クエストボスと見られる敵を倒しても、部屋に特に変化は見られない。クエスト終了のファンファーレがなりひびき、私のレベルが上がった。クラインも大きく上がったようだ。ダメを大きく入れた分入る量も多かったのかもしれない。
それにしても、
最初は男達が大声あげながら突撃してる姿を見て馬鹿な弱小ギルドかと思っていたが、訂正する。このギルドは強い。考えてないようだが直感や信頼が他のどのギルドよりも強い。その強さからなる安定した連携のとれるチームプレイであれば他のどのギルドよりも……アインクラッド解放軍や青龍連合を超えて、はてには血盟騎士団とすら並べるほどに強くなれるかもしれない。と、私は冗談抜きに感じたのだ。
それはさておき、私たちはその後、クエストを終わらせたことをサフィルカに報告しに行くことにした。何かしらイベントがあるかもしれない。
「サフィルカさーん!例の洞窟、行ってきました!!」
「サフィ、久しぶり」
「行ってきてくれたのね、ありがとう。……って、あれ、ラーちゃん?知り合いだったの?」
「サフィ、久しぶり。たまたまこの人たちと会ってサフィが困ってるって聞いたから、ほっとけなくてね?手伝いさせてもらったわ」
「そうだったの……でも、助かったわ。他の人も……ありがとう、みんな。これで番犬も主様の元に帰れるわ」
久々に会ったサフィはすごく元気そうにしていた。クラインもサフィルカの顔をみて嬉しそうだ。
そして、クラインとともにクエストを達成したことを告げると、サフィルカはなにか憑き物が落ちたように晴れ晴れとした顔をして、軽く祈るようにしていた。
「……番犬?」
「ええ、あの洞窟の犬は魔物と化してしまいましたが、間違いなく領主様が妖魔に魅入られる前に飼われていた犬なのです」
驚きの真実をしり、唖然としている私にさらなる驚きの真実を告げる。
「領主様が放った、妖魔を出られないようにするための魔物……それは領主様のものではなく、他の者から手に入れました。特に、大きなコウモリの魔物はその中でもかなりの力を持っています」
「……ん?」
「コウモリの魔物は超音波……大きな音を出してスタンさせてきます。耳を塞ぐ手段があると良いでしょう。今後も上の層に行くのでしょう、この先そういった魔物に会うことがあれば、是非参考にしてください……ご武運を。」
と、情報を出してお礼をいうとサフィルカはそそくさと立ち去ろうとする。
「サフィルカ、待って!」
そんなサフィルカを私は呼びかけて止める。は、はい!?と驚きながらこちらを見るサフィルカ。周りも何事かとこちらを見るが、聞きたかったことがあるので仕方ない。
「あなたにとって当時のことは思い出したくもないことなのはしってる。けど、これ大事な事だから聞かせてちょうだい。
__その領主が放った魔物の中に、大きなイカはいた?」
「……いま、した。もう、いいですか?」
「充分よ」
そう返すと、サフィルカは駆け足で去っていった。わたしは肩を竦めて踵を返す。すると、クラインが泣いていた
「うぅ、俺ら冒険者を心配してくれるとか……サフィルカちゃんマジ天使か……!!」
「……はいはい、わかったから。男の子がこんな所で泣かないの」
「なっ、ないてなんかいねーよ!ったく!」
いやどうみたって泣いてたんだよなぁ……と、こんなやり取りをしている中、風林火山のメンバーの1人が私に声をかけてきた。
「どうしてあんなことを聞いたんだ?イカの魔物?聞いたことも見たこともないぜ?」
「あー、その事ね」
といって、ため息混じりに考える。続きを話すべきか話さざるべきか……話せば、確実に最前線はより先に進むだろう。私は、気がついてしまったのだ。
__先程の情報が、ボス攻略の情報であることに。
それを話せば、先に進んでしまうだろう。でも、それで私に何かあるのだろうか。この人たちとは現状、ビジネスライクの関係でしかない。
「……少し、考えさせてちょうだい」
「え?」「どういうことだ?」
困惑する風林火山のメンバー達。そして私をじっと見る。訝しむように。そりゃあ、そうだ。こんな突然現れた私を怪しむなんて当然__
「わかった。でも、無理に教えてくれなくたっていい。ただ、落ち着いて考えてもし良ければ連絡をしてくれ」
「……ありがとう、クライン」
クラインの助け舟にのり、私は風林火山のメンバーから離れて1人考えることにした。
***
「ただいま〜」
「おかえりなさい」
1度ホームに戻った。というのも、情報屋に渡すなら手柄は風林火山持ちのためアルゴに会うのはまずい。それどころか情報を取られる可能性も大きい。この情報は風林火山のものだ。私が話すことではない。
それで、1人で落ち着いて考えられるホームに戻ったのだが……
「ラークちゃん、大丈夫?すごくむずかしい顔をしてるよ?」
「……」
そうだ、今は天使が__サチが、いるんだった……
「その、私で良ければ、お話聞かせてくれないかな?」
「……いいけど、怒らない?」
「怒らない怒らない」
その言葉を信じて、相談をする。
__私にとって現実が辛いこと。ずっとこの世界にいたいこと。そして、今日手に入れた情報が先に進む……この世界がクリアされてしまう1つの足がかりになるかもしれないこと。それで私が迷っていること。かなり踏み込んで、私のありのままを全て聞いた
「__つまり、この情報を秘匿するかどうか悩んでるわけね」
「簡単に言うとそういうことよ」
「なるほど……ねぇ、ラーちゃん」
なに?と、ぶっきらぼうに聞き返した私をサチはいきなり抱きしめて、頭を撫ではじめた。
口を呆然と開けて混乱している私を他所に、サチは優しく抱き締める。
「私ね、ラーちゃんのおかげで生きられた。きっと、あのまま何も言えずにみんなと一緒にいたら__いつか、死んでた。そんな私は、ラーちゃんのおかげで今こうして街の中で怖い思いもせずに安心して過ごせてる」
そんな、私の力じゃない……と思ったけど、言葉にすることはなく。なんだか照れくさくなった私はサチを正面から抱きしめるようにして顔を見えないようにした。
「私は、ラーちゃんがどんな選択をしても、何者だろうと。ラーちゃんの味方だから……ね?」
「っ! サチっ!」
元々、性格が涙脆く、そして
「お願い……一緒にいて……!」
だから、手放さないように。ぎゅっと、大事にサチを抱きしめて。そして、嬉しくてそのまま泣きじゃくる。
サチは、そんな私の背中をやさしくさすっていていてくれた。
泣きじゃくった後も、私はこの日ずっとサチと一緒にいた。
時間も遅かったが、外に出て町で共に外食をして話したりもした。私なんかの話をサチはちゃんと聞いてくれて、その上でサチも楽しく話していた。
__そう、これが私にとって初めて、『味方』を得た瞬間だった。