「というわけでよ、40層のボス攻略に選ばれたぜ!」
「すごいじゃない。おめでとう、クライン」
ある日の事、ボス攻略40層目前での出来事である。攻略会議があったが、私はいつも通り攻略会議をスルー。それで、アルゴと私で面倒を見て攻略会議に参加したクラインから話を聞いていた。
そして、ボス攻略に風林火山リーダーのクライン含む1PTが選出されたのだ。すごく嬉しそうだった。面倒見たかいがあるというものだ。
「それでな、ちーとばかし悪ぃんだが頼みがあるんだ」
「頼み?」
「あぁ、面倒事なのはわかるが頼む!」
しばし悩み、まぁいいかと一言告げる。
「…とりあえず、ディナーの後にしないかしら?」
「そうだな。悪ぃ」
今は風林火山メンバーでパーティーしてるんだから、その後の方がいい。私はお腹すいた。
クラインも察してくれたようで。とりあえずパーティーをしっかりした後話を聞くことにした。
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「で、なんでアルゴがいるのよ」
「そもそもにオイラが関わってるからダナ。なに?2人きりがよかったカ?」
「………話を続けなさい」
パーティーが終わってクラインから話を聞こうとしたらアルゴがいつの間にか姿を現していて隣に座っていた。まぁ、鼠のことだし日常茶飯事なのだが。あとニヤニヤしながらこっち見るな。
ひと睨みするとやれやれといったようすで肩を竦めてアルゴは口を開く。
「居ない間、残りの風林火山メンバーの面倒を見て欲しいンダ」
「……はぁ?」
どういうこと、と首を傾げるとクラインが引き継いで話し始める。
「悔しかったらしくてな。最前線でレベリングするんだとさ。でも、ほかのメンバーは経験が不足してる…おまえが見守ってくれれば安心出来るだろ?」
「ふーん……わかったわ。報酬はアルゴに払ってもらえる?」
「ん、上乗せカ。まぁ、それでいいならいいゾ。あんなバカ高い額払うバカはいないと思うけどナ」
「んー?まぁそれでいいなら了解だ」
そうして、風林火山メンバーを見守ることになったの。けど、この時は、まさかあんな事件になるなんて思わなかったのよね……
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フロアボス攻略真っ只中、そろそろ件のレベリングに付き合おうとした矢先だった。突然招集がかかったらしい。私はそっとハイドして見守ることにした。
なんでも、どこかのPTが罠にかかって全滅しかけたらしい。
そのため、急遽、攻略2軍で救出しに向かうことに…
「で、私も行けと?」
「あぁ、経験者がいれば安心もできるダロ?」
「……報酬、口止め料上乗せで。いいわね?」
「あぁ、モチロンダ」
にぃっと笑ったので、信用しよう。
そんなわけで私も同行することになった。
メンバーは、複数人の中層プレイヤーにユナ、エイジ、そして風林火山メンバーだ。
知り合いもいるから、大丈夫。なんて心のどこかで考えてしまったのかもしれない。
さて、件の罠だが。
その罠に関して、私はしっている。閉じ込めトラップの類いだ。
だから、より一層気を引き締めなければならない。
……だが、まさか。まさか、踏破済みダンジョンでボスモンスターが現れて大量のモンスターに囲まれるとは。
さすがに助けるにしても、多すぎる。とはいえ、私も私で派手に動いて目立てばヘイト稼いだら立ち回れなくなる危険もある。
その時、詩が聞こえた。ふとそちらに目を向ければユナは歌っていた。周囲をみると、私が相手したモンスターもユナの方を向いている。いわゆる、ウォークライのようなヘイトを稼ぐスキル。でもユナはタンクでない……
「ユナを、ユナを助けてくれ!」
懇願するように叫ぶエイジ。なぜだか、エイジは動けないでいる様子。しかし、風林火山メンバーも中層プレイヤーも救出を待ってたメンバーも無視でボスモンスターを優先している様子…うん、よし。
「……ユナを助けたいのよね」
「っ、あぁ…!」
「それなら…武器をしっかり掴んでなさい!それくらいはできるでしょ!」「へ?」
私は武器を構えるエイジを掴む。武器を持ったエイジを、ユナの方へ……
「おらァァァァァ!!!」「う、うぉぉぉぉ!!!」
《体術》スキルと《投擲》スキルから派生しているエクストラスキル…《投げ》。投げられたエイジは、そのまま弧を描き…今まさにユナを襲おうとしたモンスターを攻撃する。
ユナは驚いた様子でこちらを見ているが私も助けると決めた手前ただ投げただけでは済まない。
そのまま一気に懐に潜り込んでラッシュをかける。距離さえ詰めればこっちのものだ…!
「よし!次!」
「ラークちゃん、エイジくん、どうして……!」
ユナがなぜこちらに来たのかわからないでいるようだが。愚問だ。
「…動けないでいる俺が言うのもなんだが、ユナを置いていけるわけないだろ!」
「また、コンサート期待してるわ。あなたの歌声、私好きだもの」
「ありがとう…!」
……魔物に囲まれていたのだ。やはり怖かったのだろうか。それでも、ユナがいてくれたからかエイジは動けるようになっていた。ユナも無事。3人なら…勝機もある。
「それじゃあ…いくわよ、2人とも!」
ユナとエイジに指示を出ししつつ、私は_いや、私たちは抗った。
ボロボロになりながら、私たちは何とか倒した。ヘイトを管理して攻撃が集中するのを避けつつ、ユナのバフを貰いつつエイジと私で抑えるといった、急ごしらえの連携プレイだ。
そうやってちょっとずつ倒しながら立ち回って全てが終わると同時にボスモンスターをほかのメンバーが倒したようだった。
「ふぅ…お疲れ様。ユナ、エイジ、2人とも無事ね」
「あぁ…案外何とかなるものだな」
「…助かった。ありがとう、エイジ。ラーク」
ふむ、お礼を言われるのもいい。けど、それのためじゃあない。
「お礼なんていいわよ。__また、歌声を聞かせてちょうだい?私はただのファンだから」
私がこれだけ死闘を繰り広げるのは、それだけの価値があるときだ。そして、私の理由を聞いたユナは、驚いて目を丸くする。
そんなユナに私は続ける
「でもそうね、それでもお礼がしたいなんて言うなら…また、歌ってくれないかしら?あなたのライブを特等席で聞きたいものね」
「ええ、もちろんよ!」
笑いあって、私たちは外へ__
「なんで、あいつらは俺たちを、ユナを見捨てたんだ…!」
「エイジ…」「……」
1人、ここに怒りに震える者が居た。そんな男の肩を私は叩く。
「ええ、見捨てたんだから気にしなければいいのよ。私は無事でユナもあなたも無事。それでいいじゃない。ユナも怯えてるし、ね?」
「………」
どうにも、納得できない様子で苦虫をかみしめるエイジをみて、私は続ける。
「それに、ユナのコンサートの特等席。これで、私とエイジだけの特等席よ。それでいいじゃない」
「っ……ああ、そうだな。」
そういうと、エイジは怒りを沈めて笑う。
ユナの歌は、エイジにとって特別なものなのだと再確認した私。
「そんなわけだから。コンサート、頼むわね。ユナ」
「ええ!」
これから先の約束を取り付けつつ、私達は帰ってゆく。
無茶をしたことを伝えるとサチには叱られたけど…
そして、それを依頼が完了したことを伝えるために呼んだアルゴが後ろで楽しそうに見ていたけど。
この出来事をきっかけに。私とユナの関係は私とサチの間にあるものとはまた違った、楽しい関係になったのだった。
「ふう、こんなものかしらね」
ある日、私はいつも通り素材集めに東奔西走。
サチも積極的にアイテム生産に動いてくれていて、心を込めたポーションを作成してくれるために素材が不足しがちになった。
ちなみに、前回の件はアルゴ共々叱られた。サチは、私がアルゴに受けた依頼のことを知らなかったのでへそを曲げてしまったのだ。
連絡しなければもうポーション売らないとまで言いきったので、さすがにアルゴも慌てていた。その様子を見ていて笑ってしまったらアルゴにもサチにも怒られてしまった。解せぬ。
ちなみに、この素材集めはサチの機嫌を直すのも兼ねている。ちゃんとプレゼントまで用意したのである。
「あら?メッセージ…?」
そんななか、メッセージが来たことに気がつく。サチからだ。
「……サチと一緒に、行きましょうか。」
__明日の夜、コンサートするよ!エイジとラークのためのライブ!もし、一緒に聞きたい人がいるならその人の分も場所を取っておくね!
私の明日の夜の予定が、きまった。