【完結】リージョン漫遊記   作:飛沫

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この辺からちょこちょこと独自設定が混ざっでくると思います。


滞在リージョン・ドゥヴァン

「アセルス様、先程の故郷の話なんですが……可能でしたら私、ドゥヴァンに行きたいのですが、いいですか?」

 

 シュライクのシップ発着所。アセルスが時刻表を眺めていると、おずおずとジーナが囁いてきた。懇願にすぐさまアセルスは顔を上げると、力強く首を降る。

 

「うん。何処に行こうか悩んでいたくらいだから、行きたい所を示してもらえるのは凄く助かるよ。ちょうどシュライクからの定期便もあるみたいだしね。そっか、ジーナはドゥヴァン出身なんだ」

 

「あ、いえ。私はドゥヴァンで育った訳ではないんです。実を言うと私は孤児でして『麒麟』というモンスターが作ったリージョンで暮らしていたんです」

 

「キリン?」

 

 アセルスの頭に浮かんだのは、首の長い生き物だ。あの長い首で、子供たちをあやす姿を想像していると、ジーナはクスリと笑いながらやんわりと否定をする。

 

「どちらかというと、馬に近い姿ですよ。そうですね、馬に龍の角と髭がついた感じ、といえばいいでしょうか?」

 

「フーン」

 

 今度は馬が炎を吐いて、子供たちを喜ばせる姿が浮かぶ。好き勝手にイメージをしているアセルスに構わず、ジーナは続けた。

 

「それで『麒麟』さんのいるリージョンの場所は解らないのですが、降ろしてもらったのがドゥヴァンなんです。なのでそこに行けば、何か分かるのでないかと思いまして」

 

「なるほどね。じゃ、まずはドゥヴァンに行ってみよう。ちょっと待つみたいだけど……お喋りしていればすぐだろうし」

 

*  *  *

 

「ゼェ……こ、ここが……ジーナが降ろしてもらった場所で……いいのかな……ゼェ」

 

「ハァハァ……そ、そうですアセルス様。この神社で……ハァハァ……申し訳ありません」

 

 身体を曲げて荒い息を吐きながら、アセルスとジーナはドゥヴァンにある神社の前に来ていた。二人がこんな状態になっているのは、この神社がとんでもない階段数の上に立っていたから。止まったら二度と動けなくなると、頂上が霞んで見えない程の高さを殆ど休憩も取らずに登ってきたのだ。こうなるのは仕方がないことだろう。

 だが、しばらくすると息も整ってきたので、アセルス達は例の麒麟に関する手掛かりを探そうと顔を上げる。すると神社から少し離れた場所で、ぼんやりと立っている少女がいた。

 幼い顔立ちと小柄な体型からして自分たちよりも年下なのだろうが、目を伏せて物思いに耽る姿は、何故か随分と大人びて見える。

 

「ねぇジーナ。あの子知ってる?」

 

「いえ、私がここに来た時は誰もいなかったので」

 

「じゃあ、その後からいるのかな。とりあえず訊いてみようか、神社の関係者なら何か知っているかもしれないし。ねぇ、君。ちょっといい?」

 

 声をかければ、少女はゆっくりと振り向く。だがアセルスを見た瞬間、不愉快だと言わんばかりに、眉間に深い皺を刻む。

 

「嫌な臭いのする娘じゃな」

 

 少女の言葉にいち早く反応したのは、ジーナだ。

 

「失礼な、アセルス様は高貴な匂いがされるんですよ! 残念ながら私は分からないですが!」

 

「ジーナ、感じるのは人それぞれだからそんなに必死に否定しなくてもいいよ。アレ? でも匂いが分かるって事は、君は妖魔なのかな?」

 

 ふと思いついて口にした疑問は、図星だったようだ。少女は舌打ちをして顔を背ける。

 

「あぁ、別に言いふらしたりはしないから安心してよ。私だって半分だけど妖魔の血が入っているんだし。ところで君はこの神社の人? 『麒麟』って魔物のリージョンを探しているんだけれど、何か知ってる?」

 

「……奴に会いたいのか?」

 

「うん。隣にいるジーナがね、小さい時にお世話になったんだって。それで、もう一度あって改めてお礼を言いたいってなって」

 

「ふむ……」

 

 少女は視線を戻し、二人をジッと見つめた。

 

「お主ら、術は使えるか?」

 

「術とは何でしょう?」

 

「この世界には様々な術が存在しておる。特に有名なのは陰術と陽術、秘術と印術あたりか。これらの術の内二つの資質を持っていなければ、残念だが麒麟のいるリュージョンに連れて行ってやることはできぬ」

 

「え、何で?」

 

「麒麟がそう決めたからじゃ。アヤツは空術という術の使い手でな、リージョンもこの空術を使って作られておる。たまにその術を覚えたい、という者がいるのだが空術はなかなか強力で、素人では扱えぬ。だから、二つの術の資質を持った、ある程度の手練でなければ駄目なのじゃ」

 

「あの、私たちは術の購入する気はなく、麒麟さんに会いたいだけなのですが」

 

「分かっておる。だが、先程も言った通り『ヤツのリージョンに来てもいい』基準を決めたのは麒麟で例外は無い。妾が出来るのは、その条件を満たした者を送ってやるだけ。満たしていないのならば、すまぬが諦めてくれ」

 

 そう言われてしまっては、食い下がる事もできない。せっかく来たのにと項垂れているとアセルスが不思議そうな顔をして此方を見ている。

 

「どうしたの、ジーナ。そんなに落ち込んで」

 

「いえ、折角お世話になった麒麟さんに、アセルス様のご紹介ができないと思うと……」

 

「ああ、直ぐには無理だもんね。でも、覚えれば行けるんだから、やってみようよ」

 

「え?」

 

 あっけらかんとした言葉に、ジーナな顔を上げた。

 

「い、いいのですか?」

 

「うん、だって時間はいっぱいあるわけだし。術ってのも話を聞く限り、特別な才能がなければ覚えられないって訳じゃないみたいだから、頑張ってみてもいいんじゃないかな」

 

「アセルス様……ありがとうございます!」

 

 感極まってしがみつくように抱きついてきたジーナを、アセルスは苦笑しながらも受け止めてやる。

 

「うわ! もう、ジーナはいつも大袈裟なんだから。抱きつく程の事じゃないのに」

 

「……イチャつくのは他所でやってくれぬか? とりあえず、術を覚えるつもりならこのドゥヴァンで印術と秘術を扱っているから、詳しい話を聞いてみてはどうだ? 陽術と陰術は……ルミナスというリュージョンだった気がするが。まぁ、頑張るがよい」

 

「うん、じゃあ早速教えてもらってくるとするよ。ええと」

 

「零姫じゃ」

 

「ありがとう、零姫ちゃん! 術覚えたら、よろしくね!」

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