【完結】リージョン漫遊記   作:飛沫

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何でルージュじゃなくてブルーなのかというと、私がアセルスの次にブルーが好きだからです。
深く考えてはいけない。


滞在リージョン・ルミナス

「うーん、迷うなぁ」

 

「困りましたね、アセルス様」

 

 リージョン・ルミナスの片隅で、二人の少女が顔を付き合わせて話し込んでいた。少女たちの名前はアセルスとジーナ。術の資質を得るために、ドゥヴァンからやってきたのだ。

 

「もうちょっと、考える余裕をくれてもいいのに」

 

「そうですね、一度きりといわれると慎重にならざるを得ませんし」

 

 先程から二人を悩ませているのは、このリージョンにある陽術と陰術。いざ、覚えようとしてら、扱う術師にこう言われたのだ。

 

「術の資質を得られる機会は一度きり。資質を手にしたら、逆の術は覚えられないしやり直しは効かない。その覚悟はできましたか?」と。

 

 ドゥヴァンでは術の資質を得るには、四つの小石或いはカードに術を覚えさせる事と教えてもらい印術と秘術、両方をもらえた。

 資質の元となるものはあちこちのリージョンにあるので、色々回ってみて自分に合いそうだと思ったら、そちらを選べば良いとも言われたので気長に探せばいいと、深く考えずにいたのだが。

どうやらルミナスでは、そうはいかないらしい。なので先程から、貴重な一度きりを無駄にしないように慎重になっているのだ。

 

「どうしますかアセルス様。もう一度、術の説明と効果を確認してきますか?」

 

「そうしたいのは山々なんだけれど、さっき『まだ決まらないのか』みたいな顔されたからさ、行きづらいんだよね」

 

 とは言えこのままウダウダしていては、何時まで経っても結論は出ない。こうなったらコインでも投げて、出た面で決めてしまおうかという考えが、頭をよぎった時。

 

「すまない、少しいいか?」

 

 不意に声をかけられた。二人揃って声がした方を向けば、見知らぬ青年が此方を見ている。

 歳は二十歳前半といったところか。金色の長い髪をひとつ結びにし、青い法衣を纏う姿はいかにも術師といった空気を漂わせている。

 

「ええと……私達の事でしょうか?」

 

「すみません、うるさかったですか?」

 

 端正な顔立ちだが全くの無表情の為、文句を言われるのかと想像してジーナが先に謝罪するが、青年は「いや、そうじゃない」と緩く首を振ってから「先程からずっとここで話し込んでいるようだが、ひょっとして君たちも術の資質を得るためにここに来たのか?」と訊いてきた。

 

「は、はい。麒麟というモンスターに会うために、来ました。けれど、どっちにしようか迷っていて……。まだ決まってないんです」

 

「麒麟?」

 

「アレ、知っているんですか?」

 

 ジーナが漏らした単語に、青年が微かに反応をする。それに気づいたアセルスが訊き返すと、青年は少しばかり黙り込んだあと。

 

「もしよかったら、私も君たちの旅に同行させてもらえないか。私はブルー、マジックキングダムの術師だ。一人前になる為には、様々な術の資質を手に入れなければならないのだが、その中に麒麟から空術の資質を得るというのもある。目指す先が一緒なら、手を組むのは悪くないと思うのだが」

 

「……だって。どうする、ジーナ」

 

「そうですね……」

 

 問われたジーナは思案する。正直な話、二人っきりの旅はジーナにとって夢のような時間で、それが失くなってしまうのは嫌だ。だがこれから先の旅はどんな事になるか想像もつかない。もし、自分の我が儘を通した結果アセルスの身に何かあったら。半妖のアセルスなら大概の傷は痕にもならないだろうが、それでも彼女が怪我を負うのは、二人旅でなくなるより嫌だった。

 

「あちらから誘ってくれているわけですから、乗ってみてもいいのでは。戦闘は、人数が多い方が楽になりますし。アセルス様はどうお考えですか?」

 

「ジーナと同じだよ。それに術師っていうのなら、色々詳しいだろうし頼っていいと思う」

 

 決まりだ。アセルスとジーナはクルリとブルーへ向き直ると、改めて挨拶をする。

 

「えっと、私はアセルス」

 

「ジーナと申します」

 

「ブルーさんでいいのかな? どうぞよろしく」

 

「アセルスとジーナか、此方こそ頼む。後、敬称はつけなくてもいい。まだ半人前の身、そこまで立派な身分というわけではないからな」

 

「うーん。じゃあ、ブルーって呼ばせてもらうよ」

 

「私は馴れないので、さん付けのままで呼ばせてもらいますね」

 

「そういう理由なら、それで構わない。で? 君たち二人はどちらの術を覚えるのか決まったのか?」

 

 ブルーの問いに、苦笑しながらアセルスが答える。

 

「いや、それが全然決まらなくて。今もジーナとどうしようかって相談してたんだ」

 

 素直に状況を白状すればブルーから冷たい視線を向けられるが、それでも文句を言われる事なく「それだったら、陽術を覚えるのはどうだ」と提案された。

 

「なんでまた?」

 

「陽術には攻撃と回復、両方の術が揃っているからだ。陰術に比べてシンプルな分、使い方が決まっているから、戦闘で使う時に迷いがなくていいだろう」

 

「あぁ! 成る程!」

 

「決まりですね。ではアセルス様、ブルーさん。早速陽術の資質を貰いに行きましょう」

 

*  *  *

 

(単純だな。だが、反論せずに意見を飲むのは扱いやすくて助かる)

 

 年頃の少女らしく、目の前ではしゃぎながら陽術の術師がいる場所を目指すアセルス達を見つめながらブルーはほくそ笑む。

 彼女らに声をかけたのは、腰から下げている武器を見たからだ。ずっと学院で過ごしていたので、術以外の知識は外の人間より浅い自覚はあるが、そんな自分から見てもアセルスとジーナの持つ武器は店で売られている量産品ではなく、職人が持てる技術を注ぎ込んで作った逸品だと解った。年若い彼女達が、その武器に見合う実力を持っているかまでは判断はできずにいるものの、それだけ良い武器ならば性能だけで切り抜けられる事もあるだろう。加えて。

 

(まさか目的地まで一緒だったとはな)

 

 陽術と陰術。秘術と印術。それぞれを極めた後は時術か空術のどちらかを覚えるつもりでいた。どちらにするからまだ決めかねていたが、この際彼女らに着いていくのも悪くない。自分の旅の真の目的を知れば顔を曇らせるかもしれないが、それらしい表情をして説明すればコロッと騙されてくれる可能性はある。

 

(せいぜい利用させてもらうとしよう)

 

 そう軽い気持ちでいたブルーだったが、陽術の資質を得た後「じゃあ印術を覚えようよ! シュライクの古墳なら案内できるし」というアセルスの言葉に従ってついていったら、全く関係のない場所に連れていかれたので、早くも不安を覚えるのであった。

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