「その声は、我が友、虞美人ではないか?」   作:銃病鉄

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アイデアが出た時の一言 「これは ひどい」
→書いている途中の一言 「これは ひどい」
→書き終わった時の一言 「これは ひどい」

そんな作品ですが、よろしければお読みください。


「注文の多い料理店ってのはどういうことだ?」

 一人のサーヴァントが、すっかりギリシャの狩人のかたちをして、クマのようなサムシングを一体つれて、弓とこん棒を持って山奥を歩いておりました。

 

「まったく、この山は鳥も獣もいないな。せっかく久しぶりに狩りができると思ったのに」

「いや、この俺は無理だからね。ぬいぐるみに無茶言うなや」

 

 彼らはカルデアのサーヴァント、オリオン(弓)とオリオン(クマ)です。

 マスターたちと特異点にレイシフトした二人は、食料を調達するために山に登っていました。

 

「せめて、かわいい娘がいたらいいのにな」

「ホントそれ。旅先での一夜のアバンチュールって、いいよね」

「いや、その姿じゃ無理だろ。クマだし」

「てめえ! ギリシャ一番の美男に向かって、どの口でいいやがる! ……いや、俺の口だったわ」

 

 そんな軽口を叩きながら、彼らは獲物を探していました。

 

 しかし、あんまり山がものすごいので、クマのようなオリオンはめまいを起こして、しばらくうなって、それから泡を吐いて倒れてしまいました。

 

「あーあ、惜しい俺を亡くしちまった」

「死んでねえわ! 少しは心配するそぶりを見せろや!」

 

 オリオン(弓)が困り顔でぼやくと、オリオン(クマ)は、がばっと起き上がって叫びます。

 実質は一人きりだというのに、ボケとツッコミをこなす無駄な器用さです。

 

「なんだ、まだ元気じゃねえか。しかし、これじゃどうしようもねえな。いったん、下りるか?」

 

 獲物がいないのに山を歩いていても、しかたがありません。

 オリオン(弓)が残念そうに切り出すと、オリオン(クマ)もうなずきました。

 

「そうするか。獲物はねえけどさ」

「お前がいるんだし、ディナーはクマ鍋でもいいだろ。中身は綿とかじゃないよな?」

「きゃあ、じぶんごろし!」

 

 ところが、どっちへ下りればマスターたちと合流できるのか、いっこうに見当がつかなくなっておりました。

 風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。

 

 オリオン(弓)は、うんざりしたように腹をおさえます。

 

「どうも腹が減った。さっきから横っ腹が痛くてしかたねえよ」

「じつは俺も。ああ、なにか食いものが欲しい」

 

 二人のサーヴァントは、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを言っていました。

 

 その時、ふと後ろを見ますと、立派な西洋造りの家がありました。

 

 そして玄関には

 

 

  RESTAURANT 

    CHALDEA・B 

     

 

という札が出ていました。

 

「……“西洋料理店 カルデア・ビー”? こんな山奥に? しかも、なんでカルデアって名前なんだよ」

 

 その札を見て、オリオン(クマ)は首をかしげます。

 一方、オリオン(弓)は、うれしそうに笑って言いました。

 

「ははあん。こいつはちょうどいいや」

 

 そして料理店へと大股で歩いていくのを、オリオン(クマ)は慌てて引き止めました。

 

「待てや!? どう考えても怪しいだろうがッ」

「きっとカルデアの誰かが料理店を開いてんだよ。いかにもありそうだろ?」

「そんなわけ…………あるかもな。たしかに」

 

 数秒考えて、オリオン(クマ)は同意しました。

 

 バーサーカーがCEOをしていたり、サンバなサンタがプロレス大会を開いていたりするのです。

 料理店ぐらい、ささいな問題に思えました。

 

「でもよ、Bってなんだ?」

「シェフの頭文字じゃね? ほら、よく飯を作ってくれる赤い髪の女王様とか。さあ行こうぜ」

 

 二人は玄関の前に立ちました。玄関は白いレンガで組んで、実に立派なもんです。

 そしてガラスの開き戸が立って、そこに金文字でこう書いてありました。

 

  「どなたもどうかお入りください。

   決してご遠慮はありません」

 

 オリオンたちは、ひどくよろこんで言いました。

 

「世の中はうまくできてるな。この料理店は、どうもただで食わせてくれるらしいぞ」

「みたいだな。決してご遠慮はありません、ってのはそういう意味だろ」

 

 二人は戸を押して、店へ入りました。そこはすぐ廊下になっています。

 そのガラス戸の裏側には、金文字でこうなっていました。

 

 

  「ことにたくましい男性や若い殿方は、

   大歓迎いたします」

 

 

 二人は歓迎というので、もう大よろこびです。

 

「おい、俺たちは大歓迎されてるんだな」

「俺たち、両方兼ねているもんな」

「いや、お前はぬいぐるみだし」

「うるせえ!」

 

 ずんずん廊下を進んでいきますと、今度は水色のペンキで塗られた扉がありました。

 

「どうも変な建物だな。どうしてこんなに戸がたくさんあるんだ?」

「これはロシア式だな。寒いところや山の中は、みんなこうなんだよ。ひょっとしたら、あの皇女様がオーナーなのかもな」

 

 二人が扉を開けようとすると、上に黄色な字でこう書いてありました。

 

 

  「当店は注文の多い料理店ですから、

   どうかそこはご承知ください」

 

 

「注文の多い料理店ってのはどういうことだ?」

 

 オリオン(弓)は顔をしかめました。

 

「注文が多いから、料理が来るまで時間がかかるんだろ。これでなかなか繁盛してるんだな」

「うへえ。さっさと食い物が欲しいのに」

 

 二人は扉を開けました。

 すると、その裏側にまた文字がありました。

 

 

  「注文はずいぶん多いでしょうが、

   どうか一々こらえてください」

 

 

「なんか注意書きが多いな」

 

 オリオン(弓)はうんざりした様子でうめくと、その足元でオリオン(クマ)が訳知り顔で説明します。

 

「こいつはクレーマー対策ってやつだ。事前に説明しとかないと、最近はいろいろ面倒なんだって」

「そんなもんなのか」

 

 ところがどうもうるさいことには、また一つ扉がありました。そして、その横には黒い台が置かれていたのです。

 扉には、赤い字でこう書いてありました。

 

 

  「もし武器をお持ちなら、

   この台に置いてください」

 

 

「なるほど。たしかに武器を持って食事するという法はないわな」

「こいつは、けっこう偉い奴らが来る店なのかもな」

 

 二人は、弓とこん棒を台に置きました。

 

 また黒い扉がありました。

 

 

  「どうか、できるだけ

   衣服はここでお外しください」

 

 

「服を脱ぐってのは、どういうわけだ?」

「こりゃ、汚れた服を洗濯しといてくれるんだよ。食事が届くころにはピカピカになってんだ」

「そいつはサービスがいいな。あ、お前もここに置いときゃいいのか?」

「ぬいぐるみ扱いもいい加減にしろや!」

 

 上半身はだかになったオリオンたちが進んでいくと、また扉があって、その前にはガラスの箱が置いてありました。

 扉には、こう書いてありました。

 

 

  「箱の中に用意している

   よだれかけをつけてください」

 

 

 見ると、箱の中には、かわいらしい絵柄のよだれかけが二枚あります。

 

「いや、なんでよだれかけが必要なんだよ?」

 

 さすがにオリオン(弓)も首をひねりました。

 

「こいつは食事中にからだが汚れないように、っていう気づかいだな」

 

 オリオン(クマ)は、なんでもないように、よだれかけを首につけます。

 

「ふつうはナフキンなんじゃねえの?」

「こんな山の中だから、手に入らなかったんだろ」

「そうかぁ?」

 

 その後も二人は進んでいきましたが、いくつもいくつも扉と店からの指示が続きました。

 いつのまにか、オリオンたちは首によだれかけ、手にはガラガラ、口にはおしゃぶりという姿になっていました。

 

 ひかえめに言って、見るにたえない光景です。

 

 そんな二人は、もう何枚目かもわからない扉をくぐったのですが、その裏側には大きな字でこう書いてありました。

 

 

  「いろいろ注文が多くて

   うるさかったでしょう。

   お気の毒でした。

   どうか、ご遠慮なく

   次の部屋にお進みください」

 

 

 それを読んで、オリオンたちは顔を見合わせました。

 

「なんか悪い予感がする」

「ああ、俺もだ」

「たくさんの注文というのは、向こうが俺たちに注文しているんだ」

「そうすると、この店は……」

 

 そこまで話した時、突然、二人の背後から声がしました。

 

 

 

「ふふふ……ソワカソワカ」

 

 

 

 二人が振り返ると、奥にはもう一つの扉がありました。

 その扉には、大きなカギ穴が二つ開いているのですが、そこから二つの目玉がのぞいているのです。

 

「あらあら、気がついてしまいましたわ。こちらにいらっしゃいませんね」

「あなたがあんなことを書くからですよ。ユゥユゥ、もう待ちきれないのに」

「あまりがっついてはいけませんわ。せっかく、この西洋料理店――――“快坩臀亜(カルデア)・ビースト”の初めてのお客様なのですから」

 

 そんな話し声も聞こえてきます。

 

 思わずオリオンたちは悲鳴をあげました。

 今では、この店の正体がはっきりとわかったからです。

 

 

「ここは俺たちに食いものを出す店じゃなくて――」

「俺たちを、性的に食いものにする店なんだ!」

 

 

 最低最悪の料理店です。

 

 しかし、それに気づいても、すでに手遅れでした。

 二人とも武器は置いてきてしまい、手にはガラガラしか持っていないのです。

 

 こわがるオリオンたちよそに、扉の向こうでは楽しそうな声が続いています。

 

「はぁ……はぁ……。たくましい殿方が、あんな赤子のようなかっこうをなさるなんて……。興奮してしまいます」

「はやくいらしてください。もう×××も×××してありますし、×××××も用意しております。ついでにサラドもありますわ」

 

 二つの目玉はらんらんと輝き、息づかいがはげしくなっています。

 あまりに過激な発言に、とうとう一部伏字が入り始めました。

 

 オリオンたちは、なんとか逃げようと、後ろの扉に飛びつきました。

 が、いくらノブをまわしてみても、体当たりしてみても、少しも扉はあきません。

 

「アァ。あきらめて、はやくいらっしゃい。お客様……いいえ、坊やたちィ」

 

 フウ、フウ、とあらい息をつきながら、声が呼びかけます。

 その声音からは、たしかな母性と獣性が感じられました。

 

「××××! ××、×××? ×××××××××××!」

 

 こちらにいたっては、もはや発言を描写できません。

 読者のみなさんのご想像におまかせします。青少年に悪影響のある言葉を考えてもらえれば、それが正解です。 

 

 もはや、オリオンたちは絶体絶命です。

 人間としての尊厳を奪われることを覚悟して、オリオンたちは目をつむりました。

 

 

 しかし、その時でした。

 

 

 オリオンたちの後ろにある扉が粉々に砕け、一つの黒い影が飛び出したのです。

 影はまたたくまに前方の扉を突き破り、向こうの暗闇へと吸い込まれていきました。

 

 暗闇の中から、どったんばったんソワカソワカ、とはげしく争う物音が響きました。

 

 部屋は煙のように消えていき、気がつくと、オリオンたちは草の中に立っていました。

 弓とこん棒は土の上に散らばり、服は木の枝にかかっています。

 

「おい、どうやら助かったみたいだぞ、俺たちは」

 

 あたりを見回して、オリオン(クマ)がよろこんで言いました。

 なぜかは分かりませんでしたが、料理店は消えてしまったのです。

 

 ところが、しばらく待っても、オリオン(弓)から返事はありませんでした。

 

「? おい、どうし――」

 

 オリオン(クマ)がふしぎに思って呼びかけた時です。

 ぐぎり、と。

 何かがへし折れるような音が、背中の方からしました。

 

 そして、背筋が凍るような声が、背後からかけられたのです。

 

 

「やっと見つけたわ。……ところで、そんなかっこうでいったい何するつもりだったのかしら、ダーリン?」

 

 

 

 オリオンたちは、無事にマスターのもとへ帰ることができました。

 しかし、山の中でよほどおそろしい目にあったのでしょう。

 

 恐怖で紙くずのようになった顔と、あらぬ方向に曲がった首だけは、カルデアに帰っても、お湯に入っても、なかなか元のとおりにはなりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――めでたしめでたし。って、なんだこの最低な話ッ。パリス、なんちゅう本を俺に音読させてんだ!?」

「さっき優しそうな尼僧さんにもらいました。小さい姿のサーヴァントの皆さんに配ってるそうです」

「んな怪しいもん、考えなしに受け取るなや! アポロン様も、なんで止めないんですか?」

「決まっているだろう」

 

「こんな話を聞かされているパリスちゃんも、かわいいからだ」

 




これは ひどい。

もし宮沢賢治先生に祟られなければ、次の投稿のパロディ元は少し変化球でいく予定です。

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