「ただいま……」
「ユイ!」
「ちょ、おい!」
静止するキリトを置いて、教会へ走る。直感だった。
迷いなく、教会の中の一室を勢いよく開ける。そこにはベッドに腰掛ける
「よかった、いた……!大丈夫?怪我はない?悪い人に会わなかった?」
「えっ、ラークちゃん!?お、落ち着いて……」
「はぁっ、いきなり走るなラーク……アスナ、ラークは昨日話してたアルゴからの紹介相手だ」
私は取り急ぎユイの手を取ってウィンドウを開く。
流れるように秘匿された設定コマンドを開き、感情データ収集をオフにする。ふぅ、これでこれ以上エラーを蓄積することは無い、はず。一安心した私を、ユイは不安そうに見つめる。
「誰……?」
「私はラーク。もう、頭痛くなったりしないから。大丈夫、大丈夫よ」
さっとウィンドウを閉じて、ユイの手をぎゅっと握る。
「流石に、ラークちゃんが保護者ってことは……」
「ないわ。ただの友人よ。私のこと覚えてないってことは、恐らく__記憶を失ってるんだろうけど」
悲しそうにため息をつく。いや、違う。嘘をついた。
その様子を、お兄ちゃんお姉ちゃんが複雑そうに眺めている。
「うん。この調子なら1晩休めば、調子も良くなるはずよ。ユイ、あなたが無事で良かった」
そういって、ユイの頭を撫でる。
彼女は、ユイは__戸惑いながらも、嬉しそうにしている。
感情共有を切ったことで、普段と違う慣れない感覚があるのだろう。でも、もうユイに感情を集めさせてはいけない。あとは、ユイ自身の中で育むべきものだ。
「ねぇ、お兄ちゃんお姉ちゃん。お願いがあるのだけど__ユイの保護者になって貰えないかしら」
私のお願いに、お兄ちゃんとお姉ちゃんはお互い見つめあい、そして笑った。
「もちろん。というか今更だしな」
「ええ、今更ね」
その様子をみて、承諾だとわかり安堵した私は、
「そう、よかった」
と一声かけて、用も済んだしと部屋をでようとした。
すると、奥から足音が来ていて、扉が空くことが分かり私は下がる。
「あ、あなた……!」
「……チッ」
その人がまさかの知り合いだったのが問題なのだが。それも、印象がすこぶる悪い。
「無事だったのね!」
「ええ、無事よ。
あかんべーをするかのように、悪態を着きながら私は言う。
それを困ったように苦笑いしながらサーシャが続ける
「わかってる。もう言わないわ」
「そ。まぁ、勝手になさい」
何があったのか?サーシャさんとは、なんか素材集めてたら声かけられて孤児院に閉じ込めようとしてきたヤベー奴なのだ。
まぁ、悪いことはしてないし私以外の子供の面倒みてくれてるのは分かる。が、それを強制するのも如何なものか。私、レベルなら前線組超えてたし、今現在も超えてるし。
「だから、今日くらい泊まってかない?」
「いや、なんでよ」
「1人だから心配だったけど、お兄ちゃんやお姉ちゃんもいたんでしょ?色々お話聞きたいわ」
うーん、実の兄姉ではないんだけどなぁ
「パパとママの……いもーと?」
「ええ、そうよ」
「んー…?」
「ちょ、ちょっと」
もうこの際いいやと、ユイに肯定を伝える。
「お姉ちゃん!」
「え?」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
なんか私の事をお姉ちゃんと呼んで嬉しそうにしている。
私が、お姉ちゃん……?
「……えへへ」
末っ子な私に、その呼び名は効果覿面だったのだろう。私自身が妹だったこともあって、ユイちゃんのことが愛おしく見えてくる。あぁ、そうだ。私がテストプレイした時も私に引っ付いて来てたっけ。この城でテストプレイした時にMHCPがかなり癒してくれたなぁ……
と、思い出にふけていたらユイが笑顔で言った。
「お姉ちゃん、笑った!」
「__ラークも、楽しそうに笑うんだな」
「何よ、悪い?」
ユイちゃん、笑顔が好きだったなぁと、思い出す。
お兄ちゃんが茶化してきたので、つい睨みつけてしまう。いいじゃない。笑ったって
「イエ、ナニモ」
「よろしい」
このやり取りから
__なんだか、無性に腹が立つ
「あんたも、言いたいことがあるならいったら?」
「なら遠慮なく__みなさん、今日ここに泊まっていきませんか?子供たちもきっと喜びます」
「は?」
断りたかった、がユイのこともあって結局なし崩しで泊まることになってしまった。ただ、サチをおいてここに泊まるのは忍びないため、サチを呼ぶ事を了承してもらった。
そうして、私とサチは教会の一室の部屋で寝泊まりすることになった。
__________
_____
その日の夜。
なんだか眠れなくて、部屋を出た。サチも起きていて、涼みに行くと一言残して。
「……お姉ちゃん?」
「あれ?ユイ?」
夜風にあたっていると、気がつけば私の隣にユイがいた。
「……私、お姉ちゃんとどこかであったことありますか?」
「えぇ。遠い遠い、昔のことだけどね」
何となく、だろうか。ユイも朧気ながら覚えているようだ。
全く、ユイは喜ばせるのが上手い。MHCPなんだから、当然か。
「……お姉ちゃん、とても怖かった」
「うん?」
「楽しくて、悲しくて、怒って、悲しんで……うーん、ぐちゃぐちゃなの。今は、分からないけど」
私のことだろうか。分からないのは当然だ、共有切ったし。
「でもね。悪いものだけはなかった!」
「__」
あの短時間で、そこまで分かるのか。MHCPを侮っていたかもしれない。いや、もしかしたら悪意の蓄積が原因でエラーを起こしたのかもしれない。それで悪意に敏感なのかも…
と、思案しているとユイが隣に寄り添ってくる。
「何かお困り事があれば、パパやママに相談するといいです!それも厳しいようなら妹の私も聞きますよ。話せば軽くなるかもしれません!」
「あぁ、それなら大丈夫よ。もう、私には__」
後ろを振り返る。心配になって見に来たのだろう、サチと目が合う。その様子から一緒に振り返ったユイも彼女に気がついたようだ。私は彼女に聞こえないよう、ユイだけに聞こえる声でいう。
「
「ふふ、そうですね。なんだか心配だったのですが、それなら安心です」
私、MHCPに心配されてたのか。記憶は無いはずなんだけども。
まぁ、いいか。
「迎えも来たし、そろそろ部屋に戻るわ」
「うん!お姉ちゃん、また明日!」
そうして、私は部屋に戻った。
問題は次の日に起こった