「こんにちは~!!」
「・・・お邪魔しまーす。」
扉を開け放ち、元気な声をあげながら家に入っていく曜さんに隠れるように後ろから控えめに挨拶を述べながら続く。
他所の家の祖父母の家となると、言いようもない緊張が襲ってくるので許してほしい。
ちなみに、引き戸式の玄関の扉には、鍵はかかっていなかった。
曜さん曰く、田舎では普通らしい。
凄いところだ・・・。
「おうっ、曜ちゃん来たかい!」
奥から姿を現したのは、まだまだ春だというのに日焼けした肌が目立つ、恰幅の良い男の人だ。
この人が、曜さんのおじいちゃんなのだろうか?
祖父というには、かなり若く見える、ていうかなんで、そんな筋肉隆々なんだよ・・・。
タンクトップに半ズボンという、今時小学生でも見かけないようなスタイルだが、その筋肉で盛り上がった肉体には、非常に似合っている。
・・・まあ、曜さんのおじいちゃんと聞けばなんとなく納得してしまえるね。
「いらっしゃい、曜ちゃん♪」
おじいちゃんの後ろから、柔和な笑顔を浮かべながらそう挨拶を述べてきたのは、曜さんのおばあちゃんだろう。
背筋がぴんと伸びており、その凛とした佇まいから育ちの良さを感じる。
「おじいちゃん、おばあちゃん! 今年もよろしくね!」
「あぁ、ゆっくりしていってくれな! ・・・ところで後ろにいる子が曜ちゃんが言っていた子かい?」
・・・見つかってしまった、いや別に隠れていたわけじゃないけど。
何となく、このパワフルなやり取りの流れにアウェー感にさらされ気まずかったから、空気に徹していたが、しっかり認識されていたようだ。
「はい、桜内かいとと言います。・・・あの、よろしくお願いします。」
「おう! よろしくな! それにしても曜ちゃん、このかいと君は彼氏さんかい?」
「ぶっ!?」
な、何を言い出すんだ、この人は。
・・・いや、よく考えれば男女二人きりで泊りがけで来ているこの状況を見れば普通そう思うか。
違いますよ、と答えようとした時、
「ふふふ~♪ どうでしょうか??♪」
「ちょっと//!!??」
と、いきなり僕の腕に抱き着いてきて、にしし、と屈託なく笑いながらそんなことを言う曜さん。
むにゅり、と柔らかい感触に顔がカーッと熱を持つのを感じながら、引きはがそうともがくが、曜さんの力には敵わない。
「あはは♪ かいと君顔真っ赤っかだ~!」
・・・当たり前だ、曜さんにこんなことされたら、大抵の男はこうなるだろう。
せめてもの抵抗に無邪気に笑いながらからかってくる曜さんをジト目で睨む。
本人はちょっとした、ちょっかいのつもりのつもりなのだろうが・・・。
おじいちゃんもおじいちゃんでニヤニヤしながら見ないでほしいものだ。
同じくおばあちゃんも、微笑ましいものを見ているかと思いきや、ほっとしたようにこんなことを言ってきた。
「あらあら、二人とも仲がとってもいいのね♪ じゃあ問題ないわね♪」
「「・・・問題??」」
曜さんも同じ疑問を抱いたのだろう、ハモル形でおばあちゃんに聞きなおす。
そこで僕と曜さんは衝撃的事実を知ることになった。
「あ、あはは~、まさか部屋が一つしかないなんてね~//」
「いや、笑い事じゃないですよ!?」
流石の曜さんも、少し恥ずかしいのか、その表情はいつもに比べてぎこちないように見える。
というのも、今年は泊まるのが曜さん一人の予定だったため、他の空部屋は、物置として利用することにしたらしいのだ。
これが意味することは、僕と曜さんが同じ部屋で寝泊まりするというわけで・・・。
おばあちゃんに案内された部屋を見渡す。
ちなみにおばあちゃんは、「じゃあしばらくは若いお二人さんでゆっくりしなさいね、オホホ」なんて言って、どこかへ行ってしまったよ・・・余計なお世話とはこのことだろう。
中央に丸い木の机があるだけの畳式のその部屋は、古さを感じるが、掃除が行き届き、清潔さを感じる。
なるほど、これなら二人で泊まるには広さ面では十分だろう。
そう、広さ面ではね・・・。
「他に部屋はないんですかね?」
「う~ん、ないと思うよ? 私もさっき他の部屋見たけど、荷物がいっぱいでとても寝泊まりできる状態じゃなかったよ。」
「・・・なら、しょうがないですね。僕は廊下に寝ましょうかね。」
当然だが、曜さんと同じ部屋で寝る選択肢はない、論外だ。
千歌さんの家でのトラウマもあるしね・・・。
まあ、最近はだいぶ暖かくなってきたし、廊下でも寝ても何とかなるだろう。
ところが、それを聞いた曜さんは、一瞬驚いたような表情を浮かべた後、すぐに怒ったように
「何言ってるの! だめだよっ!」
・・・っ、びっくりしたぁ、予想以上に大きい声を出してきた曜さんに、思わずビクリとなってしまった。
「でも・・・流石に同じ部屋で寝泊まりするのもまずいでしょう?」
「・・・梨子ちゃんとは毎日一緒に寝てるのに??」
本当にお姉ちゃんは、いつも僕を背中から刺してくるね・・・
ていうかなんで曜さんはそんなことを知っているんだよ、いや、どうせお姉ちゃんが嬉々として言いふらしているのだろう。
しかし、こうなったら・・・
「確かに、お姉ちゃんとは一緒に寝てますけど姉弟だからいいんですよ! でも僕と曜さんは、姉弟じゃないですよ!」
開き直るしかあるまい。
高1の弟と高2の姉が一緒に寝ている方がよほど異常だと思うが、曜さんを説得させるためには仕方がない。
でも今の言い方だと、僕が重度のシスコンみたいに聞こえないだろうか?
いや、気のせいだろう、きっと。
「・・・予想以上に、かいと君ってシスコンなんだね。」
あの爽やかイケメンの曜さんが少し引いていた。
普通に傷ついたよ。
僕が心にダメージを負う中、曜さんは「でも・・・」と続け
「梨子ちゃんが言ってたけど、アクアのメンバーは誰でもかいと君のお姉ちゃんになっていいって言ってたよ?」
・・・そう言えば、そうだった。
花丸からも同じようなことを聞いたんだったんだ。
なぜ、いつも、その場にいないお姉ちゃんにとどめをうけるのだろうか?
お姉ちゃんは僕にとって呪いかなにかなのだろうか・・・。
「というわけで一緒の部屋でも問題ないよね?」
項垂れている僕に、勝ち誇ったようにそう言ってくる曜さんを見上げる。
まだだ・・・まだ、諦めるな!
このまま、二人きりになってしまう状況を許してしまうとロクでもないことが起きるに違いない!
千歌さんの時は、足が動かなくなり、花丸の時は、お漏らしをした。
今度は何が起きるのか・・・想像するのも怖い。
「だめですよ! 若い男女が一緒の部屋でなんて、間違いが起きたらどうするんですか!!」
この期に及んで抵抗されるとは思っていなかったのだろう、曜さんは、面食らったように少し怯む、が
「間違いって何さ!!」
と、まさかの反撃。
「な・・・なにって・・・その・・・あれですよ、あれ//」
当然、僕に答えられるわけもない。
「ん~、あれって何かな~??」
そんな僕に対して、曜さんはニヤニヤしながら馬鹿にしたようにそう言い放ってくる。
くっ! 絶対分かっているくせに・・・っ
ていうか、曜さんもちょっと顔が赤くなってるないか。
多分、本人も僕と一緒の部屋で寝泊まりするのは、恥ずかしいのだろう。
しかし、だからといって僕を廊下で寝させるのは、優しい曜さんは許せない、と。
「はぁ・・・もう、分かりました。この部屋で寝泊まりしますよ。」
結局、言い負かされてしまった僕は、一緒の部屋で寝ることを了承。
僕が廊下で寝ると言いつづけたら、曜さんが、じゃあ私も廊下で寝る、と言われたのが決定だとなった。
そう言われたら僕に言い返す余地はもうなかった。
・・・はぁ、今から何が起きるのだろうか。
しかし
その後、ここに来るまで長旅だったこともあり、その日は家でゆっくりすることになった僕たちは、適当にゴロゴロして、食事をとり、お風呂に入り、おじいちゃんとおばあちゃんを含めて雑談をして、何事もなく一日が終わりに向かっていく。
・・・おかしい。
普通だ
何も起こらない
最近の流れでいくと、何かが起きるはずだが・・・杞憂だったのか?
いや・・・そんなはずはない。
油断するな! 何かが起きるはずだ。
「じゃあ、おやすみ。かいと君。」
「おやすみなさい。」
ここだ、曜さんが寝ぼけて布団に潜り込んでくるとかそんな展開じゃないのか?
僕に隙はないぞ!
そんな風に警戒していたが、徐々にまぶたが重くなっていき、やがて夢の世界へ・・・。
「おはよう、かいと君! もう朝だぞ!!」
気付けば、日が変わり、朝が着ていた。
目の前には、相変わらず元気な曜さんが、僕の顔を覗き込むように起こしにきていた。
・・・嘘だろう??
何も起きなかった??
まさか、この合宿・・・
凄く平和なのでは??
そうだよ・・・こんなに何もストレスがない目覚めの良い朝は久しぶりだ。
よかった・・・
もう何も怖くない!
つづく
ここまで読んで頂いてありがとうございます!
すいません、びっくりするくらい進行が遅いですね・・・。
ですが! 次話より曜ちゃんとのイチャイチャを本格的に書いていくつもりなので、ご容赦を・・・。
では、また次話でもお会いしましょう!