エリックがミッションに出てしばらく、シルトはターミナルでエリックに貰ったバレットの詳細を見ていた。
「おいおい……マジかよ」
装飾の異常に多いそのバレットはシルトのバレットエディターでは編集することが出来ず、とりあえずそのまま使うしかなかった。
それにしてもまだ時間がそれほど経っていない。
シルトが腕輪で時間を確認をしてもまだ13:18を表示していた。
「また暇になった……」
そうもらしつつ当初の目的を思い出す。
コウタだ。
「うざいけど……悪い先輩では無さそうだったな」
エリックをそう評価付け、シルトはミッションカウンターまで歩いて行く。
受付嬢のヒバリがそこにいて、シルトに笑いかけた。
営業スマイルとはこのことを言うのだろう。
「こんにちは、シルトさん。今日は非番なのでは?」
「はい、そうなんですけど……時間を潰す方法が無くて」
「なるほど」
「で、コウタとでも話て時間を潰そうかとでも思っていたんですが部屋の鍵が閉まっていたのでミッションに出ていないか確認に来たんです」
「残念ながら、ミッションに出ていますね。シルトさんも次に相手にする予定となっているコクーンメイデンの討伐です」
手元のキーボードを弾きながらヒバリが言う。
その内容にシルトは落胆した。
本格的に暇を潰す方法がない。
外出許可が簡単に降りると知らなかったシルトはそう思った。
無機質な床に目線を落としているとヒバリが慌てたように言った。
「あ、それなら射撃場にでも行ってみてはいかがですか?」
「あ~……それはありかもしれないですね」
「先程エリックさんに新しいバレットも貰われていたようですのでおすすめします」
「じゃあ、そうします。やっぱりあれだけ大声だと聞こえてましたよね」
「ええ、ばっちり」
そう言いつつ苦笑をこぼす2人。
「あんな性格ですがエリックさんは妹思いの良い人なんですよ」
ヒバリはモニターに視線を落としつつ優しい顔で語る。
「病気をして1人寂しく日本で療養していた妹さんのために身分を捨ててゴッドイーターになってこちらに来ておられるんですから」
「妹思いなんですね……」
「そうですね。だから……まぁ、性格はあれですがあまり避けたりしないであげてください」
「はは、善処します」
「お願いしますね。さて」
そう言ってヒバリはキーボードを一際強く弾いた。
「申請が完了しました。4時間は有効、それ以降は他の神機使いの方が来たら交代してくださいね!」
「了解しました、ありがとうございます」
微笑むヒバリに礼を言ってシルトはまず神機保管庫に向かった。
*******
「やっぱり広いなぁ……」
神機保管庫で神機を受け取った後、シルトは射撃場へと来ていた。
鋼鉄で囲まれたその空間内にはポツンと的が1つだけ浮いている。
「あれがターゲットだったな」
そう言ってシルトは神機を銃形態に変形、構える。
まずは小手調べに通常の弾丸である火炎:ノーマルを発射した。
凄まじい反動がシルトを襲うがそれを持ち前のパワーで押さえつけ銃身をできるだけ動かさないようにした。
ーーバシッ!!
軽い音を立てて的に弾が当たる。
「よし、命中」
ダメージ等を数値化して表示できるモニターを見る。
そこには消費の軽さに見合ったダメージしか表示されていなかった。
「やっぱりこんな通常弾じゃ物足りないよなぁ……」
神機を操作しバレットを切り替える。
最初に渡されたバレットの一つ、業火:モルターだ。
神機を気持ち斜め上に向け、弾を放つ。
方向の加減で反動を受け止めきれずに少し神機が後ろに下がる。
だからだろうか。
放物線の奇跡を描き飛んだ弾丸は的の手前に着弾、炸裂した。
「あちゃ……外しちゃったか」
先程より更に角度を上に向け次弾を放つ。
また反動に負けはしたものの
ーーッドン!!
綺麗な放物線を描いた弾丸は的に当たり、爆発した。
「よし!」
ガッツポーズを思わず取るシルト。
その後も繰り返して撃ち続ける。
ーー命中、命中、命中、命中……。
1度当たった後は同じ姿勢で撃っているため外れることも無く命中していく。
「でも、これじゃあ意味がない」
銃身を更に上げ姿勢を変えるシルト。
神機が火を噴く。
神機の向きに合わせ天に向けて放たれたモルターは遙か高く、鋼鉄の天井に向かって飛び……落ちる。
ーージュン!
的から大きく離れたポイントに着弾。床に焦げ痕を残し消滅した。
「やっぱなかなか難しそうだな……」
銃身の角度を調整する。
2発目。外れ。
3発目。外れ。
4発目。外れ。
微調整を繰り返し行うも当たらない。
オラクルポイントの回復を待ち繰り返し撃っていく。
5発目。外れ。
6発目。外れ。
何度も繰り返す。
オラクルポイントの回復を待つ時間はそのまま姿勢の調整の時間にする。
そして14発目。
空を駆けた弾丸は重力により加速し……
ーーッドン!
「よっしゃ!!」
ついに着弾した。
喜びに顔を綻ばせているとどこからともなく拍手と歓声が上がった。
「凄いです! どうやったらそんな撃ち方で当てることができるんですか?」
声に振り向くとそこにはピンクの髪をボブカットに女性が立っていた。
シルトの視線に気付き慌てた様子で手を振りながら口を開く。
「ご、ごご、ごめんなさい!!」
「お、おう……」
言いつつシルトは時計を見る。
随分と時間が経っており4時間の制限時間を過ぎていた。
自分以外の神機使いは基本先輩である、と言うことも忘れてシルトは素の口調で言った。
「っと、悪いな。 ここ使うのか?」
「い、いえ、大丈夫なんで続けてくだしゃっ……ッ!」
激しく舌を噛んだようで涙目になりながら口を押さえる彼女をあまりみないようにしつつ、そうかとだけ答えシルトは的に向き直る。
15発目……外れ。
「ふむ……」
集中力を欠いた一射は大きく的の後ろに飛んでいった。
少し考えた後、シルトは場所を譲ることにした。
「俺、もういいから使って良いぞ」
「え、良いんですか?」
「もう十分時間を潰せたし予約してた時間も過ぎてるからな……」
「暇だったんですか?」
「あぁ、知り合いが居なくて……」
そこでシルトは自分の口調に気づいた。
「……居なかったので時間を潰しに来てただけですので」
すると彼女は明るく笑った。
「あ、別に口調は直さなくても大丈夫ですよ。慣れてるので!」
「は、はぁ……」
カノンは残念なことに基本的に下に見られて応対されるためにタメ口にも慣れてしまっていた。
最もアナグラの中で敬語を気にしないと怒るような人間は片手足りる程しかいないのだが。
「確か……シルトさんですよね? 新型神機使いの」
「そうです。……あなたは?」
おぉ!とでも言うように彼女は大きな胸の前で手を合わせる。
横に傾けられる顔に合わせてピンクの髪も揺れた。
「失礼しました! 私、台場カノンって言います! よろしくお願いします!」
「こ、こちらこそ……カノンさん」
「はいっ!!」
そう元気に返事したもの、カノンはシルトから目を逸らす。
シルトが不審に思ってカノンを見ていると不意にカノンが顔を上げた。
あまりの勢いで近づいてきた顔にシルトは一歩足を引く。
それに構うことも無くカノンは一気にまくし立てた。
「あの……!! つ、付き合ってください!!」
「…………はい?」
空気が、固まった。
カノンは俺の中でこんなイメージ……