やはり俺のGBNはまちがっている。   作:八重垣八雲

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これからも拙作を宜しくお願いします。



比企谷小町も一緒に遊びたい。

ゴールデンウィーク―――

 

4月下旬から5月初頭の大型連休を指す言葉である。今では幅広く使われているこの名称。もとの語源は、戦後の映画業界がこの時期の劇場動員数を活性化するために作った宣伝用語にすぎなかった。要するに、長い休みがあるから映画見に来てくださいねー、という業界の陰謀である。近年では、振替休日も加わりより長い休日になったことに、さらには百貨店や遊園地など様々な施設が増えたことにより、行楽目的の人間が爆発的に増えたのである。

つまり何処もかしこも人だらけだ。何が悲しくて、休みの日まで人混みに揉まれて疲れなければならないのか。長い休みだからこそ、日々の疲れを癒す時ではないのか。故に、俺は断言する。

 

家で、寝る。これ最強。

 

―――と、連休初日から優堕な微睡みに浸っていると、不意に人の気配。小町かな?と寝ぼけ頭に浮かんだ次の瞬間、

 

「ねーお兄ちゃーん」の声と共に腹にどすんとした衝撃が。思わず「グェッ!」と声が出る。

 

「どしたのお兄ちゃん?死にかけのヒキガエルみたいな声を出して」

 

人の腹にニー・ドロップをかけておいて、小町はいけしゃあしゃあと言う。あと、人の中学の時のあだ名を言うな。死にたくなる。

流石に肉体・精神の両面に致命傷を与えられれば目が覚める。致命傷なのに起きるって、ゾンビかよ。自分で言ってて悲しくなってきた……

「で、小町さんや」

 

「何だい、お兄ちゃんや」

 

「人を叩き起こしたからには用があんだろ」

 

と、腹の上に座っている小町を睨む。これで大したことじゃなけりゃどうしてくれようか。つーか、早く退きなさい。

 

体を起こし改めて向き合うと、

 

「小町もGBNをしたいと思います」

 

と、言う。俺たちがプレイしているのを見て、自分もやってみたくなったそうだ。だが、

 

「お前、今年受験生だろ。勉強は大丈夫なのか?」

 

そう、現在小町は中学3年生。バリバリの受験生である。俺たちと同じ総武高校を狙っているが、若干おバカなところのある小町だ。兄としては心配である。

 

「塾も増やしたし、夏までにするから」

 

お父さんお母さんにも許可は貰ったから、と伏し目がちに言う。

まぁ、勉強ばかりじゃモチベーションも落ちるし、息抜きがてらならいいだろう。親父と母ちゃんが許可してるなら俺が言うことではない。あの二人は家の天使に甘いからな。俺? 言うまでもないだろ。ダダ甘だよ。

 

「なら、いいんじゃねーの」

 

そう言えば、たちまち破顔する。

 

「それでー、お兄ちゃんにお願いがあります」

 

と、胸の前で手を組んで上目遣いで迫ってくる。そのあざとい仕草に覚えがありすぎる。

天使が小悪魔に誑かされた――― 内心で驚愕する俺を知らず、瞳を潤ませ、

 

「小町にー、ガンプラ作って」

 

きゃるん、と可愛くおねだりをした。光と闇が合わさり最強に見えます。

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

善は急げとばかり小町は外出を促してくる。 仕方なくいつもの店に行こうとするが、「えー、ららぽに行きたい」という小町の一言により、ららぽーとまで出向く羽目になった。ガンプラ買うだけじゃないの?

 

到着すれば人、人、人の人だらけである。やだなー、かえりたいなー。そんな気分で眺めていると、

 

「あれ、先輩?」

 

聞き覚えのある声。出やがったな、家の天使を堕天させた諸悪の根元が!そう思い、声が聞こえる方を睨むが、

 

「…あら、商業施設にゾンビが紛れ混んでるわ」「ヒッキー、なんでいんの!?てか、目がキモいよ!?」

 

……君たちも来てたのね。

 

一色から話を聞くに、由比ヶ浜の発案で奉仕部女子部員でショッピングに来ていたようだ。初対面の小町と雪ノ下たちが自己紹介をしている。小町はにしし、と気持ち悪い笑みを浮かべながら戻ってくると、

 

「お兄ちゃんもすみにおけませんなー。小町にナイショでこーんな可愛い人を二人もお知り合いになっているなんて。浮気はダメだよ、お兄ちゃん」

 

と、小突いてくる。なんだよ浮気って、そもそも相手がいな、って冗談ですから一色さん笑顔で腕を締めつけないで折れる折れる折れる―――――

 

 

 

「先輩がららぽに来るなんて珍しいですね」

 

気を取り直して、そう尋ねてくる。人がいっぱいいますよー、という一色は俺の事がよく分かっている。流石、八幡検定2級の持ち主。

 

「小町がGBNをやると言い出してな」

 

「GBN?小町さんは野球をするのかしら」

 

雪ノ下が軽く首を傾げた。

 

「いや、草野球のことじゃない」

 

ガンダムのゲームの事だ、とざっくりに説明する。

 

「知ってる!隼人くんたちもやってるんだって!!」

 

リア王のイケメン野郎もプレイしてるのか。っべぇー、トップカースト集団すらプレイするGBN、マジっべぇーわー

 

「一色さんもそのゲームをしているのかしら、比企谷くんはともかく」

 

「はい。女性のプレイヤーの方も沢山いらっしゃいますよ。かわいいアバターとかいっぱいありますし」

 

と、女性目線で補足して説明していく。由比ヶ浜は、「ほへー」と感心しながら、

 

「へー、そんなに面白いのならちょっとやってみたいかも」

 

と、言う。

 

「雪ノ下ならともかく、由比ヶ浜は向いてないな」

 

「どういう意味だし!」

 

ガンプラ作りはそれなりに細かい作業が多い。クッキー作りでポリパテを錬成するガハマさんに荷が重い。いや、ポリパテなら逆に向いているのか?

 

何時までも喧々囂々と話していても拉致があかない。会話を切り上げると、一色たちと別れ施設内のホビーショップへ向かう。別れ際の一色はこちらを見てニヨニヨした笑みを浮かべていた。なにか良からぬことを企んでそうだ。まさか、俺と小町のデートを邪魔する気か!?

 

彼奴の動向を訝しみながらも、俺は小町を連れてガンプラコーナーへ移動する。

 

「んで、どうするよ」

 

気になるものがないか小町を促す。小町は、むむむと棚を眺めていたが、

 

「あ、なんかかわいいのがある。こーゆーので作ってくれれば、小町的にポイント高い!」

 

頭身が低くデフォルメされたキャラが描かれた箱を指す。模型というよりおもちゃと称した方が相応しいそれは、低年齢をターゲットにした入門編とも呼ぶべきガンプラ・BB戦士である。

ふむ、シンプルな造りで頑丈なBB戦士なら、初心者が扱うのに問題はなさそうだ。それなら女性キャラがいる三国伝とかいいかもしれん。だったら、コイツをベースにしたら面白い。小町にも喜んでもらいたい。

頭の中で設計図を描く。いけそうだ。

 

「なぁ、小町。こんなガンプラはどうだ」

 

提案してみると、

 

「いいよ、お兄ちゃん!すっごくいい!お兄ちゃん株がストップ高だよ!!」

 

何やら分からない称賛を戴いたが、高評価である。孟獲ガンダム祝融ガンダムセットを手にレジに向かった。

 

目的の物を買い店を出ようとすれば、奉仕部三人娘が出入口のショーケース前に固まっていた。君たち、どっか入ったんじゃないの?

どうやら、中に飾られている作例を見ているようだが……ゲ!あそこには

 

「あ、せんぱーい!」

 

子憎たらしい笑みを浮かべた一色が手を振る。その声で一緒にいた二人もこちらを向いた。

 

コンテストの作品が並ぶその中には、俺の作ったものも展示されている。他にも作品が並んでいるからそこまで目立つことはないが、どうやら一色のやつがバッチリ説明したようだ。謀ったな!?いろは!

いかん、ガンプラに興味のない知り合いに見られると、なんかこう、恥ずかしい。つーか、恥ずかしい。やだ、もう……

 

内心羞恥に悶えていると、目をキラキラさせた由比ヶ浜がやって来て、

 

「なんかすごいじゃん!!うんすごい!!」

 

と、喧しく話しかけてきた。興奮し大絶賛だが、いかせん語彙が小町レベルである。

「えぇ、そうね。良くできてると思うわ。がんぷら?のことは、よく分からないのだけれど、非常に丁寧に作られているわ。誰しも1つは特技はあるものね」

 

珍しく雪ノ下が褒める。最後は余計だが…

 

つーか、一色はどんな説明したんだよ。知り合いの、しかも女子にここまで誉められるとは……

俺は頬を掻き、「あぁ、まぁ、ありがとうよ」だけ答えた。くそっ、目が合わせられん!

 

「先輩照れてますー?」「お兄ちゃんがデレたー。捻デレだー!」 ……このガキどもはあとで泣かす。

 

いつまでも入口に陣取るのは店に迷惑がかかる。渾身のデコピンをくらい悶絶するアホ姉妹(仮)を引きずり離れる。雪ノ下は頭痛がするのかこめかみを抑え、由比ヶ浜はたははと力なく笑った。ほんと、スマン。

 

 

 

あのあと、場所を喫茶店にかえ駄弁り続けていた。雪ノ下も由比ヶ浜も、GBNについて本格的に興味を持ったようで、色々と質問をしてきた。規約やら細かい説明で由比ヶ浜のオツムは煙を出していたが、隣に雪ノ下がいるから問題はないだろう。

 

どうやら、またGBNの人口は増えそうだ。

 

「良かったね、お兄ちゃん」

 

……あぁ、そうだな。

 

 

 




小町のガンプラは次回持ち越しです。
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