重要なシーンのぬけがあったら報告をお願いします。
プロローグ
1
贖罪の町。
大きく半球上に抉れたビルが見えるそこで
――グルルルル……。
白い鬼のような面をした二足歩行のアラガミ、オウガテイルが2体。目の前の少女に唸り声を上げていた。
その小さな瞳には本来の補食者たる光は宿っておらず、怯えが見て取れる。
仕方もないだろう。
少女の後ろには同時に飛びかかったはずの同胞の亡骸が4つも転がっているのだ。
無惨に斬り裂かれたそれらは鮮やかな切り口を外気に晒している。
少女はゆっくりと血に塗れた長い白髪を揺らしながら右手に構えた己の神機、獣剣老陽を静かに差し向ける。
「……ッ!!」
鋭く呼気を吐き出すと同時に右肩からステップで大きく片方のオウガテイルの足下に肉薄した。
オウガテイルは自分の身に急接近する恐怖に思わず顔を仰け反らせる。
「雑魚が……」
少女はそうとだけ呟くと神機を右上に薙ぐ。
鮮血が舞い、白髪に過分な化粧を施した。
それを気にすることもなく体制を整え必殺の一閃を放つ。
的確にアラガミのコアを捉えたそれはオウガテイルの命をそこで終わらせた。
「…………」
――グチャリ。
もう一体のオウガテイルが逃げていくのにも構わず神機を変形させプレデターフォルムにする。
血化粧の少女は物欲しそうに蠢く神機を忌々しげに眺め、
元の刀身に戻してコアに突き立て地面にまで差し貫いた。
神機とのリンクを切断し右手を口元に持っていく。
アナグラに居るオペレーターの元へと回線を繋いだ。
「……こちらナギサ。ミッションは完了だ」
端的にそれだけ伝えると少女は何もなくなりただ地面に突き刺さる神機を持ち、廃屋の中に入っていった。
元々は教会だったであろうそこは割れたステンドグラスが見られる。
その向こうに見える荒廃したビルを少し眺め
「神なんて……居ない」
そうとだけ呟き回収ポイントに少女は走った。
*******
西暦2071年。
オラクル細胞と呼ばれる全ての物質を蝕む存在により構成された化け物、通称アラガミは人類だけではなく生きとし生けるもの全てを食らい尽くさんとしていた。
あらゆる銃火器を打ち込もうと特性から物理ダメージなどの通らないアラガミはあらゆる生物を科学力で打ち破ってきた人類をいともたやすく絶滅へと追い込んだ。
そんな中、人類は一つの公明を見いだす。
――神機だ。
生化学企業、『フェンリル』によって開発されたそれを操り人類は貪欲なまでに生を求めた。
そして、また神機の開発の技術が進んだ。
わずかな期間で幾度と無く技術革新を続けたフェンリルが生み出したもの……それは新型、と呼ばれる可変式の神機だった。
そして、今日。
新型神機に適合した新たなゴッドイーターが初の戦場に立っていた。
*******
贖罪の町。
人類の過去の繁栄を物語る巨大な建造物は大きく抉れアラガミの恐怖を人類へと植え付ける。
そんな場所の中でも一際高い安全な場所に新型神機使い、シルト・シュラックは居た。
その顔は少し強ばっている。
無理も無いだろう。
彼は今回のこのミッション、『悪鬼の尾』が正真正銘の初陣なのだ。
「俺もついに戦うのか……」
緊張をはらんだ声が漏れる。
そして相棒である神機を見た。
教官からは渋い顔をされたパーツのセットが目に映る。
タワーシールド、バスター、ブラストのパーツだ。
どれも動作が重い。
教官が渋い顔をするのも仕方がなかった。
しかしシルトはこれをやめなかった。
ずっと抱いていた憧れを手放す気にはなれなかったのだ。
神機に適合した……そう聞いたときからシルトはバスター、またはブラストを装備しようと思っていたのだ。
ところがそんな彼に託されたのは新型。剣も銃も使える神機であった。
彼が取る行動は決まっていた。
予定調和のごとく初期装備のパーツを全て付け変えた結果教官には苦い顔をされたのだが……。
最後には投げやり気味に「実践で試し、痛い目を見てこい。そして死ぬな。これは命令だ」などと言われた。
無茶苦茶な命令だが気遣いのある命令に肯定を返した事を思い出し少し頬をゆるめると新たな人影がその場に現れた。
「よお、新入り。待たせたか?」
「あ、リンドウさん……で、あってますよね?」
「ん、あってるぞ。隊長とか柄じゃないし呼ばなくて良いからな。お前はシルトだったか?」
「はい」
予定の集合時刻より少し遅れて現れたのは雨宮リンドウ。
遅れたことについてなにも気にした様子のないリンドウを見てシルトは苦笑をこぼした。
初陣にも関わらず笑うシルトにリンドウは頷く。
「よし、お前さんは緊張とかは大丈夫そうだな」
「はい、大丈夫です」
「そうか」
リンドウは神機を地面に突き刺し仁王立ちになって胸を張る。
少し張りつめた雰囲気にシルトも神機を立てかけ直立した。
「良いか? 命令は3つだ」
シルトは頷く。
「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ……ってこれじゃ4つか」
リンドウは紛らわすかのように地面から神機を抜き肩に担ぐ。
シルトの緊張をほぐそうとでもしていたのだろう。
心遣いをありがたく受け取りシルトはなにも突っ込まず「了解」とだけ返した。
「さぁ新人。いや、シルト神機を持て!」
壁に立てかけておいた神機を持つ。
腕輪と神機が接続され体に力が張る。
重いはずなのにあまりそうは感じられない神機を片手で持ち肩に担ぐ。
リンドウと同じ構えだ。
ニヤリと笑ったリンドウ。
笑い返したシルト。
これから戦場に赴く空気では無かったがシルトは心地よく感じた。
「状況を開始する! 続け、新人!!」
「了解!!」
リンドウは高台から飛び降り、シルトもそれに続く。
こうしてシルトの初陣は始まった。
短めですがここまで。