問題児と時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃんちゃん

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かなり久しぶりの投稿になりました。
感覚が空きすぎて同じ作品を書いてるとは思えなかったですが興味のある方は是非!


ギフトゲーム

時間は十六夜が離脱する前に遡る。性格は兎も角、強力な同士を迎え入れることが出来た黒ウサギはウサ耳をウサウサ揺らしながら先頭を進んでいた。

一番後ろを歩いていた十六夜は暇そうな顔をしていた。

(あぁ、暇だな………ただ歩いてるだけってのも退屈だな)

先頭の黒ウサギを見ると明らかに浮かれている。こっそりと、そして一瞬で離れれば気付かれないだろう。そう思った十六夜は踵を返し………

「おい待てコラ! エスケープには早過ぎんぞ」

「っうお!」

面倒臭そうな顔をした蘭丸に肩を掴まれ走り出すことは叶わなかった。

驚き声を上げた十六夜。勘付かれたとこは然程驚きはしなかった。十六夜は直感で自分以外の3人の中では恐らく自分と対等な実力があると感じていたが、それでも走り出す前に捕まるとは思っても見なかった。

「なんだよ、なかなかやる奴だとはおもっていたが、まさか俺が捕まるなんて思っても見なかったぜ」

「馬鹿野郎がこんな早さで逃げ出す奴なんて………そこいらのヤンキーでも修学旅行くらいは真面目に参加してるわ」

「安心しな、俺は修学旅行は単独行動の方が得意なんだよ」

「その発言の何処に安心する要素があるんだよ」

十六夜は掴まれた刹那こそ驚きはしたが直ぐにいつもの調子に戻りヤハハと笑う。蘭丸は心底面倒くせぇと思いつつ十六夜を逃すつもりはなかった。

「なんだよ、ちょいと世界の果てを見に行こうってだけだ。なんの問題もねえだろ?」

「大有りだ、そんな便所行くノリで行かせられるか」

世界の果てを見に行くと言う十六夜、先程の黒ウサギの説明から箱庭は人外魔境の世界、この世界のことを理解しない中での行動としては絶対に面倒臭そうになると蘭丸の勘が警鐘を鳴らしていた。

(コイツが今何処かに行ったら確実に面倒臭い。………まあ後は黒ウサギに適当に………)

押し付けてしまおうと蘭丸は何故か未だに気付かない先頭の黒ウサギの方を向こうと振り返ったその瞬間

 

『ーーー、ーーーGaーーー』

「ッ⁉︎」

蘭丸は突如頭の中に聞こえた声・・・・・・・・・に反応してしまい十六夜から意識が離れてしまった。

「ヤハハハ!じゃあまた後でな!」

「は⁉︎ オイ‼︎」

その僅かな隙を見逃さなかった十六夜は途轍もない速さで消えて行った。直ぐに追いかければ捕まえるのは訳がない速度だとは思ったが蘭丸はその前に感じた謎の声の存在を思い出した。

(………まあアレを調べてから十六夜連れ戻すか………)

とりあえず蘭丸は黒ウサギを呼び止めようとしたが先程のやりとりの中黒ウサギは今も全く気づかずに呑気にウサ耳を揺らしていた。

「………まあ後で謝ればいいか」

一気に面倒臭くなった蘭丸は一応気づいていつつ無視していた飛鳥らに伝言だけを残してちょっとした寄り道に向かった。

 

 

 

 

「っかしーな。この辺りのはずなんだがな………」

黒ウサギが十六夜と蘭丸がいないことに気づき項垂れている頃蘭丸は独特の気配を頼りに森の中を疾走していた。

(あの気配………まさかだとは思うが………)

十六夜を逃がす原因となった謎の気配、実は蘭丸には身に覚えのあるものであることは未だ先の話ではあるが………

「………黒ウサギにはちょっと悪い事をしちまったが………」

黒ウサギの下に残した己の分身から共有された黒ウサギの姿を見た蘭丸は流石に伝えればとは思ったがあの場で黒ウサギが十六夜を追いかけるのは飛鳥と耀の事を考えると黒ウサギには案内を続けてもらう方が良いと考えての判断だった。

(まあ黒ウサギも俺たちに秘密にしてる事があるみたいだしそれに関しては後から聞き出してやるか)

『ーーーGaaーーーaaaaーーー』

「っとここの辺りか」

どうやら気配を見つけたような蘭丸は何もない空中に両手を伸ばし、何も無いはずの空中を掴むように握る。すると何も無いはずの空間が歪み始めた。

「っとビンゴだな、こいつを………フンッ!」

歪んだ空間を掴みそのまま広げる。その歪みは何者にも例え難い禍々しさを放っていた。

「こいつは………やっぱりか、ったくどんな因果だよ」

「なっ………なんでございますかこれは⁉︎」

「お、黒ウサギか?」

やっとの思いで蘭丸に追いついた黒ウサギは目の前の光景に理解が追いつかない様子であった。

「思った以上に早かったな、ものの1時間で追いつくなんて」

「む、それは当然です!黒ウサギは“箱庭の貴族"と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが」

アレ?と黒ウサギは首を傾げる。

(黒ウサギが半刻もの間追いつけなかった………?)

黒ウサギは箱庭創造主の眷属として強力なギフトと権限を有しており並修羅神仏では手を出せない程である。

十六夜と蘭丸、二人の身体能力は人間とは思えないものであった。何より、蘭丸が作り出した時空の歪み、ギフトとしても破格のものである。

「そ、そんな事よりこれは一体なんなのですか⁉︎」

「見ての通り時空の歪みだ。まさかこの世界にまであるとは思わなかったが………」

「蘭丸さんはご存知なのですか?蘭丸さんはいったい………」

「まあその辺りは追々話すさ。黒ウサギのコミュニティの話を聞いた後にさ」

「えっ…」

「俺はこいつを処理してから行く。黒ウサギは十六夜の方に行ってきてくれ」

「あ! 蘭丸さん!」

蘭丸が時空の歪みに入って行った後を黒ウサギも慌ててついて行く。孔に入り込むと視界は闇に覆われており、気味の悪さのみが視界を覆っていた。それでも歩を進めていくと一筋の光が差し込み、闇の中から抜けた先にあるのは、先程の森の中ではあったがその情景は先程のモノとは全くの別の世界であった。木々や空、目に映る全てが灰色に染まっていた。

「な………ッ!」

黒ウサギは目の前に広がる光景に目を奪われた。黒ウサギも長年箱庭に身を置いていたがこんな世界があるとは思っても見なかった。

「ここは世界の裏側だ。現実の世界の狭間にある世界を維持する空間で並行世界とを繋がる役割を持つ空間だ………つーかなんで黒ウサギついてきたんだよ」

「と、当然です!蘭丸さんをお一人には出来ません!」

「なんか悪いな………っとこの紙は………」

突如目の前に落ちてきた羊皮紙を蘭丸は手に取った。

【ギフトゲーム“世界の楔”

 ・勝利条件

ホストの打倒

 隠された宝玉を掲げ世界を繋げよ

 ・敗北条件

プレイヤーの死亡

 ・ゲーム概要

  このゲーム盤に入った者はプレイヤーとしてギフトゲームを了承したものとし途中棄権は認められていません。

 

“???”印】

「これがギフトゲームか?」

「はい、この“契約書類”ギアスロールはギフトゲームとして成立したことを意味します。多少強引ではありますがギフトゲームとしては問題はありません」

「なら、クリアも出来るって事だな。それじゃあ十六夜も連れ戻さなきゃだし、さっさとクリアするか」

「あ! 待ってください蘭丸さん! まだどんな罠があるか………」

迷いなく疾走する蘭丸を今度は見失わない為に黒ウサギも慌てて駆け出した。

 

 

「さて、着いてこれてるか、黒ウサギ」

「はいここまで来るのは大変でしたが………」

ゲーム開始から黒ウサギはゲーム盤であるこの世界に翻弄されていた。

「重力が変わったり、歪んだり………法則がめちゃくちゃです!」

「十六夜辺りだと逆に楽しみそうだな」

「もうっ!笑い事じゃありません!」

ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギにカラカラと笑う蘭丸。

「それにしても、蘭丸さんはこの世界に着いて知ってるようですが」

「ああ、後このゲームの勝利条件だけどな………」

「蘭丸さん!!!」

黒ウサギの声と同時、蘭丸は頭上から落ちてきた何かによって押しつぶされていた。

「GYAaaaaaaaaa!!」

「な………ッ⁉︎」

蘭丸を押し潰したものは十五寸はあるだろう巨大な黒龍であった。

「な、竜種⁉︎最強種の一角がこんな所に⁉︎」

「違う。 あいつは見た目だけ龍を真似た別モンだ」

押し潰されたと思っていた蘭丸は黒ウサギのはるか頭上にいた。その身には傷一つ負っておらず寸前で躱していたようだ。

「蘭丸さんッ‼︎」

「見てな、このゲームのクリアの仕方を………ハアッ!」

「GOAaaaaaaaa!!!!!!!」

空中を蹴り途轍もない速さで竜に突撃する蘭丸に対して黒龍も雄叫びを上げると眩い光を口に束ね始めた。黒龍は目の前の人間を脅威と捉え己の最大の火力で迎え撃つつもりであった。

「あの威力では………ッ! 蘭丸さん!」

「へぇ、確かに強力な光線なんだろうが………」

蘭丸はニヤリと笑うとその姿を消し、一瞬の間に間合いを詰め黒龍の大顎に蹴りを入れた。光線を溜めに溜めていた黒龍は自身の光線で暴発し、頭が消し飛び力無く倒れた。

『GI…GA………』

「嘘………ッ⁉︎」

目の前の奇跡に黒ウサギは目を疑った。目の前の敵は竜種では無かったが霊格の質はとても人間の打倒出来る存在では無かった。

(主催者の言う通り………本当に人類最高クラスのギフトを所持しているのなら………!私達のコミュニティの再建も夢じゃないかもしれません!)

黒ウサギは目の前の蘭丸を見て内情を抑えられずにいた。

「黒ウサギ! ボーッとしてんな。さっさとクリアして帰るぞ」

「え?あ、ハイ!ですが敵は蘭丸さんが倒して………」

「まだだ、勝利条件はもう一つあっただろ? “宝玉を掲げ世界を繋げよ”って」

「あ、そうでした、ですが宝玉とは………蘭丸さんは何かわかったのですか?」

「ああ、さっきも言ったがこいつは見た目だけ竜を形どった別モンだって」

蘭丸は倒れた龍の胸部分に黒く輝く宝玉を抜き取る。宝玉を抜き取られた龍は朽ちるようにその身体を維持できず崩れ落ちていった。

「もしかして………宝玉が本体だったのですか⁉︎」

「ああ、そしてこれを掲げれば………」

蘭丸がその宝玉を空に掲げると灰色に染まっていた世界が色を取り戻して行くかのように光を浴びていった。

「さて、ゲームクリアだ。早く十六夜を探しに行こうぜ」

 

 




リメイク版とはさらに違う内容とはなっていますが大筋は変わらなくなるかと思います。どうぞよろしくお願いします!

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