やはり俺のGBNはまちがっている。   作:八重垣八雲

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お待たせしました。11話目を投稿します。

※海老名さんなネタがあるので苦手な方は注意して下さい。


彼にも負けたくない相手がいる。

ライバルーーー自分と同等、もしくはそれ以上の実力を持つ競争相手のこと。

 

語源はラテン語で“小川の”を意味する“rivalis”にある。これが"水源を巡って争う人々"から"一つのものを求めて争う人々"となりライバルという言葉が生まれた。

 

ちなみに英語のライバルは、常に対立している宿敵という意味である。決して相容れることのない殺伐としたものだ。さながら∀とターンXの関係である。そこにはポジティブな感情はない。

 

それに対し、日本では好敵手の意味合いで書かれている事が多い。敵である筈なのに好ましいという字が当てられる。なんとも矛盾している。

 

日本人にはライバル関係というものが非常に好まれている。バトル、スポ根、ラブコメ、少年漫画、少女漫画、小説、テレビドラマ、分野を問わずあらゆるジャンルにおいて、ライバルキャラというものが登場している。どんだけ好きだよ。

 

そしてそれは、ガンダムという作品においても例外ではない。アムロに対するシャア、アセムにゼハートの様にシリーズを通して数多くの魅力的なライバルが登場している。彼らの行動にファンは一喜一憂し、熱いまなざしを送る。

中には熱くなりすぎたあまりに、俺の目とは違った意味で腐ってしまった女性陣もいたが…… 人類の業は深い。

 

話を戻す。こうしてライバルキャラは大衆娯楽の記号となった。単なる競争相手以外の役割も持っているとも考えられる。

 

主人公の越えるべき壁として立ちふさがる。強大な力と技量を持って圧倒し、主人公のみならず視聴者にすら衝撃を与える。制作者のテコ入れのようなものだが、それでも登場時のインパクトは大きい。

また、主人公の成長を測るバロメーターの役割もこなしている。最初は手も足も出ない状態だったのが、段々と渡り合える様になり、最後に勝利を掴む。努力して強くなり、今まで勝てなかった相手を倒す。非常に分かりやすくて爽快感がある。

 

改めて考えると、ライバルとは主人公を輝かせる為だけに存在していると感じる。自分の輝きすら相手を引き立てる為にある。そのあり方に、俺は敬意を表したい。

 

 

結論:主人公よりライバルが好きです。でも3番目ぐらいのヒロインポジの方がもーっと好きです。

 

 

× × ×

 

 

 

昼休み、いつも通り教室でいろはと一緒に昼食をとる。

 

ここで昼食をとるようになって暫く経つが、この喧騒には慣れない。

昼休みというのは学校という強制集団生活の中で得られる唯一の癒しの時間だ。だからこそ心穏やかに休まるようこそ静かな場所で過ごしたい。

 

特に最近は、AGE-2ステルスの新ウェアの作成とそれの習熟に集中していた分、疲労が溜まっている。お陰でバトルに十分に通用する出来になったが……

 

そういった理由で、俺としてはベストプレイスでひっそりと取りたかった。テニスの練習をする戸塚を眺めながら食べる昼飯は、何物にも代え難い癒しとなる。

 

しかし、いろはの「あそこは机がなくてお弁当食べ辛いです。それにもうこそこそする必要がないので却下です」の声により教室で昼休みを過ごすことになった。俺の意見なんて通りゃしない。結婚していないのに、既に尻に敷かれている。いや、もとからか。

 

脳内で愚痴りながらも、いろは手製の弁当に舌鼓を打つ。お菓子作りが得意と自負するだけあり、料理の腕も中々のものである。特にこの卵焼きが素晴らしい。甘く味付けされたそれは、俺の好みにベストマッチしている。こんな美味いもん食べさせられたら、文句は言えやしない。高校生なのに胃袋を掴むとは。いろは、恐ろしい子ーーー

 

ちらりと向かい合って座っている彼女を見る。俺の前の席の人間から椅子を借り、上級生の教室なのに堂々としている。つーか、よく席なんか借りれるな。俺、前の人となんか話したことないんだけど……

クラスの人間も今更なのか、最早気に止めていない。由比ヶ浜も暢気にやっはろーとか言ってるし。寧ろ俺より馴染んでいる感がある。

 

 

「ねぇ隼人、今週の日曜日どっか出掛けない?」

 

喧騒に紛れて、クラスの女王・三浦優美子のそんな声が聞こえてきた。普段の威圧的な態度と違い、どこか甘えたような雰囲気である。彼女がこんな態度をとるのはただ一人、リア充オブリア充の葉山隼人だけだ。恋する女王は切なくてリア王の前ではしおらしくなっちゃうの。

 

「ごめん、優美子。その日はどうしても外せない用事があるんだ」

 

しかし無情。三浦のアプローチも、済まなそうな声色で断られてしまった。三浦も残念そうにしていたが特にごねることはなく、別の話題へとシフトしていった。

もし、俺がいろはの誘いを予定がアレだからと断ろうものなら、「は?何ですか。先輩の予定って昼寝してだらだらするだけですよね」と底冷え声で言い放ってくる。長年の経験と小町経由での情報提供により、俺の行動パターンや予定など把握済みである。お前は俺の嫁かよ。いや、最有力候補だったわ。

 

「せーんぱーい、聞いてますかー」

 

つらつらとそんなことを考えていると、いろはのそんな声が飛び込んでくる。彼女はぷくぅと頬を膨らませ、こちらを覗き込んでいた。近いから。うっかりキスしちゃうだろ。んで、なによ?

 

「もー。だからー、今度のお休み小町ちゃんたちとお出掛けするって言ったんですー」

 

「おー、小町からも聞いてるわ」

 

女子会だからお兄ちゃんは参加禁止ね、とまで言われている。いや、もとより参加するつもりなんかないんだが。

 

「先輩、わたしや小町ちゃんがいないからってお昼まで寝過ごさないでくださいねー」

 

「お前は俺をなんだと思ってんの」

 

失礼な。そもそも日曜日の朝に限ってはちゃんと起きてる。他の日なら知らんけど。

 

「勿論、世界で一番素敵な彼氏です」

 

ぱちんとウィンクをして答える。あざとい。

 

「それにその日はGBNにダイブする予定だ」

 

「えー、一人でダイブするんですかー」

 

いろはは信じられないことを聞いたかのように言う。全世界のソロプレイヤーに謝れ。そもそも俺も、お前とつるむようになる前はソロだったってーの。

 

「こないだチャンピオンが言ってただろ。対戦の依頼が入ったんだよ」

 

俺個人宛にメッセージが届いてて驚いた。普段使わないから間違いメールかと疑ったぐらいだ。

 

「あぁ、先輩のライバルって人ですね。なんて人ですか?」

 

「ダイバー名はユートって言う仮面のスカしたイケメン野郎だ。頭がおかしいってぐらいにファンネルを撃ってくる」

 

ヤバイ意味で。それと、ライバルじゃねーよ。単なる厄介な相手ってだけだよ。

 

「や、聞いた限り、見た目からして完璧にライバルキャラじゃないですか… 先輩と同じぐらい強いんですよね?」

 

「まぁな。今のところ2勝1敗で俺が勝ち越してはいるが…」

 

それも、どちらに転んでもおかしくないぐらいの戦いだった。

 

「今度先輩が勝ったら、また一歩リードですね」

 

「確実に勝てるとは限らんけどな」

 

ほぼ横並びの相手だから予測がつかん。その日の体調で変わるということもあるだろうし。

 

「ほらそこは『いろはに勝利を捧げるよ』ぐらい言ってくださいよ」

 

何だよそのキャラ… 俺が言ってもキモいだけだろ。

 

「だから、お前は俺をなんだと思ってんの…… まぁ、負けるつもりもないけどな」

 

そうこう駄弁っているうちに、昼休みの終わりのチャイムが鳴る。いろはは「でわでわ、また放課後でーす!」と手をふりふりしながら1年の教室に帰っていった。かわいい。

 

ふと、何処かから視線を感じる。それとなく探ってはみるが出所は見当がつかない。

ただ、以前まで感じていた悪意のあるじっとりとしたような物ではない。なら、そこまで気にすることはないか……

 

 

 

× × ×

 

 

 

バトルの当日になった。例のごとく千葉のいつもの店に向かう。

 

今日は久しぶりのソロダイブだ。いつも隣にいるあざとい笑顔がない分、少々物足りなく感じてしまう。やだ、八幡ってば完全に調教されてる?

 

いつもなら、暫くロビーやフォースネストでグダグダしているのだが、どうせ俺一人だ。さっさと格納庫に向かうことにする。

 

ハンガーの機体を見上げる。そこにはいつもとは違うシルエットのAGE-2ステルスが佇んでいる。AGE系ガンダムの特徴であるウェア交換による換装だ。

 

従来よりも若干太くなった四肢。肩の特徴的な4枚羽はオミットされ、偏向型スラスターが装着された。武装はスナイパーライフルに代わり、両腕にGNクナイに似た装備が固定されている。

 

基本形態であるスナイプと異なり、近接戦闘と隠密に優れた形態、名付けてAGE-2ステルス シノビ。その名の通り忍者をモチーフにしたこのウェアは、忍術を再現するために色々とギミックを仕込んでいる。正に変幻自在な機体へと仕上がった。ワザマエ!

 

手数が増えたことにより、ファンネルへの対策がしやすくなった。いろはにはああ言ったが、今日の勝負は貰うつもりだ。

 

目指すは宇宙(そら)。暗く拡がる空間は、漆黒に染められた俺の機体を視認し辛くなる。まぁ、奴にとってもファンネルを使ったオールレンジ攻撃向きの地形なんだが…… 互いに有利に働く場所だ。あとは自身の腕とガンプラの出来が物を言う。

 

指定された場所には見慣れない機体がいた。

いや、AVALON所属機の特徴である紫系統のカラーリングには覚えがある。特にその淡い紫の機体色には。

 

だが、機体が違う。ガッシリとした体躯のHi-νとは違い、そいつは生物の様なすらりとしたフォルムをしている。ガンダムの特徴を備えながらも異形染みた機体。

 

「よりによってレギルスかよ。まさか機体を変えてくるとはな…」

 

予想外の展開に、思わず愚痴が零れる。ボディーを始め所々オリジナルのカスタマイズがされているが、ガンダムAGEに登場するレギルスである。俺のAGE-2に対峙する機体のチョイスとして、狙ってるとしか思えん。

 

「そう言う君も、新しいウェアじゃないか」

 

レギルスのダイバーは、俺の独り言に律儀に返してきた。いきなり話しかけてくんなよ、友だちと思っちゃうじゃないか。

 

「それにしても驚いたよ。君がフォースを組むなんてね」

「……俺が組んだんじゃない。成り行きだ」

 

以前コイツと戦ったのは、まだソロの時かトリナが受験でダイブしていなかったからな。

けっ、お前にはボッチがお似合いだー、ということかよ。

「んで、いつまでくっちゃべるつもりだ。さっさと始めようぜ」

 

俺たちはフォースメンバーでもなければ、アライアンスを結んでいるわけでもない。馴れ合いなんかいらん。

 

「はは、そうだな」

 

それには奴も同意なのか、にやけ面を引っ込める。

 

バトルモードを起動させる。これから交わすのは言葉ではない。ダイバーとしてのプライドだ。

 

「ヤハタ、ガンダムAGE-2ステルス シノビ」

 

「ユート、ガンダムレギルス インベル」

 

「行くぞ!」

 

「行きます!」

 

開幕早々こちらに橙色の粒子が飛んでくる。合図と同時にぶっ放したようだ。おいおい、お行儀が悪いんじゃねぇの?

 

だが、今更この程度の単調な射撃に当たる訳がない。あっさりと回避してやる。

 

相手も、俺の回避行動は織り込み済みなのだろう。橙色の流星が回避地点に一条、また一条と迫ってくる。正確な射撃だ。だがーーー

 

「それゆえ俺には(・・・)予測しやすい」

 

そんな狙ってますとばかりの射撃は、俺には通用しない。視線に敏感なボッチの危機回避能力を舐めんなよ。

肩のスラスターを駆使し、ひらりひらりと舞うように機体を動かす。最小限の挙動だが、ビームは掠りもせず機体横を抜けていった。ビームマグナムみたいな威力だったらヤバかったが、いくら通常よりは強化されているとはいえ、レギルスライフル程度なら充分である。

 

お返しとばかりに、両手のビームマシンガンから弾をばら蒔く。威力はないが、弾数と弾速は段違いだ。あっという間にレギルスに迫る。

 

しかし、すでに展開していたビットのバリアーにより防がれる。

この程度の威力じゃ突き抜けんか…… 威力を下げたことが裏目に出たかもしれん。

 

だが、そうでなくては。自然と口角がつり上がる。

 

いろはに見られたら「先輩、にやにやしてキモいです」とか言われそうだ。だが、全力で渡り合える相手なんだ。これで楽しめなければ何処で楽しむというのだ。

 

奴も同じ気分なのか、何時もの爽やかさは鳴りを潜め、不敵な笑みを浮かべている。

 

「どうしたんだい?君の攻撃は効かないみたいだが」

 

「抜かせ。ただの挨拶だ」

 

ビームだけでなく、口でも応酬をする。軽口を叩きながらの攻撃。実にガンダム世界のパイロットっぽいやり取りである。それにしても性格悪いな、コイツ。ブーメラン?知ってるよ。

 

軽いジャブを打ちつつ、次の手を考える。流石にマシンガンの連射で落とせるほど甘い相手とは思っていない。

 

阿呆みたいに飛んでくるビットを撃ち落とし、または回避しながら、リアスカートに増設されたウェポンラックに手を伸ばす。ここには忍術を再現するにあたり作られた忍具が収納されている。

その中から球体の手投げ弾を取り出す。所謂、煙幕玉というやつだ。中身はいつもの粒子撹乱ミサイルと変わらないが。

 

アンダースローの要領で、俺と相手の機体の中間地点に投げ飛ばす。炸裂した砲弾は瞬く間に煙と粒子をばら蒔き、一時的に視界とレーダーを使い物にならなくする。この隙に次の手を打つ。

 

「そんな見え透いた手なんか!」

 

ビットを全方位に放出して、煙幕と粒子を吹き飛ばす。ついでに隠れているだろう俺を炙り出そうという魂胆だろうが、そうはいかん。つーか、お前相手にそんな分かりやすい手なんか使うかってーの。

 

煙幕の晴れた先には、果たして4体のAGE-2ステルスがレギルス インベルを囲んでいた。

 

「これぞ忍法・分身の術、ってな」

 

アヤメさんの零丸のように本当に分身したわけではない。ダミーバルーンを使ったフェイクである。それでも一目ではわからない程度には精巧に作っている。簡易スラスターを内蔵し相手に向かっていくように細工をしてある。更にはーーー

 

「いくら増えても、全て落とす!」

 

そう言い、奴のレギルスは近づくダミーに向けてビットを放つ。所詮はバルーンでしかないダミーはビットが軽く当たるだけで簡単に破壊される。だが、そんなことは元より折り込み済みである。むしろこれを狙っていた。

 

リバースカードオープン、トラップ発動!

 

ビットに被弾した一体が、破裂とともに目も眩むような閃光を放つ。機雷による攻撃ならビットのバリアーで防がれそうだ。現に奴もそれを考慮してビットを纏っていたのだろう。しかし、ただの強烈な光ならそんなもの関係なしにすり抜ける。

 

「くっ!目眩ましなんかでーー」

 

おっと、これだけで終わりと思うのは甘いぜ。緩んだビームバリアーの隙をつき第二、第三の罠が叩き込まれる。割れたバルーンから溢れたトリモチが間接部に取りつき、動きを阻害する。紛れ込ませていた塗料がセンサーを汚す。

気休め程度に過ぎないが、これでレギルスの弱体化が出来た。他のゲームでいうところのデバフというやつだ。こういった効果は意外と馬鹿にならない。特に力量が並んでいる場合は、こうして打った手が後々効いてくることもある。

ちなみに四つ目のバルーンには、可愛らしい字体で“残念!!大ハズレ ヤハタ的にポイント低い”といった相手の神経を逆撫でするメッセージが出てくるようになっている。

 

「小癪な手をーーー!!」

 

ミラージュコロイドで姿を消したままニヤリとほくそ笑む。思うように罠にかかり慌てふためく姿を見るのは、いつ見ても胸がスッとした気分にさせてくれる。

愉悦に浸る性格の悪い下種野郎。どうも俺です。

 

見た目が地味な俺の必殺技(ファントムレイド)でレギルスの目の前に転移する。相手が反応する前に、腕部にマウントされたクナイを頭部にあるコックピット目掛けて突き刺す。貰ったーーー

 

「君がコックピットを狙うことぐらい分かってる!」

 

しかし、奴は左掌を犠牲にすることにより軌道を反らし、僅かに裂傷を作ることで止めた。こんなとこで原作再現なんかしなくてもいい。

背部のギラーガテイルーーーレギルスキャノンの変わりに備わっていたーーーに武器を絡め取られる。マウントした腕ごと軋んでいく感覚と、向けられた銃口に慌て武装を切り離す。蹴り飛ばすことで距離をとり、銃撃を回避した。

片方とはいえ武器を失った。ここまで再現されるのかよ。

 

「チッ、テレビ本編みたく簡単には落ちんか…」

 

思わずといった感じで悪態を付くが、別段これで落とせるとは微塵も考えていない。寧ろこの程度で倒れられるのは興ざめだ。

 

「MOEみたいな結末にもならないさ」

 

ユートは俺の軽口にそう返してきた。もう持ち直しやがったか。

それにしても、と続ける。

 

「相変わらず嫌らしい手を使ってくるんだな、君は」

 

「嫌らしいとはなんだ。これも立派な戦術だ」

 

馬鹿正直に正面からぶつかり合うだけが戦い方じゃないんだよ。罠を張り策を弄し相手を追い詰める、それだって立派なバトルスタイルだ。レナート兄弟、嫌いじゃない。

にらみ合いの最中、さっと機体のチェックを済ます。

俺の機体は無傷だが、武器を片方失った。

反対に奴のレギルスは軽微だが損傷をしている。しかし武器に関してはライフルもビットもテイルもしっかり残っている。

機体の状態は未だ五分五分といったところか……

ここから仕切り直しだ。どちらからともなく機体を加速させる。

 

奴は早速とばかり大量のビットをこちらに仕向ける。部分的とはいえセンサーの目隠しが出来た分、ビットの動きが先程よりも精彩を欠いた気がする。とはいえ、この数は脅威なのは変わらないが……

 

全身のスラスターを駆使し、上下左右稲妻のような軌道をとりながら追尾を振り切ろうとする。機体に色々仕込んだため、ストライダー形態への変形はオミットしてある。いつまで逃げ切れるかはわからない。何らかの対処をしないとな……

 

原典ではダークハウンドはアンカーを振り回し盾にすることで凌いだ。しかし、俺の機体には搭載されていない。変わりといってはなんだが、コイツを使ってみるか。

 

振り向き様に手にした物を投げつける。それは投げた衝撃で拡がり一枚の網になる。シュピーゲルのアイゼンネッツを参考にして作った特製の投網だ。電流の変わりに爆薬がたっぷり仕込んである。むしろ爆導索だな。ビットとぶつかることにより爆発が起き、後続の物ごと消し飛ばした。

 

爆煙を突っ切ってレギルスが飛び出す。ライフルの銃口からビームを発振し斬りかかってくる。こちらも負けじとクナイを振りかぶる。一合、二合と斬り結び鍔迫り合いに持ち込まれる。火花を散らしながら互いの機体が睨み合う。

 

ーーーさて、どうするか。

 

競り負けないよう機体を押し込みながら思考を疾走させる。この状態を崩す一手は? そこから勝利に繋げる道筋は?

必殺技(ファントムレイド)?無理だ。空間の粒子量が少ないから発動出来ない。

コンテナ内の忍具?駄目だ。派手に動けば勘づかれる。

考えろ。相手を欺く手段をーーー

 

思えば、俺がここまで追い込まれるのは随分と久しぶりだ。最近は一人でいることが少なくなったからな……

 

トリナとつるむようになってから、俺の世界は広がった。背中を預けられる相手がいる。それだけで安堵を感じるようになった。

 

さらに三人が加わり、フォースを組んで多人数でミッションをするようになった。集団行動が性に合わない俺でも、あいつらとなら楽しめた。

 

それでも時折、一人で我武者羅に戦いたいという事もある。背中を預ける仲間はいない。自身の知恵と腕をもって、目の前に立ち塞がる敵のみを打ち倒す。

普段、チキンだのヘタレだの言われている俺からは考えられない粗暴で原始的な衝動だ。しかし、それがただ楽しい。

 

「ヤハタぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

「ユートぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

テンションが最高潮になっているからだろうか、普段の俺からは考えられない程の声が上がる。それはユートの奴も同じようだ。雄叫びを上げながら、全力でぶつかってくる。

 

リアルでやったのなら黒歴史案件だが、ここはGBNだ。誰もがガンダムの登場人物になれる世界。叫びながら戦うなど日常茶飯事だ。

 

勝利への道筋は決まった。後は目の前のコイツを打ち倒す!

 

機体の力を緩める。恰も鍔迫り合いに負けたかのようにバランスを崩す。失敗すれば真っ二つになる。だが、リスクリターンの計算は今この場にいらない。

膝に仕込んだニードルガンを撃ち込む。虚を突かれ太刀筋がずれる。肩のスラスターがやられたが、機体の動作自体には問題がない。逆手でビームサーベルを抜き奴の左肩口に突き刺す。小さな爆発を上げレギルスの左腕がもげた。よし、これで厄介なビットは封じた。次はーーー

 

「まだだーーー!!」

 

だが、そこは相手も上位ランカー。この程度で闘争心は衰えない。今も俺を落とさんとしてレギルスのテイルが迫ってくる。クナイを盾にして防ぐ。長い尾が絡まり武器ごと左腕の動きが阻害される。武器を封じたつもりだろうが甘いんだよ。

 

「ーーーいいや、終わりだよ」

 

残った右手を手刀にし、頭部目掛けて突き出す。MFではないただのMSの手刀なら装甲を貫く威力はないが、ガラッゾのGNビームクローを参考にしてビームサーベルの発振器が仕込んである。出力の問題上、長い刀身を形成する程出せないが、貫手に纏わせて装甲を破壊するぐらいの威力はある。名付けてビームチョップ。

 

テイルはAGE-2ステルスの左腕を封じているから使えない。ライフルを持った右手はトリモチで関節の動きが阻害されて素早く動かない。ビットのシールドは吹っ飛ばした。ビームバスターがないのも確認済みだ。お前の武器は封じさせて貰った。

 

「だからまだだーーー!!!!」

 

そう言い、ユートはレギルスの膝からビットを射出する。

チッ、コイツも仕込んでいやがった!レギルスでもRの方かよ。

 

俺と奴の攻撃、どちらが速いーーー

 

コックピットを貫く手応えーーー同時に視界が赤く染まった。

 

 

 

 

判定はーーー

 

「Battle end!Draw!」

 

引き分け!? アニメじゃあるまいし、そんなのあるのかよ。あ、これ、ゲームだったわ…

 

なんかどっと疲れてきた…… それは相手も同じ様で笑顔に力がない。

 

「で、どうする。もう一度やるかい?」

 

「やだよ。怠い」

 

「ハハ、俺も同感だ」

 

微妙に締まりがない結末だったが、ランクに変動がなかっただけ良しとしよう。負けてないからいいんだよ。

 

「今日はありがとう。いいバトルが出来た」

 

バトル時の勇ましい雰囲気はどこに行ったのか、ユートの奴は爽やかに言ってきた。

 

「まぁ、なんだ……俺も楽しめたと思う」

 

らしくはないが、そう答えていた。すると奴は目を丸め、

 

「まさか、君からそんな言葉が聞けるとはね」

 

笑いながら去っていった。

 

それにしても、疲れた。 とっととログアウトして、帰って寝よう……

 

 

こうして、俺と奴の戦歴には一引き分けという結果が加わることになった。

 

 

 

× × ×

 

 

 

明けて月曜日。学生たる俺は、今日も立派にお勤めを果たすべく登校する。

昨日のバトル疲れもあり、ぶっちゃけ怠い。しかし、親に学費を払って貰っている以上通わなくてはならない。

昇降口でいろはと別れたあと、2年F組へと向かう。

 

教室に入ると一部がやけに騒がしい。具体的に言えば、トップカースト組とオタク系陰キャ組。やれやれ、朝から元気が宜しいことで……

 

「おはよー八幡」

 

「おぉ、おはよう戸塚」

 

戸塚からの挨拶で、俺も元気が漲ってきた。

 

「八幡もGBNやってるんだよね?」

 

そう戸塚が尋ねてくる。天使と見紛うほど可憐な容姿をしている戸塚だが、その実男の子っぽい趣味をしている。男だから当たり前だって?戸塚の性別は戸塚だよ。

そして、それはGBNも例外ではない。むしろどストライクの様である。ただ、部活が忙しくてなかなかダイブ出来ないと言っていた筈だが……

は!まさか、俺と一緒にダイブしたいということなのか。任せろ戸塚。お前のためならジャブローだろうがアクシズだろうが容易く堕としてみせる!

 

「昨日久しぶりにダイブしたんだけど、すっごいバトルが中継されてたんだ。ロビーもその話題で持ちきりだったよ」

 

既にダイブ済み、しかも昨日、だと。奴とのバトルがなければ、戸塚とGBNデートが出来たかもしれないのに。おのれ、ユート!

 

しかし、そんな話題になるようなバトルなんてやってたのか?まぁ、自分のバトルに集中していたし、終わったら終わったで直ぐに落ちたからな。ロビーでのことなんか知らん。

 

「サイレントキラーと流星の貴公子(シューティング・プリンス)と呼ばれる人たちのバトルだよ。二人とも凄腕のランカーでライバル同士でね、バトルを見ててワクワクしたよ!」

 

戸塚はバトルを思い出したのか、上気した頬で熱く語る。テンションが上がるあまり、なんかセイみたいになっている。

 

しかし、サイレントキラーが二つ名とは…… あれ、高血圧や糖尿病とかを指す言葉だよな。誰だか知らんが不憫な二つ名だ。ウケる。

 

「これなんだけど」と言って自分のスマホを差し出してくる。おぉ、戸塚との距離が近い。まるで恋人みたいだ。と、いろはに知られたら確実に白い目で見られることを考える。なんかトップカーストの方から「サイハチ愚腐腐…」という声が聞こえる。いかん、動画に集中しなくては。

 

GBN公式のリプレイ動画には宇宙が拡がっていた。そこでぶつかり合う2機のMS。

一機は漆黒の装甲に身を包み両腕に武器を携えたAGE-2のカスタム機。

対峙するは数多のビットを引き連れた紫の装甲をもつレギルスのカスタム機。

 

やだ、なんか凄く見覚えがある。え?ちょっとマジで?え?

 

『ヤハタぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』

 

『ユートぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!』

 

コックピット内で叫びながら戦う二人の男。どう見ても俺たちです。本当にありがとうございました。

 

「凄いよね! この二人のバトル、結構人気があるんだ。しかも、二人同時に新型の御披露目だったんだ。リアルタイムで見れてラッキーだったよ」

 

戸塚は嬉々として語る。目がキラキラしていて非常にかわいいが、今の俺にはそれに見とれる余裕がない。

 

「レギルスを使っている方が流星の貴公子(シューティング・プリンス)のユート。オールレンジ攻撃が得意なんだ。本体と合わせて隙のない連携で相手を仕留めるんだ。以前はHi-νを使ってたんだけど、まさかレギルスに乗り換えるなんてね。相手に合わせたのかな?」

 

わー、戸塚は詳しいなー。

だが、そいつが流星の貴公子(シューティング・プリンス)なら……

 

「AGE-2を使っているのがサイレントキラーのヤハタだよ。不意に狙撃されて、気付いた時には倒されているから見えない暗殺者と呼ばれているよ」

 

やっぱ俺か。確かにマッ缶愛してるし、糖尿病予備軍だわ。なんだ俺にピッタリじゃねぇか。ハハ、ウケる。いやウケねぇよ。

 

「こっちの人はねトラップや不意討ちを駆使して戦うから、普通の人からはイマイチだけどベテラン勢からの人気は高いんだ」

 

戸塚は動画を見ながら嬉しそうに説明をしてくれる。折角の戸塚との会話だが、内容が内容故にあまり頭に入ってこない。相槌もおざなりになってしまう。「なるほど」「すごいな」「戸塚は物知りだな」ぐらいしか言ってない。すまん、戸塚。

 

「っべー!マジでこの動きっべーわ。ありえないっしょ!」

 

戸部の喧しい声が響く。あまりの声のでかさに、まわりの人間も何事かとそちらを向く。

 

「どんだけビット飛ばせんの。ランカーってマジべーわ。隼人くんもそう思わね?」

 

「はは、そうだな」

 

どうやらトップカースト組も同じものを見ているようだ。

さっきから由比ヶ浜が、これヒッキーだよね、といった感じでチラチラ見てくる。

うん、声に出さなかったことはありがたいよ。でもあまりこっちを見ないでね。何事かと思われるから。

 

三浦は興味がないのか髪を弄りつつ、葉山の方をちらちら見てる。反対に、海老名さんはしきりにうんうんと頷いている。

 

「ミステリアス王子様とやさぐれ暗殺者が組んず解れつぶつかり合って、最後は同時に爆発!ユーヤハ愚腐腐……」

 

ヒィ!?あまりの悍ましさに思わず声が漏れそうになる。なんかスイッチ入ってるぅ!?

 

「姫菜、知らない人でそう言った事は…」

 

冒涜的な腐のオーラを至近距離で食らったためか、流石の葉山も顔を青くしている。

おう、言ってやれ葉山。今だけはお前を応援するわ。

だいたい俺みたいなマイナーランカーよりチャンピオンとか有名処がいるだろ。

 

「いやいや隼人くん。ユーヤハは前から密かに人気はあったけど、今ではキョウロン、シャフタイに続く第3の勢力として台頭して来てるんだよ」

 

既にあったの!?なんかシャフリさん達にも飛び火してるし。つーか、なんだよ第3勢力って。三隻同盟なの?心の平穏の為に武力介入するぞ。

 

「ダイバーの同志も、それ以外の同志にもいい燃料になったよ。あっという間にイラスト、SSが。いやー、目の保養だね」

 

わー、GBNの外にまで出ちゃったかー。ヤハタってば有名人。

 

「生で見えるハヤハチが至高と思ってたけど、ユーヤハもいいね!なんとなくキャラも似てるし」

 

そりゃ片方本人ですからね。リアルばれするような真似はしないが、ロールプレイはしていない。

 

「特に分身して囲んで色々ぶっかける所には鼻血が止まらなかったよ」

 

やめてー!! 俺の渾身の策をそんな目で見ないでー!!

 

「ど、どうしたの八幡!?顔が真っ青通り越して土気色だよ?」

 

あぁ、戸塚、俺はもう駄目かもしれん。お前と友だちになれて良かったよ。

小町、ごめんな。お兄ちゃんは先に逝く。いい女になるのだな。

いろは、愛してる。最期にお前と会いたかった。いつまでも抱き締めたかった。

あぁ、ララァ、刻が見えーーー

 

「擬態しろし!」

 

三浦のツッコミにより海老名さんは沈黙した。どうやら、寸でのとこで現世に留まれたようだ。

あーしさんありがとう。本っ当にありがとう。

安堵のあまり力が抜けてく。

 

「八幡、大丈夫?八幡…?八幡!!」

 

戸塚の呼び声が遠くに聞こえる。どうやら気が抜けたあまり、意識も失うようだ。

なんもかんも、あの悍ましい妄想が悪い。下手しら今までの黒歴史よりもトラウマになる。

 

 

こうして、俺は意識を手放した。

 

 

気が付いたらすでに昼休み、保健室のベッドで横になっていた。突然倒れたということで、下手したら病院に担ぎ込まれていたかもしれん。

いろはに心配かけて泣かせてしまうわ、昼飯を食いっぱぐれるわで散々だった。

 

ただ、これだけは言いたい。

 

やはり俺が腐女子の餌になるのはまちがっている。

 

 

 




ライバルキャラの登場回でした。作中では特に描写はしていないですが、ダイバーの中の人は葉山です。


オリジナルガンプラ


機体名:ガンダムAGE-2ステルス シノビ

新たに作成したウェア。名前の通り忍者をモチーフにしている。

狙撃性能と巡航能力に優れたスナイプウェアと異なり、格闘能力と隠密性が強化されている。

武装はGNクナイを参考にして作られた複合武装のシグルクナイ。シグルブレイドとビームマシンガン、小型シールドが搭載されている。
その他リアスカートに忍具を納めたコンテナ。四肢に隠し武器が仕込まれている。

ギミックを仕込んでいる分、ストライダー形態への変形はオミットされている。



機体名:ガンダムレギルス インベル

ユート(葉山隼人)のガンプラ。

ガンダムレギルスをベースに改造した機体。
原型機から分離機能と内蔵火器が省かれているが、その分頑強さとビットの搭載数が上がっている。むしろレギルスRに近い機体になっている。
膨大な数のビットが降り注ぐ様は、流星雨の様である。

名前の由来は雨のラテン語から。
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