やはり俺のGBNはまちがっている。   作:八重垣八雲

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お待たせしました。本編の続きを投稿します。

※後書きにオリジナルフォースを追記しました。


だからこそ、チャンピオンは立ち上がる。

その話題が出たのは、ユートの奴とのバトルから数日経った夕食時の事だった。

 

 両親が共働きの上多忙な比企谷家では、普段は俺と小町だけの食卓だ。稀にいろはの奴が加わることもあるが、基本は二人きりだ。

 

しかし今日は珍しく4人で食卓を囲んでいる。

久しぶりに小町(我が家の天使)と食事を共に出来るということにあり、2人とも非常に機嫌がいい。

 

親父にいたってはアルコールを摂取して上機嫌になったのか、頻りに小町に話し掛けまくっている。

最初は応対していた小町も鬱陶しくなってきたのか徐々に御座なりな反応になる。終いには「お父さん、ウザい」の一言で切り捨てていた。ザマァ。

 

「そーいや、あんた、最近いろはちゃんとどうなの?」

 

そんな親父の様を眺めてホッコリしていると、母ちゃんが尋ねてきた。

 

「どう、ってなんだよ」

 

 国語学年3位の実力と読解力を誇る俺でも、流石に何の脈絡もなく言われては聞き返したくなる。

 

「あんたみたいな捻くれ者の相手してくれる子なんて、これから先他にいるかわからないし、ちゃんと捕まえときなさいってことよ」

 

実の息子に酷い言い種だが、事実だから反論出来ん。

 

「わーてるよ。俺だって今更いろは以外と居ようとは思わん」

 

そう言うと、両親はポカンとした顔で俺を見ていた。だから、なんだよ。

 

「お前、本当に俺の息子か?」

 

親父が唖然とした顔で聞いてくる。なんだよ、実は血が繋がっていませんでしたとか言うつもりかよ。 え、違うよね?

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃんのことになると大分素直になるからね。小町的に面白いからポイント高いけど」

 

ニヤニヤ笑いながらそう告げる小町。「すでに告白(プロポーズ)済みだしねー」更には人の黒歴史?まで伝える始末。うっさいわ、クソガキ。

 

それを聞いて両親は「これで比企谷家も安泰…」だ「孫の顔が…」だと勝手に騒いでいる。

 

暫くは俺といろはの事を肴にして飲んでいた両親だったが、やがて話題は愚痴にシフトしていく。比企谷家の両親は共にGBN運営会社に勤めている。只でさえ人気コンテンツ故に、ここ最近はブレイクデカールの対応に終われ多忙を極めていた。

 

小町の事が大好きな二人である。触れ合う時間が減り、ストレスは溜まる一方だ。

 

やれ「ブレイクデカールが進化した」だの「データ改ざんしてログに残らない」だの「カツラギさんも大変だ」と愚痴愚痴言ってる。

 

誰だよカツラギさん。それに、なんか機密事項みたいなものも入ってるし。ハチマンナニモキイテナイ。

 

聞き流しながら黙々と箸を進めていると、

 

「おい、八幡。ブレイクデカールなんぞ使ってないだろうな」

 

不意に親父が問いかけてきた。おいおい、息子を疑ってるのかよ。この比企谷八幡、目と性根は腐ってても、犯罪に手を染めるほど堕ちてはない。

 

「んなもん使うかってーの。リスクがでかすぎるわ」

 

不正ツールに手を出して得られる力なんて高が知れている。バレたときのリスクに対して、得られる旨味が全くない。

 

「大丈夫だよ。そんなの使わなくても、お兄ちゃんアホみたいに強いし」

 

と、小町が擁護してくれる。小町ちゃん、そう言ってくれるのはありがたいんだけど、お兄ちゃんに向かってアホはないんじゃないかなー。由比ヶ浜じゃあるまいし。

 

「それに、お兄ちゃんの戦いかた自体がずるっぽいし。ねー、サキぃちゃん」

 

更にフォローだかなんだか分からんことを付け加える。

大体ずるじゃねぇよ。不意討ち(遠距離狙撃)闇討ち(ミラージュコロイド・ステルス)騙し討ち(ファントムレイド)もちゃんとシステムに認識されている手段だ。(トラップ)口撃(トラッシュトーク)で揺さぶりを掛けるのも戦術としては基本中の基本だ。

あと、なんだよサキぃちゃんって。()イレント()ラーだからサキぃちゃんか?センスねぇわ。

 

小町の言葉により親父は納得したようだ。何も言わなくなった。この差と言いたくなるが、小町相手だからちかたないね。

 

「まぁ、なに、フォースの連中にも言っとく」

 

これでこの話は終いとなった。そして話題はまた俺といろはの事になる。まだ続けるのかよ。

 

 

 

× × ×

 

 

 

第七機甲師団、壊滅ーーー

 

その話題がGBN内で一番ホットなニュースだった。だが、盛り上がりと裏腹に内容はヒヤリとさせられるものがあった。

 

ビルドダイバーズの時のように、新人部隊とのバトルの結果というわけではない。エース級のメンバーが悉く撃ち取られているのだ。

 

これが上位フォース同士のバトル結果なら、このような形で話題にはならない。来るべきガンプラフォースバトルトーナメントの為の対策やら考察で賑わう筈だ。

 

 それが何の注目もない名も知らぬフォース、それもよりによってマスダイバーの集団によって倒された。しかも噂では相手は一度倒しても甦ってきたという。まるでDG細胞に侵されたかのように。

 

そういえば、と思い出す。以前倒した相手も自己修復していたことを。デビルガンダムだったからと気にも止めていなかったが、改めて考えれば確かにあの修復力は異常だ。

 

 俺の回りでも予兆があったわけだ。偶々、コックピットを狙い撃ちで倒すという戦法のお陰で被害がなかったというだけだ。一歩間違えれば同じ轍を踏んでいたかもしれない。

 

 ユートの奴とのバトルで、先入観に囚われて痛い目にあったばかりだからな。あらゆる可能性を想定しておけば、対処しやすくなる。

 

「ブレイクデカールが強化されたらしい。これからは、この間のデビルガンダムみたいなのがごろごろ出てくるかもしれん」

 

 対策としては不用意なバトルは受けないこと。もしいきなり襲われたのならば、軽く足止めしてとっとと逃げるに限る。

 ハンガリーの諺にもある。逃げるは恥だが役に立つ。しぶとく生き返る相手にわざわざ付き合う義理はない。どうしても勝ちたけりゃ、機を見てその場を作り上げればいい。

 

そんな気持ちでフォース(アザレア)のメンバーに伝える。だが、揃いも揃って白い目で見てくる。あれ?俺、何かやっちゃった?

 

「や、先輩、ちゃかぽこ倒してるじゃないですかー」

 

説得力ないですよー、とトリナ(いろは)は言う。

 

 実はあのデビルガンダムとのバトルの後も、何度かマスダイバー相手にやりあっていた。

 

 それもこれも全部ユートの奴とのバトルの所為である。あのバトル動画で顔が割れ、積年の恨みとばかりに挑んでくる輩が増えた。その中には勿論マスダイバーも含まれている。むしろそっちばっかだった。どんだけ奴等から恨まれてんだよ、俺。

 

だが、まぁ、これでも個人ランク88位の上位ランカーだからな。油断せず策を講じ欺き虚を突きコックピットを狙ってダイバーごと潰す。動かす人間さえいなければ、どれだけパワーアップしようがただの木偶の坊だ。

 

……端から見れば鬼畜の所行だな。トリナの言葉にリマチたちも俺のバトルを思い出しているのか、若干引いた表情を浮かべている。

 

だがな、トリナ。お前も俺のことを言えんぞ。

 

「えー、お姉ちゃんも大概なんだけど…」

 

俺以外にもリマチ(小町)に突っ込まれ、むぐぐといった表情を浮かべる。

 

フォース内では俺に続く撃墜率を誇るトリナである。ダイバー歴も長く、下位ランクの升ダイバー相手なら遅れを取らない。

 

高機動重装型のインセパラブルガンダムだ。いくら相手が頑丈になろうが、持ち前のバ火力で無理矢理突破してるからな。更に武装にツインバスターライフルを追加したことにより、一層殲滅力が上がった。これじゃミンチどころか、塵すらも残らん。

 

只でさえ凶悪なのに、ついこの間はサテライトキャノンを見て「いいですねー、これ。ちらっ」とか言い出す始末。

もうやめて。これ以上積めないから。機体バランスが崩れて動かなくなるから。

 

ランカーの俺が作った機体を使えば、強いのは当たり前と思われるだろう。だが、このインセパラブルは真っ当な機体とは言えない。トールギス並に製作者は何考えてんのって物に仕上がっている。

 火力厨のトリナの要望に応えるためにガン積みされた重火器。そんな重い機体を飛ばすだけでなく、可変機能まで付ける始末。

 彼女の所望する最高のスピードと最強の剣、あとかわいさを形にした結果、とんでもないじゃじゃ馬が生まれてしまった。バトルスタイルと合わないからもあるが、俺だって好き好んで使いたいとは思わない。

 

 それをコイツは難なく操縦するどころか、平気でバトルして勝ってくる。使い難くないかと聞いても「わたしの愛馬は凶暴でーす」と笑って答えるだけだ。

 

 俺のことをニュータイプ(感知能力特化)だの言ってるが、お前も大概なんだよ。充分、上位ランカー(コチラ側)の素養がある。言ったら絶対調子に乗るから、言わないが。

 

 当の本人は納得いかないのか、ぷぅと頬を膨らませている。可愛いな、突っつきたくなる。

 

「でもさ、なんでズルしてまで勝とうとするのかな?」

 

心底わからないと言った感じでユイユイ(由比ヶ浜)が疑問を浮かべた。「たかがゲームなのに…」と、ポツリと溢す。

 

「たかがゲームだからよ」

 

その問い掛けに対し冷気を孕んだ声が飛ぶ。読んでいたデータベースを閉じネコノ(雪ノ下)が答えた。

 

「ゲームだからこそ気軽に不正が出来るの。そもそも、彼らは不正をしているなど微塵も思っていないわ」

 

「全く、度し難いほど愚かね」ピシャリとネコノが言い放つ。その意見には俺も同意だ。

 

 奴等はブレイクデカールのことを、非公式ツールぐらいとしか思っていない。ちょっとした悪ふざけのつもりなんだろう。罪の意識など有りはしない。有ったとしてもそこまで深刻に捉えていないだろう。だがな、

 

 「チートツールの使用は電子計算機損壊等業務妨害に引っ掛かる。立派な不正行為だよ」

 

 なんらかの形で損害を与えていることには変わりはない。そうすりゃ余裕で警察案件だ。

 

 そうネコノに続く形で説明すれば、

 

 「でんし…けいさんき?電卓のこと?」

 

 と、とっても素敵なお返事を頂いた。あちゃー、ユイユイにはちょっと難しかったかー。

 

 「よーするに、ユイユイ先輩のスマホのデータを誰かが勝手に消しちゃったからタイホしますよー、ってことです」

 

 と、トリナが分かりやすく説明したお陰で心得たようだ。「もー、ヤッキーも最初からトリナちゃんみたいに言ってくれればいいのに」とご立腹だ。

いや、確かに普段使いのない用語だけどさ、後輩から解説されるのはどうよ。

ネコノも「現社も要強化かしら」とユイユイのテスト勉強に向けて頭を抱えている。

 

若干生温くなった空気を裂くかのように、ピコンと軽快な音が室内に鳴り響く。どうやら俺宛にメッセージが届いたようだ。

 

この間のユートに続き珍しい。やだヤハタったらモテ期?と馬鹿なことを考えつつメッセージを確認する。

 

「誰からですか?」

 

トリナが俺の手元を覗き込んでくる。まるで彼氏のメールを確認する彼女のようだ。あっ、まるでじゃなくても彼女だったわ。

 

「あぁ、ユートの奴からだ」

 

送り主の名を告げ、ウィンドウをトリナへと向ける。読んでいいのかと目線で問いかけて来たので、こくりと頷く。どうせバトル依頼とかだろう。読まれたところで何の問題もない。

 

 トリナは「えーと、なになにー」とわざわざ口に出しながら読み出す。

 

 「『この間はバトルを承諾してくれてありがとう。前回は引き分けという結果に終わったが、君とは何れ決着をつけたい。さて、本題に入らせてもらう。俺の所属するAVALONのリーダーから君宛の言伝を預かっている。』AVALONのリーダーってチャンピオン!?」

 

 「は?チャンピオン?」

 

 発せられた思いもよらない単語に驚く。慌てモニターを覗き目を走らせる。

 

 『ヤハタ君

 

 突然済まない。ユートを通じて連絡を取らせて貰った。

 君とユートのバトルは見させて貰ったよ。双方とも素晴らしい戦いだった。

 その上で、君とアザレアのメンバーに依頼したいことがある。詳しい内容は直接会って話をしたい。近々使いの者がコンタクトを取るだろう。

 

 全てのダイバーがGBNを変わらず楽しむために、宜しく頼む。

 

 クジョウ・キョウヤ』

 

 

 マジだよ、マジでチャンピオンからのメッセージだよ。

 

 同じフォースに所属している奴からの転送だ、チャンピオンを騙ったメッセージの確率は低いだろう。スマホに届く親戚の芸能人からのメールより余程信憑性がある。

 

 にしても、チャンピオンからの依頼ねぇ

。俺たちがチャンピオンと会ったのは、ビルドダイバーズの初試合の場だけだ。接点などほぼないと言って等しい。それなのにチャンピオン直々のお呼び出しだ。厄介事の匂いがプンプンする。

 

 「先輩、どーしますか?」

 

 トリナが尋ねてくる。他の連中を見れば、俺が決めろとばかりに見返してくる。

 

 どーするたって…、どーしよ?

 

 

 

× × ×

 

 

 

 結局は依頼を受けることに決めた。なんてたってGBN最強からの依頼だ。気にならないと言えば嘘になる。

 

 指定された日、フォースメンバー全員集合でエントランスで待つ。間もなく約束時間になる。迎えの人間がそろそろ来る筈だ。

 

 「アザレアの皆さん、お待たせしました」

 

 そんな声とともに見知った仮面の男が現れる。

 

「やぁ、この前ぶりだね」

 

爽やかに笑いながらユートが話し掛けてきた。

 

「なんだよ。お前が出迎えか?」

 

 そんな風に返すが、予想通りだ。第一、メール送ってきたのこいつだし。

 

「一番君と面識があるからね。俺が選ばれたというわけさ」

 

全く知らない奴が来るよりはマシだ。いきなり初対面の人と話すのは、ボッチには難易度が高い。

 

「どもどもー。お兄ちゃんの妹のリトル・マチです」

 

リマチが先陣を切って挨拶をする。初対面なのに物怖じせず話し掛けるのは、流石としか言いようがない。リマチの挨拶を皮切りにネコノとユイユイが自己紹介をしていく。

 

トリナといえば、「んー?」と首を傾げながら、ユートの奴を見ている。どしたの?

 

「ユートさん、でしたっけ?何処かでお会いしたことありませんでしたかー?」

 

なにそのナンパの常套句みたいなの。

 

「はは、よくある顔だからね」

 

 怪しい仮面をつけた野郎がよくいてたまるか。そんなもんが大量にいるのはガンダムのキャラぐらいなもんだ。あ、ここ、ガンダムのゲームだわ。

 

 それにしても、女って奴はこーもイケメンが好きなんかね。イケメンだから許されるって風潮、どうよ。

 

 「おう、トリナ、イケメンならここにいるぞ。目が腐ってない今の俺ならイケメンだ」

 

 腐敗の抜けた俺は、クールな目元のナイスガイだ。格好と合間って凄腕のアサシンにしか見えん。なお、暗がりで佇んでいたらガチでビビられ人殺し呼ばわりされたことがある。

 

 「ちょっとイケメンになったぐらいで、ごみぃちゃんから滲み出るダメ人間オーラは消せないよ」

 

 と、実の妹から辛辣なお言葉を戴く。何それ、俺のネガティブオーラはただイケすら無効にするのん?デバフ効果強すぎじゃね?

 

 「も~、先輩ったらヤキモチですか~?」

 

 トリナは笑顔全開で小突いてくる。

 べ、別に妬いてるとかそんなんじゃないんだからね!嘘です。かなり妬いています。今すぐユートの奴にアンブッシュしたくなるぐらい。

 

 その標的は「腐った目…先輩…まさかな」とか言ってる。何?お前の回りにも腐った目の先輩がいんの?俺以外にもそんな人間がいるとは驚きだ。

 

 「あなたたち、いつまで遊んでるのかしら」

 

 そんな俺たちを見かねてネコノが口を出す。見れば、やれやれとばかりに頭を抱えていた。

 

 「そうだね、そろそろ移動しよう」

 

 

ユートに連れられて、アザレア一行はAVALONの本拠地(フォースネスト)に移動する。とは言っても転移するだけだから、移動時間などないようなものだ。文字通りあっという間に到着した。

 

そこにはディスティニーランドのシンボルの如くそびえ立つ城があった。

 王者の証を示すかのような威風堂々たる佇まい。以前訪れた森といい、巨大物恐怖症(メガロフォビア)見たら卒倒ものである。

 まぁ、GBNをプレイする輩にそんなもんはいないか。MS自体5,6階建ての建物に匹敵するしな。

 感慨深くそれを見上げる。話には聞いていたが確かに立派なもんだ。俺たちの部室(フォースネスト)とは雲泥の差だな。流石、上位ランク用の報酬である。これがトップフォースの力か…

 

ふと、視線を横にずらせば、同じように女性陣も王者の居城を見上げていた。まあ、女性というものは多かれ少なかれお姫様願望というものがあるというし、何か心に響くものがあるのだろう。知らんけど。

 

「やー、先輩、ヤバいですねー」

 

トリナが俺の袖をクイクイと引きながら言う。

 お前の語彙の方がヤバいと言いたいが、まぁ、言いたいことはわかる。これだけでかいと圧倒されるよな。

 

「これだけ立派なお城だと、落とすの大変そうですねー」

 

ん?あれ?トリナさん、なんか考えていること違くない?

 

「見た感じバスターライフルでいけそうだけど、トップフォースだからなー。絶対、防衛網張ってそうだし…」

 

確かにヤバいわ。何がヤバいかって、城を見て攻城戦について考えるようになっているあたり。やだわ、この子ったら、完全にGBNに染まっているじゃない。

 

どうしてこうなった… 出会った頃はきゃるんとしたあざといだけの可愛らしい少女だったのに、いつの間にか火力主義のバスターガールになってしまった。誰だよ、こんなになるまで放っておいた奴。

 

…あ、俺か。私色に染め上げたってレベルじゃねぇな。責任とらなきゃ。

 

「……やだなー。ジョーダンですよ、ジョーダン」

 

俺の視線から何かを読み取ったのか、手をパタパタ振りながらおどけた口調で否定をする。だがな、トリナよ。いろは検定2級保持者の俺からして見れば、わりと本気で考えていたことがバレバレだ。

 

「おーい、お兄ちゃん、お姉ちゃん。いつまでもいちゃついてると、置いてっちゃうよー」

リマチから声が掛かりそちらに向かう。流石に見知らぬ場所で置いてきぼりをくらっては堪らない。このままでは、所在なさげに彷徨う不審者(迷子)の一丁上がりだ。即座に警備員が飛んでくるレベルの。

 

……俺のステルスっぷりなら見つかるようなことはないだろうがな。なんなら、ジャブローに侵入したアカハナみたく、格納庫まで行って爆弾を仕掛けて来るまである。やだ、ヤハタってば物騒。これじゃ、トリナのことは言えんな。

 

益体もないことを考えながら、トリナと二人、先導するユートを追いかける。

 

流石上位ランクの城だけあって、内装も豪華な造りとなっている。いくらデジタルの産物と理解しているとはいえど、調度品に近寄ってまじまじと眺める気も起きない。

……舞浜のお城のガラスショップでも必要以上に近づかないぐらいだからな。一緒にいた後輩(彼女)に「先輩はチキンですねー」と呆れられたりはしたが……

うっかり落として割って弁償する羽目になったりするんじゃないか、そんなこと考えてビクビクするんだよ。俺のリスク計算能力の高さをなめんな。

 

長い廊下を歩くこと暫く、両開きの扉の部屋の前に到着した。

 

「準備が整うまでこちらで待っててくれないかな」

 

そう言ってユートは扉を開ける。促されるまま中に入ると、豪奢な内装の部屋には数多くのダイバーで溢れていた。中央のテーブルには料理が置かれ、その回りで各々が食事をしたり会話を楽しんだりしている。

所謂ビュッフェスタイルという奴か。高級ホテルの特別会場とかでしかお御目にかかれない感じだな。いや、実物を見たことないから知らんけど。

 

あまりにも場違いな雰囲気に、ソワソワしてしまう。こういった不特定多数が集まる空間は苦手なんだよ。何、マナーとか知らないんだけど。

その中でネコノは、ただ一人慣れたようにドリンク片手に持ち、壁の華へと化した。流石、リアル社長令嬢。こういったこともお手ののか。パーティー会場に迷いこんだ猫にしか見えんけど。

 

リマチとユイユイは皿を片手にデザートコーナーへ突撃している。リマチ(かわいい妹)にちょっかいを掛ける害虫がいないか目を光らせていたが、どうやらそんな不届きものはいないようだ。もしいようものなら、サイレントキラー(不本意な二つ名)の下に、暗殺を実行するところだった。

 

安心して俺もネコノに倣い壁と同化する。ドリンクを傾けながら、ちらりと参加しているメンバーを確認する。ロンメル隊を筆頭に、かなりの実力派ダイバーが集まっているようだ。俺でも知っているような有名ダイバーがちらほらいるぐらいだからな。

 

「おっ、アマゾネスの人もいるのか」

 

その集団の中に一人の女性ダイバーを見付ける。キセル片手に着流し姿の、まさに女傑といった風貌のダイバーだ。

 

「誰ですか、先輩。そのアマゾネスの人って」

 

当たり前のように隣にいるトリナが、俺の呟きを耳聡く聞き付ける。

 

「ダイバー名はRecklessっていう、トップランカーだ。ゴッドガンダムの改造機を使って殴り合い(ステゴロ)を得意とする人だ。その戦いっぷりと、女性オンリーフォースのリーダーってことでアマゾネスって呼ばれてんだとよ」

 

俺の知ってる限りの情報を伝える。分かったのか分からんのか、トリナの奴は「へー」と気のない返事をするだけだ。

 

「ん?おぉ、ヤハタじゃないか」

 

そんな風に注目していたからか、話題の人がこちらにやって来た。「ぅす」と軽く会釈をする。

 

「なんだ、君も呼ばれていたのか」

 

そう言いながらも、「まぁ、実力からすれば当然か」と一人で納得している。独り言が増えると歳をとっ「何か言ったか」いえ、何でもないです。

 

 「風の噂ではフォースを組んだと聞いたが……」

 

 ちらりと俺のとなりに立つトリナを見る。視線を向けられたトリナは「どもです」と小さく会釈をした。その様子を見て口許を綻ばせると、

 

 「きみも青春しているな」

 

「結構、結構」と豪快に笑いながら去っていった。

 

「タイガーさんみたいな方ですね」

 

トリナはポツリとそう述べた。なかなか的を得た感想だ。二人とも似たような気質のダイバーだからな。

 

 「テメー!なにをやらせやがる!」

 

噂をすれば影とはよく言ったもんだ。突然響いた怒号に振り向けば、本人がいた。お約束通りシャフリさんと言い争っている。

 あーあ、殴り合いまで始まったよ。取っ組み合ってドッタンバッタンと、いい大人が何やってんだか…

 

 公の場でそんな目立つような事をしているから注目の的だ。今も少し離れた所にいる女性ダイバーが驚いた顔で見ている。

 

 「キャー!生シャフタイよ!」

 

 と、騒ぎに負けないぐらいの声を上げる。何事?

 

 「人前に姿を現さなかったミステリアスなシャフリヤールと」

 「ワイルドガテン系のタイガーウルフ」

 「その二人が組んず解れつ絡み合ってるわ!」

 

 途端に辺りから溢れ出す瘴気混じりの声。そのあまりにも冒涜的なオーラに、同性であるトリナも当てられて身を震わせている。

 

ーーー腐ってやがる。まさかこの会場にも腐海が拡がってしまうとは…… っべー、マジっべーわ。

 

こんな危険区域に居ては堪らないとばかりに、トリナの手を引き離脱する。パニックやサスペンスものなら死亡フラグだが、この場合だと留まっていた方が危険である。

 このまま長時間いたら、トリナが彼女たちから発せられる高濃度BL粒子に当てられて腐道の革新者(ヤオイノベイター)に覚醒してしまう。エセゆるふわガールからガチゆる腐わガールになったら笑うに笑えん。愚腐腐と笑いながらかけ算をし出すのを見たら今より目が腐る自信がある。

 

 避難訓練の様に慌てず走らず静かにフォースメンバーのもとに移動する。這々の体のこちらと違い、彼女たちはビルドダイバーズと和やかに談笑していた。

 

 「およ?おにーちゃん、どしたの?リアルみたいに目が腐ってるよ?」

 

 折角の正常だったアバターの目すら腐らせてしまうとは。げに恐ろしきはBL腐ィールドかな。

 なんか始まる前から疲れた。帰っちゃ駄目かな……

 

 準備が整ったということで、集まったダイバーたちが一斉に移動する。俺たちも倣い人波に続いていく。

 

 着いた場所は国会中継などで見るような講堂だった。これだけの数のダイバーを収容してもなお余裕はある。どれだけ広いんだよ…と、目線を走らせながらナンバーワンフォースの持つ財力に驚愕する。

 そうこうしている内に壇上にはチャンピオンとロンメル隊長の姿が。なに、これからダカール演説でもすんの?

 

 「用件も告げずに呼び出して済まない。そして集まってくれてありがとう」

 

 チャンピオンは一同を見回すと、先ずは謝辞を述べた。

 

 「ここにいるダイバーは私が心から信頼を寄せているダイバーだ」

 

 柔和な笑みを浮かべながら告げる。その言葉に集まった一同の空気が和らぐ。チャンピオン直々に認められて誇らしいのだろう。口許を綻ばせている。

 

 そんな中で俺はキナ臭さを感じていた。前にも考えたが、俺たちとチャンピオンが会ったのは一度きりだ。ここまで評価されるような心当たりはない。

 これは、誉めておいてから無理難題のパターンじゃね?

 

 「故に今から話すことは他言無用でお願いしたい」

 

 一転して真剣な表情になるチャンピオンに、回りの空気が引き締まる。

 ほらー、早速不穏な前置きが来たー。

 

 「皆も知っての通り不正ツールを使うマスダイバーは数を増やしつつある。しかも、彼らの手口は巧妙で運営も手を拱いているのが実情だ」

 

 親父たちもぽろっと溢していたな。データ改ざんしてログが残らないとかなんとか。

 

 「よって私はブレイクデカールの氾濫を阻止すべく有志連合の結成を提案する」

 

 不穏な前置きの割には穏便な提案である。

 要するに、今まで個々で対応、その場凌ぎの対処しか出来なかったマスダイバーに対し、組織だって対抗しようという話か。現状で有効な打開策がない分、悪くない考えである。集団行動が苦手な俺には正直勘弁だが…

 

 ざわめく群衆に、手にした馬上鞭をピシッと鳴らしロンメル隊長が一喝する。

 

 どうでもいいけど、トリナって馬上鞭が似合いそうだよな、声的に。髪をうなじでアップにして監守服を着たらぴったりな気がする。分かりやすく言えば、Gガンのナスターシャみたいな格好だ。

 ……頼んだらやってくれないかな。無理か。

 

 と、アホなことを考えている内に辺りは静まり、チャンピオンが言葉を続ける。

 

 「もし、賛同が出来ないなら、今すぐ立ち去ってくれて構わない」

 

 え?帰っていいの。じゃ、ここいらで失礼をば…

 

 「そんな腰抜けがここにいるわけないだろ」

 

 タイガーさんの言葉を皮切りに次々と賛同の声が上がる。

 うちの女性陣も乗り気な様だ。トリナは俺が逃げ出そうとしてるのを見越してか、ガッチリ腕をホールドしてやがる。帰れなくなった…

 あと、後ろから聞こえる舌打ちが怖い。

 

 「ありがとう」

 

 チャンピオンはそう言いながら、歓声を手で制して止める。タ○さんかな?

 

 「現在AVALONはロンメル隊と秘密作戦を遂行中だ」

 

 ほう?秘密作戦とな。中々、男心を擽る単語だ。さっきまで乗り気でなかったのに、ちょっぴりワクワクしてしまう俺ガイル。

 

 「ここからは私が説明する」

 

 ロンメル隊長が引き継ぎ、大型モニターの前に立つ。

 

 「我々有志連合の目的はブレイクデカールを配布している黒幕を突き止めることにある」

 

 結論ありきで進めてくれるのは非常にありがたい。こういった大人数で一からやってたら、中々上手くまとまらず時間の無駄になる。流石は智将ロンメル、淀みがない。

 

 中にはミッションのターゲットからディスカッションしていこうなんて言う輩もいるぐらいだからな。以前特殊ミッションで組んだ奴がそんな感じだった。いや何言ってるかわかんねーよ。

 

 「既に行動を開始している我が隊の諜報員が黒幕と接触次第、ガンプラで出撃、黒幕を包囲する」

 

 諜報員まで有してるとは、ミリタリー色が強いフォースなだけのことはある。

 

 「当然ながらマスダイバーの反撃が予想されるだろう」

 

 「ようするにマスダイバーとやりあえってことだろ?」

 「あいつらには仲間がヒデー目にあわされたんだ」

 「こんだけの猛者がいれば楽勝だろ!」

 

 やいのやいのと、そこかしこより声が上がる。やる気充分なのは結構だが、早くも勝った気になるってのはどうよ。慢心するのは敵と黄金の王様だけでいい。

 

 「その心意気は頼もしい限りだ」

 

 早くもお気楽モードの空気を割いて、ロンメル隊長の声が響く。しかし、と続ける。

 

 「我が隊が被害を受けた際にマスダイバーは再生能力を有していた」

 

 初見とはいえロンメル隊を倒している。そんな奴らが群れなしている可能性がある。厄介という言葉では片付かない。

 

 「さらに発生されるバグに巻き込まれる可能性も有する」

 

 そして、副次効果で現れるバグ。バグだけあって、どんなことが起きるか予想もつかない。嵐になるぐらいなら問題ない。変なところに飛ばされ、身動きが取れないとなったら目も当てられない。

 

 「危険な作戦と言わざる終えない」

 

 ロンメル隊長の冷静な言葉に、浮かれ顔は一転して通夜のような沈痛な面持ちとなっている。実際に被害を受けたフォース、それも自分達よりもはるかに格上のーーーからの言葉だ。重みが違う。楽勝と煽っていた連中は完全に萎縮してしまっている。テンションの落差激しすぎない?

 

 「だが、活路はある」

 

 静かに、それでも頼もしさを感じる声でチャンピオンが言葉を紡ぐ。その声に俯いていた一団も顔を上げる。

 

 「黒幕の正体、そのIDさえ分かればいいんだ」

 

 最初にも言ってたな。こちらの目的はブレイクデカールの氾濫阻止だ。それには黒幕さえ炙り出せば事足りる。わざわざマスダイバーを根絶やしにする必要はない。有志連合はティターンズやアロウズじゃないからな。

 あとは運営に任せて、垢Banなり覚悟の準備をしてもらうなりすればいい。いらん義侠心を出して下手なちょっかいを掛ければ、返ってこちらが不利になりかねん。

 

 「頼む。それまで君たちの命を預けてくれ」

 

 そう言い、こちらに向けて敬礼をした。

 

そんな真摯な態度を見せられて、応えなければ男が廃る。え、とっくに廃ってるって?俺だってたまにはカッコつけたくなるの、GBN限定だが。

 

 一同が立ち上がり敬礼をする。俺も周りに倣い敬礼を返す。ピシリと背筋を伸ばしたそれは、我ながら様になっていると思う。敬礼は男の子の基礎スキルだからな。

 

 ちらりと隣に目線を向ければ、トリナはお得意のウィンク付き陸軍式敬礼をしている。こんなとこであざとさ振り撒いてどうすんの?

 

 これで本日の有志連合の会合はお開きとなった。

 あとは向こうの出方次第だ。いつ呼び出しが掛かってもいいように準備をする必要がある。あんま呼び出されたくないけど……

 まぁ、今日のところはフォースネストに帰るか。

 

 

 我らがフォースネストに戻ってきた。AVALONのものとは比べるもなく狭いが、それが不思議と落ち着く。段ボールに入りたがるカマクラ()の気持ちがよくわかる。

 

 「ヤハタ君、あなたはこの作戦をどう考えるかしら」

 

 椅子に座り一息ついていると、ネコノが尋ねてきた。曖昧な質問だ。これは、単純な勝ち負けでなく別のことへの問いかけか。

 

 「作戦の成否じゃなくて、後ろが関わっているかってことか?」

 

 他のメンバーはピンと来ないのか首を横に傾げている。ただ一人ネコノだけが縦に振った。

 

 「これだけの規模の作戦だ。運営もなんらかの形で関わっているだろ」

 

 作戦目的が黒幕を突き止めることだからな。その後の処理は運営任せだ。

 それに運営もあれだけ臍を噛まされ続けて来たんだ。ここいらで対処をしておかないと、運営能力に疑問を持たれてしまう。下手したらGBN存続まで危ぶまれる。

 

 「黒幕見つけてスクショ取って通報なんて悠長なことはしとれんだろ。監視員みたいな形で参加してんじゃねーの、知らんけど」

 

 エキシビジョンマッチみたいな公式イベにも喚ばれているチャンピオンのことだ。運営との伝手ぐらい一つや二つあってもおかしくはない。似たようなものは俺だって持ってるぐらいだしな。

 

 「まぁ、小難しいことはチャンピオンたちに任せて、マスダイバーとの小競合いに集中しとけ」

 

 ネコノは「そう」と言い、それ以上言葉を発しなかった。

 

 勝つにしろ負けるにしろ、この作戦でブレイクデカールを巡る局面は大きな変化を告げるだろう。

 いや、勝たなきゃいかんのはわかっている。だが、この先どう転ぶかはわからない。

 柄にもなく神様にでも祈りたくなる。ガンプラだから、川口名人に祈ればいいのかな?

 

 願わくは有志連合にとって最良の結果にならんことをーーー




ようやく山場の有志連合までたどり着けました。
長いので前後編と別れています。決着は次回で。


オリジナルフォース

フォース名:腐論足(フロンタル)

 BL好きのBL好きによるBL好きの為のフォース。
腐女子のみで構成されている。歴代ガンダムキャラからダイバー同士、剛の者にいたってはMSでもかけ算をするという兵揃い。準団員として他のフォースにもメンバーがいるとの噂がある。ある意味マスダイバーよりも厄介。
フォースシンボルは赤いバラ(意味深)
 
 フォースリーダーはホモォさん
 
 
フォース名:ヴァルトラウテ
 
 戦場の勇気を意味するワルキューレの名を冠した女性ダイバーオンリーフォース。
 数ある女性ダイバーフォースの中でも、かなりの武闘派にあたる。まさに、女子力(物理)を地で行く。
 フォースの合言葉は“強い男に会いに来た”。見込みのある男性ダイバーにバトルを仕掛けるが、彼女達が勝つ度に悲しいかな婚期が遠退く。
フォースシンボルは白い衣の戦乙女
 
 フォースリーダーはReckless

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