとやらにいた男とは違う考えの持ち主だったな」

 

 まるで自分が誉められているかのような気分でくすぐったい。やはり、知り合いを認めてもらえるのは嬉しいことだ。

 

「うん、昔から烈人君はヤンチャなところがあったけれど、良い子だったからね」

「じゃ、ルージュさんに伝言も終えたし、一度クーロンに戻ろうか!」

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