「その声は、我が友、虞美人ではないか?」   作:銃病鉄

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星5サーヴァント交換!? 夢じゃなかろうか
→さあ、もっと種火を食べるんだジャック
→……ひらめいた

そんな経緯で出来上がったのがこちらになります。
いつも以上にキャラ崩壊が激しいですが、それでもよろしければお読みください。


「これはッ! “元”、王だッ!!!」

 人理継続保障機関カルデア。

 その一角には、真心を込めたサービスでカルデア関係者から深く愛される一軒のショップがありました。

 

 今もまた、新しい客がその店を訪れたようです。

 その接客の様子を見てみましょう。

 

 

 “とあるカルデア すてきなショップ”

 

 

 バァンと勢いよくドアを開けてショップに入ってきたのは、一人のサーヴァントです。

 花の魔術師マーリンでした。一人ではなく、背中に誰かをかついでいます。

 

「ようこそ、ダ・ヴィンチちゃんのすてきなショップへ。何がお望みかな?」

 

 ショップの主人が、天使のような微笑で迎えます。

 ですが、マーリンは何やら難しい表情です。

 

「やあ、ミスター」

「ミスターじゃない。ミスだ」

「失礼、ミス。今日はクレームをつけに来たんだ」

 

 どうやら、この客は悪質なクレーマーのようでした。

 ダ・ヴィンチちゃんの接客にかぎって、不備などあり得ないからです。

 

 しかし、どんな客であっても不満を無視せず、真摯に話し合う。

 それがダ・ヴィンチちゃんの信条であり、このショップが愛される理由なのです。

 

 ダ・ヴィンチちゃんは満面の笑みで首を横に振ります。

 

「ごめんよ。ウチはクレームを受け付けない主義で――」

「気にするな。ついさっき、2000万DL記念チケットで受け取ったアルトリアなんだけど」

 

 マーリンは、背負っていたものをカウンターに置きました。

 うつぶせになってグッタリしているのは、星5セイバーのアルトリアです。

 

「ああ、アルトリアだね。彼女がどうかしたのかい?」

「したとも」

 

 マーリンは無表情で答えました。

 

「死んでるんだ」

 

 この客は、何か勘違いをしているようでした。

 

「これは寝ているだけだよ」

「寝ているだって?」

「そうとも。見てごらんよ、きれいな金髪だろ?」

「金髪はいいんだ。死んでる」

 

 ダ・ヴィンチが根気強く説明しますが、マーリンは納得する気配がありません。

 

「違うよ。寝てるだけだって」

「そうかい。じゃあ、彼女は目を覚ますんだね」

 

 マーリンは、アルトリアの耳元で大声を張り上げました。

 

「ハロオゥ、アルトリア! ご飯の時間ですよ! おいしいゲソ焼きがあるよぉ! 起きなさいアルトリア、アアルトオオオリアー!」

 

 ひとしきり叫んだマーリンは、動かないアルトリアを示して言いました。

 

「ほら、死んでる」

「いいや、寝ているんだよ」

「たわ言は聞き飽きた。この王はご臨終だ。君、三十分前にアルトリアを交換した時に何と言った? 動かないのは、食べ過ぎておなかが重たいからだ、と。そう言ったね?」

「きっとホームシックなんだ。キャメロットを恋しがっている」

 

 頑固なマーリンに、ダ・ヴィンチちゃんは噛んで含めるように言いました。

 

「キャメロットが恋しい? ごまかさないでおくれ」

「交換した時は、彼女もちゃんと自分の足で立っていたじゃないか」

「ああ、立っていたね」

 

 その言葉にマーリンはうなずきました。

 ようやく納得してくれたのでしょうか。

 

「王を調べてみた。どうして最初は直立していたかというと……石化の状態異常にさせられていたからだ」

 

 ダメです。

 マーリンはなおも、事実無根の言いがかりを続けています。

 

「石にしとかないと逃げちゃうんだ」

「いいかい。よく聞いておくれ」

 

 スウウと大きく息を吸ってから、マーリンはアルトリアを指差しました。

 

「この王はもう食事の時間になっても動かない。ご逝去している」

「違う違う。寝てるんだよ」

「いいや、お亡くなりになっている。

 

 この王はイッてる。

 

 お隠れあそばした。

 

 すでに人生に幕が下ろされた。

 

 晩鐘が彼女の名を指し示した。

 

 アスクレピオスもさじを投げるだろう。

 

 今頃は冥界でエレシュキガルとお茶している。

 

 これはアルトリアだったモノだ。

 

 死後硬直だ! 

 

 ここがギリシャだったらとっくに星座になっている!

 

 ベディヴィエールだって聖剣を湖に捨てに行くだろう!! 

 

 絶息!! 一巻の終わり!! あの世行き!!

 

 これはッ! “元”、王だッ!!!

 

 言い終えて肩で息をするマーリンに、ダ・ヴィンチちゃんは困り顔で肩をすくめました。

 

「分かった。交換しよう」

「そうしておくれ」

 

 マーリンは、くたびれた様子で額の汗をぬぐいました。

 

「感情なんてないはずの僕の心にこみ上げる、ものすごいフラストレーション。この店に来るといつもこうだ」

「ありゃ、アルトリアは品切れだね。代わりに、別のサーヴァントはどうかな?」

 

 在庫を確認していたダ・ヴィンチちゃんですが、どうやら商品がないようです。

 

 ですが、このような事態にも柔軟に対応するのが、愛されるショップの秘訣です。

 ダ・ヴィンチちゃんは、アルトリアにひけをとらない品を用意しているようでした。

 

「金髪のセイバー?」

「そうだとも。顔が良くて、頭が切れる。おまけにアルゴノーツのリーダーだよ。カッコイイ!」

「王の話できる?」

「……九割がた凄惨な夫婦喧嘩の話になるけど」

「じゃあ、やだ」

 

 なんということでしょう。

 この期に及んで、マーリンは首を縦には振りませんでした。

 不満を訴えるその姿には、すでに冠位(グランド)クレーマーの貫禄すらあります。

 

「じゃあ、こうしようじゃないか」

 

 ダ・ヴィンチちゃんには、何か提案があるようです。

 

「私の知人がノウム・カルデアでショップを開いてる。そこで取り換えをしよう」

「ノウム・カルデア? そこなら交換してくれんだね。行ってみよう」

 

 カウンターにアルトリアを置いたまま、マーリンはショップを後にしました。

 その後の様子を追ってみましょう。

 

 

 “とあるノウム・カルデア よく似たすてきなショップ”

 

 

「新生ダ・ヴィンチちゃんのすてきな工房にようこそ。なんでもはないが、必要なものはそろえてある」

「……」

 

 入店したマーリンは、無言で店内のあちらこちらを見回した後、カウンターに歩み寄ります。

 そして、カウンターに横たわっているアルトリアをしばらく凝視してから、ちっちゃい店主に声をかけました。

 

「失礼、ミスター」

「ショタじゃないロリだ」

「ミス。ここはノウム・カルデア?」

「違うよ。ここは彷徨海」

 

 マーリンは困惑したように眉をひそめます。

 

「同じことじゃないか」

「まあ、そうとも言うけど」

 

 ささいな言い間違い。よくあることです。

 ですが、マーリンはしつこく追及するようでした。

 

「さっき、違うと言ったね?」

「ダジャレだよ。お茶目だろう?」

「ダジャレ?」

「違った。ダジャレじゃなくて、ほら、上から読んでも下から読んでもおんなじになる……」

「回文?」

「そう、回文!」

 

 ちっちゃい店主が笑ってうなずきますが、マーリンはいまだにクエスチョンマークを頭上に浮かべています。

 

「だが、彷徨海は回文じゃないだろう。彷徨海を逆にしたら“イカウコウホ”だ」

「そうかもしれないね」

 

 ちっちゃい店主は、「しかたないなぁ」という表情でマーリンに譲歩しました。

 

「ダメだ。あまりにバカバカしくてこれ以上続けられない」

 

 マーリンはアルトリアをわきに抱えて、きびすを返します。

 

「もうたくさんだ。マスターのところに行ってくる!」

 

 ドアを開けっぱなしにして去ったマーリンに、ちっちゃい店主はため息をつきました。

 その姿には、客に満足してもらえなかったことへの苦悩が、はっきりと浮かんでいました。

 

「あーあ、やっと行ったか。塩まいとこう」

 

 どれほど誠意にあふれたサービスをしても、時にはこのような失敗もあります。

 働くことの難しさです。

 

 ですが、それでも彼女はこのショップを続けていくでしょう。

 お客様に心からの喜びを感じてもらう。それが店主の願いだからです。

 

 どうやら、新しい客が来店したようです。誰かが空いたドアの隙間から入って来ました。

 

 あくびをしていた店主は、次の客を愛くるしい笑みで歓迎します。

 果たして、この人物はどのような品を求めて訪れたのでしょうか。

 

 

 

「フォウ!(ちょっと! さっき交換してもらった項羽様が動かないんだけど!)」




久々に虞美人を登場させられました。

公式でちょくちょく挟まれるモンティ・パイソンネタが好きです。
もっと見たい。
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