問題児と時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃんちゃん

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ようこそ箱庭へ

「ーーーーあ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況に違いないのデス」

「いいからさっさと進めろ」

「いや、すまんちょっとやり過ぎた………」

半ば本気の涙を浮かべている黒ウサギ。蘭丸が暫くウサ耳を弄り倒した後解放された黒ウサギは、再び十六夜と飛鳥にウサ耳を引っ張られ、蘭丸が止めに入るまで続いた。流石に黒ウサギを哀れんだ蘭丸は彼女を救出し謝罪した。

他の三人はは黒ウサギの前の岸辺に腰掛け『聞くだけ聞こう』と言うスタンスである。ここまでくると黒ウサギが哀れである。

「それではいいですか、定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います! ようこそ、“箱庭の世界”へ! 我々は皆様をギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚しました!」

「ギフトゲーム?」

「そうです。既に気付いていらっしゃるでしょうが皆様は、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に作られたステージなのでございますよ!」

両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。質問の為に飛鳥は挙手した。

「まず初歩的な質問をいいかしら。貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

「YES! 異世界から召喚されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多となる“コミュニティに必ず属していただきます」

「嫌だね」

「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者(ホスト)”が提示した商品を手に入るシンプルな構造になっています」

「………主催者って誰?」

耀はすっと手を挙げる。

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が試練と称したギフトゲームを主催している場合やコミュニティが力の誇示のために展開しているギフトゲームなどがあります。前者の場合は凶悪な難題で命を落とす危険もあります。その分見返りは大きく新たな“恩恵(ギフト)を手に入れることも夢ではありません。

後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればすべて“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

「前者はともかく後者はカジノとかに近いシステムだな………それでチップはどう言うものが対象になるんだ?」

「それも様々ですね。金品の他にも土地、利権、名誉、人間………そして己のギフトを掛け合うことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームを挑むことが可能です。ただしギフトゲームに敗北すればご自身のギフトを失うことになりますので悪しからず」

黒ウサギは笑顔の裏に黒い影を見せる。

「まあ当然だよな。リスクとリターンは公平にあるべきだしな、双方の合意があるゲームならその公平性は保証されてるんだよな」

「そうね…ゲームそのものはどうやって始められるの?」

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければ!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加してみてください」

黒ウサギの言葉に飛鳥が反応する。

「…つまりギフトゲームはこの世界の法そのものと捉えてもいいのかしら?」

「鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞の輩は悉く処罰しますが、先ほどそちらの方がおっしゃった様に、ギフトゲームの本質は勝者が得をするもの! 例えば店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで入手することも可能だと言うことですね」

「なかなか野蛮ね」

「ごもっともしかし全て主催者の自己責任でゲームが開催されております。つまり奪われたくない腰抜けは始めからゲームに参加しなければいい話のです」

一通り説明し終わったと思ったのか黒ウサギは一枚の封書を取り出した。

「さて、皆さんを召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それらをすべてを語るには少々お時間がかかるでしょう。ここから先は我らのコミュニティでお話しさせていただきたいのですが………よろしいですか?」

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ?」

ここまで静観していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。先ほどまでの軽薄そうな笑顔がなくなっていることに気づいた黒ウサギは構えるようにして聞き返す。

「………どういった質問です? ルールですか? ゲームそのものですか?」

「そんなのはどうでもいい?腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただした所で何が変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは………たった一つだ」

十六夜は黒ウサギから視線を外すと他の三人、そして辺りを見回した。そして一言、

「この世界は………面白いか?」

他の三人も無言で返事を待つ。

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と、手紙には書いてあった。それら全てを捨てるに値するものなのかそれが一番重要だった。

黒ウサギは安心したような笑みを浮かべて

「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 




黒ウサギって弄ると光る存在だよなー(棒)

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