楽しい楽しいデュエルを終わらせた私はその後いつの間にかアルゴに寝かされていた。
先に進み、フィールドボスも無視してダッシュ+《隠密》で器用に抜けていく(ここに出てくるミノタウロスは《隠密》により回避することが可能。視覚検知型なのよね)
その先にある迷宮区目前の街で、私は再度宿をとってクエストを受けて周り討伐系のクエストをあらかた終わらせた。
それを全部アルゴに叩き売り(売値は全て口止め料に上乗せ)しつつ調合や鍛冶、料理をこなして習熟度を確実にあげていく。
そろそろどれも100届きそう。
その後、またクエストを見つけて声をかけたんだけど…
「すみません、詳しいことは聞かずに、この手紙を届けてください。封も開けないでください」
という感じ。あからさまに怪しい…ともかく要約すると、依頼内容が、《前の村まで手紙を届けてくれ》ということらしい。仕方ないので道すがら素材を集めつつ、敵を避けて前の村まで戻る。
ただ、妙にミノタウロスが多くPOPしていた。しかも出入口付近で普通よりも大きめのミノタウロスに見つかる。面倒だったしさっさと倒させてもらったけど。
そんなこんなで無事、村について手紙を届けて依頼を解決…したものの、また新たなクエストが発生する。《先程の村まで手紙と花を届けてくれ》…タライ回しかな?とりあえず拾った素材でまた調合、及びメンテだけさせてもらってまた前の村に戻る。視界に『習熟度が100になりました』と、ログが出てくる。まぁ、夜な夜なポーションを作りまくってたし、鍛冶に比べて素材の入手が容易である為作りやすく、その分だけ習熟度も上がりやすいのだ。
まぁ、喜んでる暇はなく。さっさとこのクエストを終わらせたい私は帰路に向かう。今度はさすがにあんまりミノタウロスには遭遇しなかった…が、また先程と同じ大きいミノタウロスに遭遇してしまう。同じ敵に手こずるわけもなくさっさと倒してまた村の中へ。
……それを届けてクリアすると、依頼人が手紙を放り、膝をついて泣き出す。話を聞くと、医者に娘の病を治して欲しいと手紙を送ったそうだ。何故手紙だったのか、秘密裏だったのかと言うと…病の原因が「王に対する無礼」だったかららしい。私が倒したのはその側近…に命令されて動いていた暗殺部隊だったそうだ。…そして、その依頼に対して身の危険を感じた医者は依頼を断ったそうだ。
……クエストログを確認すると《依頼人の娘が病にかかっていた。手紙は医者に対して病気を治す依頼だったが、医者は断ったようだ。なんとかして娘の病気を治せ》ときた。とりあえず、何をどうすればいいのか…病状を聞いてみたところ麻痺らしい。ただ、店売りの麻痺回復薬を試しても効果がない…
つまり店売りよりも良い効果を持つ回復薬を渡せばいいわけだ。幸い、先程の調合で《調合》スキルの習熟度が100を超えたことにより麻痺Ⅱの回復ポーションが作れるようになっている。
…どこで手に入るか分からないものを探す手間してるなら確実に手に入る自分自身の薬で治してあげる。まってて、娘さん!
***
なんとか素材を揃えた私は、早く病を治して欲しいと丁寧に、思いを込めて薬を調合する。そういえば似たようなこともあった…コペルちゃん元気かな?
…私にとってNPCはこの世界お供に過ごす住民であり、差別なく私と話してくれる
私は、ただ_
友達を助けたいのだ。
「…よし、出来た」
思いを胸に走り出す私。一刻も早く届けないと…!
薬を渡して、無事娘さんの病気は治り、依頼は解決した。娘さんはミノタウロスの王にここから出ていくよう直談判しに行って、王の息吹…雷ブレスにより倒れた。王の怒りに触れたのは、弱点の王冠に武器を投げ当てた為らしい。端的に言えば王冠に武器を当てるとスタンする、ということである。他にもその王の攻撃パターンを正確に教えて貰った。そして、その娘さんは私に…
「もう、私には無理だ…王を見ただけであの恐怖に襲われるだろう。だから、頼む。王を倒してくれ」
「……わかった」
…と、一風かわった新しいクエストを受けたのだった。
***
新たなクエストを受けて、宿に戻る。鍛冶屋の奥の部屋を私は借りている…のだけど。
宿に戻る途中、アルゴがNPCレストランへと入っていくのが見えて、私はこっそりついていく。
「あー…この世界に辞書があったらナー…オレっちにもこれは分からんぞ……」
考え事をしてる。気が付かれてはいないようだ。ちなみに普通アルゴの話は聞こえない。アルゴは聞き取れないように小声で話している。私が聞こえるのは、聞き耳スキルによるものだ。
「『レジェンド・ブレイブス』の情報はともかく、昔の英雄の由来…ある程度はオレっちも知ってるが、確証が…そんなの生粋のマニアでもないとナー…オレっちの情報網に知ってるやつ探してそれとなーく聞き出すカ…」
距離を音を立てずにつめて、うしろから、そーっと、そーっと、、、今だ、突撃ぃぃ!
「とうっ」「はにゃっ!?」
と、うしろからアルゴに抱きついた。
「ラーちゃん!?いや、ホントにビックリしたゾ…」
「ふっふっふー!勝った!」
アルゴはドヤ顔の私をみてため息をつく…ちょっと私なにかしたかしら?
「全く…それで、なんのようダ?」
「いや、見つけただけよ…と思ったけどちょっと変更。今アルゴが言ってた調べ物についての情報を売って貰えるかしら?」
「え?あー…これは、ダナ…」
急に歯切れが悪くなる。何かあったのだろうか…
「うん、よし。2000コル出すわ」
「……仕方ないナ。ラーちゃんなら信用できる。だが誓ってくレ。ほかの誰にも言わない、とナ」
「もちろんよ」
私はこんなところで話すのもまずいと思い、自分の宿に案内した。
***
「んで、『レジェンド・ブレイブス』って強化詐欺してるとこよね。それを調べるって、なんかあったの?」
「ほー……ラーちゃんはもう掴んでるノカ。」
宿の部屋に泊まり、開口1番に強化のことを言うとアルゴは驚いたようにこちらをみてくる。
「私も、鍛冶師の端くれだもの…というか傍から見てなんで気が付かないのかの方が私にはよっぽど謎だわ。だってあれ、かなりお粗末だもの」
「……なんだっテ?」
「あんなのお粗末だって言ってるのよ。なんなら、私再現出来るけどしてみせましょうか?料金は…ま、凝ったものでもないし別にいらないけど、条件としてアルゴのメイン武器の強化にすること。いいわね?」
「……わかったゾ」
という訳で、お店の工房を借りる。鍛冶師として、道具を借りられてしかも使え、宿として泊まることも出来る所はかなり助かるのだ。
そして、アルゴから今アルゴが使っているメイン武器……爪をうけとる。
そして、《正確さ》の強化素材を炉に入れる。すると、真っ赤になって、やがて炉の中が青い光__《正確さ》の色に染め上げる。ここで、売り物のあいだにそっと手を伸ばして《クイックチェンジ》ですり替えて、準備ができたら爪を強化する。
アルゴが使って、この爪と共に行く姿を思い描き、彼女の相棒として使われる姿を想像して……端正に思いを込めて槌を振るう。
無事、強化に成功する。
話の流れから武器が壊れないことに唖然とするアルゴ。まぁ、それもそのはず。強化詐欺の再現をすると言っていたのに強化に成功しているのである。
ふっふっふっ、その反応を待っていた!
「はい、これ。よかったわ、無事強化成功よ」
「いやいや、詐欺の再現をするんだロ?武器を壊すんじゃ?」
「ふふふ、爪をよく見て見なさい?」
「ん?これがどう…し……タ?」
驚いているアルゴ。無理もない、私もかなり驚いた。
時は少し遡る…
いつも通り、鍛冶をしていたときのこと。武器作成で、アルゴのことを思い出して爪を打ったのだ。
打ってる間、彼女との思い出に浸りつつ、槌に思いをのせて打っていた。私とした事が武器を叩く回数を数え忘れていたのだが。
…出来た爪は『Claw of Assassin』__暗殺者の爪。
なんとまぁ縁起の悪いものだなぁ…なんて思ってみてみたら強化試行回数が脅威の17を記録していた。プロパティもパッと見でえげつないほど強い。やべえ。
「……機会があればこれ、アルゴさんに渡したいわね」
私自身、誰かに贈り物をしようと思ったのも初めてだった。
こんな折角のチャンスを活かさないわけにもいかないわね!
ふっふっふー、サプライズで武器をプレゼントする作戦大成功〜!!!
「ふふっ。それ、アルゴさんへのプレゼントよ。いつもありがとう、アルゴ」
「いや、現時点で数層も上の装備だゾ!いったいどうやってつくったんだ!?」
「そ、それは…ごめん、私もよくわかんないっ!」
アルゴのことを思ってうったらできました。なんて言い出せるはずもなく…そんなの、恥ずかしいじゃない……
少し照れたように話すことを拒否する私を訝しげに見る
「ま、まぁたまたま出来たから譲ろうって思っただけよ!そんなことより、ほら。こっちが元々のアルゴの爪よ」
「む…ホントだ。確かに。どうやって入れ替えたんダ?」
話がそれてホッとする。
そのまま、私は入れ替えのトリックについて語り始めた。
「強化の途中、すごい光るでしょ?あの時に《クイックチェンジ》で入れ替えただけよ…これ、詐欺と言うよりただの手品なのよね。あ、プレゼントはプレゼントだから。これからも頑張って、アルゴ。」
「お、おう…あ、ありがとナ…///」
顔を赤くしてぷいっと目をそらすアルゴさん。それを見た私の感想は『尊い』であったのは言うまでもない。
……あげてよかったな。
***
「はい、それじゃあ本題に入るわよ」
「今の、本題じゃなかったのカ!?」
「いや、私の買った情報について教えてよ…」
「あ…わ、ワカッタ」
今、アルゴはキリトとアスナの頼みでレジェンドブレイブスの名前の由来を調べているらしい。
「ふふ…そうね、お代はさっきのアルゴの照れ顔でいいわ。
「……ラーちゃん、随分詳しいな」
「好きなのよ、こういうの」
と、他にも次々と情報を渡す。ふふ、図書室の主を舐めるでない。とくに伝説や英雄はかなり好きで図書室にあった全てを網羅している。
というか私の最初の発言に慌てるアルゴ可愛すぎるやばい。あ、でもちゃんと聞き逃さずにメモしてる。流石情報屋。
「んー、ネズハってやつのことは分かるか?」
「ネズハっていう名前の英雄はいないわ。ただ…スペルを教えてもらえるかしら」
アルゴは快く見せてくれる。
「あの子もレジェンド・ブレイブスの仲間なの?それなら勘違いじゃなくて確信犯くさいわね…これ、読み方ネズハじゃないわよ」
「な、なんだっテ!?」
身を乗り出して詰め寄ってくる…ちょ、近い近い!ステイ!ステイ!
どこぞの古典部部長よろしく詰め寄るアルゴをなだめて、わざとらしく咳き込んでから続きをいう。
「お、おほん…これは英語で
「それで、《クイックチェンジ》…ナルホドナ」
アルゴは納得したように頷くと、私に笑いかける。
「オイラのこと、気にしてくれたんダロ?ありがとな、ラーちゃん」
「…別に、私がしたいようにしただけよ。で、最後に副題よ」
「なんダ?」
「今回の層のベータ時代のボス情報見せてもらえる?」
「別に構わないゾ。一応掲載しておくつもりだからナ」
見せてもらう。……クエストでも教えて貰った2匹の情報はあったものの、もう1匹の王の情報は皆無だった。
「なんか…私の知ってる情報と違うわね」
「本当か!?もしかしたら変更点かもしれないナ…教えてクレ!」
アルゴが再び詰め寄ってくる。今度は私は動揺することなく_
「そんなの教えるわけないじゃない」
「な…り、理由を聞かせてクレ」
それでも私はそれを断る。
さも当然のように言う私に理由を問うアルゴ。
「教える理由がないわ」
「…は?」
「何があるのよ」
何故か呆けた顔をされる。
「あのナ…その情報で多くの人が助かル。それに、早く上に上がれるってことはそれだけ早くこの世界から出られる」
「助けたとして…それで私は救われるの?それに…私、このお城から出たくないわ。あんな
私、あまり他人に構う余裕なんてないのよ」
「…ラーちゃん」
アルゴが、何か言いたそうにしている。困惑しているのか、あるいは悲しそうにしているのか…そんな顔で、返答に困りながらアルゴが尋ねる。
「なら…なんでオレっちに武器をくれたんだ?」
「アルゴは他人じゃなくて友達だもの。私の大切な、PLで初めての…ね」
「………え」
全く、気がついてないのね。
私は溜息をつきながら、続きを私はのべる。
「友達に…そう簡単にくたばられたらたまんないわ」
「…お前さんにとってここは本当に本物なんだナ」
「…?そんなの、当たり前じゃない」
…私、変な事言ったかしら。アルゴがなんか悲しそうな目で見てくる。話そらさないと、えーと。
「まぁ、教える理由がないから諦めて…ん?私がアルゴに頼んだりしてもいいのかしら?そしたら教える理由が出来るわ」
「なるほどな…で、何をすればいいんダ?」
「んー…あ、そうだ!友達ができたらしてみたいことあったのよね!」
「ンー?」
私が昔からしてみたかったことを伝えると、アルゴは目を点にして、言った。
「……ハ?いいのかそれで?」
「別にいいでしょ、やりたいんだから」
「…いいならいいカ」
アルゴが私のことを伏せてメールをキリト達に送ったことでキリト達に強化詐欺の件を全て投げて、私は…いや、私とアルゴはこの件の終わりまでPTを組むことになった。