やはり俺のGBNはまちがっている。   作:八重垣八雲

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お待たせしました。4話目を更新します。

1月10日追記:後書きにオリジナルフォースの詳細をのせました。


だから、マギーは立派な大人である。

一色にガンプラを渡してから半月がたった。

 

その間、俺たちはGBNにログイン出来ずにいた。

想定外に俺のリアルが忙しく、それどころではなかったのだ。

課題の作文を提出したら、担当の平塚先生に奉仕部なる部活にぶちこまれ。そこの部長である雪ノ下から、毒舌のジェットストリームアタックを食らい。依頼に来た由比ヶ浜に、固まったポリパテ状クッキーで毒殺されたり。この世界の扮装を根絶するために舞い降りた天使・戸塚と友達になったり。材木座?知らない子ですね。

 

一色だけなら十分ダイブ出来そうだったが、「それじゃ意味がないんですー」と言い、ずっと俺と行動を共にしていた。さながらハシュマルに付き従うプルーマの如く。

 

それを見た平塚先生が

「裏切りもの~―――――――――――――――!!!!!!」と泣きながら走っていった。だれかもらってあげて。

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

ようやくの休日、俺たちは連れ立っていつもの店に行く。新しいガンプラを動かすのが楽しみなのか、隣を歩く一色は始終にこにこしていた。

 

ログインして、ロビーで一色を待つ。

「せーんぱい!お待たせしました」

 

リアルより長い亜麻色の髪にエルフ耳。動きやすさガン無視のゆるふわファッション。あざとさ絶好調な一色のアバターである。

 

「おう、待った」

 

と、いつも通りに返す。

さて、どのミッションにしようかしらん。考えていると、

 

「あら、ヤハタくんにトリナちゃんじゃない~」

背後から俺たちのアバター名を呼ぶ声が聞こえた。俺がヤハタで一色がトリナである。

振り返れば、ピッチリとした服を纏った偉丈夫が手を振っている。

 

「っス。マギーさん」

 

「お久しぶりですー。マギーさん」

 

と、挨拶をする。俺とトリナ共通の知人のマギーさんである。いわゆるオネエな方だがとても面倒見が良く、俺もトリナも色々世話になった。また、ワールドランク23位の凄腕ダイバーである。まさにオネエは強いを体現した人である。

 

「トリナちゃんはホントお久しぶりね~」

 

「ですです。ようやく受験が終わりましたよー。ばっちり合格しました!」

 

「おめでとう。これでまたヤハタくんと一緒ね」

 

リアルでも知人のため、俺とトリナの関係も知っている。GBNの外でも世話になった。ほんと、この人には頭が上がらない。

 

「今日も二人でミッションを受けるのかしら?」

 

「えぇ、コイツの新型組んだんで。その試運転に…」

 

話しながら、連れ立って格納庫に移動する。ハンガーには俺のAGE-2ステルスの隣に、トリナのインセパラブルガンダムが並んでいる。マギーさんはじっくり眺め「愛が詰まってる。妬けちゃうわ~」と感想を表した。トリナさん、そのどや顔やめなさい。

 

そういえば、とマギーさんは、先日知り合ったという二人のダイバーについて語りだした。話を聞く限り、まだ始めたばかりの新人なのだろう。「好奇心に輝いた目を見ると、ついお世話したくなっちゃうの」と嬉しそうに語る。死んだ目の持ち主としては羨ましい限りである。

 

「とーってもいい子達。二人にも紹介するわね」

 

「いやアレがアレな―」「是非お願いします」

 

俺を押し退け、トリナが答える。おい、ボッチは人見知りなんだ。知らない人と会うのはハードルが高いんだよ…

 

そんな俺たちを見てくすり、と笑い「またね」そう手を振り去っていった。

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

マギーさんと別れたあとバトルフィールドに移動する。

 

「今日は慣らしだからな。簡単なミッションにしておけ」

 

そう言い、初心者向けの低難易度ミッションを選択する。

 

「まっ、これなら前みたいに突っ込んでも痛い目はみないだろ」

 

「ぶーぶー!」

 

あざとく膨れているが相手にしない。すると諦めたのか、インセパラブルを飛行形態にし飛んでいく。俺も付かず離れずの位置を取る。見せてもらおうか!新しいガンプラの性能とやらを!

 

標的は例のごとくリーオーNPD。射程距離に入ったインセパラブルはウェポンコンテナを開く。 頭上から爆弾の雨を降らせ、ガウの様に絨毯爆撃をしていく。跡には沢山の躯と数体の生き残りだけ。

旋回してくるとMS形態になり、落下しながら両腕のビームライフルで危なげなく撃ち抜いていく。どうやら今回は援護の必要はなさそうだ。

 

トリナは通信越しに「どうですか先輩」と、胸を張る。労おうと機体を寄せるが―――

 

「ヒャッハー!!リア充は消毒だ―――ッ!!!!」

 

そんな切実な叫びと共に、俺たちの間に砲弾が撃ち込まれた。咄嗟にスラスターを拭かせて飛びしさる。直ぐ様攻撃体制に切り替え、弾が来た方向を睨む。砲口から煙を上らせつつドムが3機連なってやって来た。

 

「カップルでログインしやがって!!」

 

「ここは戦場だ!!テメーらみたいなのがいていい場所じゃねぇんだよ!!」

 

「我らアロンズの名のもとに!!」

 

「「「リア充滅ぶべし!!!!!!」」」

 

何やら悲しい漢の慟哭が聞こえてくるが、つまりは―――

 

「初心者狩りか……」

 

こういった輩が湧いてくるのは、どのゲームも同じである。こいつらは大分毛色が違うが…

大方、初心者な彼女とログインして、いいとこを見せようとするにわか男をボコってカッコ悪いところを見せて気不味くしよう、という魂胆だろう。だが甘い。千葉のソウルドリンク・マッ缶並みに甘い。彼奴らはそんなんじゃ潰せんわ!どうせログアウトしたあと、慰めるとかいって余計いちゃつきだす。爆発シネェカナ「ちっ!先輩との時間邪魔しやがって……」

 

地のそこから響くような声で我に返る。普段のあざとさ全快な甘ったるさは微塵もない。モニターの先には、「ま、いいか、こいつは死んでいいやつらだから」という顔をした少女がいた……

 

ま、まぁ、そもそもコイツは初心者ではない。あれぐらいの輩なら任せてもいいだろう。下手に手を出したら飛び火しかねん……

いけるか?と視線で問いか来れば、

 

「大丈夫です。この子の動きは掴みました。先輩はそこで見ていてください」

 

と、頼もしい声が返ってくる。トリナは視線を

 

「先輩のお手を煩わせる程じゃありません。あなたたちはわたしが駆ち…もとい殲滅します」と、笑みを浮かべながら言う。

 

「ヒャッハー!」「威勢がいいねぇ」「相手してやるぜ、嬢ちゃん」とか、呑気に言ってるが。ねぇ、知ってる?笑顔は威嚇の意味もあると言うことを。

 

相手のドムに目を向ける。基本のジャイアントバズ持ちに、ラケーテンバズとシュツルムファウストを装備したもの、両手にMMP-90マシンガンを構えたドムキャノンもいる。火力で畳み掛けるタイプか。

 

確かに初心者には、この火力は驚異に映るだろう。だが、相手にしているのは俺の相棒を務めているトリナだ。 飛び交う砲弾の雨を、背中の翼をはためかせひらりひらりと躱していく。トリナに合わせて調整しただけあり、その姿は危なげない。今も相手の砲撃の合間を縫い、両のビームライフルを構えて、「死ね!!」と発砲。「ひ、火がぁぁぁ」の叫びと共にドムキャノンは爆炎に消えた。

 

「やられたのか!」「この女、初心者じゃねぇ!?」

 

と、驚愕の声を上げるが今更である。そもそもが、ここまでガチガチに改造されたガンプラに乗っている時点で初心者な訳がない。それにすら気付かず散る。嫉妬の炎は人をここまで狂わせるのか。ふと脳裏に、「生きるのは難しいね」という雪ノ下が浮かんだ。

 

トリナは一機落としたことでクールダウンしたのか、ふんす、と息をはく。しかし、

 

「なんですかやる気あるんですかその程度の腕で先輩とのラブラブタイムを邪魔したなら馬に蹴られて地獄に落ちてくださいごめんなさい」

と、一息に捲し立てた。全然クールダウンしてねぇ。余程、腹に据えかねていたのか、その後も、

 

「大体、そんなことしているからモテないんです」やら、

 

「まずは初心者カップルばかり狙うのがマイナス50点。アウトロー気取りの外した格好がマイナス50点。言動が偉そうなの割りに大した腕をしていないのがマイナス50点。零点どころかマイナスですねー。恥ずかしくないんですかー」

 

と、けちょんけちょんにした。

 

「そのぐらいにしとけ」

 

止めると、トリナのやつは「だってー」と言う。一部は俺に刺さるんだよ。

それにこういう輩は…「ふざけんなこのアマ!!容赦しねぇ!!」ほらな、やっぱり。

 

言うや否や、やつらのガンプラは独特の紫のオーラに包まれた。

 

「ちっ!コイツら、マスダイバーか!」

 

最近話題のブレイクデカールと呼ばれる違法ツールを使う集団である。どんなに拙い腕でできの悪いガンプラでも、たちまち強力な機体に早変わりする。ボールがガンダムになるようなものである。

修正パッチ等の対応のなさに運営仕事しろし、と言いたくなる。しかし、GBN関連の仕事をしている両親の、普段の社畜っぷりを知っている身としてはあまり声を上げられない。本当にご苦労様である。

 

へっぽこな奴等だったが、ブレイクデカールで強化されると厄介だ。流石にトリナだけでは厳しい。一体はバズーカを捨て、ヒートサーベルを抜きインセパラブルに向かおうとしている。

 

「援護する」

 

そう言い、ウイング基部に装填されているマイクロミサイルを撃ち込む。

 

「へっ!そんなへなちょこ食らうかよ」

 

そう言って、エリート兵ばりに切り払う。だが、残念。そいつは……

 

「スモークか!」

 

吹き出た煙が一瞬にして視界を奪う。さらに、

 

「レーダーも効かねぇ!?」

 

……どうだ、俺特性の粒子撹乱ミサイルの味は。劇場版00の冒頭で刹那の乗るフラッグが使った手である。ビームを無効するほど効果はないが、通信やレーダーの阻害には十分である。 異なる作品の特性でも組み込める。それがGBNだ。

やつらがごたついている間に次の手を打つ。

煙が晴れる頃には、やつらの機体しか残っていない。トリナはとっくの昔に上空へ離脱している。

 

「逃げやがったか」

 

と、サーベル片手に周りを見渡している。ところがぎっちょん―――

 

「ぐわぁぁぁ―――!!!!」

 

俺の機体から放たれたビームが貫く。流石にコクピットを貫けば、ブレイクデカールとて復活出来ない。十分狙いをつけさせて貰ったから、当てるのは楽である。

 

相手からすれば何もない場所からの攻撃だ。

 

「ミラージュコロイドだと!?」

 

流石に気づくか… 搭載されたミラージュコロイド・ステルスで姿を消していた。さっきいた場所からほぼ移動していない。さて次は、

「なぁ、あんたブレイクデカール使っている割には大したことないな」

 

トラッシュトークタイムである。

 

「そもそも作りが甘い。そんなんじゃいくら強化しても意味がない。あえて言おうカスであると!」

 

トリナと違い、ビルダーとしてのプライドを標的にして、一気に捲し立てる。そうすれば、

 

「バカにしやがって!!」

 

あっという間に血が上り、俺目掛けて攻撃をしてくる。目に見えた敵がいることにより、全ての意識がこちらに向かう。かかった!

 

「俺ばかりに気を取られていいんかね」

 

そう、いなくなったのは俺だけではない。

 

「トリナちゃんアターック!!」

 

掛け声と共にトリナのインセパラブルが強襲する。上空から加速して一気に距離を詰める様は猛禽類の狩りである。

憐れ獲物となったドムは脚部クローでがっちりホールドされ、そのままスラスター全快で地面にすりおろされている。エグい……

 

「リア充どもに…災いあれ…」

 

呪いを込めた断末魔を残し爆散する。こんな出会いでなければ友達になれたかもしれない。知らんけど。

 

「愛の勝利です!!」

 

ぶいっ!と満面の笑顔でのたまう。爆風を背にしたら猟奇的にしか見えん。こわいよ、つーかこわい。

 




アバター名由来

八幡→ヤハタ:はちまんを訓読みしただけ。捻くれ者なのに捻ってない。
いろは→トリナ:いろはうたに"ん"の字を追加し鳥啼歌より。いろはに足りなかったはちま「ん」がいる的なニュアンス。


オリジナルフォース

フォース名:アロンズ(ALONE's)

GBN黎明期か存在する謎のフォース。その正体は彼女なし子(みなしご)たちの悲しき集い。
「リア充滅ぶべし」を合言葉に日々カップルでログインする初心者を狩っている。
入団条件は彼女がいないこと。彼女もち(うらぎりもの)は即、処断。
夢は広大なフォースネストを手に入れ、GBNに彼女なし子(みなしご)の楽園を作ること。

いろはと組む前の八幡も密かに入団しようと考えていた。

名前の由来はアロウズとALONEをかけて。
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