問題児と時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ただのふわにゃん
十六夜と蘭丸を連れ戻した黒ウサギは噴水広場で飛鳥らと合流したのだが、彼女たちの説明を聞いた途端ウサ耳を逆立てておこっていた。興奮の冷めやらぬままにまくし立てるように問い詰めた。
「な、何でもあの短時間で“フォレス・ガロ”のリーダーと接触して、しかも喧嘩を売る状況になったんですか‼」「しかもゲームの日時は明日⁉」「準備をする時間もお金もありません‼」「どういう心算があってのことなんですか⁉」「聞いているのですか三人とも」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「だまらっしゃい‼」
三人の息の合った
「まあいいじゃねえか。見境なく喧嘩を売ったわけじゃねぇんだし、許してやれよ」
「そのセリフ多分今の俺たちが世界一言っちゃいけない言葉だと思うぜ……」
「い…十六夜さんは面白ければいいかもしれませんがこのゲームで得られる物は自己満足だけです、この
黒ウサギが見せた“契約書類”は
そこに書かれている内容にはこう記されていた。
「
「対してこっち側が差し出すチップは“全ての罪を黙認すること”だからなぁ、しかも今後一切……かなりリスク高いと思うぞ?ちょっと軽率だったかもな」
蘭丸も「気持ちはわかるけどな」と苦笑いを浮かべる。
“フォレス・ガロ”は二一〇五三八〇外門の一帯を支配するコミュニティでありそのリーダーであるガルド=ガスパーはコミュニティを広げるために相手コミュニティの子供を人質に取り、コミュニティどうしを賭けさせてそれを繰り返してコミュニティを大きくさせていったのだった。
黒ウサギも“フォレスガロ”の悪評は聞いており今回の件も時間をかければ罪を暴くことができるのだが──
「黒ウサギ、私はただ道徳云々よりあの外道が野放しにはしたくないの。ここで逃せばいずれまた狙ってくるわよ」
飛鳥は己矜持からもガルドのような悪は許しておけないのだろう。
「ごめん黒ウサギ……僕もガルドのような悪人は逃がしたくない」
「ジン坊ちゃん……」
ジンも同調する様子をみせ黒ウサギも少し困惑しつつあきらめるように溜息を吐く。
「はぁ~………仕方ない人達です。でもまあいいでしょう。“フォレス・ガロ”くらい十六夜さんと蘭丸さんがいれば楽勝です」
どちらか一人でも楽勝でしょうと思いつつ言った黒ウサギに対して十六夜と飛鳥は怪訝な顔をして
「何言ってんだ、俺は参加しねぇぞ」
「当たり前でしょう貴方たちなんか参加させないわよ」
フンと鼻を鳴らす二人に黒ウサギは食って掛かる。
「だ、駄目ですよ!お二人はコミュニティの一員なのですからちゃんと協力しないと)
「それは違うぞ黒ウサギ」
十六夜は黒ウサギを右手で制すると真剣な表情で
「いいかこいつはこいつらが売った喧嘩だ。だから俺たちが手を出すのは不粋ってことだ」
「あら、わかってるじゃない」
「ら…蘭丸さん!蘭丸さんは出でくれますよね⁉」
黒ウサギは蘭丸に最後の望みをかける。比較的優等生な彼なら助け舟を出してくれると……しかし
「悪い黒ウサギ、今回は俺も不参加で」
「ら…蘭丸さ~ん」
黒ウサギは膝から崩れ落ちた。もうどうにでもなれと肩を落とす。幸い今回のゲームで敗北しても失うものは無いのが救いであった。
*
”フォレス・ガロ”とのギフトゲーム関しては飛鳥、耀、ジンの三人が出ることになり一先ず話を終わらせることにした。
「らそれじゃあ今日はコミュニティに帰る?」
「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰りください。“サウザンドアイズ”にギフト鑑定をお願いしに行ってきます」
「“サウザンドアイズ”?コミュニティの名前か?」
「YES。サウザンドアイズは特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「ギフト鑑定って必要か?」
「自分のギフトを把握しておけば引き出せる力は大きくなります。皆さんも自分の力の出所は知りたいでしょう?」
黒ウサギは同意を求めるが十六夜、飛鳥、耀、蘭丸の四人は少し複雑な表情を浮かべていたがそれぞれ思うところがあるのだろう何も言わず黒ウサギについていくことにした。辺りは日が暮れて、街灯が灯り始めていた。街路の脇に生えている桜の様な木を眺めていた。
「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏に入ったばかりだぞ?気合の入った桜が咲いててもおかしくないぞ」
「……今は秋だと思うけど」
「俺らは異世界から来たんだから時間軸とかがずれてるんだろ?ちなみに俺の世界では春で桜が咲き始めた頃だぞ」
三人が「ん?」と疑問になった所に蘭丸が助言を入れた。黒ウサギは「お?」という顔で蘭丸を見る。
「蘭丸さんの言う通りです。皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているので時間軸の他にも歴史や文化、生態系など違う箇所がある筈です」
「へえ、パラレルワールドってやつか?」
「近いですね。正しくは立体交差並行世界論というのですが………今からコレの説明をすると一日二日では足りないのでこの話はまたの機会にということで」
黒ウサギが言葉を濁す。どうやら店に着いたようだった。商店の旗には蒼い生地に互いを向かい合う二人の女神が記されていた。あれが“サウザンドアイズ”の旗印だろう。
店の前では割烹着姿の女性店員が看板を下ろそうとしていた。黒ウサギが慌てて止めにいく。
「待っ………」
「待ったはなしですお客様。ウチは営業時間以外営業していませんので」
黒ウサギは待ったをかけられなかった。流石は超大型商業コミュニティと言った対応である。飛び入りの客の拒み方にも隙がない。
「な、なんて商売っ気のない店なのかしら!」
「全くです!閉店時間の五分前に締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁?これだけで出禁とはお客様舐めすぎでございますよ⁉︎」
黒ウサギはギャーギャーと喚くが女性店員も冷めた目で黒ウサギを軽蔑するかの様に見る。
「なるほど、確かに“箱庭の貴族”である兎のお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますのでコミュニティの名前をよろしいですか?」
「……!」
黒ウサギは答えられなかった。黒ウサギに変わってか十六夜が躊躇いなく答える。
「俺たちは“ノーネーム”ていうコミュニティなんだが?」
「ほほう、ではどの“ノーネーム”様でしょうか?できれば旗印を確認させてもらってもよろしいでしょうか?」
(……これがさっき言ってた“ノーネーム”の対応か?確かに名もないコミュニティは信用されないわな)
蘭丸は女性店員の態度見ながら黒ウサギの説明を思い出していた。しかも最悪なことに“サウザンド”は“ノーネーム”お断りであった。
黒ウサギは悔しそうに小さな声で言葉をひねり出す。
「そ………あの………私達に、旗はありま」
「いぃぃぃやっほぉぉぉぉ!久しぶりだな黒ウサギィィィィィ‼︎」
「きゃあぁぁぁ……!」
突然現れた着物を来た白髪の少女がフライングボディアタックを決めて黒ウサギと共に街路脇の水路に落ちた。
「…おい店員。この店にはドッキリサービスもあるのか?あるなら俺も是非別バージョンで」
「ありません」
「なんなら有料で」
「やりません」
二人はなんとも馬鹿らしい会話であるがその顔は本気である。
「し、白夜叉様?どうして貴方がこんな下層に?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしてたに決まっておろう。フホ、フホホホホホホ!やはりウサギは触り心地が違うのう。ほれ、ここが良いか、ここが良いか?」
白夜叉と呼ばれた少女は黒ウサギの胸に顔を擦り付けていた。見た目とは裏腹にその様子は悪代官のソレであった。
「白夜叉様……取り敢えず離れて下さい‼︎」
黒ウサギは白夜叉を引き剥がすと、店の方に投げつける。クルクルと縦回転で迫ってくる白夜叉を十六夜が足で受け止める。
「てい」
「ゴハァ!お、おんし飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様じゃ‼︎」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
「うう……どうしてまた濡れなきゃいけないのですか?」
泣きながら黒ウサギが水から上がってきた。
「因果応報…かな?」
「貴方、この店の人?」
「おお、そうだとも。この“サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉さまだ。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー、それでは売り上げが伸びません。ボスに怒られますよ」
白夜叉のセクハラを女性店員が冷静に釘を刺す。
「ふふん。おんしらが異世界から来た新しい同士か。ということは…」
白夜叉は不敵な笑みを浮かべていた。
「ついに黒ウサギが私のペットに!」
「なりません‼︎どういう起承転結があってそうなるんですか⁈」
黒ウサギが耳を逆立てて怒る。
「さて、冗談はこれまでにして、話があるのだろう?話なら店内で聞こう」
「よろしいのですか?彼らは名も旗もない“ノーネーム”のはず。規定では」
「“ノーネーム”だとわかっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する侘びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」
女性店員は不満そうに眉を寄せる。それをよそに白夜叉は黒ウサギ達を店内に引き入れる。