【キリト視点】
攻略会議終了後……
「……今回も剣の取引は不成立ってことでいいんだナ?」
「あぁ………」
謎の剣の取引が終わる。俺は無論、愛剣を売る気は毛頭ない。しかも目的もわからない謎取引。
「それじゃあ…次の件だゾ」
「まだ何かあるのか?」
「聞いて驚けキー坊、どっかの女性プレイヤーがキー坊のパーソナル情報をお求めになられたゾ」
「……は?」
……俺の情報を買ってなんの得があるんだ?まずアスナじゃない。アルゴのことも知らないはずだし、そんな暇はなかった。ほかの女性プレイヤー……心当たりもない。って、さっきまでの取引してたやつと繋がってるんじゃ…と考えた矢先、アルゴが断言する。
「あぁ、攻略組じゃないしさっきまでの取引とはまったく関係がないから安心してくれていいゾ」
「かなり言い切るな」
「そりゃあ信頼出来る面白いヤツだからナ。それに…キー坊は情報を買うって言ってたナ。さぁ、買って見せてくレ」
「………」
まさかあの戯言がすぐさま本当になろうとは誰が考えただろうか。まぁ、アルゴがここまで断言するということは繋がってない可能性が高いが。
「確かに言ったな。それじゃあそいつの情報を「それじゃ六万コルになるゾ」……は?」
「《口止め料》サ。そいつは6万コルを既に支払ってる。繋がってないって言ったのもそういう理由サ」
「……そんなの買えるかぁ!」
でも、確かに繋がってないという理由も分かった。繋がっているとしたらそいつはもう9万コル所持していることになる。流石にありえない。
「にゃはは、そういう訳だ諦めるんだナ。約束通りちゃんと伝えたぞ」
「はぁ………」
一体なんなんだ……と俺はため息をついた。
攻略会議を抜け出し、攻略組に不参加の私がすることは変わらない。クエストをこなしつつアイテムを拾い、夜はひたすら調合、鍛冶に勤しむ。
…クエストNPCは、本当にNPCなのかどうか。分からなくなることがある。コペルの件を筆頭に、今までのクエストを含めて。
…ただ、気になることがあるので、アルゴにメッセージを飛ばす。
『いつ頃攻略組がボス攻略に乗り出すか教えて欲しい』
『そのくらいならサービスダ』
と、詳しい日時を教えてくれる。私に攻略を期待しているのだろうか。
とりあえず、かなり近いらしい為先周りして籠ることにする。幸いコボルト系は視覚感知のため《
まぁ、そんな訳で。興味本位で私はボス部屋でハイドして、キー坊…キリト達の戦闘を眺めることに決めた。
___ボス戦___
…面白い。私はボス戦の全てをみてそう感じた。
あの2人は攻略組の中でも頭1つ抜きでていた。技のキレもそうだが、連携がかなり高位の域に達している。
リーダーが死んでしまったが…あのリーダーは口だけで、さほど他の攻略集団と大差なかった。あまり問題は無さそうだ。
2層へいったため、その後ろをこっそりついて行くことにした。
……ただ、ちらちらこちらを見ている。これ、バレてるな。
けども、探る気もないのか、疲れているのか。こちらに対してなにかアクションをとることなく彼は転移門をアクティベートした。
その隙に、追いかけるのをやめて自由にすることにした。
まぁ、行く場所なんて決めているのだが。
***
「…入門希望者か?」
ボロ小屋のNPC。エクストラスキル《体術》のクエスト。せっかくの正式サービスなのだ、前々からやりたかったことをやってもいいではないか。
「たのもー!いや、道場破りよ」
「…ほう?私が体術マスターとしってのことか?」
…動じることなく、返答された。やはり、このNPCだって『生きている』と強く実感する。
「もちろんよ」
「ふん、舐められたものよ。
そう言うと、小屋の奥の舞台に案内される。
…なんかすごく広い。地下だろうか。
「これを着ろ」
「助かるわ、持ってなかったのよ」
渡されたのは柔道着。そして下は畳。やることはもう明白である。
着替えた私は、畳の上で相手と向かい合う。
「それでは、勝負を開始する。膝を着いた方が負けだ」
「わかったわ」
と応えると、突然半減決着デュエルが始まり、相手が突撃してくる。AGIにものを言わせてギリギリかわす。相手のカラーカーソルがどす黒いが知ったこっちゃない。
かわしながらも流れるように一撃を与えたがそこまでのダメージは与えられない。
「ほう、お主なかなかやるな。今の一撃をかわすとは。お遊びで言った訳では無いようだ」
「ふふ、さあ来なさい」
「…舐められたものよ」
姿勢を構えて手ではやくこいと挑発する。すると再度こちらに詰めより、今度はラッシュ。私はそれに対して交わすか受け流すかで対応する。マスターという名に相応しい、凄まじい技のキレと重さ。正面から喰らえば一撃で沈むのは明白だ。HPもジリジリと削れていく。 ふと、何かが、体の奥から湧いてくるのに気がつく。自然と笑みがこぼれる。
_笑っている?私が?ずっと無表情で1人な私が笑っている?楽しい?
「…あは」
「む?」
「あははははははははははははははははは!楽しい楽しい楽しい面白い面白い面白い!さぁ舞いましょう!踊りましょう!まだ舞台は始まったばかりよ!」
「…たわごとを!」
無防備になったその一瞬で思いっきり蹴りを入れる。何故だろう、相手の動きが遅くなっている気がする。その隙にどんどん私は攻め込んだ。そのあとは一方的だった。
「あははははははははは…あれ、終わっちゃった…?」
「無念…」
気がつけば相手は膝をついている。私の勝ちだ。楽しかったのに、もっと遊びたかったのに…
「…私の負けだ」
「勝負あり、よ。 とてつもなく強かった、流石体術マスターね」
「…認めよう。そなたこそが真の体術マスターだ」
決着。そしてLvアップ。…更には下の方に『《体術》スキルをマスターしました』なんて文字が見える。後でよく確認しよう。
「まだまだそなたのような強いものがいたのだな…私も特訓せねば」
「あの、お願いがあります」
「む?」
「私は…果たすべき大義がございます。ですので、あなたにはここで武の下地…後継者の為に体術を教える道場を継続して頂きたい」
またクエストが消えることを懸念した結果だ。こないだコペルの件を一通りアルゴに伝えたら怒られてしまった。…なんか納得いかない。
「しかし…私の門は破られた」
「えぇ、私が門を破りました。そして、触れてその門を認めたのです。そもそもあなたは強い。だから私があなたを見つけて門を返したいのです。どうか、お願いします」
「…ふん、こちらは負けた身だ。もちろん引き受けるとも」
「ありがとうございます」
こうしてクエストクリアのファンファーレがなり再度大きく経験値が入る。またLv上がったんだけども。まだ2層来たばかり…
「…む?早速誰か来たようだ」
「そう?早速入門希望者かもね。それじゃあ私はいくわね。いつでも相手するわ」
と、小屋から出ようと扉に向かう。
「うわっと!?」
「あら?…アルゴさん?」
と勢いよく空いた扉からアルゴさんが出てくる。やべ、道着だからフード付けてない
「なんだ、ラーちゃんカ…フードつけてないから分からなかったゾ」
「あら、道場なのだから道着を付けるものでしょう。アルゴさんもエクストラスキルを?」
「…いや、オネーサンがうけるわけじゃナイ。今日は連れがいてナ。ほら、キー坊。自己紹介くらいシロ」
…奥の方を見ると、キリトがいた。唖然としてこちらをみている。まぁ無理もないが。
アルゴに肘でつつかれてはっとしたのか、慌てて自己紹介を始める。
「あ、あぁ…キリトだ、よろしくな」
「うふふ…ラークよ。よろしくねキリト…もしかして、アルゴさんはキリトにここのこと教えたの?トラウマでしょうに…」
「トラウマ?」
「ラーちゃん、ストップ!それ以上はダメ!」
「あらあら…つれないわね」
扇で口元を隠しながら笑う。
邪魔するのも悪いので、そそくさと小屋から出ることにする。
…せっかくだ、キリトの横をすれ違うときにギリギリの声で、伝えたいことをつたえよう。
ボス戦をみて、思ったこと。
「………LAおめでとう、でもあなた1人で抱え込む必要もないと思うわ、ビーターさん」
「っ!?」
「ン?どしたキー坊」
その隙にビュンと加速して小屋から出る。
「うふふ……楽しいことになりそうね」
【キリト視点】
「ン?どした、キー坊」
「…………」
確かに、先程まで忍者達との面倒くさいやり取りがありながらも俺たちより先にこの《体術》のエクストラスキルのクエストを受けに来ていた女性。明らかにまっすぐここに来たのだろう。出なければ先回りなど出来ない。ただ、アルゴはこの情報は誰にも売っていない。ということは、彼女は自力でここのことを知っていたということになる。しかも、クエストを受けることも無くここを去った…無駄がありすぎて考えづらい。ということは、もう既にクエストを終わらせたのだろうか?あのアルゴがトラウマになるほどのクエストを?この短時間で?…それもおかしい。
更には…『ビーター』の話。これはまだアルゴですら知らないはずの情報だ、買ったということも考えられない。そうなると攻略組に近い者、ということになる。
……彼女は、一体何者_______
「キー坊、キー坊!」
「っ、悪い。えっと…:」
「ほら早くクエストを受けるゾ。オレッチもやりたいことあるんだからナ」
「あぁ、すまん」
そうして、俺はクエストを受け__アルゴの秘密を知った。
ただ、同時に謎を深めた。俺がこのクエストのクリアに2日目の夕方までかかったのだ。これをあの短時間でやるのは無理。
つまり、目的はないがクエストは受けてないのだろう。
とはいえ…彼女は何者か。答えは未だ出ない