やっと日常パート。
「休暇か……」
初戦闘の終えた日の夜。
シルトはフェンリル居から与えられている自室でシャワーのみを浴びてすぐに寝てしまっていた。
そして気が付くと朝、それも10時頃になっており教官に報告を忘れていた事をを思いだしあわてて報告に行ったが、ツバキは怒らなかった。新人には良くあることらしい。
リンドウから受けた報告に基づいた指摘だけ受け取ると、シルトは休暇を出された。
理由は簡単。
シルトに同行できるベテランの神機使いが居なかったのだ。
そのためシルトは2日程暇ができていた。
「何をしようかな……」
シルトはつぶやく。
本当はツバキと話した後、食堂で誰かと話そうと思っていたのだが時間が時間で誰も居なかったのだ。
「コウタはどうなんだろ?」
自分の同輩――一方的にコウタは自分を先輩だと言うが入隊のタイミングはそれほど変わらない――を思い浮かべる。
自分と同じ新兵であり、まだそんなにも話していないが仲は悪くない。
早速シルトは行動に出た。
自分の部屋を出てすぐにある扉、コウタの部屋の扉をノックする。
しかし反応が返ってこない。
「……任務なのか?」
試しにドアノブを捻ってみるものの予想通りとでも言うべきか。
鍵がかかっておりガチャガチャと音を立てただけだった。
「参ったな……本格的にどうしよう」
シルトはコウタの部屋の前で考え込む。
どう見ても怪しいが幸い通行人は誰も居なかった。
「一応エントランスで確認でも取ってみるか」
結局何も思いつかなかったシルトはエントランスホールに行くため、エレベーターに乗った。
そして降りてすぐの机に人影を見つけた。
何とも優雅な空気で周りとの違和感を垂れ流しつつ何かを飲んでいる。
新人であるシルトがその人物を知るはずもなく避けて通ろうとすると、
「やぁ、君が期待の新型君かい?」
「はぁ……そうですが……」
オレンジの髪をかきあげつつ向こうから話しかけてきた。
こちらを見るその目には薄い色のサングラス。
象徴的なのは上半身に彫り込まれた入れ墨、そしてそれを隠す気もない赤いベストだろう。
芝居がかったような立ち方で立ち上がり、シルトを手招きする。
引き気味になりながらもシルトは仕方なく近づく。
「そうかい! 見ない顔でかつ噂の通りだったからそうかと思って話しかけてみたんだ!」
「そ、そうなんですか……」
勢いに押されるシルト。
そんなことにも構わずに彼は自身の存在をさらにアピールするかのように手を広げつつ名乗りを上げる。
「僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ」
一拍空けて前髪を再度手で振り払った後、上を向く。
そしてシルトの肩に手を乗せて言った。
「君もゴッドイーターならせいぜい僕を見習って人類の為、華麗に戦ってくれたまえよ」
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「俺は選択を誤ったのか?」
「そうだね、ここはこの装飾弾を……」
「はぁ……」
「どうしたんだい? そんなに深いため息をついて。華麗さが逃げてしまうよ?」
「そうですねー……はぁ」
シルトはそのまま絡まれ続けていた。
現在は出撃ゲート横のターミナルでバレットをエリックのIDで組まされているが……エリックの指示に従いながら組むバレットには無駄な装飾が多い。
しかし実用的な部分もあった。
そしてそれ以上にシルトにはまだ解放されていないエディットがエリックには扱えるのだ。
「さて、シルト君、ここも装飾弾にしようか」
「……何でですか?」
シルトは反目になりながら尋ねる。
しかしエリックはそれに構わず前髪をかきあげ指をピン、と立ててシルトに詰め寄る。
ターミナルの前という狭い空間の中詰め寄られたシルトに逃げ道はない。
顔がすぐそばにまで迫っていた。
「ちょ……近い……」
「良いかい? シルト君。装飾弾は人類の敵……アラガミには当たらないんだ」
詳しいことは僕も知らないけどね。そう言いつつシルトの操作していたターミナルを触る。
そして弾丸SSに接続されていた球を装飾のものへと変更した。
それによって攻撃力が下がる。
「攻撃力……下がってますよ?」
「分かっているとも」
少し考えた後エリックはその球を敵の方向を向く制御球に差し替えた。
コストが重くなりシルトからブーイングが出るが、それに構わずエリックはエディットを続けていく。
「こうして……出来た」
「これは……」
出来上がったのはブラストの特権とも言える放射がメインのバレット。
弾丸が敵に着弾後敵に向かって放射が吹き出すものだった。
――様々なところに無駄な装飾が付いているが。
エディット完了の操作を選択し編集を確定させるエリック。
「名前は……チェイスブラスターで良いかな」
そう言いながらエリックは属性違いの4つのバレットを作成。
そしてシルトに記録媒体のチップを渡した。
「これは僕の君への贈り物だ。それを使って華麗に戦ってくれたまえよ!!」
「へ、あ、ちょっと!!」
渡されたチップを後ろ手に投げながらエリックは駆けていく。
シルトは慌ててそれを受け取ると走り行くエリックを見送った。
そこに放送が入る。
『エリックさん、エリックさん。集合時刻ですので至急ヘリポートに向かってください』
「あの人……ミッションがあるのにこんな事をしてくれていたのか」
シルトは自分の手の中にあるチップを強く握る。
すると神機を保管庫から取ってきたエリックが再び出撃ゲートに現れた。
「遅刻なんて……華麗ではないね……」
「エリックさん!!」
「なんだい、シルト君。華麗な僕は急いでいるんだ」
「その、ありがとうございます。ミッションがんばってください!」
そう言うとエリックは目をサングラス越しに分かるほど見開き、そして細めた。
「こちらこそ。大事に使ってくれたまえ」
そう言うとエリックは開いていた出撃ゲートをくぐっていった。
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