気ままにのんびり思うがままに   作:reira

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村娘

デスゲームが始まって全速力で《ホルンカ》という村を目指す。

 

そこはアニールブレードという性能の良い片手直剣が手に入るクエストが受けられることで有名な場所だ。

 

リトルネペント…普通のが大半だが、実付きと花付きがまれにいる。この花をとってくるのがクエストの目的で、実付きは実に触れると実が爆発してリトルネペントが大量に湧いてくる。という仕掛け。

 

で、きたはいいものの…花がそのまま地面に置いてあった。訳が分からない。

 

まぁとりあえず貰えるものは貰っておく。

 

ついでに素材になりそうなものを集めて、クエストを受けた場所に戻ってくる。

ちなみに、帰る時に花付きが現れたのでついでに倒しておいた。花2つ目ゲットだぜ。

と、思った矢先。実付きが出てくる。しかも運の悪いことに出会い頭で実に体当たり…もちろん、破裂。うん、大量のリトルネペントが寄ってくる。

 

……やるしかない、か。

相手の攻撃を避けて弱点に的確に打ち込むことしばらく。

ヘトヘトになりながらもなんとか切り抜けるのだった。

その際にまた花付きとエンカウントしたからもう1個貰ってきた。花3つって誰得何得?

 

 

 

***

 

 

 

まぁ、そんなこんなでクエストはクリアできる状態だ。

だが…

これを受けたのはもちろん片手直剣の為ではない。そもそも私は片手直剣はつかわない。少し別の要件である。

 

「花、とってきた」

「それがあれば娘の病気が治るわ」

 

そう、ここで花を渡せば片手直剣が貰えるのだが…私は調合がある。だから…もしかしたら薬を作れるかもしれない。

 

「あの、もし良ければ娘さんの病気を治す薬、私に作らせて貰えませんか!」

「え?」

「私、薬の調合について学びたいのです、お願いします!」

 

頭を下げる。悪意なく、そのまま率直に。

 

すると、クエストクリアのファンファーレがなり経験値が入る。

…えっ

 

「でしたら、私について来てください」

「あ…は、はい!」

 

と、新たなクエストが始まる。……は?

 

「お、お邪魔します!」

「あら、邪魔するなら帰って?」

「お邪魔しましたー……っていやいやいや!?」

「うふふ」

 

驚いていて、変な反応をした私にそのNPCが吉本で返してきた。いやどんな高度AIだよ。茅場晶彦はなぜこんなことをNPCに覚えさせたのか…コレガワカラナイ

なにはさておき、台所まで連れて行ってもらうと薬の作り方を教えて貰った。

材料を入れてグツグツ煮込むらしい。なお、材料はNPCから貰った。

 

「…ごめんね、これじゃあ足りなくて。他にも必要なものがあるの」

「必要なもの…?」

「リトルネペントには、花付きの他に実が着いているものがいるの。その、実の中にある『リトルネペントの種子』が必要なのだけど…とるには実を破裂させるしかないの」

「………」

 

うん?そう言えば実を破裂させたような…あっ、ちゃんとアイテムストレージにあるじゃん

 

「もしかして、これですか?」

「あらあら…大変だったわね。実を破裂させたら、大量のリトルネペントがよってきたでしょ」

「はい…でも、いい経験になりました」

「そう。終わったらここで休んでいきなさい、特別にタダで泊まらせてあげるわ」

 

という訳で、材料も問題ない。

早速調合スキルを駆使して煮込んでみる。

……娘さんの病気が早く治りますように。

ただ、ひたすらに思いを込めて。

 

すると、鍋が光り出す。…もう私の知ってるクエストでは無い。

 

「凄いわ。完璧よ。私でも、ここまでの薬はできないと思うわ…きっと、思いが届いたのではないかしら」

「………」

 

頭の中でどういう事だろうかと、思考をめぐらせていると、説明が入る。

 

「これまでも、薬を作っていたんだけどね。治す薬は作れなくて…対処療法しか出来なかった。花付きに会うことそのものが難しいし、リトルネペントだって私じゃあ太刀打ち出来ないのに、実を破裂させて大量のリトルネペント相手に戦うことは出来なかった…

本当にあなたのおかげよ。ありがとう……」

「どういたしまして」

 

ついてきて、と、手を引かれる。その先にいたのは苦しむ女の子だった。

 

「もう、大丈夫だからね。アガサ…」

 

アガサ、という名前の少女は私の作った薬を飲むと幸せそうな表情に変わり、規則正しくスースーと寝音を立てていた。

 

「あなたもここに泊まりなさい。疲れてるでしょう?」

「うん…」

 

事実めちゃくちゃ疲れた…宿を探そうと思った程だ。

正直めちゃくちゃ助かった。

 

「その、悪いけどアガサ…うちの娘の部屋を良ければ使ってあげて。あの子、友達居ないから…仲良くしてあげてね」

「ん」

 

という訳で、アガサの部屋へ。

…とその前に

 

「それじゃ、何か食べましょう」

「そうね…あの子の好きなシチューにしましょうか」

「あ、でしたら私手伝います、いや手伝わせてください!」

 

という訳でアガサ母直伝のシチューを一緒に作った。

ちなみに料理の腕に関してすごく上手だと褒められた。やったね。こういった些細なことからどんどん技術の上昇を測りたいところだ。

 

「………」

「おはよう、よく寝れた?」

「わわっ!?」ササッ

 

誰かがドアをちょっと開いて覗き込んでくいた。私も覗き込んでみると驚いていた。

茶髪で幼い顔立ちの女の子。背丈は私と同じくらい…いや少し低いかな。とても可愛い、いや冗談抜きに。

 

「あら、起きたのね。アガサ。もうご飯よ」

「え、えっと…?」

「その方が、アガサの病気を治してくれたのよ。ちゃんとお礼を言いなさい」

「そうなんだ…!ありがとう、お姉ちゃん!」

「あ…ど、どういたしまして…」

 

ちょっと見とれているあいだにお礼を言われた。びっくりした。

すると、アガサが駆け寄ってきて抱きついてくる。…NPCのはず、なんだけど。とても暖かい。

 

「あのお薬ね、とても優しかったの…お姉ちゃんのおかげで治ったの!」

「うん…でも、もっと大事なこともあった。それがあったから、アガサは治ったんだよ?」

「大事なこと?」

「うん」

 

私は頭に手を回してそっとアガサを抱きしめる

 

「アガサちゃんが、病気を治そうと戦ってくれてた。生きようとしたから、アガサちゃんの病気は治ったんだよ?」

「うん…うんっ!」

 

すると、アガサからも抱き返してきた。…暖かい。眠たくなってきた…とぼんやりしてると手を叩く音がした。ハッと気がついて振り返る。アガサのお母さんだ。

 

「あなた達、ご飯よ」

「わーい!」

 

アガサがふらっと離れて席につく。慌てて私も空いてる席に着いた。

 

「「「いただきます!」」」

 

家族団欒、と言うやつだろうか。家でも、こんなにポカポカしたから気分になったことは無い。

ちなみにシチューはすごく美味しかった。ついついおかわりしたら、いっぱい食べて大きくなるのよって言われた。それを聞いた私はついつい自分の胸に視線を下ろす。大きくなる要素は全くない。ため息をつくと、アガサにどうかしたの?って聞かれる。慌ててなんでもないと返す。アガサは不思議そうにしていたが、コペル母には見抜かれてるのだろう。あらあらと、こちらを見てニコニコしていた。

__そういえば、さっき抱きつかれたときも、抱きしめた時も少し柔らかい感触があった。と、ふと思い出してアガサに負けていることを悟る。何が、とは言わないが。

 

そのあとアガサと一緒にお風呂に入って一緒に寝ることになった。

 

お風呂は久々にのんびりと入れた気がする。アガサが色々と話しかけてくれたためにくらい気分になることもなかった。

…やはりアガサは私のまな板よりかなり大きかったことを特筆しておく。

 

そして、一緒に寝た。気がつけば、私はアガサを抱きしめて寝ていた。

…私にはありえない非日常を経て、夜は明けた。

 

 

 

 

 

__人知れずアニールブレードクエストそのものが消滅し、アルゴに怒られたのはまた別のお話


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