数日前のこと。
「…その、晶彦。少し聞きたいのだけど」
「どうかしたのかい?」
晶彦と共にゲームに対して意見を求められた最初の問答の様子である。
「人に電流を流して殺せる?」
「…どういう事かな?」
すごく大人向けのゲームであると感じた。英語は読めないし、説明が何も無くすぐに殺られてしまったのだ。
「…とても大人向け。子供には到底出きっこない。ゲームなのに、とてもリアル。どうせなら体力無くなったら現実でも死ねばいいのに」
「…子供には出来ないのに、かい?」
「だからこそ、よ。現実になんて、もう期待してないの」
「……」
「いっそ
吐き捨てるように言う。晶彦は聞き上手で、私の本心をぶつけても怒ることがなく。なのでついついこうきついことを言ってしまう。
「あそこのNPCくらいよ。私の身の回りで私を見てくれるのは…晶彦達を除いて、ね」
「…そうか」
「もし出来たら検討して欲しいわね」
「もしやったら僕は犯罪者扱いだ」
そう、この時は『もしも』の話だった。それを、晶彦はやってのけたのだ。晶彦には感謝してもし足りない。
仮想世界に入ってすぐに辺りを見回す。
私がいた時より人で賑わっており、何とも言い難い嫌悪感が襲う。ぼっちたるゆえだろうか。
さっさと初期コルで装備を揃えにいく。市場に出て…裏通りにまわり、人気のない廃れたショップ。ここくらいしか取り扱ってないだろう。
それもそのはず、私が武器として選んだのは…扇。これは私が晶彦に出した案でまさかの即採用となった特殊なものだ。私の戦い方が原因かもしれないが。
私の戦い方は相手の攻撃を躱しながらすれ違いざまに一撃を与えたり、相手の動きを見て反撃に転じたり。火力は全く出ないが相手の動きを封じダメージを与えるものとしてはかなり優秀なものである。
それを両手に装備して舞を舞うように相手を屠る…ベータテスト_晶彦が私より前、大人を集めてやったテストの事だそうだ。それにはなかったものだから、かなり異質になるだろう。
あとはフーデットケープ。顔を隠すほうがいい。ただでさえ子供なのだ。
あとは重くならないように簡単に装備を整える。
「…こんなもんかな」
しばらく経って。
初期コルをほぼ使い切り、通り装備を整え終えた。早速フィールドに向かう__
__その途中の大通りで同じくフードを被った人にすれ違いざまに飛びつく。
「えいっ!」
「わわっ!?な、なんダ!?」
そのフードを捕まえたのは他のなんでもない。
「…私のこと、つけてたでしょ」
「…な、なんのことカナー?」
「言い訳無用、ちゃんと見た」
「厶…それなら仕方ないナ」
このフードの人は私のことをつけていたのだ。
具体的には路地裏に入った辺りから。
「オレっちはアルゴ。《鼠のアルゴ》とはオレっちのことダ」
「…誰?」
「……あー、知らないのカ。とりあえず、オレっちはアルゴ。名前を聞いてもいいカ?」
突然、知らない名前を知ってるだろうふうに言われてもわからない。呆気に取られていると、名前を聞かれた。
名前…リアルじゃなくてここの名前…
「
「ラークちゃん…そしたらラーちゃんだな。オレっちは情報屋だ、聞きたいことがあれば言ってくれ、お金はとるけどナ」
「なるほどね…分かった」
「それじゃあ、フレンド登録よろしくナ。基本、これでメッセージやりとりするカラナ」
私の初めてのフレンドはビジネスパートナーで埋まった。
「迷わずこの裏通りの人少ない場所で購入していった、カ。しかし、ここでめぼしいものうってたなんて聞いたことないナ…」
***
アルゴさんと別れて、フィールドに出る。
近くで2人の男達がイノシシ相手にてんやわんやしているのは気にしない。
久々の得物を手に、イノシシと肩慣らしに対峙する。
「ふっ_」
突っ込んでくるイノシシを余裕で避けてその隙に大きく一撃を与える。じわじわとイノシシの体力は削れてくる。
…そろそろ慣れてきたな、とソードスキル《タップ》を躱しざまにイノシシの額に正確に当て、そのままイノシシは呆気なくポリゴンの破片になり砕け散る。
「こんなものね…」
何回か繰り返してさくっと倒した。
ふと気がつくと、男のうちの一人が何やらこちらを見て険しい表情をしていたのでさっさと退散した。
街に戻り、隅っこでスキル欄を見て驚く。《料理》《片手武器作成》《防具作成》《アクセサリ作成》《採集》《調合》《裁縫》スキルが『スキル欄外に』入っていた。訳が分からない。
普通は、スキル欄の分だけしかスキルは取得出来ないのだが…
とスキル欄をよく見ると他に見慣れないスキルが存在している。
「…何これ」
《遊び人》と、《子供》というスキルである。
《子供》の方には取得条件が記載されている。ログイン時に小学生以下であること、だそうだ。効果は「生産系スキルの自動取得」。これはスキル欄外に入っていたものだろう。
で、問題のもうひとつの《遊び人》スキルだが…何も書かれていない。
取得条件も、効果も記載がないのだ。なんだこれ。
「………」
少し思考する。恐らく、この効果は私がもしも、子供がログインしても生き延びられるようにと晶彦に言ったものだった。
………もしかして、もしかすると。
おそるおそる、ログアウトボタンを確認する。
_ない。
「___!!」
まさか、本当にやってのけるとは。恐るべき茅場晶彦。
そのとき、突然転送される…
始まりの広場へと。そして、正式サービスの開始を。内容は言わない、私の提案が全てを物語っていた。
そう、こうして
多くの人が泣く中、私は…喜んでいた。
辛い苦しい