衝撃の発言からしばらく。
自分が言ったことがどういうことか理解しカノンは顔を赤にして大慌てで否定した。
「ち、違うんです違うんです!!」
「……おぉ」
「違うったら違うんですよ!!」
「分かった、分かったから!」
しかし慌てすぎて中身が全く付いてきていない。
シルトは落ち着かせようと試みるも全く効果はなかった。
それどころかさらに顔が赤くなっていく。
シルトはカノンの肩に手を置き目を合わせた。
「落ち着け!」
「ひうっ!」
数秒、カノンが動きを止めた。
目の前のシルトを瞳に移す。
「早すぎますぅ……」
「お、おい!」
……そして気絶した。
*******
「なんだってんだ……」
少し毒づきながらシルトは気絶した先輩、カノンの神機を回収に来ていた。
カノンは先に医務室に連れていき寝かしてある。
運ぶときにお姫様抱っこをしているところをリンドウにしっかり見られてしまった。
「手が早いねぇ!」と茶化されたのは言うまでもない。
「今日は厄日か……?」
そうこぼしながら、カノンの神機をシルトは手に取った。
銃身パーツを見る。
「これは……」
そう、シルトと同じブラストの銃身パーツ、79式カノンだ。
シルトの物とは違い様々な場所に傷があり、多くの戦いを生き抜いてきたことを想像させる。
「あの人もあれでゴッドイーターなんだよな……」
失礼な事を宣いつつも感心するシルト。
自身の神機ではないため少し重量があったがカノンの神機を強化された身体能力で持ち上げる。
問題なく持ち上げることができたが質量と別の重さがそこにはあった。
「早く追いついて護れるようにならないとな」
そう誓って神機保管庫に歩き始めた。
保管庫に入るとシルトは立ち並ぶ神機の威圧感を感じる。
朝来たとき、神機がほとんど無かった時とは全く違ったその空気に押されつつも端末を操作する少女に声をかけた。
「すいません」
「は~い、ちょっと待ってね!!」
端末を操作するスピードが上がる。
シルトにはまねできないスピードで端末の操作を終えた少女は額の汗を腕で拭いシルトに振り向いた。
「おまたせ! 神機の保管でいいのかな、シルト君」
「あ、はい。お願いします」
「じゃあそこに置いてね」
「了解です」
そこまで言ってシルトは自分が名前を言ってないこと、相手の名前を知らない事に思い当たった。
それが顔に出たのだろうか。
「あぁ、自己紹介がまだだったね。私、神機整備班の椿リッカ。よろしくね?シルト君」
「はい、お世話になります」
「そんなにもかしこまらなくても良いよ?」
「そう……か?」
「そうそう」
リッカは満足したように頷くとシルトが置いた神機に向き直った。
まだ新しく、綺麗な神機。
シルトもリッカに釣られて神機を見ているとリッカが口を開いた。
「大事に使ってあげてね?」
「もちろんだ」
「うん」
シルトの返事に満足したようにリッカは笑みを見せると作業着のポケットを探った。
そして中から缶を取り出す。
その表面には『冷やしカレードリンク』と書かれてあった。
「これ、私からのプレゼント! さっきの、約束なんだから」
「……お、おう」
缶の表面に書かれた文字に釘付けになって曖昧な返事を返すシルト。
冷やしカレードリンク。
あまりにも少女には似合わない。
「約束だよ? じゃあね」
もう一度念を押し、シルトは神機保管庫から冷やしカレードリンクとともに神機保管庫を押し出された。
「これ……旨いのか?」
手元の缶のインパクトが強すぎて最早約束など頭に残っておらず頭に浮かんだ疑問を吐き出すシルト。
取り敢えず自分の部屋に戻って飲んだ結果は汚いので語らないことにしよう。
******
次の日の朝。
今日はミッションが無いらしいコウタとシルトは朝食をとっていた。
メニューは黒パン、コンソメスープ。
美味しいとは言えないが十分に腹が膨れる量が出されているだけ今日はマシと言えた。
「それでな! そこに俺が通常弾を撃って!!」
「リンドウさんに当てたんだろ?」
「げっ……なんで知ってるんだよ」
「ほんとに当てたのかよ……」
初のミッションについて語り合うシルトとコウタ。
どうにもコウタは誤射をしたらしい。
軽くカマを掛けただけだったが見事にかかるコウタに苦笑するシルト。
「そういうシルトはどうなんだよ? 誤射とかしなかったのか?」
「いや、そういえばバスターしか使ってないな」
「そうなの?」
「あぁ。使う前にオウガテイルを倒してしちまった。案外脆いし非力なもんだよな、あいつら」
「……相変わらずの馬鹿力なんだな」
次はコウタが苦笑を漏らす。
間違ってもそんなにもオウガテイルは脆くない。
アラガミである以上相応の硬度は持っている。
シルトの力が異常なのだ。
「それほどでもないぞ?」
「いや……普通じゃないから」
「そうか?」
「そうだよ」
今一納得しない顔をするシルト。
「まぁ……いいや。今日暇なんだよな?」
「ん? いや重要な用事がある」
「というと?」
「バガラリー見るんだよ!」
「バガラリー?」
「そうそう! バガラリー!!」
急にテンションを上げるコウタ。
周りの視線が集まるも全く気にした様子もなくバガラリーについて熱く語り始める。
あまりの勢いにシルトは理解できないまま頷くことしかできず、流れでそのままコウタの部屋に連れ込まれた。
「バガラリー見るぞぉ!!」
シルトのその後の記憶はぼんやりとしか残っていない。
原作ってどのくらい沿うべきなんでしょうね・・・