部屋に戻ってきた僕を待っていたのは、にんまりと笑みを浮かべ、部屋の中央に仁王立ちで立つ花丸だった。
その隣には、にこにこ笑顔のお姉ちゃんもいる。
「・・・どうして僕の部屋にいるの?」
お風呂に入る前までは、お姉ちゃんの部屋で色々良からぬことをしていたようだが、いつの間に僕の部屋に来たのだろうか?
「か、かいと君・・・。それより、もう降ろしていい? 千歌の腰が砕けそうなのだ・・・。」
「あっ、すいません。すぐ降りますっ!」
僕をおんぶしていた千歌さんが苦しそうにそう呻き声をあげているのが聞こえ、そう言えばおんぶをされていたことを思い出す。
元気が取りえの千歌さんとはいえ、高校一年生の僕をおんぶするのはかなり負担だったようで、ぷるぷると震えていることに今更気付く。
慌てて、傍にあったデスクチェアに降ろしてもらった。
「・・・ふー、重かった~。」
「助かりました、千歌さん。・・・本当に。」
漏らした状態の写真だけ撮って、そそくさと自分の部屋に行ったお姉ちゃんを若干睨みつつ、「う~ん」と伸びを行う千歌さんに感謝を伝える。
本当、千歌さんがいなかったと思うと・・・。
「かいと~、放ったらかしにして、ごめんね? でも大丈夫よ? かいとの可愛い写真は、バッチリ保存しておいたからね!」
「抱き着いて来るなっ! ていうか何が大丈夫なんだよ!?」
僕に睨まれたことで人目があるにも関わらず、思い切り抱き着いてきたお姉ちゃんを全力で押し戻しながら僕は叫ぶ。
しかし今回の写真が保存されてしまった件もそうだが、先ほど聞いたかいとコレクションというものも気になる。
いったい、何がコレクションされているのか・・・。
想像するのも嫌だ。
・・・いつか、お姉ちゃんのパソコンを破壊する必要があるかもしれない。
「・・・じゃあ、かいと君の元気そうな姿も見れたし帰ろうかな。」
ここで、千歌さんがそう言い、かばんを背負って帰る準備をし始めた。
この状況で一番まともそうな、千歌さんに帰られるのは、勘弁願いたいが、色々してもらった手前、引き止めるのもはばかられる。
それに、昨日の件もあり、千歌さんを見ていると恥ずかしい感情が湧き上がってくるのも事実。
ここは、独力で花丸とお姉ちゃんに対抗するしかないか・・・。
僕が、そんな覚悟を決めていると、
帰る準備を整えた千歌さんが、ゆっくりと僕に顔を近づけてきたぞ??
なんだなんだ?? と思っていると、千歌さんは吐息がかかるレベルで僕の耳元に自信の口を近づけ
「じゃあね、かいと君。今度また遊ぼうね・・・二人きりで♪」
と、ボソッと言ってきたぞ!?
当然、お姉ちゃん以外の女性に免疫がない僕がそんなことを言われてしまうと
「ちょ// な、い、いきないなんなんだよ//」
と、焦りまくりである。
・・・やばい、心臓がバクンバクン言って、凄いうるさい。
何のつもりだよ千歌さん、僕をからかっているのか??
「じゃあ、千歌は帰りま~す♪ じゃねー!」
しかし、当の本人はそんなことは、何事もなかったように、明るい声でそう言うと、帰ってしまった。
・・・いったい、なんだったんだ??
「あらあらあら?? 千歌ちゃんと何かあったの??」
当然、先ほどの千歌さんの行動をお姉ちゃんが見逃すはずもなく、にやにやと、格好の獲物を見つけた狩人の目で僕に詰め寄ってきた。
あー、もうっ、千歌さんも面倒なことしてくれたよ!?
しかし意外なことに、お姉ちゃんにもっと、根掘りはぼり聞かれるかと思いきや、すぐにその身を僕から引いて、
「まあ、いいわ。それより、かいと! 今からは花丸ちゃんがお姉ちゃんだからね?
ちゃんと言う事聞くのよ?? それじゃあね。」
なんてことを言ってきた。
まるで、千歌さんの行動は想像通りだから聞くまでもないと言わんばかりに。
・・・いったい、何を考えているんだ、お姉ちゃんは?
最近のお姉ちゃんの行動は謎が多すぎる。
お姉ちゃんの表情を伺っても、にこにことしているだけで、そこから真相を読み取ることはできない。
・・・って!?
「そう、それだよ! 花丸がお姉ちゃんとか認めないからな!!」
そうだよ、今は、千歌さんの件よりもそっちのほうが重要だ。
先ほどは、やむなく花丸をお姉ちゃんと認めたが、今は別だ。
花丸をお姉ちゃんとする意味がない。
同い年だし。
しかし、こういう時に僕の話をまったく聞かないことに定評があるお姉ちゃんは、今回も同様に僕の言葉を無視して部屋から出ていってしまった。
・・・本当にお姉ちゃんは僕のことが好きなのか??
お姉ちゃんが去った後を呆然と見つめていたが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、仕方がなく、花丸がいるであろう方に向き直る。
そこには、当然だが、花丸がいた。
なぜか滅茶苦茶不機嫌になっている花丸が。
頬を膨らませ、こちらを睨んでいるのだ。
・・・何でだ。
「どうした? 花丸?」
「・・・千歌ちゃんと仲がいいんだね?」
「え、千歌さんと? ・・・まあ仲はいいだろうけど、それがどうしたんだよ?」
「・・・別に何もないずら。」
そう言うと、ベッドに腰かけ、カバンから本を取り出し読み始めてしまった。
この話は終わりと言わんばかりに。
しかし、どう見ても花丸の不機嫌は解消されていない。
その顔の眉間には、皺が寄っており明らかにいらついている様子だ。
・・・僕、何かしたか?
「お~い、まるお姉ちゃん? どうして怒ってるんだよ?」
流石に、このままでは居心地が悪いので、冗談ぽくそう聞いてみるが、
「うるさい。後、普段通り呼べずら。お姉ちゃんはもういいずら。さっきまでお姉ちゃん呼びさせてたのは、ただの嫌がらせずら。」
とのことだ。
なぜか先ほどより、余計に怒ってしまった感じさえする。
というより、あれ嫌がらせだったのかよ。
まあ、お姉ちゃん扱いしなくてもいいというのは、喜ばしいことだが・・・。
しかし、じゃあなんでここにいるの? という疑問も出てくる。
・・・嫌なら帰ればいいのに。
しかし、これ以上つついても花丸の機嫌がよくなることはなさそうだったので、いったん花丸の存在はおいておいて勉強でもすることにした。
・・・足のせいで、しばらく学校に行けなさそうだからちょっとは、勉強をしなくちゃだしね。
あれ? もう7時?
勉強をしていると、うまい具合に集中できたらしくあっという間に2時間ほどがたっていたようだ。
あんまり勉強していてもあれだし、今日はこれくらいにするか・・・。
僕が、勉強道具を仕舞い、ベッドの方を見ると、そこにはまだ本を読む花丸がいた。
・・・いつまでいるつもりなんだ??
流石に、このままというのもあれなので、声をかけてみることにした。
「花丸。もう結構時間も遅いよ?」
「・・・うん。」
しかし、花丸は本を読むことに集中しているのか上の空に返事を返してくるのみ。
夜も遅いし、早く帰らないと家の人も心配するよな?
そう、判断し花丸に帰るよう促すべく声をかける
「お~い、花丸。本なら家で読めばいいだろ?」
「・・・だめずら、かいと君のいるところで読みたいずら。」
・・・・・ん?
今、花丸は何と言った??
僕のいるところで読みたい??
・・・どういうことだ?
花丸は相変わらず、本に集中しており、今の発言もほぼ無意識に出したセリフのようだ。
・・・もう少し聞いてみるか。
「どいうこと? 僕のいるところでっていうのは?」
僕がそう質問を投げかけると、花丸は本から視線を外さず、淡々と、抑揚のない喋りで
「好きな人のそばにできるだけ長くいたいのは自然なことずら。」
・・・・・は?
好き?? 誰が?? 花丸が?? 僕を??
・・・・・え?
流石に・・・冗談・・・だよね??
「・・・あ、あの、花丸// からかうにしても、あまりそういうこと言うのはよくないぞ??」
「冗談じゃないずら。今日も梨子ちゃんにお姉ちゃんになるなら家においでって言ってくれたから来ただけずら。正直お姉ちゃんなんてどうでもよかったずら。かいと君と一緒にいれるなら理由はなんでもよかったずら。」
「・・・あ、そ、そう/// で、でもあれでしょ? 友達として好きってことだよね?」
「異性として好きに決まってるずら。」
「あ・・・あ・・・そ、そう///」
「だから、もうまるの前で他の女といちゃつくなずら。嫉妬するずら。」
なんだなんだなんだ!!??
何が起きているんだ??
花丸が僕のことを好き?
今、僕は告白されているのか??? なんだこの斬新な告白は!?
ていうか、千歌さんと妙な空気になっていたから不機嫌になっていたのか??
だとしたら、可愛いすぎるんだが!?
で、でも花丸は本を読んでいて、ほぼ無意識に言っているから、本当か分からないじゃないか・・・。
―無意識だからこそ、本音ではないのか?―
そんな、僕の想いを必死に振り払う。
どっちにしても、今の花丸からこれ以上聞き出すのはよそう。
何かの間違いかもしれないしね・・・。
で、でも、はぁ、今日は心臓に悪いことが多すぎる。
気付けば、僕の鼓動は早鐘をつくようにやかましく鳴っていた。
・・・し、しかし、仮にもし、花丸が僕のことを本当に好きなら僕はどうするだろうか?
花丸は可愛い、そんなことはとっくに知っている。
ふんわり柔らかそうな、軽くカールがかかった茶髪も、思わず守りたくなるほど小柄な体形も、少し毒舌なところも全て花丸の魅力だ。
あれ? なんだか意識したら急に花丸が可愛いく見えてきたんだが・・・
ポーと花丸を見ていると、花丸はパタンと本を閉じ、
「・・・ふー、面白かったずら~。って、ん? なんずら、気持ち悪い目で見てきて?」
いつもの僕が知っている毒舌をはく花丸がいた。
空を飛んでいたら、叩き落された気分だよ・・・。
先ほど、花丸がとても可愛いく見えたが、どうかしていたらしい。
「・・・ちなみに、さっき言っていたことって覚えてる?」
「さっき・・・? なんのことずら?」
やはり、花丸も無意識状態だったらしい。
よし、このことは、いったん忘れよう、何かの間違いかもしれないしね。
・・・忘れられるだろうか。
その後、かなり時間がたっていることに気付いた花丸は、急いで帰り支度をし、帰って行った。
つづく
というわけで10話でした!
勢いで初めた作品でしたがまさか10話もいくとはw
今回は花丸ちゃん回でした!
花丸ちゃんの可愛さが少しでも届いたならば嬉しいです!
えー、話は変わりまして、今後の展開についてですが、誰と絡んでいくかアンケートを実施しようと思います。(一度したかったんです・・・)
アンケート結果の上位2枠のメンバーと絡ませていく方向で動いてきます。
※気が向けば全員と絡ませますが。
よければ、アンケートにご協力いただければと思います!
後、初めてなのでアンケートを作成するのに時間がかかるかもしれません。
では、次話でもお会いしましょう!
今後の展開で絡ませていくメンバーのアンケートをとります。メンバーは現在も絡んでいない、メンバーに限らせて頂きます。良ければ、回答をお願いいたします。
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松浦 果南
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黒澤姉妹
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小原 鞠莉
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渡辺 曜
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ヨハネ