仮面ライダーリューマ   作:クロバット一世

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其の五

「また妖魔の気配だ!!もう何体目だよ!?」

 

次々と現れる妖魔の気配に炎佐は嫌気がさしていた。

しかしだからと言って放っておく訳にはいかない。妖魔を一体でも取り逃したら罪もない人に多大な被害が生じる。

 

『そんなことになったら…父上や理吉に合わせる顔がねえだろ…』

 

自分に忍としてのあり方を教えてくれた父上に…自分を慕ってくれる後輩の期待に応えるために炎佐は焔たちと共に妖魔の気配がする方向へと走っていった。

 

「ん?この気配は竜司か…」

 

すると妖魔の近くに竜司の気配を感じる。どうやら竜司も妖魔を討つために動いているようだ。しかしその近くには覚えのない気配が二つある。

 

「しかも1人は…人間の気配か?」

 

「炎佐、飛鳥たちも近くにいるぞ」

 

焔に言われて探ってみると竜司の方向へと飛鳥たちの気配が向かっている。

しかし、様子がおかしい

 

「お前ら、急ぐぞ!!」

 

妙な胸騒ぎがして竜司たちの元へと急いだ。

 

 

 

 

 

「お前ら、いったい何やってんだ?」

 

「こんな時に仲間割れか?」

 

「お前ら……」

 

俺と飛鳥の戦いに割り込んできたガリュー超絶と焔に俺たちは驚きのあまり動けずにいた。少し遅れて他の炎佐紅蓮隊のメンバーも集まっていた。

 

「リューマ、なんでこいつらと戦ってんだ?お前ら仲間じゃないのかよ?」

 

「飛鳥…今この京都がどんな状況か分かってるのか?」

 

「ガリュー……これは……っ!!」

 

俺が問い詰めてくるガリュー超絶に事情を説明しようとした時、禍々しい気配が迫ってきた。

 

「ガリュー!!気をつけろ!!」

 

「え?」

 

その時、妖魔衆が現れ俺たちを取り囲む。

 

「かぐらを追ってきてみたら我がオリジナルの2人が揃うとは…面白くなってきたな」

 

零座も現れ俺たちを見渡すと薄らと笑みを浮かべる。

 

「リューマ、なんだこいつらは…妖魔なのは間違いなさそうだが…」

 

ガリュー超絶は突如現れた妖魔衆に警戒する。ガリュー超絶も本能で奴らのヤバさに気付いたのだろう

 

「気をつけろ炎佐、こいつらは妖魔衆…理由はわからないんだけど俺たちの能力が使える!!」

 

「俺たちの能力?」

 

「やれ!!」

 

零座の合図と共に妖魔衆たちが俺たちへと襲いかかってくる。

 

「なっ…これは…!!」

 

やはり前回戦った壱座、参座、五座、七座、九座は飛鳥たちの…弐座、四座、六座、八座、十座は炎佐紅蓮隊のみんなの能力を使えるようだ。

 

「お前が言ってたのはこれか…!!」

 

「ああ、気をつけろ!!妖魔自体もものすごく強いんだ!!」

 

妖魔衆たちは俺たちを取り囲んでおりかぐらたちを連れて逃げるのは難しそうだ。

 

「ガリュー、詳しい説明は後だ!!今はこいつらを倒してあの2人を守るのを手伝ってくれ」

 

「あの2人?」

 

ガリュー超絶は俺の後ろにいる奈楽とかぐらに気づいた。

 

「さっきの気配の奴らか…分かった!!」

 

ガリュー超絶はワイルドブラスターキャノンモードを手に奈楽とかぐらを守るように身構えた。

 

「あくまで我らの邪魔をするのか…面白い、変身」

 

そして零座も変身して苦無と片手斧に黒い炎を纏わせて襲いかかってくる。

 

「こいつの能力…まさか!!」

 

「ああ、俺とガリュー…2人分の能力が使えるみたいなんだ」

 

「マジかよ…厄介だな」

 

零座の能力にガリュー超絶も驚愕する。妖魔衆の連携攻撃に零座の強力な一撃が次々と俺たちに襲いかかってきた。

 

「くそっ…半端な攻撃は通じないか…竜司!!事情はさっぱり飲み込めねえがこいつらがやばいってことはわかる!!2人でこいつらを倒すぞ!!」

 

「ガリュー…分かった!!」

 

俺は意を決してガリュー超絶の隣に立つ。

 

「我々妖魔衆の力…貴様たちに見せてくれよう。行け!!我が妹たちよ!!」

 

妖魔衆たちは標的を俺たちに切り替えて次々と襲いかかってくる。俺は竜巻を操り妖魔衆たちの攻撃を弾き、ガリュー超絶がワイルドブラスターキャノンモードで離れた場所にいる妖魔衆を撃ち接近してくる奴らを俺の竜巻を纏った拳とスピノアクスで迎え撃つ。

 

「どういうことだ?戦力はこちらが上のはずなのにどうしてここまで拮抗している?以前5体を1人で相手にした時は相当苦戦していたはずなのに?」

 

「あの時と一緒にするなよ」

 

疑問を抱く零座に俺は答える。

 

「俺たち忍は仲間と力を合わせることで更なる力を手にすることができるんだ!!忍の力をみくびるんじゃない!!」

 

俺たちの連携によって妖魔衆たちは一箇所に纏まる。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

俺はカグラドライバーを叩きガリュー超絶がワイルドブラスターキャノンモードに超絶キーを挿しこみ回す。ガリュー超絶の強大な炎が俺が生み出す竜巻の力によってさらに火力を増す。

 

「「合体超絶忍法!!双竜バーニングサイクロン!!」」

 

『ガォォォォォン!!』

 

「くっ!!」

 

ワイルドブラスターキャノンモードの引き金を引くと風の力で威力の上がった炎の弾丸が妖魔衆へと向かっていく。零座は慌てて苦無と片手斧による炎の斬撃で相殺しようとし両者の間で巨大な爆発が起きた。

 

「…驚いたぞ、まさかこれほどの力があろうとは」

 

煙が晴れると傷だらけの姿で立つ零座と妖魔衆がいた。あれだけの爆発でも倒せなかったとは思わなかった。

 

「退くぞ、一時撤退だ」

 

零座がそういうと他の妖魔衆は次々と撤退を始める。そして零座自身も撤退して俺たちしかいなくなった。

 

「竜司、いつ追手が来るかわからない。今すぐここを離れるぞ」

 

「ああ分かった」

 

「え?」

 

奈楽とかぐらと共にこの場を離れようとする俺に変身を解いた炎佐が驚く

 

「りゅーくん待って!!」

 

飛鳥は慌てて止めようとするが戰いのダメージが大きくその場から動けない

 

「飛鳥…ごめん」

 

俺は飛鳥に謝ると奈楽たちと一緒にその場を立ち去った。

 

 

 

 

「な…なんで竜司が逃げるんだ?」

 

立ち去っていく竜司を見ながら炎佐は唖然とした。

理由はわからないが竜司は先ほどの2人と一緒に飛鳥たちから追われているようだ。

 

「焔、ここは任せた。俺は竜司を追いかける。」

 

「わ、わかった」

 

炎佐はそういうと竜司たちを追いかけた。

 

「なぁ飛鳥、これは一体どういうことだ?」

 

焔たちは残った飛鳥たちに事情を聞く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なんとか逃げ切れたな」

 

俺は奈楽たちとなんとか路地裏へと逃げ延びていた。

 

「くそっ…あれだけやってこれだけか…」

 

奈楽は回収した赤珠を見ながら悔しがる。あれだけの妖魔と遭遇したのに得られたのは最初に倒した小型妖魔の群れから回収した赤珠だけだった。

 

「仕方ありません奈楽、これだけでも手に入ったのですから」

 

「かぐら様…すみません」

 

励ますかぐらに奈楽は赤珠を差し出してかぐらはそれを取り込んだ。これでかぐらはまた一歩覚醒へと近づいたのだ。

 

「竜司も、私たちの手助けをしてくれてありがとうございます。」

 

「気にしなくて良いって」

 

 

 

 

 

 

「いや良くねえだろ」

 

すると炎佐が俺たちの前に現れた。どうやらもう追いついたようだ

 

「マジかよ…どうして」

 

「そういやお前には見せてなかったな。こいつのおかげだよ」

 

「シュルルルル!!」

 

炎佐が取り出したのは携帯電話から変形したカラクリヘビのヘビ丸だった。

 

「こいつは一度覚えた匂いから相手の居場所を探すことができるんだ。他にも熱源感知や振動感知まで索敵ならなんでもござれだ」

 

「へぇ〜俺のガマ吉に負けないくらい高性能だな」

 

「まあな、でもかっこよさは俺のが上だな」

 

「いやガマ吉の方がかっこいいだろ」

 

「いやいや俺のヘビ丸が」  

 

「いやいや俺のガマ吉が」

 

 

 

 

「…………ってこんなこと言い合ってる場合か!!何があったのか全部話せ!!」

 

炎佐のツッコミが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、お前があいつらから逃げてるのはそういうことか…」

 

俺が事情を説明すると炎佐は腕を組みながら眉間に皺を寄せた。

 

「妙だな」

 

「妙って?」

 

「お前の話の通りなら妖魔を倒すことができるかぐらは寧ろ忍にとって頼もしい存在のはずだ。なのにどうしてそれを殺そうとするんだ?」

 

その通りだ。妖魔は忍にとって全力で倒さなければならない危険な存在だ。戦力になるなら寧ろ協力しようとするはずなのに…

 

「お前はその辺あいつらから何か聞いてるか?」

 

「いや…そこまでは教えてもらえなくて…」

 

俺が視線を向けると奈楽とかぐらは口を閉ざしている。

 

「まあ良い、そっちについては俺の方でも調べてみる。」

 

「悪いな炎佐、じゃあそっちはお前に…」

 

 

 

 

 

 

「ここにいたか竜司」 

 

「「っ!?」」

 

突如聞こえた声に振り向くと屋根の上に険しい顔でこちらを睨んでいる霧夜先生が立っていた。

 

「霧夜…先生…」

 

突如現れた霧夜先生に俺は青ざめてしまう。表情を見るだけでもいつもとは全く違う…明らかに怒っていた。

 

「くっ…俺も…」

 

「お前はそこから動くな」

 

「っ!!」

 

炎佐が動こうとした瞬間、霧夜先生に睨みつけられて動けなくなってしまう

 

「さて…竜司、お前は一体何やってるんだ?なぜ討伐対象の2人を守ってここにいる?」

 

霧夜先生は険しい顔でゆっくりと近づきながら問い詰めてくる。

 

「…この2人を殺すなんてできません」

 

俺の言葉に霧夜先生の顔はさらに険しくなる。

 

「竜司、2人を倒せ。いまなら不問にできる」

 

「できません!!」

 

「最高幹部の第一級厳令だぞ」

 

「従えません!!!!」

 

「……そうか」

 

俺の言葉に霧夜先生は武器を構える。

 

「なら俺はお前を生徒と思わない。お前をかぐらと同様に討伐対象とする。」

 

「っ!!霧夜先生…」

 

武器を構えて近づいてくる霧夜先生に俺は身構えた。  

 

「奈楽…かぐら…2人はここから離れて」

 

「しかし…」

 

「いいからい行って!!俺が時間を稼ぐから!!はやく!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「させると思うか?」

 

しかし霧夜先生は奈楽とかぐらの目の前に一気に迫り斬りかかる。

 

「させるか!!」

 

俺は霧夜先生の前に割り込み霧夜先生の攻撃を防ぐ

 

「竜司!!」

 

「霧夜先生…本気だ…!!」

 

今霧夜先生は躊躇いなく殺しにかかっていた。躊躇っていたらダメだ。かといってこの様子じゃ2人が逃げられない…なんとか2人の逃げる隙を作らないと…

 

「やるしかない!!」

 

俺は霧夜先生を迎え撃つためにカグラドライバーを装着

 

「がっ!?」

 

する前に霧夜先生の蹴りが炸裂する。

 

「わざわざ変身するまで待ってくれると思ったか?」

 

霧夜先生は鋭い目でゆっくりと近づきながら迫ってくる。

 

「くそっ…だったら…」

 

俺は一度距離を置こうと後ろに退がろうとする  

 

「動きでバレバレだぞ」

 

しかしそれよりも早く霧夜先生が間合いを詰めてくる。

 

「えっ!?あ…やば…」

 

「反応が遅い!!」

 

霧夜先生の怒鳴り声と共に俺の顔面に拳が炸裂する。

 

「ゲホッゲホッ…これが…」

 

飛鳥たちよりも遥かに俺の動きを完全に把握している。さらに動きも速いだけでなく気配が絶たれていて全く動きが読めない。同じじいちゃんの弟子だった弥勒と戦った時は頭に血が昇っていて力の半分も出せていなかったから勝つことができた。

 

「これが…霧夜先生の本当の実力…!!」

 

 

 

   

 

 

 

 

そこから先は一方的なものになった。俺はリューマに変身することも出来ず動きも完全に読まれて殴られ蹴られた。

 

「う…くそ…」

 

「…………。」

 

満身創痍で倒れる俺を霧夜先生は見下ろしていた。

 

「さて……次は……」

 

「っ!!かぐら様…!!」

 

霧夜先生はこんどはかぐらと奈楽の方へゆっくりと近づいていく。それを見て奈楽はかぐらを守るように前に立つ

 

 

 

 

 

「させ…る…か…!!」

 

しかし俺は霧夜先生の足を掴んで止めようとする。それを見て霧夜先生は歯軋りをした。

 

「『出来ない』『従えない』そんな言葉が忍の世界で通用すると思っているのか?」

 

「………………。」

 

「甘ったれるな!!お前は…忍の使命をなんだと思ってるんだ!!」

 

霧夜先生の怒鳴り声が響き渡る

 

「忍の世界において上層部の命令は絶対!!たとえどんな汚れ仕事だろうとこなしていかなければならない。綺麗事が通じる世界じゃないんだぞ!!」

 

分かってる

 

そんなことがわからないほど俺だって馬鹿じゃない

 

間違ってるのは俺の方で

 

正しいのはみんなの方だ

 

でも

 

 

 

 

 

「そんなのは俺の目指す忍じゃない!!」

 

俺はやっぱり2人を見捨てられない

 

「っ!!分からず屋が…!!」

 

ここで2人を見捨てたら…俺は一生忍に誇りを持てなくなる…それに…

 

「言われたことを忠実にこなすだけなのが忍なら…そんなの傀儡と同じじゃないか!!」

 

「っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『お前さ…忍ってより傀儡みたいだな』

 

それは半蔵様に弟子入りして少し経った頃、同じ弟子だったあいつが俺を見て言った一言だった。

 

「っ!!今だ!!」

 

『超絶ティラノ!!』

 

「グルルルル!!」

 

わずかに気が逸れた一瞬に気づいた俺は超絶ティラノキーを起動して拳にティラノのエネルギーを纏わせる。

 

「しまっ…」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

気づいた霧夜先生は慌てるがそれよりも速く俺の拳が霧夜先生の顔面に炸裂し殴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

俺は殴り飛ばされ壁に寄りかかる霧夜先生を見ながら身構えていた。霧夜先生が今の一撃で倒せるとは思っていない。だからこそ警戒を解くことが出来なかった。

 

「竜司…」

 

案の定霧夜先生はゆっくりと立ち上がるので俺は今度こそカグラドライバーを装着した。

しかし霧夜先生からは先ほどと異なり戦闘の気配が消えていた。

 

   

 

 

 

 

 

「その2人を守ることが…この京都を滅ぼすことになるとしてもお前は2人を守るというのか?」

 

「え?」

 

「……っ!!」

 

突然霧夜先生が告げた言葉に俺は驚き、奈楽は目を逸らした。

 

「かぐらは完全覚醒した状態で一定数の妖魔を倒すとその体が砕け散り再び転生の珠に戻る…問題なのはその転生の珠に戻る際、桁外れのエネルギーを放出して、あたり一面を消失させてしまう」

 

「なっ…!!」

 

「上層部の予測では…京都全域が吹き飛ぶほどの威力だそうだ」

 

霧夜先生から語られた事実に俺は驚きを隠せなかった。

 

「竜司、今の話を聞いてもかぐらを殺さないと…守るといえるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

「守ります」

 

それでも俺の答えは変わらない

 

「かぐらが京都を滅ぼさなくても良い方法を見つけてみせます」

 

「そんな方法があると本気で思ってるのか?」

 

「わかりません、でも見つけます。」

 

霧夜先生が問い詰めるが俺に迷いはない

 

「もしそれでも見つからなければ…俺の手でけじめをつけます。でも、今はその時じゃない。俺は最後までかぐらを見捨てません」

 

「…そうか」

 

俺の言葉に霧夜先生は静かに目を閉じた。

 

「分かった、ここは退こう。だがその時が来たら…覚悟を決めろよ」

 

「はい!!」

 

俺の返事を聞き霧夜先生は背を向け去っていった。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、なんだかとんでもない話になってきたな」

 

去っていく霧夜先生を見ながら炎佐はため息を吐く。

 

「さて…と」

 

ふと遠くに感じた気配のした方を見ながら炎佐は呟く

 

「久しぶりに会いにいくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛ててて!!も、もう少し優しく…」

 

「うるさい、じっとしてろ」

 

霧夜先生が去った後、俺は奈楽に治療をしてもらっていた。奈楽は慣れないながらも一生懸命俺に薬を塗ったり包帯を巻いてくれた。

 

「ありがとう奈楽」

 

「礼を言われる立場じゃない」

 

奈楽は俯きながら包帯を巻き直してる。

 

「…怒らないのか?」

 

「何が?」

 

「お前にあんな重大なことを言わなかったんだぞ!?言ってしまえば…お前を騙していたんだ!!恨み言の一つもないのか…!?」

 

かぐらが京都を滅ぼす危険があるという話のことだろう。辛そうに叫ぶ奈楽を見ていたら胸が苦しくなった。

 

「そっちにも事情があるからでしょ?びっくりしたけど怒ってないよ」

 

「…………っ!!」

 

「寧ろ理由がわかっただけでも良かった。そこからかぐらを助ける方法を見つければ良い」

 

「……うるさい」

 

「要するに京都を守った上でかぐらを助けられれば良いんだろ?どうしたものか…」

 

「うるさいうるさいうるさい!!」

 

「え?ちょ、どうしたの?」

 

突然の奈楽の叫びに俺は驚く

 

「おまえはなんなんだ!?どうしてこの期に及んで!!そんなボロボロになって!!かぐら様を…自分たちを守るなんて言えるんだ!?どうして…」

 

 

 

 

 

 

「『私』を…こんなにも惑わせるんだ…!!」

 

奈楽は俺の胸元に額をつけて絞り出すような声を出す。

 

「奈楽……」

 

「すまない…忘れてくれ」

 

奈楽は俺から離れるとトボトボと去っていった。

 

「なんか…怒らせちゃったみたいだな…あとで謝らないと」

 

「竜司…」

 

「かぐら、どうしたの?」

 

するとそこへかぐらが話しかけてきた。

 

「すみません、奈楽が失礼なことを…」

 

「ううん、気にしなくて良いよ。俺もちょっと無神経だったかもしれないし…」

 

俺がそう返すとかぐらが少し辛そうにした。

 

「なぁかぐら、ひとつ聞いても良い?」

 

「なんですか?」

 

「かぐらはさ、完全覚醒したいの?」

 

「え?」

 

俺の問いにかぐらは驚く

 

「なんとなく気になったんだ。かぐら自身がどうしたいのかなって」

 

「それは…私の使命だから…」

 

「使命とじゃなくて、『かぐら』の本心を教えて」

 

「私の…本心…」

 

俺の問いにかぐらは少し考えた。そして、静かに話し出した。

 

「完全覚醒すれば…私は『妖魔を滅する』。その意思だけが残り…今の人格も無くなります。そして妖魔を一定数倒して役目を終えれば再び転生の珠に戻ります…それが私の使命、そう思っていました…」

 

「かぐら…」

 

「でも、今になって…思うのです。私自身が…本当にそれを望んでいるのか…使命を全うするべきなのか、それとも…」

 

かぐらは自身の胸の内を俺に打ち明けた。

その言葉を聞き、俺は目を閉じて少し考える。

 

 

「よしっ!!良いこと思いついた!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに…やってるんだ…私は…!!」

 

木に寄りかかり奈楽はため息を吐く。

 

「あいつを見ていると…『あの子』を思い出す…!!」

 

 

 

 

 

あの子に会ったのは私がいつも通り神社の中でかぐら様の…転生の珠を覗き込んでいたある日のことだった。

 

「ねえ、何してるの?」

 

「え?えと…その…」

 

「あ、ごめん…驚かせるつもりはなかったんだ」

 

私が何をしているのか気になったのか興味津々で近づいてくるその子に私は緊張して上手く喋れなかった。 

そんな私の様子に気づいてその子は慌てて謝った。

 

 

 

 

「それでね、ばあちゃんに連れられてきたんだけどばあちゃん忙しいみたいで暇なんだ。それで探検してたらここにたどりついたんだ!!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

ひとまず落ち着いた私はその子を部屋に案内する。私はその間も務めとして転生の珠を覗き込んだ。

 

「ねえねえ?奈楽はさっきからずっとその珠覗いてるけど退屈しないの?」

 

私のしていることが気になったのだろう。その子は不思議そうに聞いてくる

 

「これが…私の使命だから…」

 

「…むう」

 

私の答えが面白くなかったようでその子は不機嫌になり、突然こう言ってきた。

 

「奈楽!!一緒に遊びに行こう!!」

 

突然のその子の提案に私は驚いた。

 

「だ、だめだよ!!私はかぐら様を見守らないといけないから…」

 

「じゃあかぐらも一緒に行けば良いんだよ!!」

 

「え?」

 

「かぐらも一緒」、その言葉に私はポカンとした。

 

「う、うん…わかった」

 

 

 

 

 

 

そこからの時間は本当に楽しかった。一緒にいろんな景色を見たり、木登りや追いかけっこ、いろんなことをその子と、かぐら様と一緒にした。

 

でも、一番楽しかったのは

 

「よっしゃ、じゃあ次はこれをしよ!!」

 

その子と…彼としたサッカーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ以来…彼は私に会いに来なくなった…」

 

あのあと彼とした約束を忘れてしまったのか、それとも何かやむを得ない事情があったのかわからない…でも

 

「もう一度、会いたいな…」

 

彼が私に預けてくれた子供用のサッカーボールを見つめながら私は呟いた。

 

「奈楽!!」

 

「っ!!竜司…」

 

竜司が声をかけてきたので私は慌ててサッカーボールをしまう。

 

「どうした竜司…まだ安静に…」

 

 

 

 

 

 

 

「遊びに行こう!!かぐらと俺と3人で!!」

 

「え?」

 

彼の提案に私はポカンとした。

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