【完結】リージョン漫遊記   作:飛沫

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済様もカッコよくて好きです。とはいえ、だいたいは草薙の剣貰ってたんですが。


滞在リージョン・ヨークランド

 沼地の奥に建てられている祠の中に、アセルス一行は佇んでいた。何名かは、足元が覚束ない状態であるが。

 

「うぅ、頭が痛い……。なんか幻覚まで見えてるし」

 

 頭を押さえながらも、アセルスは目の前の空間に手を伸ばす。何もない空間なのだが、彼女には幻覚の何かが見えているらしい。その何かを掴むような仕草をしてから、ノロノロとした動作で、四枚のカードを取り出して眺める。

 

「幻覚なのに、取るとカードにはちゃんと絵が出るんだ。ねぇ、ブルー。不思議だね」

 

 しゃがみこんだまま、立っている仲間に声を掛けるが反応はない。無言を貫く仲間の姿に、アセルスはコトリと首を傾けた。

 ブルーと呼ばれた仲間は、目を引くような綺麗な見た目に反してあまり愛想はよくなく、口調もどこかぞんざいだ。だが、話しかけられても無視をするという程、根性は悪くないと思う。

 

「ブルー?」

 

 四つん這いになりながら、名前を呼んで回り込むアセルス。すると、口元を押さえて白い顔をしているブルーと目があった。視線でブルーは語る。口を開くと吐きそうだから、話しかけないでくれ、と。

 彼が無言の理由を察したアセルスは、呻きながら建物の角に移動した。壁に背中を預け長い息を吐くと、ガイコツのモンスターが話しかけてくる。

 

「アセルス、平気か」

 

「うー、済王様。頭が痛い、助けて」

 

「すまんが、余は魔術というものが一切使えぬからな。ブルーが落ち着いて秘術が使えるようになるまで、我慢するしかないだろう」

 

 右脇に顔を真っ赤にして寝ているジーナを抱えながら、済王と呼ばれたモンスターは答える。

 彼は先日、シュライクの古墳で仲間にしたモンスターだ。ブルーと共に陽術を覚えた後にアセルスは。

 

「術の資質も手に入れたし、次は印術を覚えようよ! 確かシュライクにルーンがあるんだよね。シュライクだったら私、案内できるし!」

 

 意気揚々と、ブルーとジーナを連れてシュライクの古墳を訪れたのだが、案内したのは済王の古墳。古墳違いと気づいたのは、墓荒しと勘違いして眠りから覚めた古墳の主、済王を倒してから。強者と認められ、欲しいものを与えてやると言われたアセルスは、堂々と「勝利のルーンが欲しい」とねだる。すると、済王は「そんなものはこの古墳には無い」と返してきたのだ。ここで、一行は間違いに気づくのだが既に遅い。済王は呆れながらも「勘違いとはいえ、余を打ち負かしたのは確かだ。ならば勝利の印として、この剣を持っていくがいい」と自身が携えていた草薙の剣を差し出してくる。

 一目みて、歴史に名前を残せる剣だと解った。作られて相当な年月が建っているにも関わらず、錆や刃こぼれは見当たらなかったし、手に取れば淡い光を発して刃が煌めく。おそらくはゴサルスが作りあげた幻魔のような、剣そのものが力を持っているモノなのだろう。

 普通なら、喜んでもらい受けるような素晴らしい剣だ。だが、アセルスは草薙の剣に劣らぬ剣を既に二本持っている。流石に三本あっても使いこなせないなら、意味が無い。ジーナやブルーに使うかと訊ねても、二人は首を横に振るばかり。ならばと、アセルスは提案をする。

 

「それだったら、済王様が一緒に来て。済王様は強いから、三人旅についてきてもらえたら心強いよ」

 

 済王は驚きながらも「勝者はお前たちだ。余の方から断る道理はない」と頷いて同行してくれる事となったのだ。

 因みに、その間違いの件があってからアセルスが「間違えたのが恥ずかしい。きっと印術とは縁がなかったんだ。覚えるなら秘術の方にしよう」と懇願してきたので、集める術は秘術の方になったとか。

 

「うーん、アセルス様……」

 

 霞む視線で床にジーナを寝かせる済王を眺めながら、数日前の出来事を思い出していると、ジーナがむにゃむにゃと寝言を呟く。

 

「どうしたの? ジーナ」

 

「アセルス様、大好きですぅ」

 

「あはは、私もジーナの事好きだよ」

 

 寝言でも自分の事を口にするジーナに、アセルスは微笑を浮かべながら手を握れば、それがアセルスだと解ったのか、ジーナも笑みを浮かべる。

 そんなことをしていると、突然目の前が暗くなった。顔を上げると、落ち着いた様子のブルーが身を屈めて此方を見ている。いつの間にか杯の秘術を使って吐き気を払拭したようだ。

 

「アセルス、大丈夫か? 気分が優れないようなら、術をかけるが」

 

「うん、お願い。多少は楽になったけれど、まだ頭痛はするから」

 

「解った。ジーナはどうする?」

 

「かけてあげてよ。寝るなら床よりもベッドの方がいいし」

 

「そうだな」

 

 掌を翳し呪文を唱えてもらうと、たちまち痛みが治まっていく。ジーナにも同様の事をすれば、顔から赤みが引いていき彼女らは目を開いた。

 

「ううん。アセルス様……この手は!?」

 

「ジーナ、おはよう。酔いは覚めた? 私の事ばかり呟いてから、手を繋いでみてたんだよ」

 

「アセルス様、なんてお優しい♡」

 

「うん? まあね?」

 

 熱の籠った視線をとりあえず笑顔で受け流していると、外から済王がやってくる。どうやら三人が身動き取れない間、回りの警戒にあたってくれていたようだ。

 

「む、三人とも動けるようになったか。どうする、もう出るか」

 

「私はもう平気だが、アセルスたちはどうだ?」

 

「大丈夫かな。今日はなんか疲れたし、早くここを出てホテルでゆっくりしようよ」

 

「ご迷惑をおかけしました。私もブルーさんに術をかけてもらったので動けます。行きましょう」

 

「なら出るとしよう。沼地には変わらずモンスターが潜んでいるから気を付けよ。ところで、次はどこのリージョンに向かうのだ?」

 

「ホテルに向かうなら、バカラはどうだ。あそこならホテルもあるし、確か金のカードもあると聞いている。休んだら、そのまま探すこともできるだろう」

 

「落ち着いたらすぐカード探しもどうかと思うけれど、あっちこっち移動するよりは効率がいいか。なら、次の目的地はバカラだね。行こう、ジーナ」

 

「はい、アセルス様!」

 

 こうして杯のカードを手に入れた一行は祠を後にし、シップ発着所を目指す。残りはあと、三枚だ。

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