Fate/whitenight 怪物と兵器と人類史と   作:(´・ω・)

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狂気と正気の狭間
それはなんだ?


その虚構の世界より覗く狂気を帯びた瞳に写るのもは未来。
無間の海に沈んだ鎖は形を変え、怪物に至る


以上
謎の投稿前サーヴァント紹介文(バーサーカー)


運命

暗い世界の底

恐らく、『座』という概念の世界だろう。

 

僕の使命は把握している。

 

 

 

それは唐突だった。

世界に

 

いや、人に呼ばれたのだろうか。

 

その輝きに手を伸ばす。

 

 

「......」

 

無数に倒れている死体。

血の臭いがどこか懐かしいあの日々を感じさせる

 

その山の中にただ一人。

動く死体がいた。

 

周囲の死肉を飢えた獣がまるで動けないウサギの山を襲うように喰らい

その裂けた口は腐った血を啜り

 

その瞳は狂気に囚われていた。

 

「......だ...れ」

 

こちらに気付いたのかその肉を挽きながら這いずって僕の足を掴む。

その証が刻まれた手。

 

彼がきっと僕のマスターなのだろう。

 

「Uit@kc@nq@e?jrqー」

 

しっかりとその狂気の内に届くようにそっと問いかける。

 

「...た...す...けて......バーサーカー......」

 

その最初で最後だった弱音。

狂気を狂気で塗り替える

正気を殺意でねじ曲げる

僕はこの行為を間違ったとは思っていない。

 

その傷を直し、己の肉体を変質させ与える。

僕は知っていた。

彼の肉体がはじめから『原初の女神』のものだと

彼こそが『討つべき悪』と

だが、そんなものはどうでもいい。

 

人類ではなく人に作られた『悪』

そんなものを裁けばもう何でもありだ。

 

「......ありがとう.........これからよろしくね。バーサーカー!!」

 

屈託のない純粋な彼の笑顔と差し伸べられる手。

その手をとって戦いに「ちょっと待って」

 

どうしたんだいキングゥ?

 

「彼、開幕死んでたの?」

 

死んでたよぉ胴体に大穴開いて瞳もどう見たって死んでいるし、脈もなかったよ

呼吸もないし大量出血通り越して全身から血がなくなってたし

 

「彼って人間?」

 

 

人間だったよ。

多分

 

 

まぁ、ここから先は僕とマスターだけの記憶にしたいから省くけど、まぁ、あの時ほどの高揚感...死と生の狭間を生きているのは最高だったよ。

 

「なんたって今でこそ誰にも負けそうにない僕とマスターの組み合わせを互角で相手できるんだ、まさか僕も一騎一騎が何て思わないさ、特にあのランサーはヤバかった、マスターがマスターじゃなければ普通に僕も負けるさ」

 

「ランサー?あぁ...あの騎士王......そういえばあの男はどこに行ったのだろうか全く...連絡の一つぐらい」

「多分墓参りだね......誰にも知られたくないことだってマスターにも一つぐらいあるさ」

 

 

 

 

 

雨が降っている。

 

別に私に雨はどうでも良いものだ。

もう、ただの雨では私は傘をさす気分もない

 

この雨が降る時だけ、私は私でいられる。

 

深い森の中

たった一つ、ポツンとたてられた汚い作りの墓の前に剣と槍で逆十字を組みたたずむ騎士が一騎。

 

「墓参りすら静かにさせてくれないのかい?」

 

マントの裏側から大量の泥を吐き出し億の生命を生み出し、何千万という猟犬を潜める。

呼応するように風が彼女を中心として吹き荒れ始め、その威力はもはや自然の台風ですらあり得ないものにまで強まり、周辺の魔力が全てその構える星の聖剣に集う。

 

「......今は、空腹で気分が悪いので本気でいきますよ」

「雑にニシンパイでも食ってろ」

 

 

取っておいたハンバーガーを投げつけさっさと持ってきた花束を墓の前に置く。

 

「......今年も間に合ってよかった...じゃあな、シャルロット」

 

少し、墓石を見つめ再び森を通り、街に出る。

ついさっきまで人がいたのに今は、まるで巨大台風明けの爪痕が残ったような街並みだ。

 

相変わらず恐ろしいサーヴァントだ。

かのアーサー王伝説には複数の宝剣と財宝があった。

 

それこそ話次第では聖剣をも凌ぐ剣も存在した。

だがどうだ。

 

何と戦っていた?

 

訳がわからない。

嵐を呼びおこす風の鎧

大地を裂き、空を割り、魔力を吸収する聖剣

概念、事象を崩壊させる槍

無限の騎士を呼び起こし、蹂躙させる

 

「......」

 

 

少し、昔を思い出せば地獄が広がる。

少し、瞼をおろせば見えるものはあの戦争。

 

 

バーサーカーが居たからこそ今こうやって俺は立っている。

あぁ、二度と見たくない。

今この肉体ですら恐らく死ぬ。

 

「なんだよ...あの地獄は......一生消えない傷になって残り続ける...」

 

 

血塗れの街道を歩き、俯瞰する。

いつもそうだ。

 

いつもいつも

 

 

弱い。

どいつもこいつも弱い

 

百年後、二百年後はどうする?

...まだ人類は『南米の蜘蛛』ごときすら倒せない。

 

いつ時間切れかも分からない爆弾一つ。

別に奥の手を使えばあんな蜘蛛や犬。

それどころかこの銀河の全ての生物、物質、概念には負けないさ。

 

だが違う

 

俺が倒して英雄になるのではなく。

『人類』が全て倒して成長するのだ。

故に俺は『倒される必要』がある。

もう英雄の時代は終わりだ、たった一人の強者では滅びの連鎖は止められない、全員が進まなければ確実に磨り潰されて最後は滅ぶだけだ。

 

「......」

 

だからこそだ。

だからこそ私は死ななければならない。

この獣の本性が訴えかける。

 

あの母のどうしようもない愛を理解したから眠らせた。

なら、それを引き継ぐ義務がある。

 

 

あぁ早く殺せ、殺してくれ。

この九千七百二十四億七千八百三十四万七千六百二十四の命を全て狩り尽くし、虚数の海に叩き込んで生と死の概念を排除してこの心臓に剣を突き立てろ。

もちろん私も全力で抵抗しよう

何もかもを飲み干す泥を吐き出し

無量大数の武器の洪水を流し

無限の神代の怪物を使役し

核、生物兵器、毒ガス、大砲、人類の叡知全てを持ち出し

ジュラ紀どころか宇宙が生まれ始めた真エーテルに満ちた世界に作り替え

この物理、魔術、概念的に破壊不能の肉体と己の技量全てを使いきり

世界のためであれば私は怪物にもなろう。

 

私はもはや死人。

生きてはいないし死んでもいないが。

 

俺の意志が覚悟が勇気が希望が闘争が本能が狂気が染め上げてくれる。

進ませてくれる。

 

だから。だからだ。

 

「...だが、今はお休みだな」

 

小さなカフェの一席。

アイスコーヒーとカツサンド。

この一時もまた...良いよね

 

「それは別に構わないけど......ねぇマスターウルクへ行かないかい?」

「墓荒らしか?建造物破壊か?少なくとも神代は終わってしまったせいで冥界は繋がっている可能性は低いぞ」

 

アイスコーヒーを飲みながら地図を見ていると急にカツサンドをぶちこまれる。

 

「まぁ、どっちもだね」

 

何がしたいのかは知らない。

まぁいいか。

 

そう思って少ししたら移動する。

確実にろくでもないことする気だよこのマイサーヴァント。

 

 

ついたのは蔵。

あぁうん強盗だね

いや?もう死んでいるから別に強盗ではない?

 

 

「さてと、マスター。久しぶりに二人だけの冒険といこうか」

「目標は?」

「1.糞女神より先にギルのへそくり全部その鍵に回収すること。2.なんかやる」

「......あぁうん、つまりあの女神に金貨一枚やらないんだな」

「そうとも言う、因みにキングゥに時間稼ぎ頼んでいるから多分半日は稼げるよ」

「キングゥだと多分......あぁまたずんばらりんと」

「じゃあ、行こうか!!たのもーギル!!」

 

錠のついたドアを蹴り破る。

まぁ当然のように変なブロックや扉が現れて一斉砲撃が始まる。

 

「...あー弱い弱い。いちいち相手するのも面倒だ」

 

マント裏の泥からボウガンを出して六発鉄球を発射する。

その鉄球は勝手に軌道を変え、防衛設備を全て粉砕する。

 

 

「ねぇマスター!!どこも空だよ!!」

「...まぁ、手当たり次第破壊しろどれか当たるだろ」

 

一枚一枚鋼鉄の扉を蹴破ってはスカ

さすがにイラついてくる

 

「っつても...いちいち砕くのもいい加減面倒くさいなぁ......」

 

軽く足元の石に魔力を流して大雑把に構造を探知する。

一応、最奥には大量の宝石の魔力を感知して無駄骨は回避できるが...割りに合わない気がする。

 

「バーサーカー。そこの真下に全力で腕突っ込める?数キロ程度かるーく」

「?......!!」

 

地面と腕が融合し数秒待つとバーサーカーの腕から大量の宝石や王冠、壺とまぁ骨董品が溢れ出す。

 

「...ねぇマスター。これだけしかなかったけど...」

「大部屋一つ黄金で沈められる程度かぁ...」

「絶対ただのへそくりだよねこれ......」

 

気落ちはしたがまぁ、あの女神に取られるよりはましと思い、持っていた空の蔵に詰め込んで出ていく。

 

「...全部溶かそっか」

「そうだね......」

「気ぃ落とすなよ、次があるさ」

 

 

とりあえず無いものは無いのだからと倒れていたキングゥを回収して適当なホテルにチェックインする。

部屋はもちろん最上階のワンフロア、プールつきの最上級。

 

悪趣味ではあるが、わりと悪趣味なのが好きでもあった。

まぁ、一番はここが一番電波が良さそうと思っただけだったりする。

 

「さてと。この無数のカルデアのデータの解析でもしますか...見なくても黒確定だけどさ」

 

正直百重の壁も意味無い。

出るわでるわ『デザイナーベビー』。

 

どれもこれも常人が見れば怒るさ...いや、サーヴァントなら大半が苦言を呈するレベルだな。

まぁ別にこれも一個の形なのだから俺は良いけどさ。

 

「『クリプター』か」

 

クリプターとはコンピューターウイルスの用語というかまぁそんな感じのものだ。

有害なデータを無害なものに擬装する暗号。

 

正直どうでもいい。

データにある魔術関連すべてあいつらの毛ほども無い雑魚。

何が天体を回路に見立てての隕石の複数落下だ、アホらしい、そんなもの俺やあいつなら片手でできるわ。いやむしろ隕石で何が倒せる銀河持ってこい銀河。

 

ただま、普通に時計塔基準なら優秀そうではある面子ではある。

そこは評価して、警戒もしよう。

 

そしてこの『芥 ヒナコ』。

なにもんだこいつ。

 

カルデアのデータにはなーんにもないが、マリスビリーの記録にはこいつのことを色々隠しながらだが嬉しそうに書いているが......。

 

「...アトラス院......あぁなんだアトラス.........まじか」

 

あの引きこもりどもが手を貸してた。

ペーパームーンを連中は送りつけたか......。

 

流石にロゴスリアクトはねぇか...あれ聞いた話しかねぇがイシュタルのやったことと同じことできるらしいしな......同じ平行世界の創造、観測による予知は流石に考えないか。

 

そういえばブラックバレルはどおした特異点修復という名目ならあれほど持っておいて損は無いものは無いはずなのに。

 

「......どこにもねぇ。あれがあれば下手すりゃティアマトやゲーティアを始末できたものを...七大兵器は無いか」

 

まぁそれでもずぶずぶだな。

いやまぁ。

滅びを観測し防ぐという点では連中は同じか。

 

ただ無力な組織か思考回路がとち狂って人類滅ぼす危険兵器製造工場かで違うだけで。

 

 

「......」

 

あの聖杯戦争でどこまで自分が無茶をしたのかがよくわかる。

例え肉体も精神も獣のような化け物になってもだ。

 

上半身の服をすべてソファーに投げ捨て巻いている鎖を緩める。

 

前ならこんな自殺行為ずっとしていたが...もう今となっては自分の体だから思い切り夜風を感じることができる。

冷たく、優しく、寂しい風が

 

「なんだ、まだこんな意味無い世界にへばりついていたか『め が み さ ま』」

「随分.........喧嘩ごしね...今ので三人は死んだわよ」

 

まぁ無下にするのもあれだからその肉体を雑に数千本のナイフで貫いたあと紅茶とパンを出す。

 

「...パンって」

「良いじゃないかパン」

 

首を切り落とし、それが燃えたと思えばまた胴体側の切断面から再生する首を心底蔑む目で笑顔で対応する。

 

「......全く、今日はただ借りを返させに来ただけなのに」

 

そう言って一枚の紙を手渡してくる。

 

『デッドヒートサマーレース イシュタルカップ』

 

頭おかしい

頭おかしい

頭おかしい

 

 

「あぁうんそうか」

 

レース会場の進路からしてグガランナ関連なのは一瞬でわかった。

問題は会場だ。

 

「いくら暑いといっても『金星』でやるか?適当にアメリカを荒野に変えるなりテクスチャ張り付けろよ」

「...金星じゃないと普通にあの泥人形に会場をめちゃくちゃにされるじゃない、それだけは嫌なのよ」

 

「なるほど。構わないさ、問題はこれだけの参加者...どうせお前なら権能でどうにでもなるか」

「いえ、もうある程度のサーヴァントは確保しているわ。後はレース会場とかの敷設、資材も揃っているから後は魔力をパパッとね」

 

こいつ魔術をなんだと思ってる便利道具か?




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