「起きてください、もう学校に行く時間ですよ」
綺麗なソプラノの声によって目を覚ます。エプロンを着てこちらを見ている銀髪の美少女。彼女は俺の友人の椎名ひより。ここ三週間ほど同じ様な事をしてくれている。
「もう、朝ごはん冷めちゃいますよ。早く着替えて来てくださいね」
俺は椎名さんに言われて着替えながらどうしてこうなったのかを真剣に考えていた。そもそもの原因は三週間前、椎名さんが俺にお弁当を作ってくれる代わりに夕食を一緒にたべる事にしたのが原因だろう………
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「私が、あなたにお弁当を作ればいいんです!折角ですから、そちらの材料で私とあなたの夕食を作り、こちらで私とあなたのお弁当を作ればいいのです!」
突然、椎名さんはそんな事を言ってきた。予想はしていたが、それでも驚きを隠せない。
「………もしかして、迷惑…でしたか?」
そんなわけが無い。椎名さんと一緒に食べれる上に、お弁当も作ってもらえるのだ。逆にこちらが迷惑にならないか心配したくなる。
「それについては大丈夫です。母親に『いいひより?本当に大切な人が出来たらその人がひより無しでは生活出来ないようにしてやりなさい』と言われていますし、父親からは『いいか、ひより?男と言う者は世話を妬いてくれる人に弱いのだ。ひよりにとって大切な人が出来たらしっかり世話をしてやりなさい』と言っていましたので」
椎名さんは笑顔で椎名さんの両親から聞いた話を言ってくる。椎名さん一家に敵う気がしなくなった。しかもそれだと俺が彼氏とか夫とかに聞こえる気がするのだが…
「あなたは私にとって大切な本の仲間です。なので両親から聞いたことを実践してみようかと…」
そんなことを話しつつ、椎名さんを部屋に入れる。
「お、おじゃまします…」
誰も居ないのだから気を楽にしてほしい。いつもと同じように、緊張なんかしなくて良いから
「…はぁ、男の子の部屋に入るくらいなら緊張しないと思ったんですが」
そう言っている椎名さんの為に今日の夕食少し気合いを入れて作ろう。
「あっ、私も手伝います」
いや、座っていて欲しい。折角お弁当を作ってくれるのだこれぐらいはしておかいと後で大変な目に会いそうだから。
「ふふっ、ならお任せしますね」
任された。さて椎名さんを唸らせる様な夕食は出来るかな……
三十分後…………
「ごちそうさまでした」
お粗末様でした。あまり凝った物ではなかったから喜んでくれてよかった。
「そんなことないですよ。しっかり出来ていておいしかったです」
そう言って貰えたなら幸いだ。さて、これからどうするか…
「そうですね…部屋に戻らなければならない時間までしばらくありますし…」
この学校の寮では、ある時間以降は部屋から出ることを禁止するルールがある。破ったらどうなるかは分からない。
「本当にどうしましょうか…そうだ、あなたの部屋、少し見てもいいですか?」
構わない。特に怪しい物を隠している訳でも無いから。俺はここで課題を済ませておく。
「そうですか、では失礼しますね」
そう言って椎名さんは俺のベットの近くに行っていた。しばらくして戻ってきた椎名さんは、
「もしかして、勉強苦手ですか?」
俺の課題があまり進んでいなかった事を気にして椎名さんが言ってくる。実際あまり得意では無い。
「でしたら私がお手伝いしましょうか?」
そう言ってくれる椎名さん。非常に有難いが椎名さんが疲れないか心配だ。
「えぇ、大切な友達のだめですから」
そう言われると断れないだけど流石に椎名さんに何も無いと言うのは不味い
「いえ、別にそんなつもりで言ったわけじゃ…」
ここはどうするべきか、俺は少し悩むと椎名さんにこう言ってみた。
「何でも一個言う事を聞く…ですか?」
そうだ。これならポイントで全てが買えるため、大丈夫だろう。
「そうですね……また今度にします。そろそろ時間なので」
気付くともうあと少しで部屋に居なければいけない時間だ。
「では、また明日。おやすみなさい」
そちらこそ、おやすみなさい。椎名さんをそう言って見送った後、俺は風呂に入り、疲れた体を投げる様にベットに投じそのまま眠りに就いた。
部屋のスペアキーが一本無くなっていることに気づかずに……
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「おはようございます。良い天気ですね」
目を覚ますと椎名さんがこちらを見ていた。何故?
「朝ごはん出来てますから、早く着替えて下さいね」
そう言ってキッチンへ向かう椎名さん。理解できないが取り合えず制服に着替えキッチンへ向かう。
「おはようございます。良く、眠れましたか?」
良く眠れたよ。おはようと言った後に聞く何故椎名さんが此処にいるのか?
「もう、昨日言いましたよね?お弁当を私とあなたの二人分作るといいましたよ」
それは知ってる。だけど何故、俺の部屋にいるのか。
「それでしたら、私が昨日この部屋のスペアキーを一つ頂きましたので」
なるほど理解した。椎名さんは首をかしげながら言ってくるため、怒れない。もう椎名さんに任せよう…椎名さんには敵わないのだから………
「はい、まかせてくださいね」
そう言った椎名さんの笑顔はとても綺麗だった。
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「もう、遅いですよ早くしないと」
そんな椎名さんの言葉を聞き俺は動きだす。椎名さんの行動が通い妻の様に思える今日この頃。何時もの様に、椎名さんと朝食を食べ、椎名さんの作ったお弁当を持って二人で部屋を出る。
「忘れ物はないですね…それでは行きましょうか」
椎名さんと共に歩き出す。出来ることならこんな毎日がずっと続きますようにと、そう思う四月の終わりごろのお話。