大道寺先輩の修行から数日後、俺たちは霧夜先生の下、特訓の日々に明け暮れていた。
「はぁぁぁ!!」
斑鳩先輩が霧夜先生の投げるクナイを飛燕で弾き返す。しかし、そのうちの一本が斑鳩先輩の後ろの壁に刺さった。
「全て弾き返せなくてどうする!!」
「くっ……」
次にかつ姉、近づいてくる高速回転する刃のついた柱を回転蹴りで破壊する。
「間合いが遠い!!」
「おっす!!」
飛鳥は飛んで来る手裏剣を避ける修行だ…次々と飛んで来る手裏剣を避け続けるが
「うわああああ!!」
着地地点に手裏剣が待ち構えていた。飛鳥は驚いて後ろに倒れてしまった。
「動きが単調だから先を見されるんだ!」
「はい!」
「せいっ!!はっ!!どりゃあっ!!」
俺は次々と向かってくる丸太を徒手空拳で薙ぎ倒していく。なかなか数が多いが師匠の連撃に比べればゆっくりなくらいだ
「これで…さいごぉっ!!」
俺は残り一つの丸太を破壊して…
「ふっ!!」
その影に隠れてたクナイを指でとった。
「いいぞ竜司!!良く気がついた!!」
「押忍!!」
やっぱり師匠との特訓の成果だ、確実に以前よりレベルアップしている!!
「すごいねりゅーくん」
俺が給水をとってると飛鳥達が近づいて来た。
「以前より明らかに成長しています。」
「霧夜先生いつにも増して厳しいのによくついてこれるよな〜」
「へへっ、全て師匠のシゴキのおかげだな」
師匠には感謝しかない、この調子でどんどんレベルアップしていかないとな
「きゃあああ〜!!」
すると、雲雀の悲鳴が聞こえてそちらを向くと雲雀を守るように柳生が立っており彼女の持つ番傘には無数のクナイが刺さってた。
「こら柳生っ!!」
霧夜先生は柳生に怒鳴りつける。
「悪いのは雲雀です!!柳生ちゃんは…」
「やめろ雲雀…」
「でも…」
「柳生!!それが雲雀の為だと思ったら大間違いだぞ!!」
「……………。」
霧夜先生の叱咤に柳生は俯いた。
「む、そろそろ時間か… よし、今日はここまで。柳生と雲雀、お前らは残って補修行だ。」
「えぇぇ〜!?」
2人に補修行を指示すると霧夜先生は煙と共に姿を消した。
「雲雀…大丈夫かなぁ…」
「雲雀さんも忍。何時までも柳生さんに庇ってもらうと言う訳にもいきません。」
俺が呟くと斑鳩先輩は雲雀を見ながらそう返した。
「なかなか気合の入った良き修行よ」
霧夜が自室に戻ると大道寺がそこにいた。
「お前が竜司の修行をしたいと言い出した時は何事かと思ったが…わずかな時の中で大したもんだあそこまで鍛え上げちまうんだからな」
「我の見立てではあの者の存在がこの先の闘いで必要になる。ここで失うわけにはいかぬ…そして…他の5人も各々特質は違えど、鍛錬次第では相当の逸材だが中でも奴は金の卵だ…それに…」
「思い出すだろ?凛のやつを、あいつがうちに入学して来た時、開口一番に「俺は世界一カッコイイ忍者になります!!」って言った時には本当に懐かしくなった」
「うむ」
霧夜の問いに大道寺は懐かしそうに呟いた。
蛇邪学園
「くくく、すべては私の思うように進んでいる」
蛇邪学園の出資者道元は自室の豪華な椅子に座ってワインを飲み愉悦に浸っていた。
「なぜ勝手に動いた?」
突然声が聞こえてそちらを向くと華蛇が睨みつけていた。
「おやメドューサ殿か、どうかな?君も一杯」
道元は新しいグラスを出すとワインを注ぎ華蛇に差し出す
「ふざけるな、何故悪戯にリューマ達を煽ったのかと聞いてるんだ。貴様如きが陛下の手を煩わせてタダで済むと思っているのか?」
華蛇はワインを受け取らずに道元に怒りを含んだ顔で睨みつけた
「貴様如き…か、君は何か勘違いしてないかな?いつ私が君たちの部下になったのかな?」
「何?」
「私が君たちの研究施設にいくら投資してやってると思ってる?君たちロードスカルの必須アイテムである、そのスカルドライバー開発に多額の金を提供してやったのはどこの誰だったのかな?」
「ぐっ…」
道元の言葉に華蛇は悔しそうにした。悔しいがこいつの持つ莫大な金によって自身達は今の規模へとなった。あまり下手な態度は取れない…
「まぁそう怒らないでくれたまえ。これは君たちの今後にも必要になることだよ。今回の計画が成功すれば君たちは今以上の力を手に入れられる。だから気長に待っていてくれたまえ」
「…我らの邪魔だけはするな」
華蛇はそれだけいうと黒い穴を開きその場を去っていった。
「ふっ」
その様子を見ながら道元は笑みを浮かべて再びワインを飲み出した。
「うわあっ!!やっちゃった!!」
学園の忍具保管庫、1人の忍学生が足を滑られ辺りに手裏剣やまきびしをぶちまける。
「やばいやばい…炎佐さんに見られたら何言われるか…」
「なんて言われるって?」
「そりゃもう悪鬼の如く…え?」
声が聞こえてそちらを向くと…
「え、炎佐さん…」
「まったくお前は…」
「あ、炎佐さんそこまきびしが…」
「え?」
少年が慌てて炎佐を止めようとするが炎佐の足にまきびしが…
「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「すいませぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
「理吉(りきち)テメェ…何度も言ってんだろ!!毎回毎回忍具ぶち撒けやがって!!」
「すいません炎佐さん…足大丈夫ですか?」
あの後炎佐に拳骨を喰らわされた理吉と呼ばれた忍学生は涙目で謝った。
「まったく…ほんと気をつけろ」
「あ、そういえば任務お疲れ様です!!聞きましたよ、なんでも半蔵学院のリューマって強いやつをやっつけたとか!!」
そう言っては目を輝かせる理吉
「まあな」
「やっぱり炎佐さんはすごいです!!善忍なんか敵じゃないですね!!」
「はぁ…そう言うとこだぞ。あんまり相手をみくびるな」
得意げに言う理吉に炎佐はため息を吐いた。
「忍の世界じゃ油断は即、死に繋がるんだ。常に油断せず万が一に備えろ」
「あ…はい!!」
そういうと炎佐はそこから去ろうとしたがふと何かに気づいた。
「…そういえば春花を見なかったか?」
「ええと…春花さんでしたら出かけていきましたよ?「お人形さんを見にいく」って言ってました。」
「…あぁなるほどわかった」
炎佐は何かを察すると納得して今度こそ立ち去った。
「まったくあいつは…」
竜司の自室
「ん…なんだ、変な時間に起きちゃったな…」
その日の夜、俺は何故か深夜に目が覚めてしまった。布団をかぶるがなかなか寝付けない
「…水でも飲んでくるか」
俺は仕方なく部屋を出て給水場に行く。
「ん?あれは…」
その途中、人影が見えた。それは…
「雲雀?」
しかし雲雀は俺に気付かないのか此方に視線を向けずに立ち去っていった。
「なんだったんだ?」
「超秘伝忍法書が盗まれたぁ!?」
次の日、教室に来た俺たちに衝撃的な事実が伝えられた。
超秘伝忍法書、それは選ばれた者しか使うことが出来ないとされる伝説の秘伝忍法書である。強力すぎる力故に陰の書と陽の書の2つに分けられており善忍達によってこの半蔵学院で陽の書を厳重に管理していたのだ。
「あぁ。先の奇襲以来警備を厳重にしていた。しかしそれを掻い潜り尚且つ保管庫までも開けることができるのは…俺を含めここにいるもの達だけだ」
「霧夜先生…それって…」
霧夜先生の言いたいことがわかってしまった。つまり先生は俺たちの中に裏切り者がいるのではないかと考えているのだ。
「そんな!私たちの誰かがそんなことするはずありません!」
飛鳥がこれに意義を唱えた。それは俺も同感だ。俺たちの中にそんなことをする人がいるなんて考えられない…
「まさか…な」
俺は昨日の雲雀を思い出したがすぐに否定した。まさか雲雀に限ってそんなことはないと
「わかっている。だが、奪われたことに変わりはない。とにかく俺は本部に連絡する。今日はお前たちは自室で待機だ」
霧夜先生の命で自室待機を言い渡されそれぞれ部屋にこもっている中…
「お部屋で待機って何すればいいんだろ?…」
部屋で待機するといわれてどうすればいいかわからず雲雀は退屈な時間を過ごしていた
「ん?なんだろこれ?」
ベットの下に何かあったのでとってみるとそれは超秘伝忍法書だった
「これどういうこと?どうしてここに?」
騒ぎの原因が今自分の手元にあることに驚きを隠せない雲雀だったが
「ご苦労様。素敵な働きだったわ」
「えっ!?」
突然声が聞こえて現れた鞭が絡みつき奪い取ってしまった。そこには蛇邪学園の春花がいた。
「約束どおり、ちゃ~んとお友達になってくれたわね」
「っ!?まさか…」
雲雀は鏡のところに置いた柳生の命を救うよう願いでた時、彼女からもらったピアスをみた、あれに細工が施されていて自分を操っていたようだ。
「これであなたは半蔵学院の子達だけじゃなく、全ての善忍を裏切ったのよ」
「そ、そんな…」
たしかに春花の言う通りだ。善忍達の中で厳重に守られている超秘伝忍法書を盗んでしまったのだ
「良いじゃない。どうせ落ちこぼれ扱いされてるんだし。でも、私は違うわ。あなたの秀でた力を認めてた。」
「え?」
春花の言葉に雲雀は驚く
「最初にあなたを見た時から気付いてたわ。臆病故の慎重さと勘の鋭さ。諜報として申し分ない能力よ。ただ強いだけが忍じゃない。その力、私達なら高く評価してあげられるのだけど。どう?蛇邪に来ない?」
「て、転校しろってこと!?」
突然の勧誘に雲雀は驚愕した。
「その気があれば歓迎するわ」
そういうと一枚の紙を渡すと立ち去っていった。
「まさか…な…」
俺は自室で昨日のことを考えていた。そうだ、あれは気のせいだ。雲雀が俺たちを裏切るなんて信じられない…
「りゅーくん大変!!雲雀ちゃんが…」
「え?」
「借りていた本を返しに行ったら雲雀ちゃんがいなくって…」
飛鳥が持っていた手紙を俺たちに見せる。そこには自分が悪忍に操られていたこと、超秘伝忍法書を盗んでしまったこと、そのことへのみんなへの謝罪が書かれていた。
「まさか雲雀さんが犯人だったなんて…」
「斑鳩先輩、犯人ってのはちょっと違いますよ」
「そうだぜ!!操られてたって書いてあるじゃねえか!!」
斑鳩先輩の言葉に俺とかつ姉が否定した。
「でもどうやって雲雀を…」
俺はどうやって雲雀を操ったのか気になった。
「おそらくこいつだ」
すると霧夜先生が現れて俺たちに一つの割れた髪留めを見せる。そこには小さな巻物が入っていた。
「こいつは念話発信機って言ってな。こいつを相手につけてその人間を遠くから意のままに操る者だ。主に傀儡使いなんかが使う者だ。」
傀儡使い…と言うことはやっぱり蛇邪の犯行とみて間違い無いだろう…しかしまさか俺たちの仲間を操られるなんて…
「雲雀!!」
雲雀の手紙を読んだ柳生は雲雀を助けまいと忍転身して窓から飛び出していってしまった
「柳生、待つんだ!!」
「俺が追いかけます!」
「私たちも!!」
俺たちは慌てて柳生を追いかける。
「柳生…どこ行ったんだ…」
俺は街を歩きながら柳生を探す。
「あ、いた…」
柳生を見つけた俺は柳生の前に立つ。
「どこ行くんだ柳生?」
「…決まってる、雲雀を助けに行くんだ」
「落ち着けって…雲雀がどこにいるかもわからないんだぞ」
「分からなくても絶対に探し出す!!そこをどけ!!」
柳生はやけくそ気味に番傘を突き出してくる。俺はそれを躱して柳生を止める。
「こんなやけくその攻撃が当たるわけないだろ?いつもの冷静な柳生はどこ行ったんだ?」
「ぐ…」
「冷静になれって、俺だって雲雀が心配なんだ」
すると、柳生は大人しくなって顔を俯く
「俺の…責任なんだ…」
柳生が俯きながら話す。
「昨日、雲雀がいなかったのを俺は知ってたんだ… 侵入者の話を聞いた時、その事を思い出した。でも、雲雀を疑うなんて俺には出来なかった…」
「…それは俺も同じだよ。俺も昨日雲雀が夜の廊下を歩いてるのをみてたのに何にも疑わなかった。誰だって気付かないって」
柳生の言葉に俺は共感する。
「でも.俺がもっと雲雀のことを気にかけてたら…こんなことには…」
柳生の目には涙があふれていた。
「それは違うって」
しかし俺はそれを否定する。
「柳生が悪いってのは絶対ない。あえて言うなら気がつかなかった俺たち全員のミスだ」
「そうだよ柳生ちゃん」
俺の言葉を肯定するように飛鳥達がやってくる。
「悪いのはお前じゃねえ。気がつかなかったアタイらとのミスと…雲雀を操ってこんな事をさせた蛇邪の奴らだ。」
「柳生さん、わたくし達は仲間ですよ?わたくしたちも雲雀さんを助けたいんです」
「だからみんなで助けよう、雲雀ちゃんを!!」
かつ姉、斑鳩先輩、飛鳥の言葉に柳生は顔を赤く染める
「みんな…すまん」
「よしっ!!そうと決まれば学院に戻って作戦会議だ!!任務は俺たちの大切な仲間、雲雀の救出…ついでに超秘伝忍法書の奪還だ!!」
俺の言葉にみんなが頷く
「待ってろよ蛇邪学園…雲雀は必ず返してもらうからな!!」
俺は改めて覚悟を決めた…大切な仲間を救う覚悟を