授業が終わり、椎名さんと一緒に帰ろうとした時
「お前ら全員いるな?」
そう言って龍園君さんが前に立っている。横には、二人の生徒がいる。一人は龍園君さんの様に『不良』って感じの人と、180cm以上はある身長とアスリートレベルの筋肉を持った人。大変な事になりそうだ。
「そうですね。ただ、話だけは聞いた方がいいでしょうね」
椎名さんの言葉に頷きつつ、一度席に戻る。
「まずは自己紹介と行こう。一ヶ月もたって変だとは思うが、俺の名は龍園 翔このクラスの『王』だ」
いきなり凄い事を言い出した。そのせいで一部の生徒から凄い目で見られている龍園君さん。でも、彼がクラスを仕切ってくれるのなら安心できそうだ。
「そうですね。あのような見た目でも意外と優しいとあなたが言っていましたから」
椎名さんとそう言っている間にも、クラスの殺気が高まっていく。まさに一触即発だ。
「なるほど、このクラスには俺を王と認めたくねぇ奴がかなりいるようだな。じゃあ誰がこのクラスを仕切るか決めようじゃねぇか」
龍園君さんはそう言って周りを見た後に、
「どんな手段を使ってもいい。自分以外を全て潰せ。最後まで残っていた奴が『王』だ」
そう言って他のクラスメイトを煽っていく。ところで俺や椎名さんの様に、争いに関わりたく無い人はどうすればいいのだろう。
「あぁ、勿論。こんな争いに興味がねぇ奴は帰ってくれ。ただ、しばらく荒れるだろうから気をつけろよ?」
ほら、やっぱり優しい。龍園君さんは意外と甘いのだ。
「確かにそうでしたね…では帰りましょうか」
そうだな。今日は確か、スーパーでセールをやっていたはずだ。月の初めにしっかりと買いだめしておかなければ…
「そうですね。いろんなところの無料商品を買って帰らないと…」
「残るお前らは今から帰る奴には手を出すなよ?帰る奴は決まった『王』に文句は言うなよ?」
当然、文句なんて言うつもりは無い。クラスの争いなんてどうでもいい。俺は椎名さんと一緒に本さえ読めれば良いのだから協力は最低限だ。
「私も一緒です。最低限の協力しか、するつもりはありませんから」
そう言い合い教室から出ていく。その時龍園君さんがこちらを見て笑っていたのが少し不安になったが。
「さぁ、早く買い物をして帰りましょう!今日は新刊の発売日です!」
そうだった。椎名さんに手を引かれ、本屋に向かう。その時の椎名さんの笑顔を見ていたら不安なんて無くなってしまった。本当に椎名さんには敵わない。
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椎名さんと一緒に食材を買い、本屋で新刊を買い、帰る。こんな事が楽しいと思えてしまう。何故だろうか?
「本当に何故なんでしょうね。私は、あなたと一緒にいると何だか胸が温かくなって幸せな気持ちになるんです」
それは俺も同じだ。この気持ちの正体は何なんだろう…
「何でしょう…先輩に聞いて見ましょうか…」
それだけは止めてほしい。椎名さんに何を吹き込むかわかったもんじゃない。
「ふふ、冗談ですよ。あなたの反応が楽しいから、ついついやっちゃうんです」
そんな笑顔で言われたら怒ることもできない。椎名さんはずるい。
「そんなこと言って、あなたは全然怒らないじゃ無いですか。それに自分より、私の方ばかり心配して来ますし、そちらの方が心配です」
こっちは大丈夫だ。椎名さんと一緒なら何でも出来る気がする。そう言おうとした時、急に体が前に倒れた。
「!大丈夫ですか?!」
大丈夫と言おうとしても口が上手く動かせない。
「大丈夫ですか?!しっかりしてください!」
椎名さんに心配させるなんて失敗したなぁと思いつつ、俺の意識は沈んでいった。