時系列的にプログレッシブ2ー3巻の辺りで、内容は4巻の可愛いメタルアーマーの子です。
曇り空。
日差しのない、快適な日。
12月の初旬_大晦日まであと1ヶ月を切って間もない頃だろうか。
__カンっカンっ
攻略組が3層攻略をしている中、素材が足りなくなった私は2層におりてきていた
__カンっカンっ
そんな日に私はのんびりといつも通り素材を集めていた。
敵を殴っては敵をみつけ再び殴りつけて…敵は弱すぎてため息が出る。
__カンっカンっ
「…あーもうっ!いつまで掘ってんのよ!」
うるさーい!とプンスカしたところで音は鳴り止まない。
音の響きからして_採掘中。ただし…かなりの数鳴り響いており異常事態だと確信した私は駆け足でその現場へと向かう。
***
その場所につくと、女の子がひたすら鉄鉱石を掘っているところだった。夢中で掘り進めている。……足元には異常な数の鉄鉱石。
そして…POPした敵がいま背後から襲いかかろうとしているが、彼女はそのことに気がついてないっ!
「間に合って…!」
私はすぐさま敵に扇子を投げタゲをとる。上手くとった私はあの子が鉄鉱石を掘る音で近寄ってくる敵をひたすら狩り続けた。
_さっきまでとは、えらく効率が違う。切っても切ってもいくらでも敵が湧いてくる。
気がつけば、音は止まって敵も狩り尽くしていた。目的の素材が十二分に集まり、ついつい笑みがこぼれる。Lvも上がってイイ感じ。
そういえばさっきの子はどうしているのだろうと見てみると、オロオロしている様子だった。…仕方なく声をかけることにした。
「こんにちは「ひぃっ!?」えぇ…」
突然女の子が萎縮する。当然と言えば当然だが…傷つくものは傷つく。
「いや、とって食おうだなんてしないわよ。いや、ね?お礼を言いたくて。あなたのおかげで誰にも邪魔されずに素材欲しかったmobいっぱい倒せたのよ」
といって、集めていた素材を見せると鉄鉱石目的じゃないことに彼女は安堵したのだろう、緊張をゆるめる。可愛い。
「だから、ありがとうね。…あぁ、私はラークよ。よろしく」
「その…つまり私に襲いかかってきていた敵を倒してくださったってことですね。ありがとうございます。
私はリーテンで、タンク志望なんです」
「タンク…なるほど、こんだけあれば全部位のスチール装備を作れるってわけね」
「はい…」
私が見ていたことに気がついているのだろう。彼女はほそぼそと話し始める。
結論は言ってしまえば簡単で、無限湧きバグだ。
いくらでも欲しい素材がほれるほれる…そして掘りに掘りまくった結果がこれである。
そこまではいいが__
「これ、どう運ぶのよ」
「はい…」
__そこには大量の鉄鉱石が山のように積まれていた。
***
普段なら開けていたストレージもいっぱいで。私が手伝えることはほとんどなかった。
しかし、時間が過ぎれば過ぎるほど発見されるリスクも上がる。
「どうしよう…」
「大丈夫、落ち着いて」
「あっ…」
オロオロする彼女の手を、私は優しく握る。
「せっかくなんだから、この鉱石はあなたが使うべきよ。私はもうストレージに持てないし運ぶ手伝いくらいしか手助けしてあげられないけど…
悩んでいるのなら、あなたの信頼できる他の人を頼ってもいいんじゃないかしら」
「信頼できる人…鍛治…あっそうだ、リズ!!」
はっと気がついたようにメッセージを開いてメールを送る。先ほどまでよりも元気が出たみたいだ。
……その間にっと
私だってちょっと手伝う位しか出来ない。私は私なりに、ね?
私は手伝えることが少ないけど、私は私なりに信頼できる人に頼もう_
私は少し離れることを伝えて他の場所へと向かった。
***
しばらくして、私がひたすら敵を倒し綺麗に掃除した道を通り一目散にかけていく女の子がいた。彼女は
「第1段階成功っと…よし」
その後私は再び掃除をしながら彼女の場所へと向かう。
「リーテン!良かった、大丈夫?」
「リズこそ!」
「とりあえず悩んでても仕方ないわ、早く運びましょう!」
無事合流出来ていたようだ。私はストレージから《裁縫》スキルで作ったバックパックを2つ取り出してオブジェクト化する。
「誰っ!?」「リズちゃんっ、あの人は大丈夫だよ!」
「私のこと言ってなかったのね…悲しいわ」
よよよ、と悲しむふりをするとちゃんと謝ってきた。しっかりした子だ。
「私は掘っているこの子に近寄ってたmobを頂いてただけよ。あ、それでこれ用意したから2人でつかって?」
「それ…袋じゃない…!あぁ、ナイスよ!」「これがあれば、いっぱい持てる…!」
バックパックを2人に渡す。
2人でストレージと袋いっぱいに鉄鉱石を詰めると、あらかた鉄鉱石の山は半分程になっていた。
「うんうん、イイ感じ。それで2人でもう1往復して運んだらいいのではないかしら」
「あ、あの別にそれくらいは「だめよ、これはあなたが掘ったものなのだから。あなたのものでなくてはならないわ」…分かりました」
ここで、急にメールがとんで来た。《ように見せる|・・・・・・》
「まって、アンタは「ちょっと野暮用ができたのよ。手伝えそうにないわ、ごめんなさい」…そう。また後で!村で待ってるわ!」
納得してくれたみたいなので、私はここで待っておく。
野暮用、というのは茅場晶彦という男のことだった。
茅場晶彦という男は、律儀な男であり、合理的な男だ。
私が見るに、彼は__茅場晶彦という男は、障害を乗り越えたものに報酬を与え…何事もなく益を得たものや倫理に反する行動をしたものには障害を与え、その障害さえ乗り越えればお咎めは一切しない。壁を越えなければ成長せず、成長しなければ壁はないが強くなれない。
これはこの男の信念のようなもの…ポリシーとも言えるだろう。
冷徹であり、現実的であり、当たり前のことだ。
普通、あれだけ掘ったのだから何往復かしなければならない。バグを見つけた報酬でいくらかは持っていかせるが…恐らく全部は持っていかせない。
だから、恐らくは__来る
瞬間、だった。この辺りでは出現しえない…どころか私でさえカーソルが黒く見えるモンスターがポップしたのは。
大きな鎌をもってローブにつつまれている、どこか死神を思わせるその敵は私を見て一目散に襲いかかってきた。私はここよりすこし離れた場所におびき寄せ、その死神モンスターと戦う事にした。
「アハハっ!楽しいわ、もっとよ!!!」
強い。攻撃は大ぶりで単調。よけた隙に反撃を加えればいい。単純明快…だが、その一撃一撃は凄まじく、かすっただけでHPの1,5割程を削り取っていく。
恐らく、対タンク型の敵なのだろう…避けることは簡単。だが、よければ攻撃が出来ない。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
だから、私は突っ込んだ。
そして飛んでくる攻撃の全てを_
20分ほどして、そいつを倒した私はドロップ品を確認するよりも先にまだちょっと残っていた鉄鉱石を回収して村まで急いだ。
***
村に着いた私は鍛冶屋に行く。
「うーん、私習熟度ギリギリだからNPC鍛冶屋の方が…」
「ううん、それでもリズに打って欲しいの!」
「んー…でも…」
どうやら、リズという子に鎧をうってもらおうということらしい。
「私も、賛成よ。ほら」
「ふぇっ!?」「おかえりなさい」
トレードウインドウで手持ちの鉄鉱石の受け渡しをする。
どうやらスチールインゴットに変えたところらしい。
「ここ、貸してほしいのだけどいいかしら…了解よ。ほら、そこの子。今日丸一日借りておいたから。好きに使いなさい」
NPCに話しかけてこの鍛冶屋の場所を借りる。
そして、その子に打つ場所を与える。
「えっ、いいんですか?」
「もちろん。全部揃えるのを期待してるわ。私は4層に戻るから、それじゃあ…「ま、待ってください!」…どうしたのかしら?」
呼び止められて振り返ると、女の子が私にむけてスチールインゴットを1つ差し出していた。
「これ…使ってください!」
「…いいのかしら?」
「私が、こう使いたいって思ったんです。それに、お世話になりましたから…あ、よければフレンド登録もお願いします」
「そうね…是非」
…可愛い子とフレンドになった。フレンド欄のアルゴの下にリーテンという名前が追加される。
「…あ、リーテンちゃんっていうのね。よろしく、リーテンちゃん」
「ラークちゃん…でいいのかな。よろしくラークちゃん」
「はぁ!?あんたら自己紹介してなかったの!?」
驚く鍛冶師をよそに自己紹介をする私たち。そこで鍛治師の紹介もしていないことに気がついたようだ。
「あ、ラークちゃん。こちら私の防具を打ってもらうリズベット」
「あー、あー…もう。分かったわ。鍛治師のリズベットよ。リズでいいわ。武器のメンテとかだったら気軽にいって?」
「よろしく、リズ。…ただ、武器のメンテでは私は呼びそうにないから相談とかくらいでいいかしら」
「いいわよ。もちろん。いつでも気軽に言いなさいよ。相談くらいのってあげるわ」
さらに、リズベットという鍛治師もリーテンの下に入る。これで、フレンド欄は3人。賑やかになったものだ。
「それじゃあ、さっそく打ちましょっか!」
「うんっ!」
「ふふっ、それじゃあ。またね?」
賑やかな2人と別れて、私は素材を上に持って帰って調合するのだった。
***
「ありがとう、アルゴ。おかげで助かったわ」
「んや、大したことはしてないゾ。そもそもあそこにはあまり人がいなかったからナ」
戻ってきて調合を済ませてしばらく。アルゴと合流した私はアルゴにお礼を言っていた。
私がアルゴに頼んだのは、村の人避けだ。
おかげで2人は他の人に会うこともなく運び込むことが出来たのだ。
「それで…報酬は指示するって言ってたけど?何が目的?」
「話は簡単サ。装備やポーションをこっちに回してクレ、代金はだすからサ」
「………」
私が作ったものが欲しいのか。少し恥ずかしい…というよりこしょばゆいところがある。だけど…
「流石に、断らせて貰うわ」
「ふむ…理由を聞いてモ?」
「銘が入るじゃない。表舞台に立つのは私の信条というか…ポリシーに反するの」
私は、この城で自由を手に入れた。だから、のんびりとここで一生を過ごして終えたいのだ。名声なんて枷でしかない。これが彼女らしさでもある。
その事をよく理解する友人のアルゴは、1歩引きつつも先をいった。
「ホーウ…分かった、装備は諦めル。ただ、ポーションは銘が入らないから表舞台に立つこともないゾ。売るのはオレっちがするから、オイラに回してクレ。もちろんポーションのお代はオイラが払う。なんなら口止め料に上乗せでもイイ。それで充分サ」
「それなら、まぁ…分かったわ」
「よし、取り引き成立ダナ。これからよろしくな、ラーちゃん」
えぇ、と頷いて握手する。
…私の周りも、賑やかになったものである。