またあわせて、報告の方で今後について少々語ろうかとおもいます。
零
「なあ、ラーちゃん。なんでそんなに《
「突然どうしたのよ」
そんなことを突然聞かれたのは、ユイちゃんの1件が解決してしばらくたった頃。
ちなみに、未だにお兄ちゃん達は前線組には復帰していない。前線組は主力がいなくなったことでもうスローペースになっている。今までいかに2人の存在が大きかったかよくわかる。なお、《鼠》には「私が2人の居場所を知ってる」ことは直ぐにバレた。が、場所はサチも含め伝えていない。「お兄ちゃん達、2人でアツイ夜を過ごしてるから馬に蹴られたくないならこれ以上詮索はやめなさい」といったら黙ってくれた。
そんな話が終わって、唐突にこれである。
「そんなの聞いてどうするのよ、あんたまで睨まれるわよ」
「いや、ヤツらが関わった時のラーちゃん、コワイゾ? 自覚ないのかもダケドナ。オネーチャン、心配ダゾ」
「……それは」
悩んでいると、隣で話を聞いていたサチが声を上げる。
「あの……私も、聞きたい!」
「え、サチ?」
サチは思いを吐くように続ける。
「ラークちゃんにはとってもお世話になった。ずっと助けてくれて、私の事も大切にしてくれてる。でも、時々思い詰めてるみたいだし……夜泣きも酷いし」
「うっ……」
「ホーウ……あのラーちゃんが夜泣きネェ……」
私は顔を真っ赤にして、すぐさまトレード画面を開きコルを乗せる。
「口止め料、ね! 絶対言いふらさないで!」
「毎度アリー」
にやけ顔、いつもは頼もしいのに自分に向けられているとなると途端に恥ずかしさが増してくるのがきつい。
「ごめん、ラークちゃん……と、とにかく! 私、ラークちゃんのことが心配で、それに……心中するって、約束したから。ラークちゃんが1人で背負って困ってるなら、私も一緒に背負いたいの」
「サチ……」
……私にとって、サチは一緒に過ごす程度だったのに。いつの間にか大切になってて。そして、今は私と共に秘密を背負おうとしている。
「マ、オネーチャンもラーちゃんには世話になってるシナ。皆を守りたい気持ちは分かるゾ。でも、昔みたいな暴挙はさすがに困るカラナ。《笑う狂人》さん?」
「うっ……その名前はやめてよ、恥ずかしいんだから」
「昔っからラークちゃん、無理してたんだね」
「マアナ」
この《鼠》とはサチが来る前からの仲だからなぁ……
「とにかく、話を聞かせて。ラークちゃん」
「…………」
別に、はぐらかそうとすればいくらでもはぐらかせる。それでも彼女は笑って許してくれるだろう。心の奥底で、心配しながら。
私だって、心配をさせたくてしてるわけでもない。それに……その件に関してはアルゴにも結局話さなければならないだろう。
「分かった、話すわ。ただ、アルゴにも話せてなかった、あの件__攻略組を敵に回した話から始めないといけないわね」
「オイオイ、あの件絡んでたノカ!?」
「ええ。前から疑っては居たけど、確信したのはアレだもの」
「アレ……」
「ああ、ラークちゃんが《笑う狂人》と言われることになった所以があってな。あのときラークちゃんが「まって」」
《鼠》に割り込むように、声を被せる。扇子を取りだし、口元を隠すようにして私は続ける
「その先は、私に言わせて」
「あぁ、そうだナ。悪カッタ」
「あのね、サチ。私は……」
……辛い。苦しい。吐き気がする。でも、自分が汚した手だ。話さない訳には行かない。覚悟を決めて、言葉を吐き出す。
「前線組を、殺してるの」
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半年前
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「お邪魔するゾ」
「いらっしゃい」
55層のボスに前線組がチャレンジする日。いつもの根城になっている、入り組んだ遺跡の仕掛けの先にあるホーム。その中にあるいかにも女の子らしいピンクの部屋で、私は朝ごはんを作っていた。
そんな中に突然訪問者がやってくる。ノックによる暗号から判断して扉を開けると、アルゴがやってきた。料理スキルを持っていることを知ってか、時々こうやってご飯を食べに来る。
普通ならデスゲーム、しかもあの《鼠》のアルゴ。少し話すだけでも情報を抜かれると噂がある。まず追い払うところから入るのが一般的だ。しかし、彼女は《鼠》を部屋に招き入れた。
「ありがとうナ」
「いや、普段から世話になってるし追い出さないわよ。というか普段から走り回って忙しいみたいだし……休み、ちゃんととってるかしら」
「情報屋は年中無休なんダナーこれが。なにせ、休んでる間にも情報はどんどん湧いてくるンダ」
「なら、ご飯食べる時くらいは休みなさいよ」
私は《鼠》の友人でもあるからだ。
笑顔で迎え入れた私たちはもう既に用意されたアルゴ用の食器とイスを出し、朝ごはんを盛りつける。ちなみに食器は私が手作りしたオーダーメイド品である。流石SAO、色々作れるのが凄い。
「「いただきまーす!!!」」
席について朝ごはんを食べる。目玉焼きにパン、朝ごはんらしい朝ごはんを2人で食べる。
アルゴが美味しそうに食べてるのに満足しながら食べていると、そのアルゴが突然話しかけてきた。
「今日はどうするんダ?」
「んー、いつものしよっかな。アルゴ、迷宮区のマップ買うわ」
「だと思ったヨ。お代は……美味しい朝ごはんでチャラダ」
「あら、ありがと」
マップデータを受け取った私は、あっという間に平らげた朝ごはんを後に最前線へと向かった。
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《
そうして、56層にたどりつく。近くの街にて情報収集をしていて、日が沈もうとしていたときだった。
「あの、私を連れて行ってくれませんか?」
「え?」
《
と、考え事をしているとその子の上にクエストマークが現れていることに気がつく。なるほど、依頼か。
「ふっふっふー、私の背後を取るなんて。あなた、やるわね?」
「……?」
こてん、と、不思議そうに首をかしげる黒髪少女。かわいい。……じゃなくて。黒髪少女って呼び続けるのも面倒ね。
「いいわ、私の背後を取った褒美ね。つれていってあげる」
「あなた、名前は?」
「名前とは、何でしょうか?」
困ってる様子が見受けられる。もしかして、名前を出すのが不都合なNPCなのかもしれない。
「自分自身のことを指す名称、ね。私はラーク」
「あなたは、ラーク……はい、覚えました」
「なら、そうね。あなたのことはゼロ。そう呼ぶわ」
「ゼロ……はい、私はゼロ」
私はこのNPCに、仮名として『
「それじゃあ、どこいく? 他にも見たい場所あれば一緒にいこ?」
「他の場所……? いえ、私は知りません。あっ」
そういう彼女の手を私は勢いよく取って駆け出す。
「それなら、見て回りましょう! 行けばわかるわ!」
「ふふ……はい、わかりました」
それから、街の色んな場所を見てきた。カレーが飲み物なんていう冒険者につられてカレーを一緒に飲んで笑ったり。花壇でいろんな花を見たり。武器屋で武器を見ていたらゼロが両手斧振り回したり。そしてちょっとフィールドに出たらゼロが両手斧で魔物を粉砕していたり。
……見た目と武器が違和感ありまくりなのはなんだろう。でも、かなりの実力者だ。パーティー組んでるから、レベルもわかるけど5レベル上だ。
そうして、なんだかんだでクエストは終わった。報酬は1コル。
それでも、楽しかったのは言うまでもない。
この出会いが、一つの悲劇の幕開けだったなんて、私はまだ疑いすらもしなかった。