シルバー・ブレット   作:ダイコンハム・レンコーン

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もはや勢いで書いてるとすら言える、警察組織に入れたは良いが、色々と警察組織について考えないと……作品に登場する社会制度とその意義をひたすら考えるのは楽しい。


新生活の洗礼

────東京エリア 内地 勾田警察署

 

「それで、しげとくん、こんないたいけな女の子一人を一つ屋根の下に連れ込む気分はどうかね、人生の勝ち組かな?」

 

「……早速いま後悔してるよ、とっとと車に乗れ、早く帰るぞ」

 

 太陽は既に沈んでいた、この警視庁対ガストレア課の創立は明日と言う事になる為、一応まだ今日までの身分は釈放された容疑者と言う立ち位置らしい、警察の仕組みなどスコットランドヤードに知人が居たのみであまり詳しくは知らないが、警部補とは警部の下のポジションらしい、正に警部の補佐と言う事だ。……警察署の出口へ向かう中、煙色を更に溶かし込んだようなモスグリーンの外套をはためかせる男、多田島茂徳が口を開く。

 

「……あぁ、それと、結構前に来て面会の申し込みをしようとした男が居たぞ」

 

「里見君ですか?」

 

「当たりだ、なんと言うか、まぁ、ガキだな『ストリートチルドレンだろうとガストレアを倒した功労者の子供の扱いがそれか!』って怒ってたらしいぞ、結局追い出されたが」

 

「確かに、思わない所もないですが、危険性も確かにありますからね、特に浸食率を定期的に計測してない様なストリートチルドレンやマンホールチルドレンはいつ爆発するか分からない時限爆弾の様な物です、無警戒で招き入れる必要もないでしょう」

 

「お前、イルカの因子でも入ってるのか?」

 

「いや、これは恐らく生まれ持ったものですよ、いや〜生まれとは残酷なものです、弱冠十歳にして頭角を現した最年少警部補が警察庁のトップに立つ日もそう遠くないでしょうね」

 

「寝言は寝て言え、と言うより、お前、根に持ってるな?」

 

「そうですけどね、心は熱く頭は冷静にがモットーですから、己を忘れるまで激昂する事はありませんよ」

 

「まったく、イルカやチンパンジーの因子を持った呪われた子供たちですらもっとガキらしいが、お前は随分とかけ離れてるな、子供たちにも老成なんて概念があんのかね」

 

「私だって唯一無二ですよ、多分、同じ因子を持っていても性格が違う事もあるんでしょう? 普通の人だって老成する人、幼いままの人もいるでしょう? それと同じですよ」

 

 ……駄弁りながら入り口として入って来た門を再び潜り、目指していた場所にたどり着いた、4つドアの付いた車だ、色は光沢のあるシルバーが全体に塗られており、パトカーの上をとっぱらった様な形だ。

 

「この車にはパトカーみたいにサイレンはつけないのかい?」

 

「この車は覆面パトカーだ、緊急走行時は掌サイズのパトランプを屋根の上に乗せて走る」

 

「なるほど、理解したよワトソン君」

 

「お前、本当に記憶喪失か?」

 

「警察の仕事は人を疑うことかい?」

 

 鍵を片手に右手側のドアを開くと中から左手側のドアを開き、彼が、手招きする。

 

「おぉ、これが運転席の隣の光景ですか」

 

「"助手席"だな、なんでそう見事に知識が偏ってるんだ、お前は」

 

「歴史が違うんでしょうね」

 

「いや、違うのはむしろこっちの方だろう? 子供たちの間で奇妙な知識を入れるのが流行ってるのか?」

 

「奇妙とはなんですか奇妙とは、と言うか話しながら運転して良いんですか?」

 

 ……夜の東京はより一層輝きを増していた、目に薫る光の数々が流れ星の様に窓の外を流れていく。……内地の輝きとは裏腹に、外周区から見た輝きを思い出す。街中には呪われた子供たちであろう物乞いを幾らか見た、やはり、美しい物とは、遠くから見るから美しいのだ、絵画の画板の繊維だけ見た所で、ただの汚れた紐だ。

 

「貴方は、この光景を見て、何か思う事はあるんですか?」

 

「……知ってるか、呪われた子供たちの死因を」

 

「分かりませんね、ガストレア化ですか?」

 

「一位は外周区へのガストレアの襲撃だが……二位は、過激な反赤目団体のテロやリンチだ、次にガストレアとの戦闘行為、四位は、プロモーターによるイニシエーターの殺害」

 

「……ままならないものですね」

 

「……着いたぞ」

 

 車を駐車場に止め、家へと向かう。

 

「……これ全部しげとくんの家ですか?」

 

「んな訳ねぇだろ、アパートだよ、共同住宅だ」

 

 目の前にはやや外装の剥げたチョコレート色のアパートがあった。

 

「なるほどなるほど……後、一応本気で言っておくけどね」

 

「……?」

 

「本当に手は出さないで下さいね? 貴方を豚箱にぶち込むのは気が引けますから」

 

「出す訳がないだろう……」

 

 アパートのエレベーターに乗り、四階の隅の部屋に向かう。黄土色と黄色の塗装が施された金属製の扉を引くと……中はゴミ屋敷であった。

 

 ……え? 何だ、泥棒に荒らされたのか? と言うか何でどの部屋にも書類が散乱してるんだ? 

 

「……泥棒に荒らされたんですか?」

 

「すまん、俺の不徳の致すところだ」

 

「まず、片付けましょう」

 

「……あぁ、すまん」

 

 ……片付けを済ませる頃には、とっくに深夜と呼べる時間に入っていた。

 

「……今日もインスタントだな……」

 

「インスタント? 何ですそれは?」

 

「インスタントも知らねぇのか? インスタントってのはだな、湯を入れたりするだけで簡単に作れる食品だ」

 

「……そんなものがあれば、きっと私の生活も楽でしたね」

 

「…………」

 

「あぁ、いや、私個人の話ですよ」

 

 湯を沸かしている間、リビングで色付きの映像が流れるテレビをソファーに座り、眺めながら時間を潰す、深夜という事もあってか、中々に下世話な番組もあったが、始まった瞬間彼の神速の技により変えられてしまう。

 

「さっきの続き見たかったです」

 

「ガキが見るもんじゃねぇよ」

 

「と言うかさっきからガキとかお前とか、それはペアとしてどうなんですか、しげとくん」

 

「そのふざけた呼び方を辞めたら名前で呼ぶさ」

 

「交渉決裂ですね」

 

「……多少は考慮の余地があるかと思ったんだがな」

 

「でも好きに呼んでくれって言いましたよね?」

 

 追及の手を強めようとした時、奥のキッチンからぴーっと音が響く。

 

「湯が沸いたみたいだ、机に座って待っとけ」

 

「分かりましたよ」

 

 少し間が空いて、奥から湯気の立つカップを二つ持った強面の男がやって来た。知らない人が見れば愉快な強盗が来たと思うだろう。

 

 

 日本では食事の前に祈りを捧げない代わりに、いただきますと誰かへの感謝の言葉を述べると聞き、二人して「いただきます」と言い、食い始めた。

 

 

「……この棒切れはなんですか?」

 

「何って……箸だが、あぁ、使い方が分からねぇのか」

 

「まずはな……」と言おうと彼が言おうとしたが、彼が手に持った箸の姿を見て、俺はトレースしてみせた。狩人に大切な事の一つ、適応力だ。

 

「……使い方なら聞くか見るかすれば分かります」

 

「……それも、自前の力なのか?」

 

「そうですね……脚光と喝采を浴びるなら才能と努力でどうにかなりますけど生き残る為にはそれだけじゃ足りませんから、それこそ異端の力染みたものも必要ですからねぇ」

 

「……随分と、苦労してたんだな」

 

「いえ、他の子供たちの方が遥かに苦しい生活してると思いますよ、私なんて公僕になれたんですよ、一種の出世街道です」

 

「……そうか」

 

「しかし、そうやってズルズル啜るのは辞めてもらえませんか? 耳に響きます」

 

「な、麺は啜って食べるもんだろうが!」

 

「いや、こうして一口取ってそのまま口に収める方が綺麗です、ほら、その啜り食いは周りに汁飛ばしてるじゃないですか!」

 

「これも一種の作法なんだよ!」

 

「そんな作法私が修正してやりますよ!」

 

 

ドン! ドン! ドン! 

 

 

「……お隣からの苦情だ……少し静かにするぞ」

 

「……えぇ、熱くなりすぎました」

 

 

 深夜に二人、チマチマとインスタントヌードルを食べる姿は側から見れば苦笑いされそうな光景だった。

 

「明日は重要な会議だ、風呂に入っておけ」

 

「先に入ってもらっていいですよ、しげとくんの方が男臭そうですから」

 

「余計なお世話だ、ガキならとっとと先入って寝ろ」

 

「……そう言えば、服はどうしましょう、股開き背中開きは痴女染みてますし貴方が社会的に死ぬのは間違いないですよ」

 

「そこら辺は大丈夫らしい、スキャニングされた身体データで作られた寝巻きが手元にある、明日には専用の制服も届くと聞いている」

 

「……待ってくださいいつ調べたんですか?」

 

「……企業秘密だな」

 

「警察ですよね?」

 

 

 

 ……3日ぶり位の風呂だ、脱衣所の鏡に映った姿を見る。

 

 白髪混じりの黒髪、黄土色の角、赤色の羽と尻尾、真っ黒な首輪。

 

 ……俺は一体なんなのだろうか。

 

 

 

 浴槽に入る前に一通り体を洗う……洗剤の使い分けは教わった、髪はシャンプーで洗ってからリンスを馴染ませればいい、しかし、角はボディソープで洗えば良いのだろうか? 一応首輪は耐水性らしいが……錆びないのだろうか……因みにこれらの洗剤は私が彼の家に居候すると決まった際に配給された物資の一つである、寝巻きも制服もこれに当たる。これから使うであろうバラニウム製の武器も、である、因みに杭とSAAは没収された。

 

「着替えは脱衣所の籠に置いておくぞ」

 

「あぁ、分かったよ」

 

 普通の子供からすればかなり広いだろう浴槽だが、羽と尻尾のせいでかなり動き辛い、浴室の形は長方形、その形に合わせて長方形の浴槽もぴったり部屋の長い辺と浴槽の長い辺が垂直になる様に収まっている為に、体を伸ばして浴槽に頭を預けると、角が壁に当たるのだ。

 

 家を傷付ける訳にもいかず、浴槽の中で正座の姿勢を取らざるを得ないのがなんとも歯痒かった。

 

 そうして身体を温めた後、風呂場から出た俺は再び脱衣所の鏡の前で立ちすくむ。

 

 

「……まさか……この竜と人が合わさった様な姿……いやあり得んな、いくらそれが化け物と言う枠に収まる生命(いのち)だったとしても……」

 

 

「オイ、もう上がっ……って何でまたなんだ!」

 

 

「あ、あぁ、すまない……今すぐ着替え……何だこのヒラヒラだらけの服は!」

 

 手に取ったそれは、ピンク色の水玉が散りばめられ、レースをこれでもかと盛り込まれた寝巻きである、いや、普通で良いだろうこの様なもの。

 

「それが配給された寝巻きだ……デザインは配給者の趣味、らしい」

 

「責任者を出せ! 責任者を出せぇッ!」

 

「お、落ち着け! また壁を叩かれるのは不味いんだよ!」

 

 

 

 ……俺の叫びは二度目の壁ドンによってかき消された……配給者、許すまじ。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 歯を磨き、寝支度を終わらせた俺は畳とやらを張った和室で彼の布団の隣に布団を敷き、寝ることになった。

 

 

 

「……寝られないのか、バンカー」

 

 俺は臀部から尻尾を生やしているせいで仰向けに寝られない、だから横になっている訳だが、彼に対して背中を向けて寝ていると、後ろから、厳ついのに優しい、不思議な声が聞こえてきた。

 

「この世界に生まれて、初めてのまともな寝床ですからね、まぁ、じきに慣れてくるでしょう」

 

「……すまない」

 

 まるで陳述する咎人の様な、暗く重い揺らぎ。

 

「……?」

 

「……警察は、お前に仲間がいる事を知っている」

 

「……何の事ですか?」

 

「監視カメラで確認済みだ、だからこそ、あの司法取引もどきが行われたんだよ」

 

 狩人が罠に嵌められたと言う訳か……なんとも皮肉な話だ。

 

「……監視カメラ……なるほど、そんな物もありましたか」

 

「今のところ、お前は従順であり、無理に手を出す必要は無いと判断されている為に、そちらの仲間の罪は見逃されている」

 

「話しても良かったんですか、今首輪つけてる訳ですけど」

 

「夜間はプライバシー保護の為、観測された情報は朝削除される」

 

「申し訳程度の良心ですね、子供の悪戯心を舐めているのでしょうか」

 

「お望みとあれば、24時間監視する様にも出来るが?」

 

「生憎私にそんな趣味はありません」

 

 

 

「……お前は、呪われた子供たちとして生まれた事をどう思ってる?」

 

「……確かに、どうだろうな、因果かとは思うが、それはあくまで"俺"個人の感覚だな」

 

「……? どうしたんだ、急に俺なんて言い出して」

 

「……私としては、まだ分からない、それが正直な感想です」

 

「……分からない、か」

 

「当たり前でしょう、まだ十代ですから、ここで答えを出す程生き急ぐ気はありませんよ、それこそ、最期の時まで」

 

「そうだな。すまん、変なことを聞いた」

 

「良いですよ、お互いに変なんですから」

 

「……ハッ、明日、よろしく頼むぞ」

 

「こちらこそ、エスコートをよろしくお願いしますよ」

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 朝が来た、遅く寝たが彼より早く起きてしまったので、冷蔵庫にあった物と睨めっこしつつ、簡単なサラダ、トースト、ベーコンエッグの朝食を作っておいた。

 和室に戻れば、まだ彼は寝ていた為、尻尾で揺すって起こした。

 

「……おはようございます、しげとくん」

 

「んん……もう朝か?」

 

 布団から寝ぼけた眼のボサボサ髪が現れる、初対面の時から思って居たが、顔はいい筈なのに、まだらにぴょこぴょこ生えた短い髭だったりハンガーに吊り下げられているあのくたびれた外套と言い、身嗜みに気を使わなすぎである。

 

「さ、歯を磨いて顔洗って、ご飯の時間にしましょう、私が用意しましたから」

 

「…………お前、料理出来るのか?」

 

「多少は、と前に付きますが」

 

「コンロの使い方も知ってたのか?」

 

「昨日言いましたよ? 使い方なら見るか聞くかすれば分かりますって」

 

「……あぁ、いや、改めて聞いても因子関係無しの力だとは思えなくてな」

 

「人も子供たちも関係なく特別な能力とはあるものですよ、人の身で剣や銃の頂に辿り着いた人も居ますし」

 

「まぁ確かに、そうだな……食事の前に一服しても良いか?」

 

「……タバコはやめた方が良いですよ、まず息が続かなくなる、吸わないとだんだんイライラしてくる様になるのもまどろっこしいですから」

 

「……随分と含蓄があるな、まさかガキの癖に吸ってたのか?」

 

「いいえ、吸ってる人を知ってるだけです」

 

 俺と言う喫煙者だが。

 

「タバコの匂いで喫煙者と分かってたので、とりあえずタバコは没収しました」

 

「あっ、オイ! タバコが無いぞ、どこに隠したんだ!」

 

「パソコンに音声認識なんて便利な機能があったので、プロモーターの動画を見させてもらいましたよ、あんなに運動するならタバコはやめるべきです」

 

「……そこを何とかだな」

 

「ダメです」

 

 しかし、無理矢理押し通した、なまじタバコの事を知っているからに、禁煙の辛さは知っている、彼の禁煙に精一杯協力しよう……。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 食事を終え、俺達は仕事着に着替えた。多田島警部は白いシャツと紺色のネクタイ、くすんだモスグリーンのジャンパーと黄土色のカーゴパンツを身に着け、運動用のシューズを履き、先に出て行った。俺はと言うと……

 

「むう、なぜ鎖をあちこちにジャラジャラと身に付ける必要がある?」

 

 姿見の前に立っていた。

 

 宅配で届けられた制服。

 

 内容物は何故かパンク風ファッションと書かれていたらしい。角に合わせた穴を開けたキャップに羽を出せる穴を開けてある灰色のパーカーに黒いジャケット、これと後デニム生地のホットパンツにジャラジャラと銀色の鎖が着いており、地味に重い。短いソックスに底の厚いブーツの様な靴。……呪われた子供たちである事を隠す気が一切ないじゃ無いなと思ったが、案外この格好なら首輪も目立たない事に気付くと、この服を選んだ理由が分かった気がして、一先ず溜飲を下げる事が出来た。

 

 ……まさかこんな服を着る事になろうとは……

 

 鏡に映る自分の姿を見て唖然とする。……そこまで似合っていない訳ではない事に更に腹が立つ。

 

「……もう行くか」

 

 戸締りを確認し、四階から下の駐車場を見ると昨日の車の側で待機する多田島警部が見えたのでそのまま手摺りを乗り越えて、跳ぶ。

 

 羽を大きく広げ空気を掴み、ゆっくりと落下する。

 

「多田島警部、お待たせしました」

 

 警部はどうやら開いた口が塞がらない様だ、随分と驚いている。

 

「……今、警部って言ったか」

 

「はい、何か問題が?」

 

「いや、昨日は散々君付けで呼んできたのに、どんな気の変わり様だ?」

 

「変わるもなにも、品行方正であれと言ったのは貴方です、流石に組織の中で活動する時は礼儀を示すのは、大人としては当然の事では?」

 

「……調子が狂うな、頭痛ぇ」

 

「とにかく、今日一日よろしくお願いします、多田島警部、それともイェッサーとでも言いましょうか?」

 

「分かった……勘弁してくれ、ほら行くぞ、アイゼン」

 

「Sir,yes,sir!」

 

 警察組織初のプロモーターとイニシエーターを乗せたセダンが走り出す、混乱の坩堝と化す、その場所へ。




オリ主は三つの顔があります、狩人としての顔、少女としての顔、警察官としての顔、……うまい具合に使い分けて原作に絡ませたいなぁ(願望)
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