花丸とのイザコザが起こってから、早くも一週間が経とうとしていた。
僕の足もかなり回復してきて、自力で歩けるようになってきた。
・・・もうトイレに行けず漏らすなんて失態を晒す心配もないわけだ。
しかし気がかりなことがひとつ
この一週間、意外なことにお姉ちゃんは、必要以上に僕にあまり関わってこなかったのだ。
僕の部屋に食事を届けてくれたり、トイレに行くのを手伝ってくれたりと、足が動かない僕を助けはしてくれたものの、それだけだ。
てっきり足が動かないのをいいことに、色々とよからぬことをされるかもと思っていたが・・・、例えばお風呂に一緒に入ってきたり、一日中抱き枕にされたりとかね。
お姉ちゃんも、ようやく常識を学んできたのかもしれない。
お姉ちゃんの僕に対する距離感は、一般的な姉弟の距離間と比べてもかなりぶっ飛んでいたからね。
いや~、本当に喜ばしいことだよ。
そう、思っていた。
「ねえ、かいと『壁クイ』し・て♡」
僕の考えが、いかに甘いかを思い知ったよ。
お姉ちゃんと一緒に朝食を摂っている時に、僕の足が回復してきたことを知ったお姉ちゃんが、満面の笑みで僕にそう切り出してきたのだ。
ちなみに、壁クイとは、壁ドンと顎クイを組み合わせた頭の悪い技のことだ。
お姉ちゃんに嫌というほど教えられたから、覚えちゃったんだよね・・・。
「嫌」
当然答えはノーだ。
理由なんて答えるまでもない。
壁クイしあう姉弟とか、どんな姉弟なんだ。
「だめ。もうお姉ちゃん、我慢の限界。」
お姉ちゃんはそう言うと自分の席から立ち上がり、僕の元へ、ゆっくりと歩いてきたぞ・・・?
なぜか顔を赤くし、息遣いも荒くなっているんだが・・・っ!?
直感が告げている、これは危険だ!?
逃げなくては!
しかし、足が動くようになってきたと言っても、まだ素早い動きを取ることができない。
結局、近づいてくるお姉ちゃんから逃げることが叶わず、目の前までの接近を許してしまう。
どう見ても普通でないお姉ちゃんを目の前にして、ふと、お姉ちゃんが以前、言っていた言葉が僕の脳裏に蘇る。
『最近かいとを見ていると襲いそうになっちゃうの♡』
・・・え? 僕、襲われるの??
実の姉に・・・?
全身から血の気がサーっと引いていくの感じる。
・・・い、いや、きっと何かの勘違いだ、そうに違いない。
そうだよ、いくらお姉ちゃんがブラコンだからって、まさか、そんな・・・。
・・・ありえるな。
はっ! いやいや、諦めるな僕! とりあえず喋ってお姉ちゃんの気を逸らすんだ。
・・・落ち着けー。
「・・・ど、どど、どういうこと?」
・・・噛み噛みだよ。
しょうがないじゃん、発情した実の姉が目の前にいたら誰だってこうなるよ。
「この一週間ね、かいとの足に負担にならないように、あまり近づかないようにしていたのよ・・・。」
「そ、そうなんだ、へー。それは、ありがとう。でも顔を近づけてくるのは、やめてくれない??」
なるほど、この一週間、お姉ちゃんが大人しかったのは、僕の身を案じてのことだったらしい。
それは普通に嬉しいのだが、僕の顔に両手を添えて、目線を合わし、徐々にその赤らめた顔を近づけてくるのは、やめてもらえないだろうか!?
このままキスをされかねない勢いなんだが!?
「・・・だからね? お姉ちゃんにとっては、かいとが近くにいるのに触れ合えない生殺しの状態だったわけ。」
「うんうんうんうん、分かったからいったん離れようか!?」
尚も近づいてくるお姉ちゃんとの距離は、もはや10センチとない。
もう、視界いっぱいにお姉ちゃんの顔が映っている状況だ。
お姉ちゃんから、むんむんとした熱気さえ伝わってくる。
ここは弟として思い切りビンタとかしてでも、姉を正気に戻すべきだろうか?
「・・・だからね、『壁クイ』して??」
僕との距離5センチまでに迫ったお姉ちゃんから、再び同じ言葉が繰り返される。
お姉ちゃんの荒い吐息が僕の顔を撫でる中、それでも僕はこう答える。
「嫌だ」
そして、僕は敢えて自分からお姉ちゃんとの距離を一気に0センチに縮めた。
ただし、おでこで、だ。
つまりは、頭突きだ。
ゴチンッ!
「「~~~っ!!??」」
痛いっ、痛い痛い!!??
あまりの危機感に勢いよく頭突きをしすぎたらしい。
すごい音がしたもんね・・・それにしても痛いっ!!
頭が割れるような激痛に襲われる中、ちらっとお姉ちゃんの方を見ると、その場にうずくまり、両手でおでこを押さえ、声にならない叫び声をあげ、ぷるぷると震えていた。
相当痛いらしい。
・・・でも、これでお姉ちゃんも正気に戻ってくれただろう。
・・・戻ってくれたよね?
しかし
「あ~んっ!! 痛いよ~!! やだやだやだ!! 『壁クイ』してくれないとやだ~っ!!??」
急に立ち上がり、なんだと思う間もなく、勢いよく抱き着いてきて、駄々っ子の様に喚きだしたんだが・・・。
もう色々とやばいな、お姉ちゃん。
弟と一週間触れ合えないだけで、こうなるなんて、どんな禁断症状なんだ。
「だから、嫌だって言ってるだろ!」
抱き着かれたままではあるが、当然、僕は拒否する。
それにしても力が強いんだが・・・。
抱き着かれた状態から何とか逃れようとするが、がっしりと抱き着かれているため、それが叶わない。
それでも、諦めず、何とか逃れようとしていると、お姉ちゃんが急にピタリと静かになった。
・・・どうしたんだ? 急に静かになられると怖いのだが。
突然の沈黙により、謎の恐怖に襲われいてると、お姉ちゃんが僕の耳元で、いつもよりも低く、冗談気を交えない本気のトーンでボソリとこう言ってきた。
これが、最後の忠告と言わんばかりに。
「・・・『壁クイ』してくれないと、お婿さんにいけなくするわよ?」
「喜んで、『壁クイ』させて頂きます。」
・・・本当に怖かった。
あれは、本気だった・・・。
この短期間に二度目のお漏らしをするかと思ったよ・・・。
もし、あそこで僕がさらに拒否の姿勢を崩さなかったらどうなっていただろうか?
・・・想像するだけで恐ろしい。
「それじゃあ、壁クイよろしくね♪」
「・・・はいはい。」
朝食後、お姉ちゃんの部屋にやってきたわけだが、早速と言わんばかりに、そう切り出してくるお姉ちゃん。
既に壁際に背を向けて立っており、セットポジションは万全だ。
テンションマックスのお姉ちゃんに対し、テンション激萎えの僕は、ゲッソリしながらそう返事を返す。
・・・どうしてこうなってしまったんだ。
「一応説明しておくと、壁ドンからの顎クイ、そして耳元でこうつぶやいてね?『梨子、お前は一生俺のものだ』きゃー// 想像しただけで、鼻血が出ちゃいそう//」
・・・僕はゲロが出そうだよ。
セリフまで付けるとは聞いていないが、今のお姉ちゃんに下手に反抗すると何をされるか分かったものではない。
ここは、腹をくくろう。
そうだよ、一瞬じゃないか。
そうと決まれば、すぐに決行だ、嫌なことはすぐに終わらせる。
わくわくと、期待に満ちたお姉ちゃんのもとにゆっくりと歩み寄り、そしてお姉ちゃんの目の前に立つ。
そして
ドンッ!
勢いよく、自信の右手をお姉ちゃんの顔のすぐ横の壁に突き刺す。
その音と勢いに、お姉ちゃんは、ビクリと一瞬怯えたような反応を見せるが、すぐに続きの行動を待ちわびるように、潤んだ目で僕を見つめてくる。
・・・折れるな、僕。
自身に激励をとばし、僕は左手で、ゆっくりと、お姉ちゃんの顎を文字通り「くいっ」と持ち上げ、僕のほうに無理やり目線を合わす。
「はうぅぅ//」と顔を真っ赤にし、恍惚とした表情で僕を見つめてくるお姉ちゃんに僕の精神が破壊されそうになるが、あと少しということもあり、ぎりぎり持ちこたえる。
そして、僕は自らの口をお姉ちゃんの耳元まで運び、ポソリとつぶやいた。
「・・・梨子、お前は一生俺のものだ。」
やった
終わったんだ
よくやったよ僕
なのに、なんだろう・・・この取り返しのつかないことをしてしまったような虚無感は。
ちなみにお姉ちゃんはというと、
「あ・・・// あ・・・あぁぁ・・・//」
顔を茹蛸のように真っ赤にし、目も焦点が合っておらず、まるでクスリでもキメテいる人みたいになっているよ・・・。
ちなみに、本当に鼻血をポタポタと滴らせているよ。
よし、これで僕のミッションはコンプリートだろう。
お姉ちゃんが何だかやばそうな状態になっているが、お姉ちゃんだし大丈夫だろう。
それより、僕は自室に戻って現実逃避でもしよう・・・。
そう思って、部屋の入口に向き直った、すると
「・・・か、かいと、あんた何やってるの??」
部屋の入口に立ち、顔面蒼白となった母上の姿があった。
様子を見るに、どうやら一部始終を見られていたらしい。
・・・最近、こういうの多くないだろうか?
その晩、家族会議が行われた
つづく
というわけで11話でした!
はい、壁クイですね(笑)
このネタは、絶対に入れようと思っていました。
話は変わりますが、アンケートの件、既に多くの人に投票していただいております!
投票していただいた方、ありがとうございます!
期間は2/29までとさせて頂きますので、まだ投票していない方いましたら、是非投票をお願いいたします!(詳細は第10話のあとがきを確認お願いします)
結果は、活動報告でしようかなと思っています。
では、また次話でお会いしましょう!
今後の展開で絡ませていくメンバーのアンケートをとります。メンバーは現在も絡んでいない、メンバーに限らせて頂きます。良ければ、回答をお願いいたします。
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松浦 果南
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黒澤姉妹
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小原 鞠莉
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渡辺 曜
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ヨハネ