《サチ視点》
サチは起床アラームを午前3時にセットしている。なぜか。
「んっ……」
「やだ、おとーさ…!いたいいたい…!」
「…ラーくん」
おおよそこの時間に、ラークが悪夢にうなされるからだ。
そんなラークを、サチはアラームで起きて優しく抱きしめる。
「大丈夫、いたくないーいたくないー…」
「んんう…ひぐっ…」
「よしよし、えらいえらい」
頭をよしよしと撫でると、スゥースゥーと落ち着いたのかゆっくり寝息を立てて寝始める。その姿は、完全に見た目通りの__
「……大丈夫だから、ね」
サチはラークを優しく抱きしめて、再度寝ることにした。
《ラーク視点》
「スゥ…スゥ」
「んー、よく寝たわ。…サチはまだ寝てるのね」
朝起きた私は、私を抱きしめたままスヤスヤと寝息を立てるサチに抱きしめられたまま目を覚ます。
「この状況…また、迷惑かけちゃったわね」
何となく、自分がまた悪夢を見たのだと察した私は寝息をたてているサチを抱きしめる。
「……暖かい」
いつの間にかそばにある温もり。現実にはなくここにある。私にとって、変え難いもの。
__
詳しいことは知らないが、前線をお兄ちゃんとお姉ちゃんが引いた。ビーターとして名高いお兄ちゃんがいなくなって前線組は盛り上がったものの、
……元々、お兄ちゃんとお姉ちゃんの繋がりが深く、お姉ちゃんがお兄ちゃんから受け取った情報を元に血盟騎士団が動いていたために当たり前と言えば当たり前の状況下なのだが。
私は先に進んでもボスはスルー、マッピングデータは売っていないため進むのが遅れるのは自明の理とも言える。
何せ、私はもっとアインクラッド生活過ごしたいし__
ピロリン♪
突然メールが来た。
件名:『緊急連絡』
差出人__『ヒースクリフ』
「……!?」
私は慌てて抜け出してメールを開く。そこには衝撃的なことが書かれていた。
「どうにかしなきゃ__!!」
使命感に駆られた私は慌てて駆け出した。温もりを置きさって。
「ラーク……ちゃん?」
『件名:大至急!
20層辺りの下層エリアでカーソルの合わない記憶喪失のプレイヤーの情報がすぐ欲しい!名前はYuiってスペルでユイ!後で絶対情報料払うからよろしく!』
『件名:カーソルの合わないプレイヤー
毎度ありがとうだゾ。22層の森でカーソルの合わない幽霊少女の噂があるンダ。情報料は……お急ぎってことで500コルだゾ』
早い。この速度も信頼の証でアルゴには本当に頭が上がらない。
「急がなきゃ……!」
さて、件のメールがなんだったのかと言うと……
SAOには、茅場により作られた感情をデータ化し参照するプログラム__MHCP(メンタルヘルスケアプログラム)が存在する。
しかし、茅場は彼女達に不干渉を命じ感情の蓄積のみさせていた。それが、あの天才茅場ですら思いもしない事態を生み出した。
矛盾を起こしたプログラムが、崩壊を起こしたのだ。
茅場が独自に調べた足取り曰く、20層辺りの下層に向かったとされるが……崩壊した状況であるため自分が何者なのかも、恐らく不干渉の命令も守ってるか定かでは無い。そのため、急遽茅場に言われて回収に急ぐことになったのだ。
「__ダメ、いない」
日が傾く頃合まで森を探索しても全く気配がなく。どんどん奥へと進む。が、見つからない。
なんせ、崩壊したプログラム。AIとして自身を保つことさえやっとだろう。
「お願い、無事で居て__!」
そうこうしているうちに、足跡をみつけた。その足跡を辿ると、森の奥深くにある湖近くの家にたどり着いたのだった。
こんな場所に家があったのか。と、感動して確認してみると購入済__プレイヤーの家みたいだ。
と、ここでメッセージが光る。
『件名:見つかったゾ
尋ね人コーナーに情報載せたら、キー坊とアーちゃんから連絡が来たゾ。どうやら例の幽霊少女、キー坊とアーちゃんが保護したみたいだゾ。少女のことを知る人を探してるし、名前も一致シタ。情報料に関しては無かったことにして構わない、キー坊が払ったからな。それで、キー坊に話したら会いたいって言っててサ。ラーちゃんさえ良ければ会うカ?』
……既に保護されていたのか。道理で見つからないわけだ。
安心も信頼もできる2人に保護されていたことにほっとするも、ここまで来れば説明しない訳には行かない。
事情をヒースクリフにメッセージで飛ばすと直ぐに返信が帰ってきた。AIの設定を変更して、そのままお兄ちゃんたちに預けるように、だそうだ。
安心したら、急に疲れが回ってきた。眠い。
悪いけど、次の日に会えないだろうか。今日は少しまずい。
そう、アルゴに送ると、時間と場所を聞かれた。場所は、彼女の問題の解決のために第1層__それも始まりの街がいいだろうと踏んだ。ただ、時間はどうするか……だめだ、眠い。とりあえずお昼でいいだろう。場所は任せるが、人目がなく安心出来る宿屋を借りて欲しいと前もって提案をしておく。それから、必ず彼女__ユイを連れてくるように言っておく。これで、ある程度は安心だろう。疲れた私は回廊結晶を使ってホームへと帰るのだった。
疲れてヘトヘトで帰って来た私を、サチは笑顔で迎え入れてくれた。ご飯も作ってくれてて、サチの作った夕食を食べてお風呂に入って寝る支度を整える。……寝る前に時間があるから結局いつものルーティーンをこなしてアイテムや武具の強化をしていたのだが。
なんだろう、不思議とサチが近い。理由も不明だけど……そもそも、理由もなく飛び出してユイの捜索をしていたのだ。怒られるものだと思っていた。が、サチが楽しそうなのでその違和感は置いておくことにした。
そうして、二人で一緒のベッドにはいったところで、用事を伝え忘れていたことを思い出す。
「そうだ、サチ」
「ラークちゃん、どうしたの?」
「明日は私、始まりの街に用事があって出かけてくる」
「そっか。気をつけてね。私、待ってるから」
……ついて行くと言い出す気がしていたが、待っていてくれるそうだ。サチのことがわからなくなってきた。けど、なんだかいつもよりも活き活きとしていたので、良しとする。
次の日。私はサチが作ってくれていたポーションをもって始まりの街へと出発した。
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_____
「……遅いわね」
「だからって私で遊ぶナ……んにんに」
始まりの街にて、待ち合わせをしていたものの全く来ない。暇すぎた私はアルゴの頬をぷにぷにしながら待っていた。
「一体何をしてるのかしら、あのアホにぃ……うぅ、心配だわ」
「あう〜、あぶぶ……はやくきてクレ、キー坊……」
……件のAIは茅場が設計したものだ。つまり、彼そのものと言っても過言では無い。それがエラーを起こしているのだ。そりゃあ、親友として力になりたいに決まっている。
一方、アルゴは寂し紛れにラークが自分で遊ぶのが耐えられなさそうであった。
お互い別々の思いから
そうこうしているうちに扉が開け放たれてその者は来た。
__一人で。
「わりぃ、来るの遅れた」
「まって、あの子は?__ユイは?」
慌てる私に、ため息を吐くように
「来る途中、道を塞いでた何人もの軍のやつらがいたんだ。さすがに相手にもならないから圏内バトルでどかしたんだけど……
そしたら、ユイも泣き叫んで気絶しちゃって……」
「アホ兄……」
それを聞いた私も溜息をつきながら頭に手を当てた。
間違いなく、エラーの原因の悪意の感情の蓄積に圏内バトルで発生した恐怖まで重なったのが原因で再度エラーを起こしたのだろう。まだ私はユイの設定をいじっていないし、AIが感情の為のプログラムなのに感情のデータを集める機能を自ら停止するとも思えない。そもそも、あの
「大方、事情はわかったわ……そうなったら、話は後ね。先にその子に会わせてもらえる?心配だわ」
「……」
迷ったように、キリトは考えている。そこで、私は畳み掛けることにする。
「私なら、その子の気絶の原因を取り除けるわ。それに、記憶を取り戻す方法も、恐らくのものだけど……知ってる。そのことについて話すつもりだったのよ、私。そんなに信用できない?」
「……わかった。来てくれ」
何とか、ユイと会えることになった私は急いでキリトの後を追うのだった。