問題児と時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ただのふわにゃん
かゆ………うま的な?
二一〇五三八〇外門。ペリベッド通り・噴水広場前。
「ジン〜ジン〜ジン〜! 黒ウサの姉ちゃんまだ箱庭に戻ってこねえの〜」
「もう2時間近く待ちぼうけでわたし疲れたー」
箱庭の外壁と内側を繋ぐ階段の前で戯れる子供達が次々に不満を漏らす。「………そうだね。みんなは先に帰ってていいよ。僕は黒ウサギと新しい仲間をここでまっているから」
ダボダボのローブに跳ねた髪が特徴的な少年、ジンは取り巻きの子供たちに帰るように指示を出す。
「じゃあ先に帰ってるなー。 ジンもリーダーで大変だけど頑張れよなー」
ワイワイと騒ぎながら帰路につく少年少女たちと別れたジンは石造りの階段に腰を下ろし座り込む。
(もし黒ウサギが連れてくる新しい人たちが使えない人達なら僕らは箱庭を捨てて外に移住するしかないのかな)
ジンはまだ見ぬ新しい同士に期待を寄せずにはいられなかった。ジンのコミュニティはとある事情がありジンと黒ウサギを除いて幼い子供たちばかりだ。力のないコミュニティは衰退し、やがては消滅の道を辿ることになるのだ。
宛のない旅路となるのは何としても避けたかった。
「ジン坊ちゃーん!新しい方を連れて来ましたよー‼︎」
ピョンピョン跳ねながら黒ウサギはジンに呼びかける。ジンはその呼びかけに応じて立ち上がる。
「おかえり黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
「はい。この御四人様が……」
途中まで言いかけた黒ウサギは固まった。
女性二人、つまり十六夜と蘭丸が着いて来ていないのだ。
「え?あの〜もう二人いませんでしたっけ?全身から“俺問題児”ってオーラを出しているヘッドフォンをつけた方と、何処か不思議なオーラを出している方は?」
「ああ、十六夜君なら『ちょっと世界の果てを見に行って来るぜ!』って走って行ったわ」
飛鳥が指差す方向には断崖絶壁があった。
「な、なんで止めてくれなかったんですか?」
「止めるなよって言われたのだもの」
「ならせめて黒ウサギに行ってくれても‼︎」
「黒ウサギには言うなよって言われたから」
「絶対嘘です。本当は面倒臭かっただけでしょう⁈」
「「うん!」」
なんの悪びれもせずにどうどうと言ってのけた飛鳥と耀。やはりこの二人も相当な問題児であると思う黒ウサギであった。
だが直ぐに次の疑問が黒ウサギの頭の中に浮かび上がり顔を上げる。
「そ、そういえば蘭丸さんは?蘭丸さんも十六夜さんについて行ったのですか 」
四人の中では一番の良心と思っていた蘭丸の不在に黒ウサギは涙を浮かべながら二人に詰め寄った。
「ううん、蘭丸は『ちょっと急用できたから先に行ってくれ』って言ってた」
「『ついでに十六夜も連れ帰ってくるから安心しろ』って言ってもいたわ』
「あーそうですか!それなら安心……な訳ないでしょう、このお馬鹿様‼︎」
黒ウサギのノリツッコミで頭を叩かれた二人は「理不尽」とむつけた。
「た、大変です!世界の果ての付近にはギフトゲームの為野放しにされている幻獣達が‼︎」
「幻獣?」
「はい、強力なギフトを持った獣で、“世界の果て”には特に強力なギフトを持った種もいます。普通の人間では太刀打ちできません」
「あら、それじゃあ彼等はもう既にゲームオーバーって事かしら」
「ゲーム前にゲームオーバーって…斬新」
「何だよその玄人向けのゲームみたいなノリ」
「冗談を言っている場合じゃありません‼︎……って、え?」
「「え?」」
「?」
黒ウサギ、飛鳥、耀は驚きの表情を浮かべ、ジンは何が起きてるのかが分からないでいた。
「ら、蘭丸さん?戻って来ていたのですか?」
「いや、これは俺の分身だ」
「ぶ、分身ですって?」
「身体を分裂させるギフト?そんなことより…」
「まあ詳しいことは機会があったら話すからさ。勝手に飛び出した手前、黒ウサギに伝え忘れたことがあってな」
何か大切な事なのかと思い黒ウサギは耳を傾ける。
「『晩御飯までには帰る』って」
…とてつもなく下らない事を伝えて分身は消滅する様な形で消えて行った。
「あ、あの問題児様方はー‼︎」
叫んだ後、黒ウサギは地面にへにょりと座った。
「ジン坊ちゃん…お二人の案内をお願いします。黒ウサギはあの問題児様達を捕まえに行きます。“箱庭の貴族”と謳われる黒ウサギを愚弄したことを骨の髄まで後悔させます‼︎」
黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、艶のある黒い髪を淡い緋色に染めていく。
「半刻程で戻ります‼︎お二人はしばらく箱庭ライフをご堪能下さい」
黒ウサギは弾丸の様な速さで跳躍し森へと消えて行った。
「……箱庭のウサギは随分早く飛べるのね、素直に感心するわ」
風でなびく髪を抑えながら飛鳥が素直な感想を述べる。
「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」
ジンは心配そうな顔をしている。
「そう、なら此処はお言葉に甘えて、箱庭を堪能しましょう。貴方がエスコートしてくださるの?」
「は、はい。僕はジン=ラッセルです。十一歳の若輩者ですがコミュニティのリーダーをしています。」
「よろしく私は久遠飛鳥よ。そちらの猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「ではこちらへ、軽いお食事でもしながらでもお話を」
ジンはそう言いながら飛鳥と耀を箱庭の外門にくぐらせる。