白銀の討ち手   作:主(ぬし)

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もう一つ、Fateの逆光TS転生二次小説で忘れられないのが、『きんのゆめ、ぎんのゆめ』です。こちらもやはり個人ホームページで連載されておりました。アルトリアの姿となって第五次聖杯戦争にアーチャーとして再戦することになるのは変わりませんが、こちらは士郎ではなく英霊エミヤが転生するという設定です。というわけで、『Imitation Sabre』に比べて主人公の性格は英霊エミヤのそれとなり、戦い方もスマートで、弓術に長け、執事のように振る舞います。こちらもかなり面白いので、オススメです。更新されないか今でも待ち続けています。


1-9 螺勢

「ったく。このクソ暑い日に派手にどんぱちやってると思ったら、ちびじゃりがこんなザマだもんね。偶然通りかかった私に感謝しなさいよ?」

 

 ふん、と鼻を鳴らしながら、“弔詞の詠み手”として名高いフレイムヘイズであるマージョリーさんが僕を優しく地面に横たえさせてくれる。見てみると、広太のピンストライプが流れる優美なレディーススーツにはなぜかかすかに皺が寄り、白い頬はほんのりと朱に染まって、額にはわずかながら汗が滲んでいる。

 

「ひゃーっはっはっは!本当は封絶の中でお前がピンチっぽいことがわかったから大慌てで助けに来たんだけどな!我が愛しのゴブレット、マージョリーはツンデレってやつでイデデデデデ」

「おだまり馬鹿マルコ!」

 

 オシャベリなマルコシアスが口を滑らせ、怒り心頭のマージョリーさんにマルコシアスの入った本型の神器『グリモア』の表紙をガリガリと引っ掻かれる。いつもの、でも僕にとってはとても懐かしい光景だった。額から流れる血に片目を潰されながら、僕は思わず口元を綻ばせる。

 

「ありがとうございます、マージョリーさん」

 

 息も絶え絶えにお礼を言った僕の顔を見て、二人がピタリと動きを止めた。マージョリーさんの手からマルコシアスがドサリと落ちる。何かおかしなことを言っただろうか?

 

「ち、ちびじゃり!?あんた頭を強く打ちすぎたの!?落ちてたメロンパン拾い食いしたの!?すぐペッしなさい、ペッ!」

 

 マージョリーさんが目を白黒させながら心底心配そうな顔で僕の肩を掴んで揺らす。よく考えたら、マージョリーさんから見たらあの傲岸不遜なシャナが“さん”までつけて丁寧にお礼を言ったことになるのだから、驚かない方が無理だろう。僕だってシャナがそんなこと言ってきたら自分の正気を疑う。ガクガクと揺らされながらこんなことを考えられるということは、少し余裕が出てきたのかもしれない。

 と、マージョリーさんの動きがピタリと静止する。言葉を失ったその視線は、僕の手元の贄殿遮那へと注がれて固定されていた。無残な姿と化した贄殿遮那を見て目を全開して混乱する。

 

「どういうこと?ちびじゃりがここまで追い込まれて、そのうえ贄殿遮那までこの有り様。アラストール、説明を―――」

 

 かつて最悪のミステスとして紅世の王たちに恐れられた『天目一個』の核を成していた大太刀が無残に折れて醜い断面を晒していることが信じられないのだろう。僕自身も信じることができないのだから、当たり前だ。

 

「待ちな、我が早とちりな乙女、マージョリー・ドー」

 

 足元からのマルコシアスの堅い声に、マージョリーさんが怪訝な顔をして「なによ?」と目を向ける。嫌な予感がした。

 

「こいつ、“炎髪灼眼の討ち手”じゃねぇ。契約している王もアラストールじゃねぇな」

「……なんですって?」

 

 そう呟いてこちらを振り返ったマージョリーさんの目つきは、射殺すような鋭いものに変わっていた。空気が一気に剣呑なものへ変わり、重力となって圧し掛かってくる。バレた。このまま正体を明かさずにいられればと思っていたけど、それは無理そうだ。

 

「アンタ、何者?見たところフレイムヘイズらしいけど、どうしてちびじゃりとそっくりな姿をしてるわけ?」

 

 上から押し潰してくるような咎める視線に、僕は耐え切れずに俯く。どう説明すればいいのだろう。テイレシアスさんは押し黙ったままだ。面倒くさいことに顔を突っ込みたがる性格ではなさそうだし、「自分でなんとかしろ」と暗に告げているのだろう。とはいえ、僕の身に起こったことを正直に話したって信じてもらえるとは思えない。当の僕からしても、突飛すぎて信じられない。しかし、このまま黙っていてももっとマズイことになりそうだ。辿々しくなっても正直に話してみよう。

 

「ぼ、僕は……」

()ぅ!?なにそれ、ぜんっぜん似合わない一人称ね!なんか寒気がしてきたわ!」

 

 マージョリーさんが素っ頓狂な声を上げる。その声にさえ僕はびくりと肩を震わせてしまう。その様子を見て、マージョリーさんは金細工のような美麗な金髪をくしゃくしゃと掻くと天を仰いで嘆息した。さっきまでの重圧はもう感じない。剣呑な敵意は別の方向(・・・・)に向きを変える。

 

「まーいいわ。敵じゃないみたいだし、悪意もなさそうだし。ていうかメチャクチャ弱そうだし。暫定()()()()()()()()、あんたの正体の追求は後回し。今は、」

 

 前髪を書き上げ、中指でメガネをくいっと整えると、不敵な笑みを浮かべて空を睨み上げる。

 

「あのザコを片付けるのが先ね」

「───!」

 

 マージョリーさんの鋭い視線を追従して上方を仰ぎ見る。そして、絶句した。灰色の炎を侍らせて浮遊するそいつは、さきほど贄殿遮那を砕いた紅世の王だった。強靭無比の贄殿遮那が破壊されるほどの爆圧を至近で浴びたというのに傷一つすら負っていない。マージョリーさんの露骨な挑発を受けてもまったく表情を変えないそいつは、楽しみが増えたとばかりに下弦の三日月のような笑みを浮かべる。耳まで裂けた愉悦の笑みに底知れぬ恐怖を感じて身体が勝手に後退る。

 

「わざわざ“弔詞の詠み手”まで来てくれるなんて、今日は運が良いわぁ。でもね、お楽しみ(・・・・)を邪魔しないでほしいのよ。ね?」

 

 雌狐のような妖艶な視線がこちらに向けられる。笑っているのに笑っていない(・・・・・・)ような空虚な笑顔を向けられて、僕はお楽しみ(・・・・)というものが何を意味するのか直感的にわかってしまった。

 

「気の強い可愛い女の子をじわじわと嬲って嬲って殺すのって、大好きなのよねぇ。特に、あなたみたいな生意気な娘を」

「ひっ……」

 

 それは脅しでもなんでもない、心からの本音だった。それがアイツの本性であり、欲求であり、存在意義なのだ。きっとあの頭の中で、僕は何度も恐ろしい殺され方をしている。残酷な言葉を紡ぐたびに蠢く真っ赤な口腔は、視界を逸らした瞬間に飲み込まれそうな錯覚を与えてくる。

 

「時間をかけて、丁寧にゆっくりゆっくりと殺される。陵辱の限りを尽くされ、肉体と精神のどちらが先に死ぬか観察されながら殺される。殺しては蘇生させ、殺しては蘇生させを繰り返して永遠に慰み者にされる……まだまだ考えてるのよ。ねえ、どれがいい?ねえ、どれがいいかしら?ねえ、ねえ!」

 

 それが己の生き甲斐だと言わんばかりに恍惚の表情で叫ぶ。能面のように感情の機微すら見せなかった顔に初めて浮かんだ生きた表情は、ひどく醜いものだった。初めて向けられる欲望の対象(・・・・・)への下卑た眼差し。激しい嫌悪感が吐き気と共に胃から逆流し、喉を震わせる。こいつは狂っている。本能が、こいつに関わってはいけないと警告してくる。

 

「聞いたことあるわ。そういう危ない趣味(・・・・・)を持った紅世の王の名前」

「へぇ。“弔詞の詠み手”に知られているなんて、私も有名になったのねぇ」

 

 端然な美貌を忌々しげに歪ませ、マージョリーさんが吐き捨てる。その冷ややかな視線に射抜かれながら、紅世の王が心底嬉しそうに手を合わせてころころと笑う。が、その眼は僕から少しも離れない。眼力で獲物を縛る蛇のように、ガラス玉のような目玉が僕を一瞬足りとも見逃すまいと見据えている。

 

「ええ、有名よ。少女のフレイムヘイズを惨殺することに執着する紅世の王なんて、アンタしかいないわ。“螺勢(らぜ)”キュレネー」

 

 真名を呼ばれた紅世の王―――“螺勢”キュレネーが、不気味に、そして嫣然に微笑んだ。生気を感じられない屍蝋のような肌をした手に、どこからともなく現れた長大な弓が握られる。蔦が絡み合ってできたような黒色の弓に光の矢が構えられ、マージョリーさんの眉間にその照準を当てる。マージョリーさんは眼を逸らそうとはせず、キュレネーを睨み続ける。まるで眼を逸らしたらそれで勝敗が決まるかのように。

 

「光栄だわ、“弔詞の詠み手”。でもごめんなさい。私、あなたみたいに熟れちゃった果実に興味はないの。もう少し若ければよかったのに」

 

 ギチギチ、と呪詛のような唸りを上げて矢が引き絞られる。キュレネーが矢を握る指を放せば、その瞬間に勝負はつく。だというのに、マージョリーさんの背中からは一切の怯えも気後れも感じられなかった。

 

「言ってくれるじゃない。いいわ、相手をしてあげる」

 

 口端を歪めて獰猛な笑みを浮かべ、口調から冗談めかした雰囲気が消える。突き出した手先をくいっと引いて「かかってこい」のジェスチャーを向ける。転瞬、三度目の雷光が世界を金色に染めた。僕を狙ったものとは段違いの破壊力を内包した一撃がマージョリーさんに命中し、怒号と衝撃波が周囲のありとあらゆるものを吹き飛ばす。僕への攻撃が銃弾だとしたら、爆弾に匹敵するような容赦のない一撃。それなりの寿命を経た街路樹が瞬時に燃焼し、灰と帰していく。それでも、彼女の背後にいた僕には余波すら届かない。粉塵と黒煙が吹き荒れる中、眼前でゆっくりと()が立ち上がる。ずんぐりむっくりとした着ぐるみじみた巨大な群青色の獣。“弔詞の詠み手”がその身に纏う、武器にして鎧―――『トーガ』だ。爆撃にも匹敵する攻撃を物ともせず、トーガが片腕を振り上げる。キュレネーは避けられない。避けるには、あまりに近すぎた。

 

「熟れた女の良さ、その身で味わいな!この変態女ァ!!」

 

 大気を切り裂き、空間をも切り裂く灼熱の爪が、唸りを上げてキュレネーを頭から股下へ一直線に切り裂いた。あまりに呆気ない終わり。怨磋の叫びを上げて散り散りになりながら消滅していくキュレネー。奈落のようにぽっかりと空いた口からはたしかに絶命の悲鳴が聞こえるのに。

 それなのに、どうして嗤っているのか(・・・・・・・)―――

 

「なによ、ほんとにただのザコじゃない」

「ひーっはははははは!大人の女の魅力の勝利だな、我が無敵なる主、マージョリー・ドー!!やっぱり女は少々年食ってた方がイデデデデ」

「うっさい馬鹿マルコ!」

 

 マージョリーさんが拍子抜けしたと大きく吐気する。傍から見ていた僕にも、それはマージョリーさんの圧倒的な勝利に見えた。でも、違う。胸の奥、心臓の内側から這い上がってくるこの焦燥感が、まだ終わっていない(・・・・・・・・・)と僕に告げている。最初に僕がキュレネーに斬りかかった時、もう一人の敵が背後から襲ってきた。アイツはなぜ現れないのか。坂井悠二としての思考力が戻ってくる。

 

「マージョリーさん、まだです!もう一人いるんです!!」

 

 大声を張り上げると肋骨が痛むが、気にして入られなかった。疑似夜笠で弾き返した際に一瞬だけ視認した敵の姿を懸命に思い出す。

 

「それに―――封絶が解かれない!」

「―――なんですって?」

 

 (あるじ)を失いエネルギーの供給が途絶えた封絶はやがて結界を維持できずに消滅するはず。しかし、この封絶はその予兆を一向に見せない。それどころか、濃灰色の気配はより濃さを増して圧迫感を強めてくる。

 

「たしかに様子がおかしいぞ。注意したほうがよさそうだ」

「そうね。嫌な臭いがするわ。ドギツイ化粧の変態女の臭いがプンプンする」

 

 炎の獣(トーガ)がグルリと首を回して周囲を警戒する。マージョリーさんは、零時迷子を欠いた今の僕より遥かに存在の力を鋭敏に察知できる。そして、紅世の王は強大になればなるほど僅かな動作でも察知されやすい。封絶という狭小空間で、どうやって彼女の警戒を掻い潜っているのか。

 

(キュレネーがこの封絶の主だったことは間違いない。この封絶を維持していた力は討滅されたキュレネーのものだ。現に、今も封絶の中はアイツの力で溢れて……)

 

 不意に、昔に戦った紅世の王との戦いが脳裏に蘇る。その名は“壊刃”サブラク。かつて、あの“万条の仕手”ヴィルヘルミナさんをも敗退させた、圧倒的な戦闘力と恐るべき耐久力を誇る最凶の殺し屋。どんな達人にも察知されることなく接近し、不意打ちの初撃で致命傷を負わせてからじりじりと嬲り殺す。希薄な存在の力しか持たない奇妙な身体はどんなに切り裂いても復活し、ジワジワとフレイムヘイズを追い詰める。その正体は、街全体に染み込むほどに巨大な化け物だった。自身を街と同化させ、チョウチンアンコウの触手のように囮となる人形を使ってフレイムヘイズを消耗させながら一撃で倒すタイミングを探る、陰湿な戦い方をする紅世の王。

 

(あの時も封絶の中にサブラクの気配が満ちていた。察知から逃れるために自分自身を広げて(・・・・・・・・)いたんだ。そう、存在の力を強力な一体に集中させずに、敢えて薄れさせれば、察知されなくなる。もしも、キュレネーも同じような相手だとしたら?)

 

 坂井悠二(ぼく)の思考力は、危機的状況になるほどそれを油として鋭敏に回転する。思考回路のなかで、脳裏に浮かんだ一つの可能性とキュレネーの真名がパズルのピースのようにピッタリと合致する。背後から襲ってきた敵の色は、キュレネーと同じ濃灰色(・・・)。そもそも、別の敵ではない(・・・・・・・)としたら?“螺勢”の真名の意味は―――“()旋の軍()”だとしたら?

 その仮説に悪寒を感じた瞬間、僕は叫んでいた。

 

「気をつけてください、マージョリーさん!キュレネーは(・・・・・)一人じゃない(・・・・・・)んだ!!」

「なに―――」

 

 果たして、その先に続けようとした言葉はなんだったのか。マージョリーさんの言葉は、突如として全方位から浴びせられた超音速の矢の弾幕(・・)に遮られた。一本や二本じゃない、無数の矢が網状となって覆い被さる。何の前兆も見せずにトーガに着弾した矢の群れは爆音と同時に次々に爆裂し、天を焦がすほどの大火柱をあげる。作り出す衝撃波は相乗効果によって威力が倍増され、先のそれとは比べ物にならない爆炎の瀑布となって襲い掛かってくる。今度は、僕を護ってくれるものはなかった。津波のように迫り来る炎の壁。脚に力を込めるも立ち上がれない。逃げられないと悟ると、僕は頭から疑似夜笠をかぶって膝を抱き、身を小さくした。一瞬後にこの身を飲み込む灼熱の嵐。まったく成す術なく、僕の矮躯は木の葉のように宙空に吹き飛んだ。疑似夜笠の表面がバターのように溶け、炎熱が内側まで浸透してくる。オーブンに閉じ込められたように皮膚の表面をジリジリと焼かれ、鋭い痛みが神経を走り狂う。やはり、僕如きが作った即席の夜笠ではシャナのそれのように十全の機能は果たせない。それはこの身体にも言えるかもしれない。僕如きがシャナの身体を使ったところで、シャナの能力を十全に発揮させることなんて――――

 

「あぐッ!」

 

 背中から堅い何かに衝突した。あまりの衝撃で身体がその何かにめり込む。耐久値の限界を超えた疑似夜笠がバチバチと音を立てて収縮し、ついに元の学生服へと戻る。その服も、眼も当てられないほどに破れ、焦げ、大部分を消失している。呼吸のたびに肺が痛み、心拍のたびに心臓が痛み、考えるたびに頭が割れるように痛む。額から流れ落ちる大量の鮮血で両の視界が朱色に霞み、口の中は喉から這い登ってきた不快な鉄の味が満ちている。自分がめり込んでいる物体が何なのかと疑問に思って横目で確認する。それが輝きを放つ白銀のメルセデスベンツだったことに、「もったいないな」とどうでもいいことを考えた。

 

「マ、マージョリーさんは……?」

 

 ガラガラと地面を伝う微かな震動を感じて顔を上げる。視線を投げたその先で、岩ほどの瓦礫がガツンと高く蹴り上げられた。そこから、逆巻く暗雲を背に、スラリとしたメガネの美女―――マージョリーさんがひょいと姿を現す。着込んでいた上等そうなレディーススーツはところどころが焼け焦げている。何を探しているのかマージョリーさんは慌てて惨状と化した周りを探るようにぐるりと首を回し、こちらに気がつくと陸上選手も目を見張るスピードで走り寄ってきた。フロントガラスに身体半分をめり込ませている僕を見下ろしてギョッと色を失ったが、弱々しく呼吸をしていることを確かめるとホッと胸をなでおろす。

 

「どうやら死に損なったみたいね、ちびじゃりモドキ」

 

 心配してくれていた。マージョリーさんの優しさに触れて、痛みが少しだけ和らいだ気がした。お礼を言おうと口を開きかけたところで、ハッと空を見上げる彼女の表情が戦慄に染まっていることに気づく。その瞠目の視線の先にあるものは何かと僕もまた空を大きく仰ぎ見て、

 

 

「「「「「「「―――ねえ、驚いてくれたかしら?」」」」」」」

 

 

 自分は狂ってしまったのか。いや、むしろ狂ってしまっていた方がまだ何倍もマシだった。こんな絶望を味わうくらいなら、さっさと狂ってしまっていればよかったんだ。頭上には、最初に見た姿となんら変わりのないキュレネーたち(・・)の姿。数十、数百。そんなものじゃない。視界の隅から隅までを埋め尽くす、灰色の炎の軍勢。全員の手に掲げられているのは全て同じ形状をした長大な弓。これこそが、“螺勢”キュレネーの正体なのだ。全員が同じタイミングで弓を構え、完璧に同調した動作で弓を引き絞る。ギチギチギチギチ、ギチギチギチギチ。その音は、地を這う悪鬼の呻き声に聴こえた。精神に錯乱をきたした人間の悪夢に閉じ込められたような光景に、僕は声も出せない。

 

「今日は派手な一日になりそうだな。我が不幸なる戦姫、マージョリー・ドー」

「このクソ暑い日に、冗談じゃないわよ……」

 

 瞬間。すぐそこに太陽が出現したかのような凄まじい雷光。一斉に弾かれた光の矢が避けようのない豪雨となり、僕たちに降り注ぐ―――




他人様に「更新しろ」なんて口が裂けても言えないんですけどねー!!!!!

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